軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

62 希望の光

おつかいを済ませた僕は、野営地を小高い丘へと変更した。

「ええー!?わざわざ郊外まで出るんですか?また入門料が要りますよ。はぁ、後でお祭りに行く予定だったのに」

「すみません。きっと後悔はさせませんから」

でも信じてくれなくて、さすがに御者さんはがっくりと肩を落としてしまった。

楽しさに満ちた光る町から、逃げだすように影を求めて脱出するのだから、そう思ってしまうのも無理は無いかも。

町を出ると、一転して寂しい雰囲気になる。

「はぁ。夜道の段差に気付かず馬を怪我させないように、ゆっくりと行きますので、夜飯は少し遅くなりそうです」

御者さんはがっくりとした声で、暗い夜道を馬車の先にランタンを吊るして、足元を探るように馬車はゆっくりとゆっくりと歩みはじめた。

「エクス、ごめんなさい」

車内ではルカが暗い顔をして、くま吉を抱いてしょんぼりしている。

前までの僕だったら一緒にしょんぼりしたのかも。

でも、もう違う!

「もしかしてルカは悪い事をしたとか思ってる?それは違うよ。僕は後悔してないし、ここにいる誰にも後悔なんてさせないから」

ルカの悲しそうな瞳に、小さな希望の火が灯った。信じて良いの?とゆらゆら揺れるロウソクのような小さな火のように。

「どういう意味?」

まるで、あの時の自分のような目。

僕は初級魔法しか使えない。

欠陥なんて言われた。

自分に自信がない。

でも、こんな僕にルカが勇気をくれた。

不思議な女の子ルーラが称号をくれた。

だから

今度は僕のターンだ。

まずはルカに役割をあげる。

貴女は特別なんだよと。

これはそういうメッセージだ。

「それに答えるためには、ルカ。銀色の布ってある?」

「え???あるけど?」

おっと、唐突すぎた。

「作って欲しいものがあるんだ」

「何を作ればいいの?」

えーと、どう言えば良いんだろう。

「くま吉サイズの魔法使いの三角帽子」

「え??それが今いるの?」

「いきなりプレゼントとか。照れるぜ相棒。やっぱり俺っちは輝いてるものが似合うからな。いいセンスだぜ」

くま吉がくねくねし始めたけど、あげるなんて一言も言って無いよ。

「うん。すぐに作って」

「わ、分かった。『ゴーストダンス』」

それは、初めて聞く魔法だった。

ルカのアイテムバッグから、するすると銀色の布地が出てきて魚のように空中を泳ぎ始めた。ただの布がまるで生きてるみたいに踊る光景は圧巻の一言。

「うわっ!?凄いよ。こんな魔法は聞いた事が無い。何これ格好いいっ」

えへへとルカが笑った。

「クレイジーベアーが布地だからか私の命題魔法は布と相性が良くて、ゴーレムは無理だけどお化けシーツの真似なら出来るの」

「そうなんだ!ルカは凄いね」

ルカにとってただの布切れは、人形にカテゴライズされてしまうらしい。反則なんですけど!

「『ソーイングマスター』貴方の格好いい所を見せて、クレイジーベアー」

「がってんでい!」

特殊バフで強化されたデザイナーくま吉が、ハサミを剣のように構えて舞うようにお化けシーツを切り刻む。

くるくると、ハサミを回してケースに挿入っ。

「どんなもんでい。お前さん綺麗だぜ」

お化けシーツの不要なパーツはまるで服を脱がされたかのようにバラバラと地面に落ちた。恥ずかしそうに空中で身をよじる裁断されたお化けシーツ。

くま吉が左手を天に挙げると、彼の周囲に糸のついた7本の針がふよふよと浮いて展開した。

「俺っちが新しい世界を教えてやるぜぇ!産まれ変わりやがれ、セブンニードル」

左手を突き出すと、まるで矢のように撃ち出された針が命中し縫いあげて、お化けシーツはくま吉色に染められた。

ルカの手元にぽてっと小さなトンガリ帽子が完成して落ちる。

「凄いよっ!ルカにくま吉」

すげぇぇぇぇえ。

予期せず良いものを見たっ。

「それで、こんな物どうするの?」

照れながら渡してくる帽子を受け取り、僕はほっこりする。

「さて、これからは手品の時間」

「手品?」

僕は大魔導師さまだ。

種も仕掛けも要らない。

僕には僕だけの初級魔法がある。

「さてさて、お客さま。ご用意して頂いたのは、何の変哲も無いトンガリ帽子」

じっとルカとくま吉が見る。

「ええ。それは知ってるけど?」

「僕は大魔導師エクス。今宵は2人に奇跡をお見せしましょう」

トンガリ帽子の先を持ち、横に持つとへにょりと曲がった。

不思議そうに見てる。

『シールドエンチャント!』

防御+1。

固くするだけの魔法。

今度は横に持っても曲がらない。

「エクス、固くなったね?」

だから何?って顔で見てる。

次の魔法で僕は世界を変える。

三角帽子の中に魔法をかけた。

『フラッシュ!』

「産まれしはネオランタン」

「???」

ちょっと時代を先取りしすぎたかな?革新技術は使うまで誰にも評価されないものだからと、ルカに手渡す。

「これで、向こうを照らしてみて」

疑問符を浮かべながら受け取ったルカが、ネオランタンを外に向けた。

ビカッー!

光の筋が槍のように夜を貫く。

不安の闇に閉ざされた遠くの景色が見えた。

空に向ければ夜なのに雲が見える。

暗かったルカの顔に光が戻った。興奮してあちこちを照らしてる。

「エクス、凄いわ。これ凄い!」

「相棒、やっぱり天才だ」

もうルカはさっきまで落ち込んでた事なんて忘れてしまったようだ。

尊敬、好意、感動、そんなキラキラと輝く瞳を僕にぶつけてくる。

ミッションコンプリートォォ!

僕は勝利して小さく拳を握った。

獲得報酬はルカの笑顔。