軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15 ホワイト王族は仲良くなりたい1

ラードリッヒ子爵とは別方向。

闇夜を疾走る王族仕様の豪華絢爛な馬車の揺れる室内で、同乗した爺やは凄く困るモノを見てしまった。

「姫様、それは?」

「ふっふふー良いでしょう。涼しくて、とても軽いのですよ。ラーなんとか子爵に貰ったの!一つはお姉さまにあげますの」

ご機嫌な姫君が、得体の知れぬ魔道具をぶんぶんと振り回す。

天真爛漫に笑うのは姉妹達と年の離れた御年12才になる踊るような金髪の末娘ルーラ。理知的な顔立ちで鑑定能力も持たれているため、このような街に目に留まるようなモノなどないと油断していたのを、何者かに突かれてしまった形になる。

「ほっほ。どれどれ、爺やにもよく見せてくださりませぬか」

「良いですわ、次は爺やの分も貰ってあげますね」

相好を崩しながらも、2つのうち渡された一つを危険物かどうかを素早く危険度判断魔法「スカウター」を無詠唱で唱え確認。

《危険度1》

安全。警護のチェックをすり抜けてしまった理由が分かってしまった。

涼しい風が出ているだけの見た事もない魔道具はどうやら危険では無さそうだが、やはり底しれぬ違和感が拭えない。

「爺やもこの品の素晴らしさが分かりまして。この品はとても不思議なのです」

やはり姫様も底しれぬ違和感を感じておられたのか。

「どう不思議なのです?」

「ふっふふー」

残念ながら、教えてくれるつもりはないようだ。びっくりさせてあげますわとくりくりした目が語っている。

「このままでは爺やは気になって寝れそうもありません。姫様、寝ている時にお借りしても。2本とも」

「もう、爺やは欲張りですね。姉さまにあげるので壊しては駄目ですよ」

もう十分驚かされましたと不審物をようやく回収し、やっと胸を撫でおろした。

「ありがとうございます、姫様」

お願いですから、ご老体を大切にしてくだされ。

帰るなり王立魔法技術研究室に直行した爺やが、ぼさぼさ頭のひょろりとした若き天才職人ヘルマンを前に愚痴る。

「ラードリッヒ子爵め、全く掟破りをしおって。油断も隙もない。これが夜会でルーラ様に直接渡された謎の魔道具だ」

渡された筒の中を不思議そうに見る職員。どこにでもありそうな筒の中には、小さな球状の透き通った氷がいくつか詰まっており、その隙間を風が通り抜けている。

「へえ、これがその新型魔道具ですか? そんなしきたり私も知りませんでしたし成り上がり貴族なら知らないのでは?」

「貴族なら知っておかねばならん。それより何処の工房の誰が作ったかを早急に調べてくれ」

天才職人の目が新しい玩具を手に入れた子供のようにギラギラしだした。専門家でも相当に珍しいタイプのようだ。

「これ?恐ろしく軽いですね。何だこれ???分解しても」

「姫様に怒られるからやめてくれ」

ぶつぶつ言いながら、色々な専用器具で調べだした職人を爺やは見守る。

「筒型に削った魔石に直接、術式を描き込んでんのかな?悪魔の術具か。いや、使い捨ての特級遺物の線も?」

次第に職人が青ざめ始めた。

頭を掻きむしり、うーうーと唸りだす。

「ど、どうした?」

「無い。どーなってるッ 有るべきモノが何処にも無いんだ!なぜ?」

焦るあまり机の上の書類を漁ったため、試験管がガチャガチャと音を立てて倒れて中の薬品が溢れて書類をピンクに染めていく。

爺やは、思い当たった事があり、言いにくそうに権力者の闇を語り始める。

「あーあまり褒められた事では無いが刻印を打たん事はある。あの成り上がり貴族は愚物かと思ったが、刻印が無いという事は完全なお抱え魔道具師だったか。となると今夜の件は牽制?挨拶か」

「違う」

見当違いの語りに職人には顔をしかめた。

老人に対してではなく、若き天才という自尊心を傷つけられたからかもしれない。

「なら、何が無い?」

「術式が無い。それどころかエネルギー源の魔石すら無い!!!どーなってんだよッ」

あまりの内容についていけない老人。

丁度、鑑定装置が結果をロール紙で吐き出した。ビリッと破って中を読むと、アイスボール(LV 1)ウィンド(LV 1)とだけ書かれている。どういう事だ?

長考。待ちきれなくなり爺やは問う。

「つまり?」

「これは我々の知っている世界の魔道具ではない。アイスボール(LV 1)ウィンド(LV 1)が宿る構造体。私に言えるのは、残念ながらそれだけです」

翌朝、姫様にその話を報告するとあっさりと答えが返ってきた。

子供の柔軟な発想ゆえに正解へと辿り着く。

「爺や!それは永く効果がある初級魔法ですわ。きっと正体は大魔導師さまです」

「さすがに姫様。それは、いささか違うのでは?恐ろしく高度な魔法を、物凄く幼稚に使っておりますゆえ」

姫様は小首を傾げた。

「なら、誰かにお願いされたのでしょう」

「そうかもしれませんな。そろそろ食事に参りましょうか」

くるっとターンすると、スカートがひらひらと揺れた。

「ええ、お姉さまをびっくりさせますわ」

にこにこと笑う爺やは、ラードリッヒ子爵の裏に大魔導師がいる可能性が急浮上したため、今後の対策で頭が一杯になっていた。

まずは、身辺調査からせねばと。出来るなら味方に取り込みたいと。

食堂では楽しげな会話が響く。

「お姉さま、実はプレゼントがありますの」

「まあ!どうしたの?ルーラ」

結局、謎の魔道具は、お姉さまが遠慮してお母さまのものとなった。

ルーラはエクスの魔道具(仮)の冷たい風を浴びながら想いを馳せる。

「・・・ところで、大魔導師さまは、どんなお人なんでしょう?」

お髭のお爺さんなのか、魔女なのか、それとも格好良い青年なのか、はたまた人外の妖精族なのか。

少女は華美な絵本を眺めて夢想する。