軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第244話 邪神降臨

「どうした、若人が揃ってそのような顔をして? 世が世であれば不敬であったぞ? まあ、今の我は神ではなく、ただのアダムスだ。全てを赦そう」

エルドであった筈のその顔が、知らないうちに変貌していた。いや、黒く染まっていた……? 顔が影のようなもので覆われてしまっていて、その表情を覗く事ができない。マスクの類、或いは魔法や能力で隠している? 今の段階では全くの謎だ。土手っ腹に開いていた穴も、今は綺麗に埋まっていやがる。つうか、肉体自体がエルドのそれから、更に大きなものへと変わっている。ハハッ、何だこれ? ただそこに居るだけなのに、その存在感から目を離す事ができない。

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鑑定不可 鑑定不可 鑑定不可 鑑定不可 鑑定不可

レベル:鑑定不可

称号 :鑑定不可

HP :鑑定不可

MP :鑑定不可

筋力 :鑑定不可

耐久 :鑑定不可

敏捷 :鑑定不可

魔力 :鑑定不可

幸運 :鑑定不可

スキル:鑑定不可

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そして、これだ。『鑑定眼』で見ようにも、そもそもステータスが上手く表示されない。鑑定不可の表記で全てが埋まってしまっている。まさか『偽装』で数字を弄る訳でもなく、鑑定不可の文字を見る事になるとはな。確かS級の『鑑定眼』は、レベルが100離れていても、その数字を見る事ができる筈なんだが……

ああ、こんな事が昔あったっけ。そうそう、俺がこの世界に転生したばかりの頃、メルのステータスを見ようとして、同じような事があったんだ。けど少なくともあの時は、名前や年齢程度は判別されていた筈。 ……つまりアダムスと俺との間には、それ以上のレベル差があるって事か?

「……クハハハハハッ! 推定レベル、300オーバーだと!? 凄く、すっごく、強いじゃないか!」

興奮のあまり、語彙が迷子状態になっている。それほどまでに今、俺は興奮していた。

「ア、アダムス、本当にアダムス、なのか……!?」

「うむ、神ではないが、我はアダムスだ。しかし、酷く懐かしい声だな。お前は確か…… そう、ケルヴィムだ。ケルヴィム・リピ――― なぜ裸なのだ?」

興奮していても分かる。それは尤もな指摘だ。流石の神様のトップも、復活がてらに配下の裸を見る事になるとは、全く思っていなかったのだろう。

「こ、これは、エルドに脱がされて……! このような姿で出迎えるのは、俺も本意ではないのだ!」

ケルヴィムよ、間違ってはいないけど、その言い方は色々と誤解を生む気がするぞ。

「いや、それよりも今は、一体これがどういう状況なのか、説明してもらいたい! それはエルドの死体ではなかったのか!?」

「ふむ、この我に説明を要求するか…… まあ、良い。そこの男が待てるのであれば、その要求を呑んでやらん事もないが?」

不意に顔のない男の視線が、俺の方に移った気がした。俺が必死に我慢しているってのに、なかなか酷な事を言ってくれる。

「ケルヴィン、待てだ! 分かるな、待てだぞ!?」

「お前、俺を犬か何かだと…… あー、良いさ。それは俺も気になっていたんだ。えっと、アダムスなんだよな、アンタ? 部外者である俺も聞いて良いのか?」

「ちょっとした雑談の延長だ。何ら問題あるまい。実のところ長い間封印されていて、久方振りの歓談に興じたい気持ちが我にもあってな。遠慮するな、貴様も付き合え」

「お、おう……?」

何だろう、この気さくなおっちゃん感は。ひょっとして、さっきの奇襲染みた接近も、単に俺達を驚かせたかったとか、そんな理由でやったんじゃ…… いや、流石にそれはないよな。うん、ないない。邪神だぞ、あいつは。

ともあれ、それからアダムスはその圧倒的な存在感とは裏腹に、マジで流暢に、そして丁寧に説明をしてくれた。

エルドの肉体がアダムスに変化したのはなぜか? についてだが、これはエルドの権能が関係しているらしい。そもそも権能とは、アダムスによって十権能が授かった異能である。それら権能には神であった頃のアダムスの残滓が残っており、それらを集め『統合』する事で、エルドはアダムスが扱うに足る肉体の構築を、その身でやろうとしていたんだそうだ。それこそが、エルドが権能を顕現させた時の力、だったという訳である。

