軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7 没落の足音(子爵3)

夕方、呼びつけられた魔道具屋が子爵の館に顔を出した。

「いやーまさかまたお呼び頂ける日が来るとは光栄ですな。懐かしい。ラードリッヒ子爵家にこうして招かれるのも実に5年ぶりになりますか」

「そんな事はどうでも良いです。依頼した水瓶は持ってきてくれましたか」

執事は商人の顔など覚えていなかった。

「ええ、イエスマン様。これを機にシェアを取り返すため、今回は我社の自信作をお持ちしました」

「ほぅ、これはまた綺麗ですな」

つるつるとした美しい空っぽの水瓶を起動させると、なみなみと水が満たされた。

「なんと普通に使えば、中型魔石1個で、5週間も保つんですよ。5週間も!」

「5週間ですか」

執事はエクスなら屑魔石の料金で1年(52週間)出しっぱなしなのにと静かに失望したが、それに気付かない商人はドヤ顔だった。

「いやー、驚かれるのも無理は無い。我社の職人が頑張りすぎて。はっはっは。子爵さまの家で使われるならば職人の苦労も報われます」

「はぁ。これですが、水を出し続ける事は出来ないのでしょうか?」

この出来損ないで我慢してやるかと小さな注文をつけた執事に、職人は驚き鼻息が荒くなる。

「さ、さすがは、ラードリッヒ子爵家っ!庶民とは感覚が違いますな」

「そうですか。当然です」

いささか噛み合わない会話。

「出しっぱなしだと保って数時間でしょうな。うんうん。贅沢な事だ」

「な、なんだと」

今度は執事が驚く番だった。

「それでイエスマン様。魔石は如何ほどご用意しましょうか?なにぶん多すぎるので早めに言ってください。これは一大事業ですな、滾ってきました」

「詳細は追って連絡する。今日は帰ってくれ」

青ざめた執事が、商人を乱暴に追い返す。ありもしない大口契約の可能性にご機嫌な商人の後ろ姿を恨めしげに睨み、悩んでいたイエスマンの顔が明るくなった。

「そうだ!他の部屋からエクスの水瓶を持ってきて凌ぎましょう」

ようやく閃いたナイスアイデアにイエスマンが、ほっとしたのも束の間、玄関の灯りがぷっつりと切れた。

「なんて事です。また仕事が増えましたね。灯りも直さないと。あっ・・・あの灯りもエクスに任せていたような?」

執事イエスマンの苦悩が始まる。