軽量なろうリーダー

契約妻、領地奪います

作者: 関谷 れい

本文

「――大丈夫ですか? ここは私が食い止めますので、お逃げください」

その後ろ姿は、彼女の瞳へ鮮明に焼き付いた。

吹雪によって翻る黒いマントに、銀糸で縫い込まれたアルスヴィーク伯爵領・闘狼騎士団の紋章。

自分と三匹の魔獣の間に立ち塞がり、少し特徴的な形をした剣を構える、ひとりの男。

「エレンティアお嬢様! 早くこちらへ!」

「待って、騎士の方がひとりで……!」

普通の騎士でも、魔獣一匹を相手にするのが精いっぱいなはずだ。

しかしすぐに、その心配が杞憂だったことに気づく。

鋭い牙を剥きながら素早い動きで襲い掛かる魔獣に、騎士団の男は動かないまま、数振り。

エレンティアの目には見えない速さで何回か剣を振ったその男の足元に、魔獣だったものがぼとぼと、と落ちて血だまりを作る。

「あ……」

雪原の大地に広がる真紅の色を見て、エレンティアはそのまま気を失った。

***

「本当に、あんなところへ嫁ぐつもりなのか、エレンティア」

心配そうな顔で引き止め続ける父親に、エレンティアはにっこりと笑って何度目かの同じ返事をした。

「ええ、もう決めたの。お父様の心配はわかるけれども、あの土地をしっかり盛り立てて、お父様の得意先になれるよう、頑張るから」

「私が心配しているのは、そんなことではないんだよ」

富豪である大商人の娘、エレンティア。

彼女は莫大な持参金を持って、財政が破綻寸前であると噂されているアルスヴィーク伯爵へと嫁ぐことが決まっていた。

「私が今生きているのは、アルスヴィーク伯爵領の、闘狼騎士団のお陰なの。今このご恩を返さないと、一生後悔するわ」

「それは……そうかもしれないが、それなら今まで通り、私がいくらか援助をすればいいだろう。何もお前があんなところに嫁がなくても……」

「お父様。お父様は今までもそう仰って、何度かアルスヴィーク伯爵領への援助をしてくださったではないですか。それでもアルスヴィーク伯爵家の財政が良くなった、という報告は一向に入りません。これはもっと、根本的な話なのです。ただお金を入れれば良いという話ではないのです」

