軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第10話 なんちゃってデート

放課後、俺は七瀬ひよりの親友である芹澤美鈴にデートに誘われ、二人で大型ショッピングへ向かっていた。

正直、本当にこれはデートなのか疑わしくはあるが、芹澤さん本人がデートだと言っているのだから、これはデートなのだろう。

……どうしてこうなった?

チラッと隣で歩く芹澤さんを見るといつもの様に眠たそうな目と無表情な顔。

何を考えているのか分からない。

そういえば、芹澤さんてめちゃくちゃモテてたよな……昼休みもまた告白されたとか話てたし……

もしかして……経験豊富なのだろうか。この振る舞いも男慣れしているからなのしれない。

「……緊張してる?」

「……え、まぁ……うん。デートなんて人生で初めてなもので」

若干、緊張している俺とは対照的に落ち着いた様子の芹澤さん。やはり、手慣れているのか?

なお、七瀬との映画は……一応デートにはカウントしないことにする。

「……緊張しなくても大丈夫、私も初めてだから」

いや、初めてないんかい……

ドヤ顔ピースで言い張る芹澤さんに困惑を抱きつつ質問することに。

「えと、今日はどうして……デートに誘ってくれたんでしょうか?」

「……実はちょっと嘘ついたの」

「嘘?」

「うん。だってこれ、デートじゃないし」

これ、デートじゃなかった。

「本当の目的はひよりのプレゼント選び……あともう少しでひよりの誕生日だから」

「えっ……そうだったの?」

まじか……知らなかったぞ……俺、原作ファンなのに。「推し」であるにもかかわらず、自身のにわかっぷりにちょっと心が沈む。

「入江もプレゼント用意した方がひよりは喜ぶと思うし、だからデートって言ってプレゼント選びに誘ったの」

なるほど……七瀬にプレゼントを用意することをバレないようにデートしようなんて嘘をついたのか。

「……なら、二人っきりである必要は? 月見さんも誘って3人で選びに行った方がいいんじゃない?」

月見さんとはショッピングモールで合流するとか、色々とやりようがあると思うのに。

「……それはそうだけど、入江と二人で行きたかった」

「……なんで?」

「言ったでしょ。私、入江に興味あるって。だから、ひよりのプレゼント選びのついでにデート的なことがしたかった」

「……なるほど?」

つまり、結局、これは……?

