軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

71 褐色幼女アミン1

ゴスロリ服に着替えたルカがリビングに降りてきたので、渋る御者さんを説得して、再びシープタウンへ。

町の中に入ると、テントから眠そうに這い出てくる人をちらほら見かける。

馬車で入れる部分まで進み御者さんと別れて、僕たちは大地へと降り立った。既に貰った地図はインプット済み。

人混みゾーンはルカが通れないから、気をつけてスタートだ。なんだかボードゲームみたい。

まずは、酔っ払い姉さんのところへソロテントを返却しに行こう。まだ開店してないらしく入口に返却して、ファーストミッションクリア。

朝は人が少ないのか割とイージーモードだ。午後になると人が増えてくるから難易度は時間とともに上がってくるだろう。

お次は本命の商業ギルドを目指して歩いてると、ルカに急に裾を引っ張られた。

「どうしたのルカ?」

「視線を感じる」

きょろきょろしてみたけど僕には分からなかった。

「くま吉、分かる?」

「おぅ、なんか感じるな。随分遠いが、女の気配だ。しかも複数に探されてやがる」

「悪い虫だ!」

もしかして、ルカの言うとおり僕を狙って?・・・これはモテ期ってやつだろうか。

あああ、ルカ達が変な事言うから気になってきたじゃないか。

僕に惚れてるらしい女の子に興味が湧き、きょろきょろと周囲を探してたらルカに背中をつねられた。言い出したのはルカなのに。くすん。

そうこうしてると、商業ギルドが見えてきた。特設された地図の前では、観光客がお目当ての店を真剣に探している。

うーん。どうしようかな?

戸惑ってると商業ギルドのお姉さんが声をかけてくれた。

「あら、ご兄妹かな。坊ちゃんは、観光?販売?それとも演者?」

「いえ、商業ギルドカードが欲しくて」

予想外だったのか困った顔をした後、優しそうに笑ってアドバイスをくれた。

「無くても大丈夫よ?」

「カードが欲しいんです」

この町の警備は、どんだけ緩いんだろうか。だけど、別に商売がしたい訳では無いので。

「あっ!フォレストエンドに行きたいんだね。確かに、あそこは証明書が無いと入るの面倒よねー。でも、ごめんなさい。今日は担当者がいないから発行出来ないの」

「そうなんですか。分かりました」

あっさりと僕が引くと、くま吉がひょいと出てきた。

「なぁ姉ちゃん。固え事言わずによぉ。そこを何とか頼むぜえ。むぎゅっ」

「くま吉、お姉さんを困らせないで」

「熊が喋った!?」

くま吉容疑者を逮捕。

「ふふっ手品ですよ。また来ます」

「そうなんだ。ごめんねー」

ふぅ。

一旦出直しかな。

少し離れた所でくま吉にお説教。

「くま吉、長居すると人が増えてルカが困るよ」

「すまねぇ、忘れてたぜ相棒。おっと!ようやくストーカーが尻尾をだしやがったぜい」

くま吉の言う方向に振り返ると見知らぬお姉さんと目が合った。本当にストーキングしてたらしく、びくっと過剰な反応を示して固まった。

悪い虫?

「エクス、エクス」

続いてルカが指を差す方向を見たら別のお姉さんと目が合った。見つかるとは思わなかったのか、きょどってる。

二人のお姉さんは頷き合うと開き直ったのか近付いてきた。やっぱり知らない人達だ。

ルカが警戒して僕の背中に隠れる。

「失礼。主が話があるのでお声を掛けさせて頂いた。悪いようにはしないので、ついてきては貰えないだろうか?」

ルカと顔を見合わせる。

返事は無いけど、任せるよみたいな感じだ。警戒心より好奇心が勝った。

「少しだけなら」

「助かる。お礼は期待してくれていいぞ」

誰に何を要求されるのだろうか。

僕の体?

ついて行った先には飛行船が停泊していた。げげっ、大富豪かお偉いさんらしい。知り合いを思い浮かべるけど該当者は0。

「飛行船じゃねえか。相棒、いってえ今度は誰を虜にしたんでい?」

「分からないし僕が聞きたいよ」

「むーっ」

むくれたルカを連れてドキドキしながら非日常空間の飛行船内へと招かれる。

案内された部屋には、豪華な椅子に座っている幼女がいた。ゴスロリ服を着た褐色のつるぺたの女主人に出迎えられる。

「よう来てくれた。歓迎するのじゃ」

「えっと?」

誰?