エレンティアとしては助けてくれた騎士本人に恩返しをしたかったのだが、騎士団に所属している者の功績は騎士団のもの、という理由で名前や階級などは教えて貰えなかった。

騎士団としては、魔獣の討伐も、領民や領地を訪れた者を守ることも、どちらも当たり前の話であるからと言って。

――だったら騎士個人ではなく、騎士団に感謝を捧げればいいだけの話である。

「しかし……」

可愛い娘を嫁にやるのに、エレンティアの父親が渋る理由はいくつかあった。

ひとつ、アルスヴィーク伯爵領はその広大な土地のほとんどが荒廃した寒冷地であること。

ふたつ、実際にエレンティアがその土地に出没した魔物に襲われて死にそうな目に遭ったこと。

みっつ、最近そのアルスヴィーク伯爵の爵位を継承した息子が、運営手腕が皆無だという悪評の持ち主だということだ。

こんなことなら三年前、エレンティアを自分の商いに同行させるのではなかった、と父親は後悔したが、今さら後悔したところで過去には戻れない。

エレンティアたち子どもが十歳の時から毎年、氷と雪の世界を楽しませるためにかの地へ足を運んでいたのだから、今さらだ。

爵位がないにも関わらず、貴族からの求婚も絶えない、美しく健やかに育ったエレンティア。

三年前の恩返しがしたいと言い出した結果、全ての良縁を断って選んだ結婚相手は、アルスヴィーク伯爵になりたてのぼんくら息子だった。

以前はギリギリでも辛うじて回せていた、アルスヴィーク伯爵家の領地運営。

それを一気に傾かせたと噂されている、張本人だ。

「お父様。心配しなくても、私は契約妻ですから。五年で領地改革を終えたら、また戻って参りますわ」

「そんなことをすれば、いくら白い結婚とはいえ、次の嫁ぎ先は後妻がいいところだぞ? あとで後悔したって、遅いんだ」

この結婚を提案したのは、アルスヴィーク伯爵家のほうではなく、エレンティアからだった。

自分の命を助けてくれた闘狼騎士団に恩返しをするためだけに、五年をアルスヴィーク伯爵領に捧げると決めた。

助け出されたあとのエレンティアを温かく迎え入れてくれた領民たちの優しさは、今でも胸に残っている。

しかし、援助したお金で闘狼騎士団や領民の暮らしが楽になったという様子は一切ないのだ。

「心配かけてごめんなさい、お父様。お金はいくぶん使ってしまうけれども、長い目で見た時、お父様にもメリットがあるよう、頑張ってくるから」

「エレンティア……」

寒冷地であるアルスヴィーク伯爵家の役に立てるよう、他国の寒冷地に足を運んではその領地運営を学んでいたエレンティアの姿勢を、覚悟を、父親は間近で見て知っていた。

可愛い娘には、それなりに裕福で問題のない家に普通に嫁いで、楽な人生を歩んでもらえればそれで良かったのだが、エレンティアが選んだのはいばらの道だった。

「お父様。決して損はさせませんから、私に賭けてくださいな」

「まったく、お前は……」

厳しい冬が終わり、雪解けの始まった頃。

エレンティアは、アルスヴィーク伯爵領へと旅立った。

***

エレンティア嬢へ

ようこそ、アルスヴィーク伯爵領へ。

これから領地改革を行うとのこと、領主代理として、期待しているよ。

君が現地にいる間、私は王都で、中央貴族の皆さんとの交流を図ろうと思う。

平民の君にはわからないだろうが、貴族は横の繋がりが大事だからね。

そういうわけで、私には活動費として毎月百ギルを送ってくれ。

仕事でわからないことがあれば、家令のウィンターに聞くといい。

夏にはそちらへ戻るつもりだ。

では、よろしく頼むよ。

リチャード

エレンティアは、家令から渡された手紙を読むと、頭を抑えた。

いやまあ、契約妻とはいえ、馬車から降りた時に出迎えたのがその家令と使用人たち、という時点で嫌な予感はしていたのだ。

いくら白い結婚とはいえ、結婚式くらいあげるのだと思っていたのだが。

「エレンティア様……大丈夫ですか? リチャード様が、本当に申し訳ございません」

家令のウィンターが、まるで騎士のように胸に拳を当て、頭を下げた。

実際、家令より騎士に向いていそうな大柄な体躯で、エレンティアが横に並んだら見上げなければならないほどだ。

エレンティアは、その大きな身体を小さくしながら申し訳なさそうにしているウィンターにかぶりを振って、にっこり笑う。

「ウィンターが謝る必要はありません。あなたのせいではありませんし、私なら大丈夫ですから」

家令であるウィンターが、領主の行動を止められるわけがない。

しかも、ウィンターは家令にしてはかなり若く、十八歳のエレンティアより少し年上のように見えた。

結婚式にかかる費用が浮いたと思えばいい。

その分、領地改革にまわす予算が増えるのだから。

そう前向きに考えながら、エレンティアはウィンターに尋ねる。

「春にリチャード様が中央へ行くのは、いつものことなのですか?」

「はい、そうですね。これからの時期は、魔獣が増えますから。領主はこれから対魔獣戦に備えて、年ごとに異なる防壁の補修や見張りの増員を指示しなければならないのです。それで、その……」

もしかして、それが面倒で中央に行くのだろうか?

それとも純粋に、魔獣が怖くて中央へ?

なんだかどっちもな気がする、と思いながら、エレンティアはウィンターに指示を出した。

「今までの対魔獣戦の資料があったら、見せてください。それと、実際の指示は誰が出すのかしら?」

「資料は執務室にございます。指示は騎士団長が出しますので、呼びに行って参ります。しかしエレンティア様、長旅でお疲れではないですか? 一度先に休まれたほうが……」

「これくらい、いつものことだから大丈夫よ。気遣ってくれてありがとう、ウィンター」

世間知らずのぼんくら伯爵だと聞いていた割に、部下には恵まれていそうだと思いながら、エレンティアはウィンターの案内で執務室へ向かう。

前を歩くウィンターの大きな背中を見て、昔助けてくれた騎士の背中を思い出し、エレンティアは気合を入れ直した。

そうだ、騎士団に所属していた彼へ恩を返すために、自分はここまで来たのだ。

夫が初日からいないことくらい、なんでもない。

「うわあ……」

たどり着いた執務室の机の上には、未決裁の書類が山積みになっていた。

どうやら、エレンティアがやってくることを見越して、リチャードが仕事を 残(・) し(・) て(・) お(・) い(・) て(・) く(・) れ(・) た(・) ようだ。

「右から緊急性と重要性が高い事案、緊急性が高い事案、重要性が高い事案、どちらにも相当しない細かな事案、と分かれています」

「ありがとう、ウィンター」

ウィンターは執務室の棚から対魔獣戦の過去資料と思われる物を引き抜くと、一番右の書類の束から数枚の書類を取り出す。

「こちらが過去十年の指示書と報告書の資料になります。そして今年の指示書がこの書類ですね。エレンティア様が目を通していらっしゃる間に、私は騎士団長を呼んで参ります」

