軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第228話 最高の好敵手

神々しいピンク色の光が、地上よりゆっくりと舞い上がって来る。ムドの爆撃やらグロスの毒撃やらで、散々かつ凄惨な状態になっていた地上であるが、その者は全くの無傷であった。今の今まで封印状態のまま放置されていた筈であるが、このタイミングでイザベルによって施された封印が解かれ、自由に身動きする事が可能となったようだ。

「プ、プリティアちゃん……!?」

そう、その者の名は『桃鬼』ゴルディアーナ・プリティアーナ。現転生神であり、恐らくはこと格闘戦において、この世界で唯一ハオに対抗できる 強者(つわもの) である。

「ダハクちゃん達ぃ、こんな私の為によく頑張ってくれたわねん。心から感謝するわん」

復活を果たしたゴルディアーナが、慈愛に満ちた口調でダハク達に語り掛ける。

「そ、そんな! 俺にはもったいねぇ言葉――― い、いや、今はそれよりも、グロスの野郎がッ!」

「ええ、分かってるわん。あの子は自己犠牲の精神が強過ぎちゃったみたぁい」

「うっ、ク、クソォ……! すまねぇ、俺にもっと力があったら……」

「お、おでも……」

「私、だって……」

「ダハクちゃん達ぃ、今すべきなのは、たらればの話じゃないわよん? グロスティーナの想いを継いで、これからどうすべきかが一番の大切な事ぉ…… そうでしょん? 怒り、悲しみ、絶望――― 生きていく上でそれら要素は欠かせないものだけれどぉ、しっかり現実を見据える事も忘れちゃ駄目ぇ」

ゴルディアーナの言葉を耳にして、ハッとするダハク達。グロスティーナの死を前にして、一番悲しみを感じているのは、他でもないゴルディアーナだ。そんな彼女が感情を抑え、今を見据えているのならば、自分達も取り乱してなんている場合ではなかった。ダハク達は目尻に溜めていた涙を拭い、心の内を整えていく。

「もう大丈夫みたいねん。さて…… ハオちゃん、待たせてしまってごめんなさぁい。封印の底から舞い戻らせてもらったわん」

桃色の巨翼を羽ばたかせ、ゴルディアーナはハオの方へと向き直る。

「フッ、冷静さを失いかけていたあの者らに、一瞬で平常心を取り戻させたか。貴殿は力があるだけなく、指導者としても長けているようだな」

「あらん? それってもしかしてぇ、私を口説いてるのん?」

「違う。純粋に称えているのだ」

顔色一つ変えずに、あくまでも真面目にそう答えるハオ。

「もん、冗談が通じないだからん。貴方こそぉ、別に黙って待っている必要はなかったと思うのだけれどぉ? グロスティーナが最期に残したその毒、時間が経てば経つほどに、ハオちゃんが不利になるわよん?」

「貴殿こそ、封印中は食事もとっていなかっただろう? 長きに渡る封印で肉体も鈍り、とても万全の状態には見えないが?」

「うふん、連戦に次ぐ連戦でお疲れモードぉ、アーンド片腕状態の貴方よりはマシよぉ。その腕ぇ、再生させないのん?」

「奪われた片腕は貴殿との戦いに捧げたのだ。今更未練などないし、再生させる気もない。更に言えば、俺の疲労の心配もする必要だってない。毒は兎も角として、この程度の前哨戦、我々にとっては準備運動に過ぎないのだからな。違うか?」

「さぁて、どうかしらねん」

「「………」」

軽い舌戦を終えたゴルディアーナとハオは、空中にて静止したまま構えを取り始める。暫くその様子を見守っていたダハク達も、時同じくして動き始めたようだ。

「な、なら、俺達も助太刀するぜ、プリティアちゃん! 俺もグロスの野郎の為に、一矢報いてぇんだ! せめて、横に並んで戦わせてくれ!」

「ダ、ダハク、それは駄目、なんだな……」

「ボガの言う通り。私達が下手に協力しようとしても、ゴルディアーナの助けにはならない。むしろ足手纏い。それはダハクも理解している筈」

「ッ……! 分かってる、分かっているさ……!」

歯を食いしばり、その影響でなのか、口から血を垂れ流すダハク。

「プリティアちゃん、毎度毎度、力不足ですまねぇ……! 俺ってやつは、またプリティアちゃん頼みになっちまった……! 本当にすまねぇが、どうかグロスの野郎の仇を、頼むッ……!」