「だからこれは……なんちゃってデート。だね」

なるほど、デートであってデートではない……こんなデートって存在したんだな……知らなかった。

「だから緊張する必要ないよ。私を満足させることが出来るか出来ないかで今後の入江との関わり方が決まるだけだから」

めちゃくちゃ重要じゃねーか。

「あ、入江、入江」

くいくいと袖を引っ張る芹澤さんの視線を見るとアイス屋さんがあった。気になって近づくとたくさんのアイスがずらりと並んでおり、どうやら有名店のようだ。

「芹澤さんはなににする?」

「ふ、デートはすでに始まってるんだよ。私が食べたいアイス。当ててみて」

「……もし、当てられなかった場合は?」

「デート終了かな」

まじかよ。クソゲーじゃねぇか。

芹澤さんの期待の眼差しと店員の温かい目に見守られながら慎重に選ぶ。

正直、たくさん種類がある中でたった一つ芹澤さんが食べたいアイスを選ぶことなんて不可能だ。

……考えるだけ無駄だし、もう俺が食べたいやつを選ぼう。

「えと、それじゃーメロンと桃で」

「なっ……!?」

衝撃的だといわんばかりに驚く芹澤さん。

「ど、どうして私が食べたいアイスが分かったの……?」

まさかの当たっていたらしい。

「え? いや……普通に自分が食べたいやつを選んだけだけど……」

「そ、そうなんだ……」

よかったですねと笑顔の店員にアイスのカップを渡されて、お店を後にする。

俺の手元にはメロンと桃のアイスが。

「さぁ、入江。これで二択だね。私が食べたい方を渡して」

ふふんとなぜか得意げな顔をしながら両手を差し出してくる芹澤さん。

「はい。桃のアイス」

「……!?」

その驚いた表情、さっきも見た。

「え、入江ってもしかしてエスパー?」

「エスパーではないけど俺が食べたい方を選んでみた……多分、俺と芹澤さんは舌が合うんじゃないかな」

「つまり、身体の相性が良いってこと?」

「そうだけどそうじゃない……はい」

「ん?」

メロンのカップアイスを芹澤さんに差し出すと、首を傾げる。

「メロンも食べたいでしょ? 二口くらいならいいよ。口付けてないから、どうぞ」

「入江って……人たらしって言われない?」

「なんで?」

もしかして、芹澤さんって結構なチョロインかもしれない。

満足そうに桃のアイスを食べている芹澤さんとともにショッピングモールをまわる。

雑貨屋で色々と見ていると少し気になったものが。

……アロマストーンか。

使い方も簡単だし、香りによってはリラックス効果もあるらしい。最近、心が疲労している七瀬にとっては丁度いいかもしれない。

「……あ、やっぱりそれにしたんだ」

「……もしかして芹澤さんもアロマストーンにしようと思ってた?」

「大丈夫、候補はまだある。リラックス効果のある入浴剤……ひよりお風呂好きだから」

リラックス効果があるものを選ぶということは芹澤さんも俺と同じ考えの様だ。

その後、なんかおしゃれな入浴剤専門店に行って、芹澤さんも無事プレゼントを購入。

出口に向かっている最中、偶然クマの巨大ぬいぐるみが目に入り、二人とも立ち止まった。

これをサプライズプレゼントすれば、ある意味面白いのでは? インパクト抜群だし、盛り上がりそうだし……

ちらりと横を見ると丁度芹澤さんもこちらをみていた。

「これ、サプライズプレゼントしたら面白そうだね」

「いや、でも流石にこの大きさはもらっても困るんじゃ……」

「大丈夫、前に大きなぬいぐるみ、人生で一つくらいは買ってみたい的なことを言ってた……気がする。多分。おそらく」

「その情報信用して大丈夫?」

でも、まぁ……これを見てびっくりする七瀬は見てみたいかもしれない。それに、熊のぬいぐるみ自体好きだったはずだし。

「二人で出し合うのはどうだろう……」

「いいね……誕生日パーティは私の別荘でするから、ひとまず私の家に送ってもらうようにする」

結局、勢いで巨大なクマのぬいぐるみを二人でお金を出し合って買うことになた。

「勢いで買っちゃったけど、もしひよりが受け取ってくれた場合、どうやって運ぼう」

帰り道、少し冷静になってきた俺たちは現実問題を直視していた。

「芹澤さんと月見さんで運べばいいんじゃない?」

「おい入江、サボるな」

「だって……誕生日パーティは3人でやるんでしょ?」

「え、入江、参加しないの?」

「……してもいいの?」

「うん」

さも当然の様にこくりと頷く芹澤さん。

そうか、参加してもいいのか……

「……きっと星乃に怒られて、ひよりにフォローしてもらって、私と入江が苦労しながらひよりの家まであの巨大ぬいぐるみを運ぶんだろうね」

「なんか、二人でしんどかったって少し後悔しながら帰ることになりそう……」

これから訪れるであろうそんな未来を想像して俺たちは顔を見合わせて、笑った。

「入江……」

「ん?」

「楽しみ……だね」

そう言いながら彼女ははにかんだ笑顔で俺を見上げてきた。

「ああ、そうだね……」

「……あ、入江。ちょっと待ってて」

突然そう言い残し、ぱたぱたと小走りで走っていく芹澤さん。彼女の走った先にはたい焼き屋が。

「はい。これ入江の分。食べて」

「え、あ、ども」

唐突に渡されるたい焼きに困惑しながら一口食べる。

「抹茶あずき……! これ、俺が好きなやつだ」

「入江ならそう言ってくれると思ってた。ふふん」

俺の反応に満足そうにニヤリと胸を張る芹澤さん。

「あ、いくらだった?」

「お金はいいよ。私、リッチだし。今日は楽しかったから…………その、次なんか奢ってくれたら」

「いや、今ちゃんと払うよ」

正直、次なんかないかもしれないんだし……

「い、今お金を貰うと……その、次のデートの口実が……」

珍しく、照れ臭そうにぷいと顔を逸らす芹澤さん。

「よくわかんないけど、ここは俺が二人分出しておくよ。次、芹澤さんが俺に何か奢ってくれたらいいから」

まぁ、金額も知れているから次のデートがなくてもそれはそれでいいし。

「……そっちの方が誘いやすいか」

納得した様にお金を受け取る芹澤さん。

その瞬間、スマホが震えた。

ん? メッセージが入ってるな。誰からだろう……

ひより『みーちゃんとのデートが終わったら連絡いいかな?』