軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21 ホワイト王族は仲良くなりたい3

隠密へ継続調査の指示を出して秘密の部屋から出てきた爺やは、少し疲れた顔をしていた。

というのも、エクスの扱いに困っていたからだ。

働きたくないのであれば放置すれば害は無さそうだが、災害級の能力を秘めているのが問題だ。

言うなれば眠れるドラゴン。

下手に尻尾を踏んだら恐ろしい。

「・・ふぅ。ならば保護か隔離か。しかしながらその足掛かりがありませんな」

さて、どうすべきか?と考え事をしながら誰もいない廊下を歩く。

「何か悩みがあるのですか?」

ひょこっと天使が顔を出した。

いや姫様だった。

好奇心旺盛なキラキラ輝く青い瞳でじっと見つめてくる。

「うおっ!?・・・・姫様。いきなり声をかけられて爺やは寿命が縮みましたぞ」

「ふっふふー。良ければお悩みを聞いてあげますわ。私に任せてください」

不意打ちすぎて心臓がいまだバクバクいってる爺やは、迂闊にもうっかり相談してしまう。

「ありがとうございます姫様。実は分からぬ事がありまして。働きたくない者が欲しがるものとはいったい何なのでしょうか?」

「うーん。それは本人にしか分かりませんわ。例えば、女だから、男だから、などといっても同じとは限りませんでしょ。ご本人に聞かれてみては?」

そうでしたな。

悩みが軽くなりほっとする。

どうやら古代王国の遺物に頼り過ぎて当たり前の事を見逃すところでしたな。

姫様にお聞きして良かったと。

「姫様、ありがとうございます」

「いえいえ。では、さっそく聞きに行きましょう。その大魔導師さまご本人に!」

引っかかりましたねと笑う姫様に、爺やの背中に冷や汗が流れる。

あぁ、聞かなきゃ良かった。

「姫様、爺やは悩みが大きくなりましたぞ」

「これは異なことを。悩みとは分かち合うものですのに」

くすくすと笑う姫様にはとても勝てそうにも無い。

「やれやれ、近い内にエクス様との席を設けましょう。これがその資料です。事前に覚えておいてください」

「分かりましたわ。ふっふふー」

王族は、すぐには動かない。

先触れを出し。

案内人を用意し。

段取りを踏んで、日時を決める。

他にも、会場や料理に音楽その日着る服の一つまで、相手への計算が含まれている。

時に権威を見せつけ、時に親友のように、自然と望む結果を獲得するためだ。ゆえに、少々時間がかかる。わざとかけていると言ってもいい。

そんな大人の事情をすっ飛ばしたのは悪戯好きな子供だった。近い内という時間感覚が大人と子供でまるで違ったのが爺やの誤算。

隠密からの報告書を流し読みしたルーラ姫様の行動は速かった。

どれくらい速いかというと、すでに転送の間にいたりするくらい。速すぎる。

「座標指定、フォレストエンドにある別邸。大魔導師さま。今、お会いしに行きますわ!」

転移陣で指を高く上げ決めポーズをして、しゅおんと消えた。専属の護衛が慌てて後ろを追いかけるように続く。

爺やが、ふと最後の姫様の笑いを疑問に思った時には、既に出発なされていた。相談してしまった時点で勝敗は決していた。

「姫様?姫様、何処にいるのですか?姫様ああーーー」

「この辺りですわね?」

別邸で町娘の服に着替えた姫様は、きょろきょろしながら下町を歩く。

ふと、ぽやっとした顔の茶髪で黒目の少年?いや、青年が目にとまる。

その青年は、串焼きを抱えて路地裏を探すようにうろうろしていたからだ。

わくわく。

「あのー、何をなされてるのでしょう?」

「え、えっと、野良猫にご飯をあげようと思ってね」

もふもふを想像した姫様は、目をキラキラさせる。

