軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第194話 決戦当日

高まる緊張感と高揚感を味わいながら、仲間達と 聖杭(ステーク) に乗り込む。今日は 白翼の地(イスラヘブン) に向かい、ゴルディアーナを救出する為に残りの十権能と戦う、運命の日。やる気が高まるのはもちろんだが、口角も自然と上がってしまう。ああ、今日も楽しいバトル日和になりそうだ。

「ふむ、エフィルが行かないのは当然として、アンジェも休みか。学び舎におるリオンとアレックスも参加させる訳にはいかんし、クロトの戦闘特化の分身体はクロメルの護衛中…… 今回、ワシらは少人数での参加じゃな」

「少人数って言ったって、それ以外の面子は全員参加だ。言うほど少なくもないぞ?」

俺(+ハード)、ジェラール、セラ、メル、ドラゴンズ、シュトラの総勢八名の参戦だ。十権能の残りが六人だとすれば、俺達だけでも頭数は多いくらいである。そこにグロスティーナ、シン総長、アート学院長、神柱のドロシー、協力者のケルヴィム、ルキルが加わったと考えれば、戦力は相当なものとなる。ちなみに、ダハク達にドラゴンの修行をつけてくれたバッケは参戦せず、そのまま国へ帰ってしまった。何でも修行中、ダハクが無類の我慢強さを発揮したとかで、色々と溜まっているらしく――― いや、これ以上の説明は省いておこう。

「おー、これが 聖杭(ステーク) の内部か。馬鹿みたいに広いじゃねぇか……」

「迷子にならないように、しっかりとマスターの後ろを歩きませんと! あ、マスター! 杖をお持ちますよ!」

「ハッハー! 広いぃぃ!」

「文明の差、みたいなものを感じちゃうね…… けど、純粋な美しさ度合であれば、私にもきっと勝機が……」

当然だけど弟子のスズ達に関しては、見学扱いなので戦力としては数えていない。次元の違う戦いを直接目にして、是非とも色々と吸収してもらいたいものだ。そして強くなれ、一杯強くなれ、なるんだ! ……っと、いかんいかん。また感情が高まってしまった。

「それよりも俺は、シュトラが参加に意欲的だったのが意外だったな」

「意外だなんて失礼よ、お兄ちゃん。私だってセルシウス家の一員だもの。戦闘だって立派にこなしてみせるわ。私だけ仲間外れになんて、絶対にさせないもん!」

「おっ、やる気だなぁ。準備期間中、頻繁にどこかに出掛けたりもしていたみたいだけど、どうしたんだ?」

「それは…… 内緒!」

「ええ、内緒なのか?」

「うん、こればっかりは、お兄ちゃんにも教えられないかな? でも、期待はしていて。私、リオンちゃん達の分まで活躍するつもりだから!」

いつになくやる気のシュトラが、可愛らしく拳を握っている。なるほど、不参加のリオン達の分まで頑張る、か。良い心掛けだ。何を準備していたのかは気になるところだけど、まあシュトラなら安心して任せる事ができる。シュトラは俺よりも数百倍は頭が良いんだ。引き際もしっかり弁えているだろう。

「修行帰りのダハク達はどんな感じなの? 少しは強くなった?」

セラが少しやつれた様子のダハクら、ドラゴンズに問いかける。この期間中に自分が相当に強くなったから、同じく鍛錬の日々に明け暮れたダハク達が気になっているというか、興味津々で仕方ないらしい。

「ヘヘッ、まあ自分で納得できるくらいには、強くなったと思うッスよ? なあ、お前ら?」

「うう、あれは地獄の日々だった……」

「おでを食っても美味しく、ないんだな……」

自身あり気なダハクと相反し、ムドファラクとボガの目には光がなかった。俺が帰った後、ゴルディアの聖地で一体何があったのだろうか。その内容については全く知らされていないが、バッケにがっつりと絞られた事だけは見て取れる。 ……真っ当な鍛錬で絞られたんだよな、お前達?

「えっと…… ムドとボガ、何か病んでない?」

「大丈夫ッス。見てくれ通り、体もこんなに絞れたんス。期待してくれて良いッス!」

ああ、絞ったのは体の方だったのか。それなら安心――― して良いのか? 体を絞ったっつうより、やっぱりやつれたようにしか見えないぞ、おい?