「言ってしまえばエルドの義体で、アダムス用の特別な義体を作ったって事か? それ、本物の体ではないんだろ?」

「ほう、言い得て妙だな。その表現は限りなく近いぞ」

「アダムスの義体、だと……!?」

「だから言っておるだろう。今の我は、ただのアダムスだとな」

「な、ならば、 聖杭(ステーク) に魂を宿す必要もなかったのではないか!? エルドが最初から、その力を使っていれば!」

「いいや、それは無理な話だ。エルドが権能を顕現させる為には、 聖杭(ステーク) に魂を宿す事、そして、ある程度の数の権能が奴に集まっていないと、使う事ができないという条件があった。そうだな、魂の条件に加え、最低でも四つほどの権能が必要だった筈だ」

「四つ…… なるほど、ギリギリ間に合ってるな。けど、何でその方法で復活したんだ? 話を聞いている限り、本体での復活条件も満たしていたんだろ? そっちの方が強いんだろ!? 違うのか!?」

「ケルヴィン、目が血走っているぞ……」

だって、そこが重要! すっごく重要だもの!

「………」

どうなんだ!? と、話を急く俺。しかし、当のアダムスはなぜか黙りこくっていた。腕を組み、何やら悩んでいる様子だ。

「おい、どうした?」

「……飽きた」

「は?」

「いや、何。ある程度会話するのにも満足してしまった」

「は、はぁぁぁぁ!?」

お前、一番重要なところを説明しないつもりか!?

「諦めろ、ケルヴィン。アダムスは何ものにも縛られない、自由な神なんだ」

「それで良いのか、お前は!?」

エルドの権能の事しか判明していないぞ!? 俺、頑張って待てをしていたんだぞ!?

「さて、大まかな説明も終わった訳だが…… ふむ、まずはどこから手をつけたものか。囚われのレムを女勇者から助けるべきか、漂流中のイザベルを救助すべきか、それとも遠くに居るグロリアからか? ハオとハザマを倒したという猛者についても気になるところ、後はケルヴィムの立場を明確にしておく事も必要か。その身を我に捧げたエルドの供養も、いつかはしておきたいものだ。ククク、どれもこれもが重要な事柄で、我とした事が目移りしてしまっているようだ。久方振りの自由が、何と素晴らしい事か」

俺が目の前に居るってのに、アダムスは呑気にブツブツと呟きながら、未だに頭を悩ませている様子だ。まるで暇な休日に何をするか悩んでいるかのような、そんな自然体である。あまりの警戒心のなさにも、少しばかりカチンとくるものがある。

……けど、それくらいの実力差があるってのも、同時に理解してしまっている。万全でない義体の状態でその域って事は、アダムスの本体の強さは――― ハハッ、なるほど! これが最強の神か!

「この際、本体と義体の強さに違いについては置いておく。アダムス、今はただ、お前と戦いたい!」

「……ふむ、なるほどな。どうやら今は優先すべきは、それらの事ではなかったらしい」

会話の最中に装備の切り替えは済ませた。こちらの準備は万全だ。昂りで漏れてしまった俺の殺気を漸く感じ取ってくれたのか、アダムスもこちらを向く。そして―――

「では、また会おう」

―――俺の期待を無視するかのように、まるで違う方向に歩き出していた。

「ッ!? ……おい、ここまで殺気を当てられて、戦わないつもりか!?」

「ああ、残念ながらな。エルドを倒した貴様と対峙するのも、選択肢として悪くはない。が、今の優先順位のトップにはおらんのだ。だが安心せよ、三番目四番目くらいには居る――― かもしれない? まあ、何だ。そのうち戯れに行く」

「三番目四番目、だと……!?」

「不満か? ふむ、ならば代わりに良い事を教えてやろう。我が目指すあの方向から、何やら面白いものが召喚されようとしている。それを目にするのが、現在における我の最優先事項だ。気になるのであれば、貴様らもやって来るが良い。では、さらばだ」

そう言って、アダムスは姿を消した。いや、宙を早歩きして、その方向へと行ってしまった。