ごめん。ぜんぜん記憶にない。

ルカも初見らしく、怯えて僕の後ろに隠れてしまってるし。

「妾は、隣国アイアンの女王。ドワーフ族のアミンじゃ」

「僕はエクスです。極度の人見知りなのがルカ。喋る縫いぐるみがくま吉」

「クレイジーベアーと呼んでくれい」

名前も記憶に無い。

しかも隣国?

土妖精の女性は年齢不詳だ。性別不詳の人までいるし、とにかく多様性に溢れてる。

「ふむ。そういう事なら部下達を下げさせよう。これでどうじゃ」

「お気遣いありがとうございます。それで僕たちに何の用ですか?」

ロリババアは、恥ずかしそうに照れながら口を開く。

「実は昨日。偶然すれ違った時に目にしての。一目惚れしてしまったのじゃ!昨夜も夢に出てきてのう」

「なっ・・・」

それなら、分からなくて当然。

これは、モテモテ伝説始まったか。

気持ちの整理が追いつかない僕に、畳み掛けるようにロリババアは熱く語る。

「ところで、その新作は、どうやって手に入れたのじゃ?妾も見ての通りクレドルの熱狂的なファンでの。その鞄をお迎えする方法を妾に教えて貰えんか」

んん?

ロリババアの熱い視線の先を追うと、僕ではなくルカの鞄があった。ほほう。

たしか、ルカの立ち上げたファッションブランドの名前は《クレイジードール》だったような。

「・・・まさか。ここに呼ばれたのは、ルカの持ってる鞄が気になったからですか」

ぬおおおお。

そうだとしたら恥ずかしい。

「そうじゃが。部下から聞かなかったかの。言い値で買おう。その鞄を妾もお迎えしたいのじゃ」

がくっ。モテモテ伝説終了のお知らせ。

「・・ルカ?」

冷たい目でルカを見るとあたふたした。

「ご、ごめん。エクスはモテるからつい」

「そうだぜ、相棒。女の過ちは笑って流すのが大人の男って、ふがふが」

くま吉を笑顔にするため口を引っ張ってると、ルカが小さく耳打ちでお願いしてきた。

「あのね、エクス。最上グレードを紹介する条件はあえて伏せてるの。お金を出すだけでは駄目で、これはお客さまの教育も兼ねてるの」

「え?それを僕が伝えるの?」

ルカが、こくこくと頷いて期待と信頼の眼差しで見上げてくる。はいはい。

「こそこそと、なんなのじゃ?」

「えーと、アミン様。改めて紹介させて貰います。この子はルカ。彼女こそが、かのクレイジードールのデザイナーです」

アミンは、ガクガクと震えだした。

「な、なんと!?大ファンなのじゃ!サインを。どうすれば特注品を作って頂けるのじゃ。あ痛っ」

「お触りは禁止だぜえ!」

近付いてきたロリババアの魔の手を、くま吉がぴょーんと飛び出してピシャリと跳ね除けた。自称女王様に躊躇なく手を出すくま吉さんにハラハラする。

僕は咳払いして執事のように告げる。

「こほん。ルカは、自ら気付く事。お金だけではなく、お客さまの品格を見ていると言ってます」

お断りすると、縋るような目で見てきた。

「そんなあ。謎かけみたいな。それで、お主はいったいどういう関係なのじゃ?」

「えっ、僕?」

突然、水を向けられて戸惑う。

あーただの友達だけど。もしくは通訳かな?それとも執事。お兄ちゃん的存在。答えに窮してると、ロリババアが食いついてきた。

「ま、待ってくれ。当ててみせる。気付きじゃな」

「は・・はあ。どうぞ」

アミンは、正解の無いクイズを勝手に初めてうんうんと唸りだした。そして、カッと目を開くと、自信たっぷりに言った。

「彼氏じゃな!」

「えっ・・・」

違いますけど。

ドヤ顔されても。

否定しようとしたら、ぐいぐいとルカに服を引っ張られた。何なの?と見ると、興奮して何かを言いたそうだ。顔を近づけると小さく耳打ちしてきた。

「エクス、この子は合格。作ってあげてもいい」

・・・お客様の教育とはいったい。

「して、どうなのじゃ?」

「試験は合格。特別にお作りしても良いそうです」

ルカのよく分からない審査に合格した隣国の女王アミンは嬉しさを爆発させて飛び跳ねた。