軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

149 イゼル1

屋敷に戻り試乗会は終わった。

「延長解除」

ガラガラと崩れ元の廃車に。

セーラの顔が赤らむ。

「少年、私はドキドキしてきたぞ。これが噂の恋なのだろうか?」

むっとするルカの横でエクスは微妙な顔。

「事故を誤魔化した罪悪感だと思います」

「そうか。恋では無かったのか。ううん」

絶対に恋だと思ったけど悪い子になったルカは、素知らぬ顔でエクスの手を引っ張り屋敷へ戻る。

「しかし、あの像って誰なんだろう?」

世俗に疎い3人は首を捻った。

□□□□□□□□

壊れたイゼルの像。

実際のご本人は会議中に、中央広場の記念像が何者かに壊されたと報告を聞き、怒りのあまり部下を睨んだ。

「スタンピードも起きていないのに、何故壊される!?」

「豪華な馬車が突っ込んだそうです」

己の不幸を嘆くイゼル。

「いったい、どこの馬鹿だ?行って、すぐに捕縛しなさい」

「はいっ」

慌てて駆け出した部下の背中を見つめ、渋い顔で会議を再開。

議題は、新型結界の再稼働について。

つい先日、領軍が不法に鍵を壊して、労働者を逃がすという事件があったから。

「しかし、このような緊急時に私怨で足を引っ張るとは、領軍の馬鹿共が」

「まさに仰るとおりです」

やり方に問題はあるが、イゼルは街を護っている。

「スラム民が逃げた原因は?」

「領軍が解放するのを想定しておりませんでした」

間抜けな部下をギロリとひと睨み。

「では、なぜ想定から外れたのか?」

「はっ!衰弱したスラム民を保護したとの事です」

頭を捻ったイゼル。

「たしかに死なれても困るか。では、職工ギルドに、最低限の居住環境と脱出不能な門を作らせなさい」

「それが、その・・・資金がありません。金庫は空で、手形もその・・・」

結論。

「ううむ」

「領軍が悪いのですから、この責任はいつものように領軍に押し付けましょう」

そんなおり、帰ってきた。

捕縛に行かせたはずの部下が。

「吉報です!誤報でした」

「そうか」

イゼルがほっとした。

「どうやら、エクス大魔導師の手品だったようです」

「なんですと?」

得体のしれない違和感が首筋をぞくり。

「粉砕された記念像がカモフラージュで元通りになったとか。しかし、なんで手品なんかしたのでしょうか?」

心に疚しい所のある者は存在しない恐怖に怯えるというが、イゼルも例外では無かったようで手が震えていた。

「まさか?我らの不甲斐なさに、エクス大魔導師が怒っている?これは警告か」

「うっ・・・。戦わないなら記念像のように 殺(ばら) すぞ?というメッセージだと愚考致します」

本当に愚かである。

当のエクス本人は、反省しているなんて思いつかないようだ。

「仕方ありません。資金調達のため、身銭を切りましょう」

「は、はい」

イゼルが高そうな指輪を外し、財布も投げた。

「むろん私とて例外ではありません」

「はい」

これは、納得せざるを得ない。

静かな室内では、貴金属を外す音がして、別れに涙する隊員も。

「これは初任給で買ったんだ」

「俺なんかまだローンが残っている」

「ううっ、フールめ」

副長が名残惜しさから発言を変えてくれないかと、おそるおそる疑問を投げかけた。

「資金を作り外壁を牢獄に改造しても、肝心の労働者がいませんが」

「ああ?何を言っている?」

「失礼しましたッ!すぐに勤務表を作成します」

ビシッと敬礼して、ようやく本来の仕事に。

そうだ!お前ら森林警備隊の仕事はなんだ?

イゼルの顔も責任感に燃えて、

「・・・待ちなさい」

いない!いないぞ!

「え?」

悪魔のように嗤う。

人情を排し、合理的に考えれば辿り着く考え。

「もう少し頭を使いなさい。仕上げの際に、職工ギルド員を耐久テストと騙して閉じ込めればいいでしょう」

「なんと!そのような手が」

あってはいけないのだが、部下は感銘を受けた。どうしようもないな。

「フールのほとぼりが冷めたら、逃げ出したスラム民を敵前逃亡罪で捕縛して、入れ替えれば済みます」

「「おおっ!流石」」

恐るべき計画を立てるイゼル。

この男、悪魔!