エレンティアはウィンターに言われた通り、過去十年の指示書にざっと目を通した。

三年前から筆跡が変わっているが、それまでの七年分は、今は亡きリチャードの父親、前伯爵が指示したものだろう。

しかし、ここ最近の三年分も、先ほど受け取ったリチャードの手紙と筆跡が異なっている。

「エレンティア様、騎士団長をお呼びしました」

「はじめまして、奥様。闘狼騎士団の騎士団長をしております、ベルンと申します」

「はじめまして、ベルン。今日からアルスヴィーク伯爵領へ嫁いで参りました、エレンティアです。これからよろしくお願いしますね」

臣下の礼を取るベルンはウィンターやエレンティアより十歳ほど年上に見えたが、それでも騎士団を率いるには若いほうだ。

ウィンターやベルンなどの管理側に若者が採用されているということは、実力主義の効率的な人員起用はできているということ。

ベースは悪くないのに、なぜアルスヴィーク伯爵領の領地改革は進んでいないのだろうかと、エレンティアは内心首を傾げる。

「忙しいところ急に呼びつけてごめんなさい。早速、これからの対魔獣戦について相談させていただきたいのだけど、昨年度の指示書はベルンが書いたものなのかしら?」

「いいえ、私ではありません」

「えっ……」

てっきり現場の総責任者となるベルンが書いたものだと思い込んでいたエレンティアは、目を瞬く。

「それは、私がリチャード様に命じられて書いたものです」

「そ、そう……」

まさかのウィンターが名乗り出て、エレンティアは頭が痛くなってきた。

家令とは確かに、貴族における事務や会計の管理などを行うのが主な仕事だ。

他の雇い人を監督する責任者でもあるため主人を除けばその家の中で最上位の役職であることには変わりないのだが、この内容を家令に任せるのはリチャードの職務怠慢であるか、ウィンターが家の実権を握っているか、どちらかに他ならない。

「わかりました。ではあなたたち二人の力を借りたいと思います」

さて、ウィンターはリチャードに命じられるまま職務以上のことを任された哀れな家令なのか、それとも自分の改革を阻む伯爵家の実権を握る敵なのか、どちらだろうか。

「その年の積雪量や雪解けの時期によって、毎年領地を襲う魔獣の種類や数が変わることは理解出来ました。今年の書類を読むと、例年通りであれば今年は空からの進撃に対してより力を入れて備えなければならないようなのだけど、考え方は合っているかしら?」

エレンティアがそう続けると、ウィンターとベルンが顔を見合わせてから、「はい、その通りです」と力強く頷く。

「わかりました。では申し訳ないのだけれど、ベルンの考える理想の人員配置について先に意見を聞きたいから、意見書をまとめてくださる? 防壁の補修に関しては、ほかの決算書にも目を通してから一週間以内に予算を組みたいのだけど、それでも間に合うかしら?」

