軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第181話 神威の儀

雷光が走るのと同時に神鳥、神霊、神鯨の三体の姿が消える。本当に一瞬の事であった為、存在自体が消失したのかと、そう思ってしまうほどだった。だが、それはとんだ勘違いであったと、遅れてやって来た雷鳴を耳にしながら確信する。三体の神柱は消えたのではなく、中心に立つドロシーに取り込まれていたのだ。

「シ、シーちゃん?」

「………」

他の神柱の力を全て吸収し、完全にひとつとなったドロシー。彼女の姿は以前と全く変化しておらず、纏っている衣服も制服姿のままだ。ただ、纏っている雰囲気はガラッと変わっていた。歴史ある大聖堂や教会、そういった聖域に漂う神聖を人の形に凝縮させたかのような、そんな尊さを暴力的なほどに放っていたのだ。彼女そのものが聖域、とでも言うのかな? 兎に角、とてもではないけど人と対峙している気にはなれない。これまで出会って来た神様の中で、最も神様らしい神様が目の前に居る、とでも思っておこうか。

「……なるほど、これが私達神柱の真の力、ですか」

「実際のところの力量は、今のところ未知数ですけどね。どちらにせよ、これにて儀式は終了です。私としては成功させたつもりですが、何か違和感などはありませんか?」

「いえ、違和感はありません。長い眠りから目覚めような感覚はありますが、不思議と頭は冴え渡っています。微睡みが全て取り払われ、気分も晴れやかなくらいですよ。 ……それに、私の中に同胞達の存在も感じられます。とても心地良く、温かな存在が」

「そうですか。絆の力であれ復讐心であれ、それがプラスに働くのであれば歓迎しておきましょう」

そんな言葉を口にした後、ルキルがこちらへと振り返る。

「折角これだけの実力者が集まっているのです。誰か、ドロシアラの力を確かめてみませんか?」

「ッ!」

何と言う事だ。素晴らしい、実に素晴らしい提案ではないか! まだ何の刃も交えていない初見の状態、それも間違いなく神レベルのドロシーと、実力を確認するという至極真っ当かつ正当な理由で戦う事ができる、だと!? フハハ、これに手を挙げない奴はいないだろう。いたとしたら、そいつは戦闘愛好家失格だ!

「俺が―――」

「―――とおっ! 私が相手をするよ!」

「ぐはっ!?」

「ケルにい!?」

死角からセルジュに肘打ちを当てられ、軽く吹っ飛ぶ俺。

「うおおおぉ……!」

「ケルにい、大丈夫!?」

顔に激痛が走る、走りまくる。ジタバタと床に倒れながらもがくレベル。目の前に星が見えた。つうかこいつ、あろう事か顎を狙って来やがった!? 辛うじて位置はずらしたけど、完全に意識をもぎ取りに来ていたぞ!?

「ケルヴィン、残念だけど私が先約を入れていたんだ。という訳で、ドロシアラちゃんの相手は私に任せて、君は君の仕事に向かいたまえ。ほらほら、時間は有限なんだぞっと」

「お、お前という奴は……!」

顔を押さえながら何とか立ち上がり、セルジュを睨みつける。だが、奴はそんな事などどこ吹く風で、口笛まで吹いていやがる。

「まあ、そんな約束があったのは確かですよ?」

「え、マジで……?」

「こんな嘘を言ったところで、私が得する事なんてありませんよ。ドロシアラ、歴代最強の勇者と名高いセルジュ・フロアが相手をすると言っていますが、貴女はそれでも構いませんか?」

「ええ、多分それでも大丈夫です。問題ありません」

「おっ、言ってくれるね~? 私、初っ端から本気で行っちゃうよ?」

「お、おい、まだそうと決まった訳では―――」

「ケルヴィ~ン、立候補に失敗したのなら、私達はさっさと戻りましょうよ~? 監視役もセルジュが引き継ぐんでしょ? 私、こんなところでジッとしているのは 性(しょう) に合わないわ!」

「私も同意見です。ニシンパイを食べ尽くした今、ここに求めるべき料理は存在しません。早急に帰還し、決戦に向けての腹ごしらえをするべきかと」

そして、あっさりと仲間達からも裏切られる、可哀想な俺。ある意味で予想できた、安心と信頼と反応だ。クッ、次こそは、次こそは……!

「えっと、僕はどうしようかな? シーちゃんがここに残るのなら、一緒に居たいと思っているんだけど…… ケルにいはどうする?」

「うう、リオンの優しさが身に沁みる…… って、そうじゃなかった。ドロシーの相手がセルジュと決まった以上、俺も一度戻るとするよ」

「あれ、本当に帰っちゃうの? 私とドロシアラちゃんの戦いも見ずに?」

ついさっき帰れと言った張本人、セルジュからの有り難い御言葉。フハハ、ガワだけでも残念そうにするのなら、その権利をさっさと俺に寄こしやがれ。

「見学も多少は魅力的だが、俺の中でそいつは優先度が低めなんだよ。リオンが残ってくれるのなら、戦闘内容はどこに居ようと共有できるからな」

「あー、そういう事?」

そういう事。まあ、一緒に帰らないとメルとセラの機嫌が悪くなる、という理由もあるけど。

「分かったよ、ケルにい! 僕、良いレポートができるように頑張るから!」

「おう、期待してるぞ! っと、そうだそうだ。ケルヴィム、お前も俺達と一緒に行くんだから、準備しておけよ?」

「む? そこでなぜ俺が出てくる?」

「なぜってお前、折角もう一機、 聖杭(ステーク) があるんだぞ? ドライバーは必須だろ」

「俺をドライバー代わりに使う気なのか!?」

「悪いが、俺達は無免許だからな。それに同盟を組んだとはいえ、一応お前は監視下に置かれているんだ。あとさ、 彼女(・・) をこちら側に引き込むには、お前の協力が不可欠だろ?」

そう言って、セラに抱えられたグロリアに 顎(あご) で指し示す。

「……そういう事か。確かにそうかもしれないな。良かろう、この俺が直々にグロリアを説得し、我らの味方へと引き込んでやろうではないか! 大船に乗ったつもりでいるが良い! 特大の飛空艇レベルのな!」

「ああ、途中で沈没しない事を心の底から祈ってるよ。少なくとも、 聖杭(ステーク) は安全運転で頼む」

まあどちら側につくにせよ、グロリアにも 鷲掴む風凪(ハートカーム) は施しておいた方が良いだろう。同時展開はこれでそろそろ限界っぽいけど、ケルヴィムと同じく解いてほしければ俺を倒せと言っておけば、戦いが終わった後も半永久的に俺の命を狙ってくれそうだし。しかし、距離を操作する『 間隙(かんげき) 』の権能か。どう攻略しようか並列思考が止まりそうにないな、こりゃあ。暫くは夜も寝付けそうになさそうだ。

「それじゃあドロシアラちゃん、邪魔な男共は全員消える事だし、私達は私達でランデブーを楽しもっか! 女の子に囲まれた状態の私はつっよいよ~? 何せ、やる気が違うからね! 段違い!」

「随分と楽しそうですね? それに、少々下劣な感情も見え隠れしているようですが…… まあ、申し出自体は有り難いので、精々利用させて頂きます」

「フフッ、こんな可愛い子に利用されちゃうなんて、私ったら幸せ者だな~。 ……あれ、ケルヴィンまだ居たの? いくら指をくわえてこっちを見たって、この幸せは私のものだよ?」

……暫くは夜も寝付けそうになさそうだ。