作品タイトル不明
190 魔王の要求1
魔王フールが怒りの形相で、大地を砕いた!
ブチ切れていた。
恐ろしい形相で何か叫んでいるようだ。
声は聞こえない。
「凄い怒ってる」
少し遅れてカタカタと食器が揺れた。
唐突に放映されはじめたレビジョンさんの映像が街の全員の注意を奪い全てを有耶無耶に。
「まだ生きてたんだ」
「たぶん外壁の上からの視点ね。魔物の数が減ってまた街に入れなくなったとこかしら」
「おっと見ねえ。 奴(やっこ) さんの肩が燃えてらあ」
楽しげなくま吉の声で映像を注視すると、自切したのか外したのか腕がない魔王の肩口が小さくメラメラと燃えている。
「凄い。エクスの火あれで消えないんだ」
「うん。僕が指定したのは本体だから腕を外しても意味はないよ」
ちょっと自慢。自然現象としては変な気もするけど魔法とはそういう類いのもの。
「旦那様。なんで魔王は地面なんか叩いてるんです?」
「それは僕にも分からない」
モグラ叩き?かなんて考えてると、ルカの口が引き攣ってるのに気づく。
「あのね、エクス。昨夜から弱火でずっと炙られ続けてるから·····拷問だと思う」
ライ姉がキラキラした瞳で僕を見た。
「凄いです!さすが旦那様、お仕置きがウルトラハードです。考えつきませんでした」
「うっ、わざとじゃないから」
「なあに、相棒。悪人に温情なんていらねえぜ」
ひいっ。突然、魔王に睨まれた。
ごめんなさい。
飛んでくるイシツブテが顔の横を通り過ぎる。
「うわっ!」
もちろん映像だけど真剣に見すぎてて少し腰を抜かした。
ルカもぎゅっと裾を握ってきたし。
ドキドキしながら見ていると、何か思いついたのだろうか魔王の隣りを飛ぶ小さな悪魔は落ち着きを取り戻して嫌らしく嗤った。
「何かするつもりみたい」
黒い煙がもくもくと出る。
そして何か語りかけて、画面が動揺するように揺れた。
「旦那様、今のは?」
「ルカ?」
「脅されたみたい。それ以上はまだ」
「俺っちにも分かんねえな。スモークっていうただの目くらましの魔法にしか見えねえが」
だが、脅しの効果は抜群らしく画面は激しく揺れて、焦るレビジョンさんの手が手帳に何かを書き始めた。
『魔王からの要求を伝えます』
これで良いかとのやり取りをしているのか視点が変わると、嫌らしく嗤うゼノが映る。
「ちっ、覗き見野郎が脅しに屈しやがったぜ」
要求を書き写す文字を見守る。
『火の初級魔法をキャンセルせよ
でなければ、
住人も同じく火炙りにする』
視点が変わり、炙られて苦悶の表情を浮かべるオークが映る。まるで、こうなるぞと。
「はっ、安い脅しだぜ。てめえは街の中に入れねえくせによ。話は終わりでい」
「待って、まだメモ書きが続くみたい」
ゾッとした。
『エクスの首を持ってきた者には
金貨1000枚を与える』
魔物のくせに金で殴ってきた。
ゾンビーズが悦んで裏切りそうと、かつての同僚が頭をよぎる。
「クイーン、二軍うさぎを守備配置して」
「任せなさいなルカ。オーダー防衛戦!!」
「旦那様、私。皆を呼んでから行きます!」
「さぁ相棒、さっさと主の部屋に避難でい」
走っていくライ姉の後ろ姿をぼんやり見てると、小さなひんやりした手が僕を掴んだ。
「エクスは大丈夫。私が護る」
「うん」
足早に離れの屋敷へと手を引っ張るルカが瑞々しい唇を尖らす。
「あの人ゆるさない」
「でも、レビジョンさんも何か事情があったのかも」
痛っ。強く握られた。
「エクスを危険に晒したのよ!·····エクス?」
僕は自分があまり大切ではない。
どん臭い。
初級魔法しか使えない。
虚弱で、背も低い。
だけど、ルカはこんな自分が世界で。
僕が居なくなるとくま吉が言葉を失い心の底から笑えなくなるのだろう。
不安そうなルカに詫びる。
「あーうん。そうだね。ごめん」
「分かればいいの」
自分を少しだけ大切にしようと思った。
そうしないとルカが泣いちゃうから。
「ルカ、ありがとう」
到着したので、余裕が出たので離してくれない手を見る。
「いいわ、わわわわ」
無意識で繋いでたらしく、気づいて真っ赤になってわたわたしだした。
うん、可愛い。