軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第347話 感想戦

「うへー、思いっきりやったなぁ……」

「ですねー、もう立ち上がるのも億劫ですよ……」

俺と舞桜は大の字になって、ダンジョンの床に寝そべっていた。こんなところで横になるなとか、真っ当な指摘はガン無視させて頂く。俺達は力の限りを尽くしたお陰で、そんな些細な事を気にする余裕もなくなっているんだ。

「にしても、最後はギリギリだったじゃん……? 決着間際のあそこで、舞桜があんな事をするとは思わなかったよ……」

「俺としては、アレで決まったと思ったんですけどねー…… まさかケルヴィンさんも同じような手を持っていたとは……」

「そこはまあ、『並列思考』の良さが出た感じかなぁ…… ああ、そういや舞桜、途中で魔法を新たに作っただろ? お前、そういうところだぞ……?」

「え、どういう事です……? 俺、自分なりに頑張ったつもりなんですけど……?」

「ハハッ、最高って意味だよ……」

「わーい、ケルヴィンさんに褒められたー……」

戦いの後に感想戦をする。頭も体も疲れ切っているし、魔力も底を尽きている。けど、この時の俺は満ち足りていた。全力を出し合える相手が居るってのは、本当に幸せな事だ。結婚とはまた別ベクトルの幸福感だけど、やっぱこれも病み付きになる。うん、進んで病んじゃうくらいだ。

「あ、あのー、ケルヴィン様?」

「お話の最中のようですが、横から失礼しますよ」

と、そんな風に俺達に話しかけて来たのは、コレットとシスター・エレンだった。

「その、結局どちらが勝利されたんでしょうか? 死亡回避の秘術が発動したが、殆ど同時だったように思えまして……」

「恥ずかしながら、私達の目では勝敗が分からなかったのです。結婚について大きくかかわる事ですし、先に教えては頂けませんか?」

「「あー……」」

そういや本当にギリギリの戦い、刹那の勝敗だったからな。二人が分からないのも、まあ無理はないだろう。コレットは他でもない当事者なのだから、そこを気にするのも当然の事だ。

「戦いの結果はだな……」

そう言い掛けながら、俺は終盤の出来事を振り返る。戦いのラスト、俺は 神鎌垓光雨(ボレアラガン) で迎撃し、舞桜は聖剣ウィルを全力開放させ、決死の突貫を仕掛けて来た。接近され斬られる前にやる。魔法に焼き殺される前に接近して斬る。この時のお互いの目的を簡単に言えば、そんなところだろうか。俺達は最後の力を振り絞り、自らの目的を達成しようとした。

結果、目的達成の奪い合いを制したのは――― 俺だった。巨大な白翼を羽ばたかせ、猛スピードで迫る舞桜を撃墜するのは、 神鎌垓光雨(ボレアラガン) を用いても大変な事だった。だってこいつ、光の速度で多角的に攻撃する光芒を、結構な回数躱しやがったんだもん。しかも、当たったら当たったでウィルで欠損部を補強するしで、ラストの粘り強さが尋常でなかったんだ。けど、それも舞桜の刃が俺の喉元に達する寸前のところで、頭部を滅する事に成功。こうして楽しかった時間も終わりを迎え、俺の勝利という最高の形で幕を閉じたのだ。

……と、俺はそこで終わるものだと、一度は本気でそう思った。けどさ、こう言うからには、戦いはここでは終わらなかったんだよ。

『残念、俺はまだ、負けていませんよッ……!』

終わりを迎える筈だった。しかし舞桜の頭部破壊の直後、そこにない筈のあいつの頭の位置から、あろう事かそんな声が聞こえて来たんだ。

『な、あッ……!?』

神鎌垓光雨(ボレアラガン) による攻撃が通り過ぎた後も、舞桜は頭は無傷だった。俺は目を疑ったよ。俺の目には、そして察知能力の全ては、舞桜を倒したその瞬間を確かに捉えていたんだ。コレットの秘術が発動した? だが、発動したのであれば結界の外に飛ばされる筈…… 等々、次々に生み出される疑問が思考を圧迫する。その果てに辿り着いた答えを、俺は奴に斬られる寸前に言い放っていた。

