軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41 俺たち森林警備隊1

―――エクスが、冒険者を引退してから1ヶ月が経った。

ついに切れだす。

長過ぎる効果時間が。

大森林で、活性化しだすモンスター。

森林警備隊の自慢の新型結界は、ただの頼りない柵に成り果てた。

元ギルマスの店では先進的な全設備が一斉に稼働停止。

子爵家には冷たい隙間風が吹抜ける。どうやら今年は大量の薪が必要になりそうだ。

「エクス君が来ないんだけど??」

今さらこんな悠長な事を言い出したのは、森林警備隊の下請けのエバソン。弱者には、めっぽう威張り散らすバーコードはげのクソ野郎である。

ちなみに彼が気にしているのは効果時間ですらなく、契約内容の事だ。この男、信じられない事に延長契約が切れた事すら把握していない。

振り返ってみると、エクスが退職の挨拶をしたのは親会社だったような?こんな下っ端が知らないのも無理はない。

とはいえ、契約はギルドと下請けエバソンがしているため、これに関してはエクスにも少しだけ問題がある。まぁ、悪いのは全て打ち切り報告の責任を漏らした受付嬢なのだが。

「なんで来ないんだ?あいつ。今まで私の仕事に遅れた事など1度も無かったのに、もう昼前だぞ!?さすがに遅すぎる」

エバソンは、先程から椅子に座って貧乏ゆすりをカタカタしながら今か今かと、エクスを待ち続けているが。

・・・エクスは30日前に引退している。

「あの坊主が来ないと不味い。非常に不味い。冷静に考え直せば、あんな仕事は誰にも出来ないのでは?いったい何時になれば来るんだ??」

しかも、来ない理由が山ほど思い当たるのも、ここまで彼が狼狽する理由の1つだ。

思えば文句を言わないからと、色々と押し付けすぎた。ぶっちゃけると全部押し付けていた。

さらに家で、女房にこき下ろされた腹いせで辛く当たった事も何度もあった。もっと優しくすれば良かったか。

「いやっ。私とエクス君の間には信頼関係があるから冗談だと彼も理解していてくれたハズだ。だから、ただの体調不良だろ。誰だ!私の可愛い孫請けを倒れるまで、こき使った阿呆は!!」

盛大なブーメランを全力で投げる。

ざっくり刺さればいいのに。

「いつもは、私が元請け様から受けた指示を伝えて、仕事をしたエクス君が書いた報告書を、私がチェックしていたのに」

パニックになり、立ち上がる。

そして、くるくる回るブーメランのように、椅子の周りをぐるぐると回遊し始めた。

時折、椅子は座るものである事を思い出すのか、立ったり座ったりを繰り返す。

「早く来てくれ。もう時間は無いんだ」

カチカチと針を刻む時計を恨めしげに睨みつける。

定例報告の時間は、とっくに過ぎていた。

「もう、これ以上待てないっ」

ようやく決断っ。

「とりあえずギルドに行って確かめよう」

エバソンは、冒険者ギルドに入ったものの。なんだか以前と比べて、お通夜のような雰囲気のギルドの空気にきょろきょろする。

一端外に出て、看板を確認。

やはり冒険者ギルドだな。

なにかあったのだろうかと気になるが、受付嬢を発見したので苦情をぶつける。

「いったいおたくのギルドは、どーいう教育をしているんだね?おたくのエクス君がまだうちに来ないんだが?」

「え??・・・エクスさんですか?」

何を言ってるんだ?と、受付嬢は目で語る。口も出た。

「はぁ〜っ。何を寝言を。エクスさんはとうの昔に辞めましたよ。1ヶ月も前に!」

冒険者達もエバソンを冷たい目で見た。

「「なんかやべーのが来たぞ。なんだ?あのウルトラ馬鹿は」」

受付嬢がそのざわめきに気を良くして書類作成を再開。

受付嬢がエクス退職の報告義務を怠ってるからこそ、エバソンがここに来てるのに素知らぬ顔だ。

・・・この女、強い。

「私は、森林警備隊の(下請けの)エバソンだ!お前では話にならん。ギルマスを呼べ」

「はあ??ギルマスは鉱山ですが?用があるなら鉱山に行ってください。というか行け」

真っ赤な顔のエバソンに、もうお前帰れよと無視して失敗依頼書の書類を書き始めた。はぁ何でこんなにあるんだろ?

「な、なん、何だと」

「それとも、何か美味しい仕事でも、ご紹介頂けるんですか!」

あまりに邪魔してくるハゲに受付嬢は逆ギレ発言をして机を叩くと、失敗続きの冒険者達の期待の目がエバソンに集まった。

「こ、こんな雑魚どもでは、話にならんっ!」

形勢逆転されたエバソンは喚いて冒険者ギルドを逃げるように後にした。

エクスへの仕事内容や支払い金額は常軌を逸していたと薄々気付いているからだ。あんな条件で請けてくれるような神人材はいない。

「とりあえず、元請けさまに報告しよう」

苦境に立たされた。

こんなの5年ぶりだ!と薄い髪を掻きむしる。

「エクス君、君はいったい何処に居るんだ??君と私の仲じゃないか、早く帰ってきてくれええええ――!!!!」