軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

130 キノコ狩り1

緊急防衛クエストが出ているため、門の近くは冒険者とスラムの住民で溢れていた。

ぎゅっと裾をつかんだ人見知りのルカを真ん中にニトラとライ姉で挟んで隊列を組み先頭を歩いてエスコートする。

「大丈夫だよ、行こう」

資材を運ぶ彼らとすれ違う際に、ざわざわと噂される声がするが全てスルー。

「エクスだ」

「本当だ、久しぶりに見たぞ」

「もしかしてバフ魔法をかけに来てくれたのかな?」

残念ながら僕はもう辞めたので。

ノーサーポートワンで通り過ぎると悲しそうな顔をされるのが辛い。

「エクス先生!わあ、エクス先生だ!」

さすがに足が止まった。声を掛けてきたのは、嬉しそうなスラムの人達。

「エクス先生!オラ達、森林警備隊から仕事が貰えたんですよ」

「そ、そうなんですか」

「先日は仕事ありがとうございました!お陰様で久しぶりに腹いっぱい食べられたんです」

「それは良かったですね」

「婆やも死なずにすみました」

「本当に良かったです」

重い会話だな。ルカなんて震えながら背中に隠れてるし。

「ところで今日は一緒の仕事ですか?」

「いえ、僕たちは依頼は受けていないので、個人的にキノコを採りにきただけです」

そう答えると露骨に舌打ちをされた。

もちろん彼らでは無くて、えっと誰だっけ?ゾンビーズの取り巻きにいた冒険者だったと思うんだけど。

無視して行こうとすると、逃げたと取ったのか今度は大きな声で絡んできた。

「あーあ!街がピンチなのに、防衛依頼も受けずに呑気にキノコ狩りしてる奴がいるぜー」

「あのですね、良いですか!僕は冒険者を辞めたのでそんな義務はありません!」

カチンときて否定すると、ツバを飛ばしてきた。

「うっせえぞ。そもそも、てめぇが辞めたせいで、受付嬢さんが誰も代わりに出来る人がいませんって嘆いてんだぞ。アリエスちゃんだって埋め合わせ出来ずに困ってた。俺も連撃剣が出せなくなって困ってる。つまり、てめぇは皆に迷惑かけてんだよ」

「うぐっ」

痛いところを突かれてたじろいでいると、くま吉が吠えた。

「おうおう、おめぇさんは、脳みそゾンビなのか?」

「なんだあ?この喋る縫いぐるみは」

「さっきから聞いてりゃよ。自分達は無能です。だから助けてくださいって、相棒に泣きついてんのか?」

「ち、違う」

「違わねえだろ。バカなのか?助けて欲しいなら言い方ってもんがあるだろうがよ」

「頼んでねえよ」

「なら、いってえ、さっきのはどういう意味なんでい?俺っちにも分かるように教えてくんねえか」

「うんぐぐぐ」

この人は助けを求めていたのか?

ただ、くま吉も煽りすぎたらしく、周りで黙ってそれとなく聞いてた人がくすくす笑いだした。

ほら、顔を真っ赤にして。あー、やっぱり剣を抜くんですね。銀色が太陽を反射し、見守ってた人が息を飲んだ。

「てめぇ、くそ雑魚のくせに!良いか、俺は冒険者の責任から逃げたお前の代わりに街を守ってやってんだ!」

「うるさいな。だから何?」

イライラして、バチンと留め具を外して新武器を構えて応戦する構えを見せると、たじろいだ。

まさか僕を反撃しないサンドバッグとでも思ってたのだろうか?

「退避ー退避ー!」

遠くから声が聞こえて初めての決闘はお開きに。

必死の形相の人々が、こちらに向かって逃げてきてそれどころじゃなくなったからだ。

「逃げろ!ジェネラルオークが出た!みんな早く門まで走れえええ」

目の前の冒険者は足をガクガクしながら、応戦するか逃げるかで迷ってるみたい。スラム民達が逃げだし、その背中を追って逃げだした。

これでルカの行動不能が解けたようで、真剣な表情で見つめられた。ぷるぷると艷めく口が震えながら小さく動く。

「エクス、助けてあげて」

勇者になれ。

人形姫が求めるなら、僕は雷剣の勇者になろう。

「分かった! くま吉、ルカを頼んだよ」

「がってんでい。ここは任せろ相棒!」

逃げてる人の方へ向かって本気で逆走。すれ違う人のせいでめちゃくちゃ足が早くなった気分だ。

「うあああっ」

叫ぶ僕を見て、すれ違った人が驚いて足を止めて振り返る。

「逆走した奴がいるぞ」

「今のはエクス!?なんでここに」

「おいっそっちは危ないぞ!方向を間違えてる。少年っ戻れええ!」

ボタンを押して戦闘開始。

ジャキジャキジャキ!