「問題ありません」

「ありがとうございます、奥様」

その後、対魔獣戦の話を三人で少ししただけで、エレンティアは理解した。

ウィンターはエレンティアに多少のアドバイスをするだけであり、かなり好意的かつ協力的。

そのウィンターに触発されたのか、ベルンも一気に心を解いてくれたようだ。

「奥様のお陰で、今年は多くの被害が出る前になんとかなりそうですね!」

「ええ、本当に。エレンティア様は以前この土地であれほど怖い思いをされたのに……よく我が領地へ来てくださいました」

「こちらこそ、領主に歓迎されていない妻なのに、受け入れてくださってありがとう」

たったこれだけのことで喜んでくれるのだから、よっぽど彼らの中で優先度が高く、重要なことなのだろう。

それもそのはず、対魔獣戦は領民の安全を確保する、大事な仕事だ。

エレンティアはそれから一週間、不眠不休でアルスヴィーク伯爵領の過去決算書と睨めっこをし続けた。

――そして。

「あり得ない……あり得ないわ」

過去資料を見れば見るほど、夫であるリチャードの人間性や品性を疑ってしまう。

一番は軍資金の横領だ。

エレンティアの実家が「騎士団や領民のために」として出した援助の大部分が、なぜリチャードの豪遊費に回されているのだろうか。

おかしいとは思っていたが、父親に渡された援助金運用の内訳と、実際の使われ方があまりにも違いすぎた。

こうして領内の実情を知ることができて良かったと、心から思う。

外から眺めているだけでは、全然わからなかった。

防衛費までがどうでもいい絵画の購入にまわされており、これでは領主が領地の治安維持の責任を放棄したとみなされてもおかしくはない。

逆に、今まで破産せずに持ったのが不思議なくらいだ。

ようはそれだけ、リチャードの代わりを務めていたウィンターの領地経営が有能だったのだろう。

しかしこのままでは、先はない。

とりあえずリチャードへの苦言はあとにして、目の前の問題にひとつずつ取り組んでいくしかない。

そのために用意した持参金なのだ。

三年かけて準備した品々や知識を駆使して、領地の基盤を整え、領力を蓄えていくしかないのだ。

「ウィンター、ベルン。これから物凄く忙しくなるけど、どうか協力をお願いします」

「かしこまりました、エレンティア様」

「もちろんです、奥様」

意気込むエレンティアに、二人は同時に騎士の礼をとった。

***

「まずは防壁の強化ですが。領民のみなさんが避難する必要もなく、安心して仕事に取り組めるよう、五年かけて、今の倍以上に厚くする予定です」

エレンティアは妻としてやって来た年の春、まずは騎士団の待遇を改善し、他領からの引き抜きなども実践して騎士団の人数の確保とその実力の向上に努めた。

「皆さんは魔獣と闘ったあと、死体は使える素材を剥ぎ取りほかは全て燃やしていると聞きましたが、これからは極力、氷漬けにして、そのまま持ち帰って来てくるようにしてください。隣国相手だと魔獣を一体丸ごと取引することで、素材だけの取引と三倍以上の価格差で取引ができます」

隣国にある魔獣研究機関。

彼らはわざわざ現地へ赴き、討伐した魔獣を回収してくる。

生態調査が目的ならともかく、そうでない場合くらいは研究機関へ直接搬入してほしい、と彼らはいつも愚痴をこぼしていた。

魔獣を氷漬けにすることが可能な寒冷地だからこそ、できる技だ。

運ぶのは、エレンティアの実家が仲介料を取ることで、喜んでやってくれるだろう。

この寒冷地に向かった馬車の帰りはいつもガラガラなので、荷を運んだほうが効率が良く金になるからだ。

それに、買い取るのは恐らく研究機関だけではない。

騎士団は各々の知識の範囲内で素材を剥ぎ取ってくるのだが、実は捨て燃やしていた箇所にも、貴重な素材が眠っている場合がある。

また、剥ぎ取りなどの仕上りも個人の技術や与えられた時間によって変わってくるため、より質の高い素材回収を自分の手でしたい、と考えている素材屋の人間も数多くいる。

「騎士団の実力を底上げしたら、魔獣が冬眠する冬の期間は討伐に困っている暖かい他領へ遠征に行きます。闘狼騎士団の実力が伝わることで、国中から憧れられる存在となり、騎士団に入団したがる人も増え、領地の活性化にもつながることでしょう」

身をもって騎士団に助けられたエレンティアは、闘狼騎士団の価値を知っていた。

今まで「田舎の騎士団」と馬鹿にする風潮が強かったが、その実力は対魔獣戦であれば、王都の騎士団よりも上かもしれなかった。

騎士育成が進めば、軍事拠点として、国内での重要度も変わってくる。

騎士団の行き来が増えれば、当然領地同士の交通整備が必要になってくる。

交通整備が整えば、必然的に騎士団以外の行き交いも盛んになってくる。

「同時に食料改革も進めていきます。干し肉や燻製、チーズに発酵酒、塩漬けや干し魚などの保存食産業に力を入れて、冬期の食糧難の解決と、遠征軍など越冬が必要な人たちへの商品化も進めていきます」

領地改革には、領民の協力が必要不可欠だ。

領民の理解を得るため、エレンティアは領主代理として広場へ赴き、毎週演説した。

「また、怪我などの理由で騎士団から退役せざるを得なかった人たちや希望者には、発掘の仕事も振り分けます。他国での話になりますが、これらの草が生えている地域では、希少鉱石が掘りあてられる可能性が高いのです」

いくつかの寒冷植物を見せたエレンティアに、小さな少年が「あの草見たことある!」と嬉しそうに指差して叫んだ。

エレンティアは、その少年ににこりと微笑む。

こうした知識を学ぶため、この三年は他国を駆けずり回っていたのだ。

「この草もまた、この領地にはありふれたものかもしれませんが、他国にとっては雪山薬草と言って、とても貴重な資源になります。山に生えているものは乱採すれば生態系が変わってしまう恐れがあるので、計画的に栽培できるかどうかを試していきたいと思っています」