「手伝ってあげますわ!」

「いや、えっと」

勝手に助手を申し出て路地裏に入っていく、少し高そうな服の少女をやれやれと少年は追いかけた。

「こっちの方にいる気がしますわ」

「分かったから、走らないで」

路地裏にお目当ての者がいた。

スリーピングキャットだ。

ただし青年の探していた相手ではない。

「早く早く」

「えっと、食べる?」

姫様が期待の目で見てくるので、青年は串焼きを白い長毛の猫に献上した。

すんすんと匂いを嗅ぎ、ふわぁと欠伸をしたスリーピングキャットは幸せそうに目を閉じてまた眠りについた。

「寝てしまわれましたわ」

「そうだね」

顔を見合わせていると、路地裏にお目当ての相手が通りがかった。

嬉しそうに近付いてきたのは、青年の探していたスラムの幼女。黒髪のボサボサ頭。しなやかな肉体。

猫の獣人なのか尻尾がふりふりと揺れていた。

初対面の姫様は置いてけぼり。

「あ、お兄さんだ」

「エクスだよ、はい。どうぞ」

「また貰っても、いいの?」

「良いよ」

「ありがとー、エクスお兄さん」

「ばいばい」

完全に2人の世界だった。

主人公エクスは、無職なのに猫幼女に貢いでいた。姫様にじっと見られる。

うっ。気まずい。

「もしかして、貴方は大魔導師エクスさまですか?」

「えっと。僕は欠陥魔法使いなんて呼ばれてるけど」

そう答えると、キラキラした瞳が曇った。

「ごめんなさい、実はこの不思議な魔道具をお作りになった大魔導師さまを探してて、同じ名前だったので、つい」

手に握りしめている棒を見ると、はて?何処かで見たような。

子爵さまに作らされた棒に似てる。

「見せて貰っても?」

「どうぞ。ふっふふー良いでしょう。涼しくて、とても軽いのですよ」

初対面の女の子がまるで自分の手柄のように自慢してきたのは、やはり僕の作った棒だった。

「作れるかも」

「!?」

僕がそう言うと、そのお金持ちそうな金髪の少女は慌ててアイテムバッグを漁り始めた。キラキラした期待の眼差しで見上げながら、高そうな細工が入った筒を2本差し出してくる。

「ウィンド、アイスボール!×2、はい」

受け取って魔法をかけたところ、どうやら期待に答える事が出来たようだ。

「やはり、私の見込んだとおり、エクス様は大魔導師さまでしたね」

「え、えっと?」

僕が大魔導師?

初級魔法しか使えないのに。

でも悪くない気分だった。

「探してましたの」

どこで僕の事を知ったか知らないけど子供には珍しいのかな?夢を壊してはいけないし、期待に答えてあげよう。

「よく気付いたね。僕が大魔導師である事は他の皆には内緒だよ。あと幼女に貢いでたのも内緒だ」

「はいっ!分かりましたわ」

僕は大魔導師になった。

あの子の中で。

ふふっ笑えてしまう。でも悪くないかな?今日の一日に満足する。

エクスとお喋りをしているうちに日が暮れて、城に帰ってきた姫様。

カンカンに怒った爺やが待っていた。

甘やかしすぎたと。

「姫様、今まで勝手にどこに行かれておったのですか!心配しましたぞ」

「ふっふふーそんな爺やにプレゼントがありますわ」

そう言って、ぽんっと渡された物を見ると、筒こそ違うもののあの謎の魔道具?だった。どうしてここに?

「これは、困りましたわ爺や。あー。エクスさまに借りを作ってしまいましたわ」

驚いて姫様を見たら、会心の笑みだった。

「確かに、困りましたね。王族が借りを作ったままにするわけにはいきませぬ。早速ご招待しませんと」

爺やも笑顔になる。

エクス接触への手掛かりを確保っ!

ミッションコンプリート!

どうやら、姫様の無断外出の件は見逃さなければならないようだ。やれやれ。