軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

81 ウラカルの憂鬱7

手をじっと見つめるエクスを怪訝に思ったのか、船員のお姉さんが声をかけた。

「エクス君?」

「いえ・・少し怖かったなと思いまして」

エクスが困ったように笑うと、お姉さんはそんなエクスに保護欲をくすぐられたのか、きゅーんと身をよじった。

(主人公視点に戻ります)

僕は震える手を見つめる。

以前の僕と違って言いなりにならずに威勢のいい事は言えたけど、結局は向けられた殺意と悪意の前に屈してしまった。

でも・・振り返ってみても何が正解だったのかが良く分からない。戦うべきだったか?いや、僕の魔法は手加減が出来ず使うと相手を殺してしまうし反撃されるかもしれないから、僕だけが我慢して犠牲になれば、誰も傷付かないですむ。

やはりこれが大人の対応で最高の結果を得たはずなのに、なぜだか心の底にモヤモヤが残った。

何でだろうか?

そんな僕の気持ちとは対照的に、ご機嫌な悪漢が近付いてきた。

「くくく、さっきは悪かったな、エクス。ひょろい癖に意外と気合い入ってるじゃねぇか。認めてやるよ、俺はウラカルだ。今日からは仲良くやろう」

なぜか彼の中で僕の好感度が上がったらしく笑いながら握手を求めてきたけど、認めてやるという上から目線に僕は腹が立った。

それにきちんと謝って貰ってない気がする。(背も)小さいとか言われるかもしれないけど構うもんか。

「・・・・」

ぷいっと無言で横を向くと、それが予想外だったのか彼は驚いた顔をして、行き場の無くなった手は気まずそうにプラプラと泳ぎだす。

「えっ!?」

つーん。

そんな態度じゃ仲良くしてあげません。

おおお、なんだかスッキリする。

さあ、その手を引っ込めてください。

ひっこめないの?

で・・・これは僕も予想外だったんだけど、ウラカルさんは一度出した手を引っ込め難いのかおろおろしだして少し可哀想になってきた。

・・・気まずい。

そろそろ許してあげるべきなのかな。ううん。悩む。探り合う2人。

僕も後に引けないんだよおおお。

「ウラカルとやら、エクス先生に近寄るでない」

そんな不毛なやり取りを終わらせてくれたのは、アミン様だった。まとわりつくような変な空気をズバッと切ってくれて助かります。ふぅ。

「わ、悪かった。近寄らないから」

そう言うウラカルさんも心なしか助かったって顔をしてるなと眺めていると、船員のお姉さんが笑いかけてきた。

「そうだ!エクス君。怖かったならスペシャルヒールをしてあげよっか」

「スペシャルヒールですか?」

言葉の代わりに迫ってきたのは揺れる双丘。

ちょっと予想してたけど、運動神経の悪い僕はやはり避けられない。だから、これは事故。

「分かってるくせに」

「わふっ」

ぎゅっと抱きつかれて鼓動が早くなる。

うぇぁああ、心地良い。

そして、快感の波と同時に微かな眠気の波が襲ってくる。この弾力・・なかなかではあるが、スライム枕には一歩及ばない感じか。

「んおおお。エクス先生に近寄るでないッ!!」

アミン様に強引に手をぎゅっと引っ張られてすぽーんと、スペシャルヒールを強制キャンセルされてしまった。

もう少しで眠れたかもしれないのに。

しかし、懐かしいなこのやり取り。

師匠の家に友達が遊びにきた時もこんな感じで手を引っ張られたな。

「女王、職権乱用なのでは?」

「煩いのじゃ、そんな事より、まずは襲撃理由を把握するのが先じゃろ」

それもそうかと皆の視線が、ウラカルへと集まると神妙に語りだした。

「今回のターゲットはエクスだ」

「ふむ」

そういえば・・なんで?

心当りが無いのに。

「エクスが子爵家で何かをやらかしたせいで、子爵が探し回ってる。領軍と森林警備隊の二大勢力が、街を上げてエクスの捜索だ。で、俺はその中の1人ってわけだ」

「依頼者は?」

濡れ衣だよ!