それも、重要な収入源になるはずだ。

寒冷地でしか育たない草だから、他領との差別化を図れる商品になる。

エレンティアの熱く丁寧な説明に、実際に足を運ぶ姿。

領民と一緒になって試したり、喜んだり、泣いたりする、そんな彼女を支持して慕う者は、年を追うごとに多くなっていった。

……のだが。

「もう、三度目の夏なのですが。リチャード様は、いったいいつお戻りになるのでしょうか」

エレンティアは執務室でペンを走らせながら、隣で同じくペンを走らせるウィンターに愚痴る。

「もうそろそろ、リチャード様からの手紙が届くころかとは思いますが」

どうせきっと、今年の夏も戻らない、という手紙なのだろうとエレンティアはため息を吐いた。

最近、このアルスヴィーク伯爵領にとって、一番いらないものはリチャードだったのではないかという疑念さえ浮かんでくる始末だ。

とはいえ、ほかに後継者もいないのだろうから、戻って来てもらうしかほかないのだが。

二年後にエレンティアがこの地を去ったあとのことを考えると、眉間に皺が寄る。

昨年、無事に発掘できた希少鉱石。きちんと流通のことを考えて市場価値が下がらないように採掘しなければならないのだが、目先の儲けに囚われて乱掘したりしないだろうか。

騎士団を維持するために使っている費用を減らして、自分の好き勝手に使わないだろうか。

防壁が立派になったからと言って防衛費を削り、浪費や女につぎ込んだりしないだろうか。

最初に約束した百ギルを、翌年には二百ギルに値上げ指示してきた男だ。

あまりにもやりそうで、眩暈がする。

初年度の夏には帰って来ると思っていたから、そこから夫に領地改革を学んでもらうはずだったのに。

この三年間忙しすぎて、リチャードへの根回しが後手になってしまったことだけは痛恨のミスだった、とエレンティアはひとり反省する。

今年は帰って来てください、という内容を認めた手紙を冬の終わりに届けたのだが、春になっても返事はなかった。

「奥様、リチャード様からのお手紙が届きました」

「ありがとう」

エレンティアが悩みながらも執務を続けているところに、タイミングよく話題の手紙が届けられた。

そして急いで開封して中に目を通したエレンティアは、そのまま固まるしかなかった。

「リチャード様は、なんと……?」

「今年の夏も戻らないそうよ」

ウィンターの目に触れないように手紙を封にしまい、保管箱に投げ入れる。

エレンティア嬢へ

私の領地の運営がうまくいっていると聞いて、安心したよ。

君は平民だから大丈夫かと心配していたのだが、やっぱり女だからか、皆が良くしてくれているようだね。

ところで最近、ロザリー嬢と仲良くなったんだ。

伯爵令嬢のロザリー嬢が君のいとこだったなんて、知らなかったよ。

なんで教えてくれなかったんだい?

とても美しい令嬢で、私と君の事情を知って、大変良くしてくれている。

このまま彼女と協力をして更に中央貴族との人脈づくりに力を入れていきたいから、私の活動費は今年から三百ギルに上げるように。

そんなわけで申し訳ないのだが私もこちらでとても忙しく、今年の夏も戻れそうにない。

来年には戻れるよう、祈っておくれ。

リチャード

とうとうロザリーにリチャードとの結婚を知られてしまった、とエレンティアは眉を顰める。

エレンティアのいとこであるロザリーは、伯爵令嬢だ。

蝶よ花よと溺愛されて我儘に育った、一人娘である。

エレンティアの母は元々伯爵令嬢で、父との結婚によって平民となった。

よって母の里帰りのたび、エレンティアも母の実家である伯爵家にお世話になったものだが、ロザリーが何かにつけエレンティアの物を欲しがるので、幼い頃は困惑したものだ。

母の父母である前伯爵が亡くなった時にどうやら伯父や伯母が失礼なことを父に言ったらしく、母はそれ以来里帰りをすることもなく、父がしていた援助をやめさせたらしいので、以来ロザリーとも親交は途切れたのだが。

ロザリーだってもういい年だ、まだ結婚していなくても婚約者くらいはいるだろう。

しかし、なんでもエレンティアの物を欲しがる可愛らしいロザリーがあのまま大人になってしまっていたとしたら……波乱の予感しかしない。

まさか妻のいる男に手を出すわけがないよね、と思いたい。

契約とはいえ妻がいるのに、そのいとこに手を出すわけがないよね、と思いたい。

もしロザリーがエレンティアの夫であるリチャードを欲しがり、リチャードがコロリとロザリーに靡いてしまえば、自分はこのアルスヴィーク伯爵領のたった一人の大事な後継者を、まんまと他領へ譲り渡した悪妻になってしまう。

