作品タイトル不明
164 スラムドッグス2
「まぁ、とりあえず入って待ってて」
「お、おう。良いのか?」
3人を家に招き応接間の豪華なソファーを勧めるとおっかなびっくり座った。
「ライ姉、ジュース出してあげて」
「はい。分かりました」
ライ姉に任せてプレゼントを受け取りに、ルカのいる離れに行くとダンダンダンダン!という菱目打ちで革に穴を空ける音が聞こえてきた。
どうやらブーツまで作っているようだ。
「お疲れ様、本格的だね」
「ふふ。私、役に立つでしょ?」
ご機嫌そうなルカ。
くま吉がサポートワンでパワーアップした二軍うさぎ達に指示を出して服が縫われていくのを眺める。
「ありがとう。そうだね?」
「もう。分かってなさそうだから教えてあげる。そうね。エクスは大魔導師になって変わった事は?」
急に変な事を聞かれて、戸惑う。
何も変わていないはず。
「何も·····。そういえば、失敗しても冒険者の人達に馬鹿にされなくなった気がするかも」
正解だったようで、ふふっと笑うルカ。
「良かったね。それが権威よ」
「権威?」
何の話だろう。
「世の中は不公平よ。例えば2人の人が同じ失敗をしても、下級兵士なら馬鹿にされるけど王族だとなぜか親近感を抱いたりするの」
「え?」
なんだ、それ。
「だから、最近のエクスは失敗しても逆に好感度が上がるの」
「信じられないけど、そうなのかな」
なんかやだ。
「それでね、私はあの姫様みたいに権威はあげられないけど、代わりに服なら作れる。良い服はね、着ることで権威を借りられるんだから」
「そうなんだ。例えば?」
ルカが視線を逸らした。
「·····冒険者ギルドで雇って貰えるとか」
「うーん。今は難しいかも」
おろおろしてちょんと裾を引っ張って上目遣いで見てきた。
「エクス」
「分かったよ。えーと」
ええっと、これは姫様の力を借りずになんとかして?かな、ルカ検定1級の僕はそう理解した。
次々と完成した服を持ってくる二軍うさぎとルカが期待の目で見つめてくる。
考えてるからちょっと待って。
「そうだ!知り合いの定食屋と雑貨店が人手が足りないらしいから今なら雇って貰えるかも」
「凄い、エクス」
嬉しそうなルカを見て僕も嬉しい。
二軍うさぎが箱詰めしてプレゼントは揃ったようだ。
「ルカのお陰だけどね。3人に渡しに行くから付いてきて」
「え?」
「くま吉も行くよー」
「おう、やっぱり俺っちがいねえと始まらねえよな」
困惑するルカを引っ張って連れていく。
喋れなくても、御礼は受け取るべきだと思うし。
箱を掲げた二軍うさぎをぞろぞろと引き連れて、待たせている応接間に着くと興奮した3人がいた。
「アニキ!ジュースって美味いなあ!」
「羨ましいぜ、こんな贅沢しているなんて」
「ご、ごちそうさまでした」
「ふふっ。毎日飲めるようになるかもね?このプレゼントがあれば」
目の色が変わった3人は、渡した箱を期待に満ちた顔で恐る恐る開けだして可愛い。
「「服だ!」」
普通に喜んでくれたみたい。
「ルカからのプレゼントだよ。どうぞ」
「良いのか?」
「なんだか貴族みたいだ」
「ありがとうございます。緊張します」
おうっ。なんと、その場で着替えだしたので、ルカとライ姉はびっくりして後ろを向いた。
「すっげえよ!触り心地がすべすべしてる」
「肌に吸い付くようで気持ちいい!」
「おおお、格好良い?」
確かに見違えるほど格好良いかも。
分厚い上着に、短パン、ブーツ。
「アニキ!これ買ったら幾らなんだ?」
「俺も稼いだら追加で欲しい」
「ええ、次はちゃんと買いたいです」
食い気味に聞かれたので、ルカをちらりと見て口元に耳を近づけて教えて貰うと、息吹がくすぐったくてぞくぞく。
「えっと。値段を付けるなら、ひとり大銀貨2枚くらい?」
「え!?」
高いとは思ってたけど、ちょっと引く。
「アニキ?」
「あー、うん。心して聞いて欲しい。それはプレゼントだけど、値段を付けるなら、ひとり大銀貨2枚だそうです」
ピシッと固まった。
カチコチ。
「えっと、鉄貨なら?」
「·····ひとり2000枚」
あー、分かるよ。
僕も思わず敬語になる値段だ。
「「うあぁぁぁぁあ」」
たぶん彼らの年間収入を超えていて、そんな彼らを、くまが容赦なく追い込む。
「おうおう、何をそんなに驚いてるんでい。主のブランドならこいつは適正価格だぜ?」
「くま吉それぐらいにしてあげて。あー、もちろんお金はいらないよ」
ルカがこくんと小さく頷く。
少年たちが安堵の顔を浮かべお互いを見つめて頷くと、騎士っぽいポーズで膝まづいてきた。
「ルカ様!我らスラムドックスは、ルカ帝国に忠誠を捧げます」
「捧げます!」
「捧げます」
ルカが、わたわたして僕の背中に隠れたけど、なんだこれ?
ウラカルさんがスラム帝国だからルカ帝国なのだろうか?
くま吉だけが軽快に動く。
「おぅ、おめえら気合い入れろよ」
「「はいっ!」」
なんか知らないけど、ドン引きだよ。
うへあって顔でルカを見るとむうって怒った顔で背中をつねってきた。
「痛っ!」
僕のせいじゃなくね?
「エクスのアニキ?」
「何でもない。えーと、これから仕事を紹介してあげるからみんな付いてきて」
嬉しそうだね?
「「ありがとうございます!」」
なんだろう。
仕事を押し付けたら喜んでくれて複雑な気分だ。