「俺からしてみれば、メル姐さんの方が心配ッスよ。聞いた話じゃ、ここ暫くはろくに鍛錬もせず、食ってばっかだったとか。つか、今も爆食いしているし……」

「ふぁい? ふぁにかふぃーまふぃた?」

ダハクの視線の先には、山盛りの焼きそばを頬張るメルが居た。口一杯に麺を頬張り、所々にソースの汚れを付けている。はいはい、ハンケチーフで綺麗にしましょうね。

「まあ、ダハクがそうやって心配するのは尤もだけど、メルについてはこれで良いんだよ。その、何と言うか…… 固有スキル的に?」

「固有スキル的に、ッスか? ああ、そういやメル姐さん、転生神止めてからステータスが変わったんでしたっけ? 俺、まだどう変わったのか知らねぇんスけど」

「なら今度模擬戦でもやった時、直に体験すると良い。百聞は一見にしかず、百見は一戦にしかず、だよ」

「ええー、もったいぶるッスね~」

兎に角、メルはこのままでも問題ないって事だ。別にメルだからって、変に肩入れしている訳じゃないぞ?

と、そんな雑談をしているうちに、 聖杭(ステーク) の中枢へと到着。既に他の面子は勢揃いしていた。どうやら俺達が最後の到着になったみたいだ。

「随分と遅い到着ですね、ケルヴィン。それは余裕の表れですか? それとも、気が緩んでいるだけでしょうか?」

早速ルキルが、挨拶代わりの煽り言葉を投げかけて来る。相変わらずの口の悪さだ。ただ一方で、彼女の視線がチラチラと、焼きそばを食べるメルのお方へと向かっている事にも気付く。これ、無意識でやってんのかな…… 指摘するのは止めておこう、絶対に面倒な事になるし。

「勝つ為の準備に時間が掛かったんだ、少しは大目に見てくれよ。つか、集合時間には間に合っているからな?」

「何を言っているんだい、ケルヴィン? 決戦(デート) の時は、余裕を持って待ち合わせ場所に到着するのが常識! 時間ギリギリはよくないぜ?」

そんな言葉を発したのは、 聖杭(ステーク) 内の大きな機材(?)に腰掛けるセルジュであった。

「いや、誰とどんなデートをするつもりだよ…… どっちかと言うと、 決戦(ハイキング) だろ?」

「おっと、そんな返しがあったとは! 流石の私も予想が~い」

「ああ、俺もセルジュがここに居た事が予想外だよ。え、何? お前も参加するの?」

「なーんで嫌そうな顔をするのかな、そこで? 普通、私みたいな超特大戦力の美少女が参加したら、泣き喜び踊り狂うところでしょ? もう、しっかりしてくれたまえよ、ケルヴィ~ン?」

「悪い悪い、それじゃ早速泣き喜び踊り狂わなきゃなって、誰がするかッ!」

セルジュとの会話は、どうしてこんなにも疲れるのだろうか? キャッチボールをする毎に、やたらとエネルギーを消耗している気がする。

「シュトラ、よく覚えておくのです。アレがノリツッコミというものですよ。セルシウス家の貴重なツッコミ役として、しっかり覚えてくださいね」

「うん、分かった! 私、頑張って習得する!」

そこの腹ペコ、シュトラに変な事を覚えさせるんじゃない。

……まあセルジュが参戦する事自体は、ドロシーとの手合わせを奪われた辺りで、何となく予感があったんだけどな。できれば当たってほしくない、悪い予感が。

「ちょっとちょっと~、貴方達ぃ。デートとハイキング、どっちも素敵な催しだけどぉ、この戦いにゴルディアーナお姉様の命、そして世界の命運が懸かっているのだからぁ、もう少し真面目にやりなさいよ~」

「いや、セルジュは兎も角として、俺は至極真面目なつもりなんだけど?」

「失礼だなぁ。戦いの事しか頭にないケルヴィンと違って、私は真面目に臨んでいるよ?」

「どっちもどっちなのよねぇ……」