自分たちの間に子どもがいれば話は簡単なのだが、白い結婚である自分たちに、子どもなんているわけがない。

そもそもこの国では、領主が戦争などの正当な理由なく五年間領地を空けると、「領地を放棄した貴族に継承資格なし」とみなされ、爵位剥奪を言い渡される制度があるのだ。

万が一、アルスヴィーク伯爵位の第二継承権所有者がそれを理由にリチャードから伯爵位を奪い取ろうとすれば、白い結婚の契約妻にはもうどうすることもできない。

立派な貴族であり領主でもあるリチャードがその制度を知らないわけはないだろうから、当然五年以内には戻って来るだろう。

しかしそれでも、不安が襲い掛かる。

そこまで考えて、いや、待てよ、とエレンティアは思った。

もしリチャードがロザリーと結ばれようとする意思を見せたなら、むしろその伯爵位を狙う第二継承者に領地運営のノウハウを学んでもらったほうが、早いのかもしれない。

領民にとっては、もしかしたらそちらのほうが幸せかも。

もちろん、どんな人物かにもよるだろうが。

「エレンティア様、顔色が悪いですが、大丈夫ですか?」

じっとエレンティアの様子を見ていたウィンターが口を開いた時、今度はベルンが執務室の扉を叩いた。

「奥様、すみません! 急ぎで報告しなければならないことが!」

「ベルン、構わないわ。入ってちょうだい」

「東門上空に、ワイバーンが出現しました。それで……少しウィンター様を借りてもいいでしょうか?」

「ウィンターを?」

ワイバーンの出現で、なぜ家令であるウィンターの名前が出るのだろうと、エレンティアは首を捻る。

「はい。……えっと、ご存知なかったようですが、ウィンター様は六年前まで騎士団所属だったんです。当時は副団長でしたが、実力は俺、いや私より上です」

「えっ?」

エレンティアがウィンターを見れば、彼は少し苦笑いしながら「今はもう現役ではないから、力になれるかわからないですが」とベルンに言う。

「現役じゃなくても、いまだに俺より実力が上ってのが、本当に腹立つんですよね」

全然腹を立てていない様子でカラカラと笑いながら、ベルンはウィンターに一振りの剣を投げる。

どうやらウィンターの剣のようだ。

少し特徴的なその形状に、エレンティアは数回、目を瞬いた。

「怪我しないようにね、ふたりとも。気を付けて」

「かしこまりました」

ウィンターとベルンは失礼します、とエレンティアに一礼すると、執務室をあとにした。

そうか、ウィンターは元々騎士団所属だったのか。

だから、家令なのにあんなに屈強な体格をしていたのか、とエレンティアはひとり納得した。

***

エレンティアが嫁いで四年目にして、ようやくアルスヴィーク伯爵領は黒字化の軌道に乗った。

人口や収入は増える一方で、もうエレンティアの私財や持参金を充てることをせずとも、充分な蓄えができるようになった。

人口の増加に伴い、領都には新たな建造物が次々と建てられていった。

新たな建造物にはアルスヴィーク伯爵領ならではの鉱物をふんだんに使ったことで人を呼べるようになり、観光地化も進んだ。

ますます交通整備が進んで、エレンティアの実家を中心とした商人の盛んな流入により、領都の商業区は急速に拡張していった。

そして、夏。

エレンティアの元に、リチャードからの手紙が再び送られてきた。

手紙の内容は、リチャードとロザリーが愛を育み、ロザリーが子どもを身ごもったこと。

ロザリーが寒冷地に行くことは大変だろうから、リチャードが一人娘であるロザリーの伯爵家に婿入りすることにしたこと。

エレンティアの子なしを理由にした離婚届を同封するから、教会へ提出しておくように、とのこと。

領地運営はウィンターに任せて、自分に四百ギルを送り続けること、といった内容のものだ。

「……ウィンター。申し訳ないけれども、アルスヴィーク伯爵領の第二継承者の方を、屋敷まで招待してくれないかしら?」

「どうかなさいましたか、エレンティア様」

エレンティアが手紙を渡し、ウィンターはそれに目を通す。

そして手にしていた手紙を怒りのままビリビリに破く姿に、エレンティアは目を丸くした。

いつも穏やかなウィンターが、こんなに殺気立っているのを初めて見たかもしれない。

「私のために怒ってくれて、ありがとう。私は約束通り来年の春にこの地を去るけれども、このままだとアルスヴィーク伯爵領がリチャードに搾取され続けることになってしまうわ。それは、決して領民のために……私の命の恩人のためにならないと思うの。だから、できたら私に協力して欲しいのだけれど」