「間違えてませんよ。僕は勇者になる」

一番槍のゴブリンと激突。

ブゥゥーン!と振った軽いフェイクソード(改)は、ぺちっとゴブリンに当たる!もちろんダメージなんて無い。

ただし、本命は電撃。

『ぐぎょーーー』

狙い通り燃え尽きて魔石に。

後ろから迫ってきたエリートゴブリンと目が合った!こいつも叩いてやろうと思ったら、素早い動きで視界からロスト。

「あれっ?どこ行った?うわっ!」

いつの間にかエリートゴブリンに僕の武器が掴まれてる!泣きそうだ。武器を封じてニタァと嘲笑したエリートゴブリンだったけど、当たり前のようにその棒には電撃が流れているわけで。

んんぅ?なんか知らないけど倒せちゃったよ。ニタァと笑ったまま、お逝きなさい。

「次ッ!」

さらに、鈍重なオークを2体を倒すと、第1波を制圧したようだ。

束の間の平穏、後続の本隊に油断なく備える。

「マジかよ」

「あんな弱そうな少年に助けられるなんて」

「エクスはまさか剣士だったのか?」

ギャラリーの言葉に、ぴくっと耳が動く。

嬉しすぎてつい振り返ると、周囲の人々から好意的な視線をビンビンと感じる。

まるで物語の勇者になったみたいな気分。

『ぶもももー!!!!』

「あああああ。やばい。ジェネラルオークが追いついた。良いから逃げろー、エクス!」

「大丈夫です」

くるりと振り向くと、木の枝をべきべきとへし折るジェネラルオークと目が合った。

さて、選択肢は2つ。

ファイヤーボールでいつものように楽に倒すか、苦戦しながらも剣で挑むか。

もちろん剣でしょ。ただ少し判断が遅れてしまったため、2つの小さな影に追い抜かれてしまった。

「大きなブタさん、たおす」

「あとは任せてください」

あれはニトラとライ姉。

あっあっあっやめて、僕の見せ場が!

んあああ、僕の足では2人に追いつけない。

「終わった」

ふっ。

見せ場の無くなった雷剣をケースに収納。

ニトラが速い。

樹木をシュタシュタと蹴るように登ったかと思うとバサッと森から空へ飛び出し、顔面目掛けて二刀を抜き放つ。遅れてライ姉が足首を刈ると、火花が繋がりジェネラルオークは魔石に還った。

一拍おいて、ギャラリーから勝利の歓声が上がる。

「「おおおおおおーーーー!!!!!」」

「まさか倒したぞ!あのジェネラルオークを」

「すっげえ!」

ニトラが誇らしげに、ずっしりと重い魔石を持って帰ってきた。

「はい、マセキ」

「ありがと。重いから持ってて」

わらわらと人が集まってきた。

「凄かったよ。強いんだな」

「なあ!さっきの凄い剣を見せてくれないか?」

「ごめんなさい」

断られると思わなかったのか驚いた顔をされた。

「今まで誤解しててすまない。エクス大魔法使い。どうかこのまま防衛に加わってくれないか?」

「すみません。僕は冒険者を辞めましたので」

再び断ると、なんだか微妙な空気に。

そこへ、逃げたと思った人が帰ってきた。

「そうだ!皆聞いたか!コイツは冒険者を辞めるような薄情な奴なんだ」

現場がざわつき嫌な雰囲気に。

「何が言いたいんですか?」

もう倒してしまおうか。

いや、人に剣を向けたらゾンビーズと同じだし、それはないか。

「見てたぞ。へっぴり剣術を。あんなのは魔道具さえあれば誰にだって出来るんだよ!この緊急時に、凄い武器をずっと隠してやがるなんて」

「違います。それに、これは今日造った武器です!」

だけど、ギャラリーの表情は半信半疑。

ニタァと嘲笑すると近付いてきた。

「嘘くせーな。いいからちょっと貸せや」

「あっ、返してください」

ケースごと盗られた!

ひ弱な僕。

「ハッハッハ。見るがいい、新たな英雄の誕生を」

ニタァと笑ってケースからフェイクソード(改)取り出そうとしている。あの笑い方は何処かで見たような。いや、それよりも。

「駄目です!触ったら感電しますよ」

「ふっ。うるせえ!感電ってなんだ?いいから、そこでしっかり見てろ。これからは俺の時代だ!」

ニタァと笑って、武器を掴む。

ああああ。

「うっぎゃあああああ!」

エリートゴブリンに似てるんだ。

すっきり。

はっ!やばい。

「早く手を離してくださいエリゴブさん!ニトラ手伝って!」

「わかった」

なんとか棒を回収し救助成功。

良かった、生きてる。ギャラリーはドン引きだけど。

「やばいなあの魔剣」

「だから、さっき見せてくれなかったのか。危なかった」

もう僕は言いたい事を言うようにする。

「とにかく僕たちは、これから森の奥にキノコ狩りに行きますので、変な期待はしないでください」

「これから、森の奥に?」

「はい」

そう答えると、集まった人達はヒソヒソと話だした。「まさか」「つまり」「そういう事か」とか聞こえる。

何故か、満面の笑みで敬礼された。

「キノコ狩り頑張ってください!」

「は、はい?」

「分かってますよ。そう言いながら警備してくれるんですね。ありがとうございます。エクスさん!」

勝手にして欲しい。

「行くよルカ」

観客席に混ざって硬直していたルカをお姫様抱っこで連れ去り、森の奥へと足を進めよう。

自分の食材を採りに行くだけなのに、「行ってらっしゃい!」と、凄いお見送りをされてしまった。