「森林警備隊の勇者イゼル」

「ほほう。・・・名前は覚えたぞ。妾を怒らせた罰で外交問題にしてやるのじゃ」

それに何だか話が大きくなってきたし。

耳を塞ぎたい。

「残念だが、俺はスラム民だ。あんたの所に俺か俺に似た首が届いて終わりだろうな」

「ぐぬぬ。・・・しかし、エクス先生。そこまで執着されるとはいったい何をやらかしたのじゃ?亡命するなら受け入れるぞ」

へ?2人の話を聞き入っていたら急に僕に話が振られてしまったけど、そんなの僕が聞きたいし。

「特には何も思い当たりません。あっ!将来的に執事にしてやると言われましたが、それをお断りしたからかも」

「うーむ。それとは違うの。それよりも子爵との関係を教えてくれぬか。何か秘密を握ったとか?」

アミン探偵の調査が始まったけど。

「秘密に心当りが無いです。それに僕は、子爵さまに言われて色々な物に初級魔法を掛けてただけの欠陥魔導師ですし」

ん?おや、もう分かったのだろうか。

秒速すぎませんか?

アミン様が、コイツやっちまったなという顔をして首を横に振ると、目の前の船員さん達も同じ顔をして大きな声がハモった。

「「それですよ!」」

「ひぅっ」

ドドドド。と、心臓が早鐘を鳴らす。

急に大きな声を出すからびっくりしちゃったんだけど。良かった、漏らしてない。セーフ。

連弩のように話し出すお姉さん方。

「エクス君の先進的な魔道具、無くなるとさぞ辛い事でしょうね」

「人間は一度上げた生活レベルは落とせませんから」

「私も、隣りの屋敷にずっと住みたいですもん。ぶっちゃけ国に帰りたくありません!」

リップ・サービスは嬉しいけど、なんだかとんでも無い事を言い出したので慌てて否定する。

「ええっ!でも子爵さまは、これくらい誰でも出来るぞ欠陥魔導師が。といつも言われてたんですが」

あれ?

「・・出来なかったんでしょうね」

「それで大慌てなんだ」

「街を上げて追いかけるとか、相当追い詰められてませんか。ダサすぎ」

そんな事は、無いよね?

「円満退職のはず」

救いを求めてアミン様を見ると、処置無しと両手を上げられた。

「帰ると監禁されるかものう。安心せい。その時は妾の国と全面戦争になっても必ずや救出しようぞ」

全然安心出来ないよ!!!

何を言い出すんだ。

そんなイカれた女王の笑顔に、船員さん達もヒートアップして乗ってくるし。

「エクス君っ、今度はお姉さんが絶対に助けに行くからね」

「飛行船の魔導砲で腐った街を消してやります」

「帰ってきたら結婚しましょう」

僕が街に帰ると戦争になるらしい。

しかも街が消滅して結婚。

え?本当に?

だ、騙されないぞ。

「それ、冗談ですよね?」

アミン様は真顔で言った。

「帰るかどうかは、よく考えるのじゃな。妾は亡命をお勧めするぞ」

マジかあ。

せっかく証明書を手に入れたのに、街に帰れないなんて。ちょっとお祭りに行っただけなのにコレだよ。

あぁーどうしようか。

そうだ!ルカと相談しよう。

一緒に来たんだし。

助けを求めて部屋に入ると、ルカが正座をしていた。

おウッ。

うるうるとこっちを見てくる。

「ウサギ様、もう許してあげたら?」

「エクスさんがそう言うなら。でも、その呼び方は嫌だわ」

うーん。

「うさ吉。・・・ってのは冗談で考えとくよ」

僕まで正座したくないし。

ゾワッと殺気が奔ったので言い直す。お願いだから、耳をピクピク動かさないで。

ウサギ様のお許しを貰って子鹿のようにぷるぷると立ち上がったルカに手を貸した。ひんやりとした小さな柔らかい手が気持ちいい。

くま吉は、むーむー言いながら拘束プレイを楽しんでいるみたい。ちょっと長くなりそうだ。程々にね。