軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

195 偽勇者イゼルの死1

魔導車が止まり、呼出鈴の音が鳴り僕らは飛び跳ねた。

「ひゃい!」

ルカも我に返ったのか恥ずかしそうにくま吉で顔を隠してちらりと見てくるし。

この防音された魔導車の室内の変な雰囲気にあてられたのかも。

そんなそわそわした気分は、開かれた重そうな扉の扉の外から聞こえてきたざわめきで消し飛んだ。

目に入ってきたのは巨大な木のタワーに括りつけられた森林警備隊員たち。

「え?」

「相棒、どうやらここは処刑場のようでい」

集まっていた民衆の視線がタワーから僕らへとベクトルを変えて突き刺さったせいで、ルカのばたんと倒れる音が。

「ささ、勇者さまどうぞこちらへ」

「くま吉、ルカをお願い」

「がってんでい!」

すたたと降りてバタンと扉を閉めて勇者協会の信徒を睨む。

「家に送ってくれるって言ったのに、約束が違います」

「誤解です勇者様。勇者様に関する祝典なので興味があるかと思いまして、気を利かせ立ち寄っただけです」

なんか僕に関係しているような言い回しがひっかかる。

「祝典?」

「はい。もしかして連絡がいっておりませんでしたか。これから偽勇者たちを勇者様の火で浄化して真の勇者がフォレストエンドに誕生したことを民にあまねく知らしめる業火祭をします。そこで勇者様が自ら点火をご希望されるか確認したく停りました」

初耳だし耳を疑う。

「は?…まさか僕に人殺しをさせようと?」

「滅相もございません! 勇者様にそのようなことはお願い致しません」

そうだよねと胸を撫でおろそうとしたけど、んんぅ?

「えっと、それなら浄化ってどういう意味ですか?」

「裁きの塔に点火するという意味ですが??」

なんか脳みそがスライムになった気分だ。

「そんな事をしたら死にますよね?」

まるでモンスターと会話をしているような相手の貼り付けたような笑みを見て背筋が凍りつく。

「ああ、ご安心ください。彼奴は人に非ず。つまり勇者様が罪に問われるようなことはありませんので」

うあっ善意百パーセントの悪意だ。

上からの指令に何の疑い持ってないそんな目だ。

きっとフールもこんな人たちを裏で操る悪意に晒されたから魔王に堕ちたのかも。

バタンッという音がしてひょこっと出てきたのはくま吉。

「だめだ相棒。そいつの魂は囚われてやがる。言葉なんか届かねえ。無視して帰っちまおう」

「そうだね。僕たちは帰ります」

「分かりました!すぐにお送り致します」

急な手のひら返しにびっくり。

「・・・良いんですか?」

「はい、もちろんです。元よりその予定でした。後はこちらで処理しておきますのでご安心ください」

これは停まってくれて良かったかもしれない。

「えっと、説明をお願いします」

「失礼しました。この後の流れですが、勇者さまより託された不滅の炎で偽勇者たちを浄化します。といってもファイヤーボールは誰でも使えるので実際には何もしてもらわなくて構いません。そしてイゼルが退場し空席になった後は森林警備隊長になって頂きますが、その就任式の日程は後日お知らせします。あと欲しいものがあれば美女でも高級酒でも魔薬でも自由にお申しつけください。ささ、それでは家までお送りいたしますのでどうぞお戻りください」

なんか増えたし。

聞いて良かった。

つまり勇者協会は人殺しの罪を押し付けるだけでは飽き足らず、働かせるつもりだった?と、なんかこう限界を超えると笑えてくる。

決めた! ぜったいに助けよう。

勝手に誰かが死ぬのは知らないけど、僕が代わりに働かされるとか冗談じゃない。

「ふふっ」

「勇者様どうされました?」

にっこり笑う。

「分かりました!案内してください」

「おおっ!さすがは勇者様。お疲れのところありがとうございます」

ぶっつぶしてやると覚悟を決めた瞬間、後頭部にふわふわした衝撃を感じて吹き飛んだ。

あうっ。

なんで地面から見上げるとなぜかくま吉が仁王立ちしてるの。

「おうおう、いってえどうしちまったんだ相棒。こいつで目え醒めたか?」

あぁ、心配してくれたのか。

追撃コンボのつもりなのか。ふわふわしたお顔を密着させてきた愛すべき勘違い野郎にそっと耳打ち。

「馬鹿な騒ぎを止めてくる」

「!!!!」

すたっと立ち上がり、早とちりしてぷるぷる震えてる友人をフォロー。

「だからルカをよろしく」

「俺っちは俺っちは、信じる心を失ったどーしようもねえくそ野郎だ。頼む、気のすむまで殴ってくれ」

ううん、ちょっと口調を真似てみるか。

「くま吉、漢が小せえこと気にすんねい。だろ?」

「あ、相棒ーっ」

こいつに性別があるのかは謎だけど。

「こちらです。勇者様」

「はい!」

ふふっ、貴方達の悪だくみをぶっつぶしてくるよと、くま吉にこっそり合図を送って騒ぎの中心を目指す。