「……自らの弱さを認められるって、言葉以上に素晴らしい事よぉ? 今のダハクちゃんの姿、私にはとってもカッコ良く映っているものぉ」

「プ、プリティアちゃん!?」

「はーい、感動するのは後々ぉ。そ・れ・よ・り・も~…… ダハクちゃん、それにムドちゃんとボガちゃんにも、新たなお仕事をお願いしちゃうわん。これから私ぃ、転生神としてではなくぅ、ゴルディアの伝承者として全身全霊で戦うからぁ、 白翼の地(イスラヘブン) が壊れないようにぃ、周囲一帯の環境保護に努めてほしいのよん。ハオちゃんが相手だと、きっと戦いの最中に他を気にしている余裕はないわん。ね、お願ぁい?(はぁと)」

今の 白翼の地(イスラヘブン) は、どこかの誰かさん達の激戦の影響により、大変に危険な状態にある。封印中にもその事を感じ取っていたゴルディアーナは、崩れ行く 白翼の地(イスラヘブン) が自らの本気に耐えられない事を察していた。だからこそ本気を出す為には、ダハク達の協力が不可欠であったのだ。

「この大陸の未来は貴方達の手に懸かっていると言ってもぉ、決して過言ではないわん。 ……任せても良いかしらん?」

「俺達の、手に…… 分かったぜ、プリティアちゃん。この 白翼の地(イスラヘブン) は意地でも俺達が守り通す。崩れそうならとことん補強して、ぶっ壊れそうなったとしても再構築してやらあ! なあ、そうだろう? ムド! ボガ!」

「ハァ、暑苦しいのは苦手…… けど、やられてばかりも気に喰わない。任せて、光竜王の名に懸けて、この大陸は破壊させない」

「お、おでも、火竜王として、頑張るだ……!」

「おう、それでこそ竜王だ! じゃ、そっちは頼むぜ、プリティアちゃん。 ……俺、プリティアちゃんを愛し――― い、いや、信じてるぜ!?」

「……ダハク、何でそこで日和る?」

「お、惜しかった、んだなぁ」

「うるせぇ! 今はそれどころじゃねぇんだよ! 馬鹿言ってねぇで、気ぃ引き締めろ!」

安全な場所で作業に当たる為、ダハク達は騒ぎながらも遠くへ後退して行った。

「フッ、まるで思春期の子供のようだな。俺を殺さんとしていたのが嘘のようだ」

「うふっ、可愛いでしょん? あの子達はこれから、まだまだ伸びていくわん。こんなところで死んで良い子達じゃないのん。まあ、それはもちろんグロスティーナもそうだったのだけれどぉ……」

「……俺を憎んでいるか?」

「そんな単純な感情じゃないわよん。確かに怒りや悲しみもあるし、許せないとも思ってしまう。けれどぉ、それでも命を懸ける選択をしたのは、他でもないあの子だもの。ホンット、乙女の心は複雑よん!」

その直後、ゴルディアーナが纏ったいた空気がガラリと変化していった。

「……妹弟子、グロスティーナ・ブルジョワーナを破った貴方に、このゴルディアーナ・プリティアーナが挑戦状を叩きつけるわん。受け取ってくれる?」

「今更の問答だな。今も昔も、俺達はその気で対峙している。ならば、答えは一つであろう?」

「うふっ、そうねん」

最高の好敵手の目の前にしているせいだろうか。二人は微笑み合い、端から全力で戦いに望む。

「 慈愛溢れる天の雌牛(ローズイシュタル) 」

「権能、顕現」