『お前、自力で蘇生しやがったな……!?』

『ご名答!』

答えに至っても理屈は分からなかったし、この時はそんな言葉しか交わさなかった。後に感想戦で詳細を伺ったところ、どうやら先に破壊した地球ボールの力で復活したんだそうだ。え、このタイミングで地球ボールの能力!? なんて、力なく驚かせてもらったよ。

地球ボールは全惑星の中でもスピードと破壊力に優れ、任意のタイミングで舞桜の手元に取り出す事のできる最優の手札。しかし、その真骨頂は破壊された際、舞桜に一度のみの復活能力を付与する事にあったんだそうだ。まあ、アレだよ。俺で言うところの『転生神の加護』だ。ウィルの力のみでそこに到達しちゃったとか、どこまでも可能性の塊としか言いようがない。言ってしまえば、アレは『地球の加護』ってところだろうか? ハハッ、大層な加護だよな。

で、だ。予想外の復活を果たした舞桜は、その直後に俺をぶった斬った。何の躊躇も遠慮もなく、全力で俺を袈裟斬りにしてくれた。お陰で俺の上半身と下半身は斜めにお別れし、ものの見事に命が潰えてしまった訳だ。いやあ、アンジェに首を狩られた事はあったけど、流石に袈裟斬りにされるのは初めての経験だったよ。痛いとか熱いとか、そんな感覚を堪能する前に死んじゃうわで、如何に舞桜がこの一撃に全てを賭けたのかが窺えるものだった。見事、その一言に尽きる。

『ヘハハッ! けど残念! 俺だってまだ、負けてなんていられない!』

『マジですか……!?』

だが、ここでも勝負は決まらない。舞桜に地球の加護があるのなら、俺にだって前述の愛妻の加護がある。コレットの秘術よりも優先的に発動するように調整できるって良い例を、たった今目の前で実践してくれたんだ。舞桜にできるのなら、俺にはできないなんて理屈は通らないさ。ああ、復活だ。これでキルスコアは並んだ。最高だな、おい!

『『最後に勝つのは、俺だぁぁぁぁぁ!』』

振り下ろされる愚聖剣クライブ、返す刃で再び振るわれる聖剣ウィル。間合いのど真ん中に居る俺達は、自らの全てをその一撃に託した。そう、二つの剣は交わる事なく、守りなんて一切気にせず、目の前の好敵手を倒す事のみに全てを注いだんだ。

……そして、決着。この戦いを制したのは―――

「―――戦いを制したのは俺だよ。本当にタッチの差だったが、俺が先に舞桜の首を飛ばした。まあ、その直後に俺も首を飛ばされたから、あんまり勝ったって気にはならないんだけどな」

「それでも、確かにケルヴィンさんの剣の方が速かった。いやあ、完敗ですよ。先々代なら未だしも、今代のケルヴィンさんに剣の腕で負けるとは…… 正直、今も悔しいです」

「おいおい、どう考えたって最後に不意を打たれたお前の方が不利だったろうが。しかも、速度アップの補助を受けた上でギリだったんだからな、俺? それにだ、もっと前に不可視の不意打ちをした時に、俺の頭を狙っていれば、また結果は―――」

「う、ううっ…… うわあああぁん! ケルヴィン様、勝ってくれてありがとぉぉございまじゅうぅぅ!」

「え? あ、おい、コレット!?」

大泣きするコレットに急に抱きしめられ、俺困惑。コレットよ、今そうされても、欠片の体力も残っていない俺は抱き留められんって。

「フフッ。まあ、細かい事は良いじゃないですか。それよりも、改めておめでとうございます。俺の“ちょっと待った”を乗り越えたんだ。今後の結婚生活、絶対に幸せに過ごしてくださいね?」

「ああ、それは当然だ。コレットは俺が幸せにする。欠片も後悔なんてさせないさ」

「おお、言い切りましたか。全く、少しは恥ずかしがっては――― っと、すみません。そろそろ時間のようです。俺、もう帰りますね」

そんな言葉に反応して、何とか首を動かして横を見る。帰る? 何言ってんだ、これから舞桜には披露宴(儀式)にも参加してもらうんだぞ? と、軽い感じで言葉を言い掛けながら。が、その言葉は途中で止まってしまう。俺の視界に入った舞桜の顔には、まるで砕け散る寸前かのような、そんな大きな亀裂が走っていたんだ。