軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

57 ニトラ1

ショートカットしようと入ったスラム街の小道で、二人組の少女?が座って道を塞いでいた。

何をしているのか確認するよりも早く、その人影は僕に気付いて振り向いて声をかけてきた。

「あっ!串焼きのエクスお兄さん」

「もしかして御主人様ですか?」

「えーと、ニトラにライ姉。そんなとこで何してたの?」

ぴょこぴょこと嬉しそうに猫耳を動かす幼女がニトラで、保護者っぽいのがライ姉だ。

ライ姉は、病気を治すため《エルフの霊薬》をプレゼントして以来、なぜか僕の事を御主人様呼びをしてくる。

「元気ないのー?」

「ニトラがこのスライムを気にしてまして」

「マッドスライム?」

見れば泥と一緒に天日干しされくったりしたマッドスライムがいた。

こいつは、仕事を辞める直前の僕みたいに元気が無い。

「お兄さん。治してあげて」

「ニトラ、ワガママ言っては駄目です」

「たしかに元気ないね。大丈夫?」

声をかけると、ぷるりと反応した。

魔物だけど、なんだかほっとけない気がした。ニトラも心配してるみたいだし。

「分かった任せて」

僕はヒールは使えない。

だから、だいたいコレで誤魔化してる。

「サポート1」

元気になあれ!

サポート1万能説を提唱したい。

まぁ僕以外が使うと、子供が考えた最強魔法並に使えないんだけど。

バフ魔法が命中すると、くったりしたマッドスライムが急にぶるぶると震えだした。どうやら浄水魔法を連発してるみたいで汚水で出来た体が澄んだ透明な青色に変化していく。おおっ!

「お兄さん、すごいっ。色が変わった!」

「流石です御主人様」

「・・・お前、実はブルースライムだったのか」

マッドスライムとブルースライムは同じ種類だったなんて初めて知った。

「キュー♪」

嬉しそうに鳴いたスライムは、勢いよくジャンプした。

そして、そのまま溝にドボンッと着水!

びちゃっ!

うえっ!溝の汚水が飛び散ってしまい僕の服が汚れてしまった。

・・・。

興奮したスライムはそのまま、どるるるっと滑るように元気に溝の中を走り去っていく。スライムの通った部分は、まるで清流のように綺麗になっている。

なっているんだけど。

「くっ・・・スライムめ」

僕の服は汚された。

実は従魔になるかな?

なんてゲスな期待は泡のように消えていく。

これは汚れ損だ。なんて事を考えてしまった僕とは対照的に2人の歓声が上がった。

「元気になったー!」

「流石です。御主人様っ」

泥が跳ねた顔には、キラキラとした尊敬と興奮の輝きが宿っていた。

あぁ、汚れていたのは僕の服では無く、心だったのかもしれない。

浄化されるぅぅぅ。

いっそ、このまま消えてしまいたい。

「それにしても、すっかり汚れてしまったね」

微笑みながら声をかけた。

「あう。水冷たいです」

「くっ、御主人様の服に汚れが!あの恩知らずスライムめを倒してきます」

ニトラがへにゃとネコ耳を垂れ、ライ姉が拳を固めて闘志を燃やしだした。そういえば最近、寒くなってきたよね。

「いや、倒さなくて良いから。それより、汚れたなら僕の宿に来る?温かいお湯があるよ」

僕は、クリーンを使えないけど、お世話になってる宿はお風呂と洗濯機と乾燥機があるからね。ちょっとした自慢だったり。

「いいの?」

「御主人様、初めてですが頑張ります」

ニトラがびっくりした顔をした。

ライ姉はなんか変なリアクション。

彼女達も友人みたいなものだし、僕の魔道具(仮)を使わせてあげよう。

「良いよ、これからは毎日でも」

それを聞いたニトラが嬉しそうに尻尾を振り、ライ姉が恥ずかしそうにもじもじした。

「ありがとーお兄さん。お湯お湯♪」

「御主人様、嬉しいです」

こんなに喜んで貰えると嬉しい。

浮かれた2人を宿までご案内。

僕の魔道具(仮)を見せてあげたら大興奮してくれた。ニトラは尻尾をびたんびたんしてる。ライ姉は顔を赤らめた。

「すっごーい。お湯がどばどば出てくるー。本当に使いほーだいなの?お兄さんはお金持ちー」

「ありがとうございます。御主人様」

「ふふっ、遠慮はしなくていいよ。僕は大魔導師さまだからね」

調子に乗った僕はついつい口走ってしまった。

「大魔導師さま?」

「さすがは、御主人様」

「おっと、この事はナイショだからね」

危ない危ない。冗談を広められると困るので慌ててナイショ作戦に切り替える。

慌てて口を塞ぐ2人の仕草が面白い。

「さぁ、温かいお風呂に入ってきて」

その間、さくっと着替えて荷造りをすます。それにしてもルカは半日も待てないとか、困ったさんだな。

「ふわわ、天国でした〜」

「ご、御主人様。初めてなので優しくしてください」

2人が部屋に入ってきた。

ほかほかと上気した肌に、ふわふわのタオルが健康的だ。

「ニトラに、ライ姉。僕は、3日ほど用事があるから、帰るまではこの部屋を自由に使ってくれて良いよ。宿の人には話を通してあるし」

ニトラがびっくりした嬉しそうな顔をした。ライ姉もびっくりしてる?なぜか悲しそうだ。

「きぞく生活だ!」

「ご、御主人様??」

まぁ良いか。

あまりルカを待たせるわけにもいかないので、僕はバイバイとニトラに見送られて、足早に部屋を後にした。