ウィンターはエレンティアに跪いた。

「アルスヴィーク伯爵領は、エレンティア様あってのものです。私は全面的に、エレンティア様に従います」

ウィンターの心強い後押しにより、エレンティアは、決意を固めた。

***

そして、次の年の夏。

「はは、これが私の領地か。悪くないじゃないか」

リチャードは、尽きそうな路銀を節約するために商会の馬車に乗せてもらい、なんとかアルスヴィーク伯爵領へと帰還した。

帰還して、ここが本当に我が領地なのかと、驚いた。

かつては人通りもまばらだった領都は、今や活気に満ちていた。

石畳の通りには商人の声が飛び交い、行き交う人々の姿が絶えない。

防壁は以前の三倍にも厚くなり、いつ魔獣に襲われるのかとビクビクしていた領民たちは、弾けるような笑顔を浮かべている。

かといって閉塞感があるわけではなく、十分な備蓄から生まれる安心感で誰もが自由で解放的な日常を満喫しているようだった。

こんなに住みよい場所になっているんだったら、さっさと帰還するのだった、とリチャードはひとりごちる。

ロザリーには騙され、散々だった。

同じ伯爵家だというのに、ロザリーの家の家計は火の車だったのだ。

リチャードに接触したのも、元々はエレンティア経由でその父母に援助を再開させる予定だったらしい。

しかしこの一年間、そのことには気づけなかった。

なぜならロザリー一家はこの一年間、エレンティアの実家やアルスヴィーク伯爵領からお金を借りて、贅沢な日々を送っていたからだ。

それは夏のはじめまで毎月きっちりと送られてきた自分の四百ギルなんかはした金だと言えるくらいの、金額だった。

それがこの夏、ピタリと止まった。

借金の返済がされなかったからだ。

ロザリーの家は借用書まで書いたというのに、身内だという理由で、借りた金を借金ではなく援助だと思い込んでいた。

一年後の夏になって莫大な借金だけが残り、彼らはリチャードの四百ギルを頼ってきたが、ロザリーの家への送金が止まると同時に、リチャードへの送金も止まった。

ロザリー一家の豪遊生活は終わりを迎え、伯爵位をエレンティアの家に売るしかなかった。

ロザリーは泣きついてきたが、その手を振り払ってリチャードは故郷へ一人帰ることを決めた。

貴族は男女ともに離婚後一年しないと再婚できないため、ロザリーとはまだ入籍していなかったのだ。

これはリチャードに運が味方をしていたとしか思えない。

ロザリー一家の借金を一緒に背負う必要はないのだ。

アルスヴィーク伯爵領に戻れば、リチャードが領主であることに変わりはないのだ。

久しぶりに戻ってきた屋敷の前で、門番に声をかける。

「おい、領主が帰宅したぞ! 迎えもしないで、何をしているんだ!」

すると門番は眉を顰め、「少々お待ちください」と言って、リチャードを立たせたまま人を呼びに行かせた。

「はあ、領主の顔もわからないなんて、なんて無礼で失礼な奴だ。お前はクビだ、とっととどっかへ行け」

しっし、と門番を追い払うような仕草をした時、門の内側から仲睦まじそうな男女が現れ、門を開けないまま格子の向こう側で、リチャードの前に立った。

「久しぶりですね、リチャード」

「あら、この人がリチャードなの?」

家令の着る服でなく、まるで貴族が着るような衣装を身に纏うウィンターを、リチャードは睨みつける。

「おい、ウィンター。お前、家令のくせに領主を呼び捨てにするなんて、どういうつもりだ? それにその美人は誰だ? とにかくさっさと、中に入れろ」

イライラするリチャードの前で、その二人は顔を見合わせた。

そして、ウィンターの隣に立っていた美人が、リチャードに向かって微笑みかける。

「私はエレンティアと申します。初めまして、リチャード」

「お前……! お前が平民のエレンティアか! ロザリーの奴、真っ赤な嘘をついて……!」

エレンティアの姿を初めて目にしたリチャードは、ロザリーに悪態をついた。

何が、自分よりずっと劣る、平凡で地味な女だと。

どこからどうみても、目の前の女は平民には見えない、男なら誰もがこぞって手に入れたくなる美しい女性ではないか。

「それで、爵位を剥奪された元領主様が、この地へなんの御用でしょうか?」

「……は?」

元領主だと?

この女は、何を言っている?

意味がわからずポカンと呆けたリチャードに、エレンティアは丁寧に言葉を重ねた。

「理解できないようなので、申し上げますね。今のアルスヴィーク伯爵領の領主は、先々代の息子であるウィンターです。あなたの次に継承権を持ちますから」

「いや、何を言っているんだ。私がこの地の領主だ」

「残念ながら、この国には『領主が戦争などの正当な理由なく五年間領地を空けると、領地を放棄した貴族とみなされて爵位剥奪を言い渡される制度』があるんですよ。元貴族なのですから、ご存じでしょう?」

「それはもちろん知っている、が……」

すっかり忘れていた。

忘れていたのは、領主代行をウィンターに任せたからだ。

元々の継承権は自分にあったにもかかわらず、リチャードの両親へ素直に爵位を受け渡した、執着しない、無欲な男。

だから、領地へ戻ればなんの問題もなくその座を譲ると思っていたのに。

ということは、自分は単なる貴族だというのか。

……いや、今この女は、自分にたいしてなんと言った?

「元貴族、だと……?」

蒼白になったリチャードに、エレンティアはニコニコとしながら説明を続ける。

「私とあなたの離婚ですが、理由は『私の子なし』ではなく、『領主による横領と領地放棄で婚姻関係の維持が難しい』という理由で 今(・) 年(・) の(・) 春(・) に(・) 申請させていただきました。ですからもうあなたは、爵位どころか貴族籍も剥奪されております」

「は? はああ!?」

その理由を申請するには、リチャードの五年間の不在と、エレンティアとの婚姻継続が必須になる。

だからエレンティアは、四年目の夏に出さなかったのだ。

一年間再婚できない、という制度を利用して五年目の春まで提出せず、さらに二人の間に不和が起きぬよう、現状の生活に満足し続けるよう、お金を貸し続けた。

「私はこの通り、離婚をした時点でアルスヴィーク伯爵家の生まれではないため継承権はありませんから。ですから、第二継承権を持っていたウィンターへ、必然的に伯爵位が譲渡されたわけです」

一年前の夏、その事実を知った時、エレンティアは驚いた。

ウィンターは、リチャードのいとこだったのだ。

元々ウィンターの母親は幼い頃に亡くなっていて、アルスヴィーク伯爵領の領主である父親に育てられた。

そしてウィンターの父親が魔獣との戦闘で亡くなった時、王都で騎士道を極めようとしていたウィンターをうまく言いくるめて、リチャードの父親が領主代理となったのだ。

リチャードはウィンターが戻ってきてもせっかく騎士として帰って来たのだからと言って領主の座を譲らず、代わりにその能力を発揮できるようにと騎士団に所属させた。

そして当時まだ領主としての実務をしたことがなかったウィンターも、叔父が領主になる話を飲んだ。

そして領主代理から領主となったリチャードの両親は、領主となったと同時に自分の息子が次の領主となるようあらかじめ手配をしておいたのだが、まるで天罰がくだったかのように、三年前雪崩に巻き込まれて亡くなったのだ。

両親という後ろ盾を失ったリチャードは、騎士団にウィンターがいれば武力行使で反旗を翻されるのではないかと怯え、ウィンターを家令に任命した。

自分との主従関係を明確にする辱めの意図も、大いにあった。

それは、ウィンターがエレンティアを助けた直ぐあとのことだった。

リチャードから仕事を丸投げされていたウィンターは、領地運営を実地で学びながら健全化に努めようとしたが、いかんせんリチャードの散財が酷すぎた。

しかし、エレンティアの実家からの援助があったお陰で、なんとか破綻ギリギリで耐え忍ぶことができていた。

そしてリチャードは、お金だけがもらえる楽な立場が欲しくてエレンティアの提案に乗り、領地運営という面倒事は二人に任せて自分は中央で遊んで暮らすだけ、という生活を謳歌することにしたのだ。

「……というわけでリチャード、お前には領主命令でこのアルスヴィーク伯爵領からの追放を言い渡す」

「は? 何を言っているんだ、ウィンター! お前、いとこの私を追い出すのか?」

ガシャン、と格子を握るリチャードに、エレンティアは首を傾げる。

「何を言っている、のはそちらです。領主は治安維持や居住許可の義務や権限があるのですよ。領地にとって暴動を誘発しそうな危険人物や……逆に領地放棄をして領民から恨まれている人間に対し、安全のために退去を命じるのも当たり前ではありませんか?」

にこりと笑うエレンティアの横で、ウィンターは「エレンティアは本当に優しいですね」と目を細めた。

その時ベルンと二人の騎士団がやって来たので、「そいつを領地からつまみ出せ」とウィンターは命じる。

「ま、待ってくれ! エレンティア、もうここはお前の居場所ではないだろう? 私と……私と一緒に、お前の実家に戻ろう」

「……は?」

門の格子を掴んだリチャードの手首を、額に青筋を浮かべたウィンターが掴んだ。

ごきり、と鈍い音が響く。

「うあああっ!!」

「ふざけるな。エレンティアは一年後、私の妻になる、大事な女性だ。二度と近付くな」

「お、お前、ずっと好きな女がいるって……! その女以外娶るつもりはないと、ずっと言っていたじゃないか!」

少しでもいいから、仲睦まじそうなふたりの絆を、壊したい。

そう思ったリチャードは、もう手の届かない相手を傷つけるために、最後に言葉で噛みついた。

しかしウィンターは、その言葉を慌てる素振りも見せずに難なく受け止める。

「ああ、その通りだ」

ウィンターはリチャードの目の前でエレンティアの腰を引き寄せ、もうほかの何も目に入らないような表情で彼女を見つめた。

「私ははじめて会った時から、ずっとエレンティアを慕っていました」

「……私を魔獣から助けてくれた時ですか?」

エレンティアが尋ねると、ウィンターは軽く首を振る。

「いいえ、エレンティアが商売人の父親と一緒に、この地を訪れた時からです。それから毎年、あなたがこの地を訪れることを、心待ちにしていました。王都の騎士団に所属していた時でも、あなたを一目見たくて、しょっちゅうお店に行ったんですよ」

どうやらウィンターは、エレンティアが十歳の頃から一方的に知っていたらしい。

「えええ……全然気づきませんでした……」

「騎士団の制服を着れば、みんな一緒に見えますからね」

楽しそうに話す二人は門から離れ、リチャードを振り返ることは二度となかった。

――それから一年後。

ウィンターとエレンティアは、領民たちに心から祝福されながら、盛大な結婚式を挙げた。

そして最盛期を迎えたアルスヴィーク伯爵領で、ずっと仲良く幸せに暮らしたのだった。