作品タイトル不明
第137話 新たなる仲間?
「ふい~、思いの外満足致しました。なかなかやりますね、レイガンドの王も。他にはないアミューズメント的な要素も取り入れていましたし、今後の発展に期待できそうです」
「ア、アミューズ? そんな要素あったっけ?」
熱狂的な食事会(?)を終え、案内されたレイガンド城の客室にてまったりする俺とメル。膨大な量の料理を食べたメルは、さほど膨れていないお腹をさすりながら、満足そうにそう呟いていた。
「それはそれとして、あなた様」
「ん?」
「『召喚術』で新たに使役した例の堕天使、どんな様子なのです? 配下ネットワークにも声を出す様子がありませんし、やけに静かで正直不気味ですよ?」
「ああ、一応気に掛けていてくれたのか」
「それはもう、私は今や娘を持つ立派な奥さんですからね。夫を気に掛けるのは当然でしょう、ええ」
そう言いつつも、未だにお腹をさすっているメルさん。俺は苦笑しながら、今回の戦いで配下にしたリドワンを召喚してみせた。部屋の中央に魔法陣が生成され、更にそこから金属製の球体が現れる。
「あら? ええと…… あなた様、これは?」
「新たに仲間になったリドワン…… の、筈なんだけど、魔力体になってから、ずっとこの状態なんだよ」
部屋の床から数センチほど離れるようにして、宙にふよふよと浮かぶ金属球体。最早これをリドワンと呼んで良いのかも分からない状態だが、間違いなくこいつはリドワンであったものなんだ。 ……だよな、だった筈だよな? ううーん、俺も不安になって来た。
「俺が話し掛けても返事はなし、コンコンと軽く叩いてみても反応なし。半ば脅しっぽい契約をしちゃったから、拗ねてるのかね?」
「十権能であった者が、そのような子供っぽい真似をするとは思えませんよ。私じゃないんですから」
「また反応に困るコメントを…… つうか、ここまで無反応だと意識がない感じだよな。ショックで気絶してるって言うのかな? おーい、早く起きないと、勝手に改造しちゃうぞー? 魔改造ゴーレムになっちまうぞー?」
冗談半分な脅しをしてみても、やはり反応はない。どうしよう、本格的に困って来たぞ。
「ひょっとしたら、戦闘の影響を受けて故障してしまったのかもしれませんね。ほら、何か精密機械みたいな敵でしたし」
「そうかぁ? 直接手合わせした俺としては、クロトみたいな印象だったんだが……」
「いやいや、絶対そうですって。なら、やる事はただひとつ! 斜め45度で叩くのです! 角度が大事ですよ、角度が!」
「メルさん、リドワンを何だと思ってます?」
自信あり気に、球体に向かって鋭いチョップを繰り出すメル。しかし、どうやらこの状態でも『不壊』の権能は働いているらしい。メルは直後に手を痛めてダウンしてしまい、ゴロゴロと床を転がり回る始末であった。
「まったく、古い家電じゃないんだから」
そんなメルに呆れながら、球体の表面に手を添える。最悪このままの場合、クロトに食べさせて、リドワンを構成していた特殊金属を複製してもらうという手もあるが…… 仲間にしたからには、あまりそんな事はしたくないんだよな。そもそも絶対防御状態にあるリドワンを、クロトが吸収できるかも怪しいところだ。
「仲間にした時の新しい技とかも、折角色々と考えていたのになぁ」
例えばさ、どんな武器にでも瞬時に姿を変えられるリドワンの戦闘スタイルを真似て、こんな感じで。
「リドワン、剣になれ!」
―――ジャキン!
「な~んちゃってさ。 ……ん? ジャキン?」
何やら変な音が聞こえて来たような。それに、さっきまでと触り心地が全然違う。球体の表面に触れているというより、何かを握らされているような感覚だ。
「ええっ……」
確認すると、そこにはメタルカラーかつスタイリッシュな造形の剣が、俺の手に握られていた。おかしいな、こんな剣を鍛えた覚えはないのだが。ついでに言うと、クロトの『保管』から取り出した覚えもない。
「なるほど、そういう事ですか!」
「おわっと!? メ、メル、復活していたのか? いや、それよりも、そういう事って?」
「見ての通りですよ。リドワンという名の十権能は、ゴーレムでありながら自らの意思を持つ、特殊な個体だったのだと思われます。そんな彼があなた様に心を折られ、配下として使役されるに至りました。それでその過程で、まあ、何と申しますか…… 古びた家電が故障したが如く、自らで判断する機能を失ってしまったとか、そんな流れじゃないかなぁ~と。うん、多分それですよ! 私、自信ありありです!」
こいつ、遂にリドワンを家電と言い切りやがった! しかも確信した風だった割に、結構適当な推理だった!
「むっ、まだ私を疑っていますね、あなた様!」
「いや、だってさぁ……」
「だってもヘチマもありませんよ。ヘチマだって食べられるんです! その証拠に、リドワンはあなた様の命令を受ける事で、初めて行動を起こしたじゃないですか。リドワンの意思は消失しましたが、契約を結んだ以上、主の命令は受け付ける状態にはあるのです。ほら、試しにもう一度、リドワンに命令してみてください」
「お、おう」
果たしてヘチマのくだりは何だったのだろうか? そんな些細な疑問を抱きつつ、今度はリドワンに念話で指示を送ってみる。
『リドワン、盾になれ』
その直後、リドワンは剣の形態から瞬時に変形。俺の全身を隠せるほどに、大きな大きな盾へと姿を変えるのであった。次いで、それ見た事かと得意気なメルの表情が視界に映る。
「……あながち、メルの推理も間違ってなかったり?」
「だからそう言ってるじゃないですか。しかし、こうなっては最早彼は、十権能でもリドワンでもありませんね…… あ、そうです。あなた様、クロトやアレックスの時のように、彼に新たな名前を与えては如何でしょうか? 敵だった者の名前をいつまでも呼ぶのもアレですし、そうした方が馴染みやすいです」
「え、それってアリなのか?」
「大アリです。何と言っても、これは歴とした召喚士の権利ですからね!」
結構召喚士をやってるつもりだったけど、それが権利だったのだと今初めて知ったのだが。まあ、良いけどさ。
「えーっと…… 元がリドワン・マハドだろ? マハド、マハド――― あっ、凄く守りが固いから、ハードって名前はどうだ?」
「少々安直過ぎませんか? もっとあなた様のポエムセンスが光る、独創性が光る個性豊かな名前を期待していましたのに」
「頼むから、そんな期待を勝手にしないでくれ…… 何かこれ以上長引くと怖そうだし、ハードに決定! 決定ったら決定! よろしくな、ハード!」
勢いのまま盾となったハードを翳し、改めて仲間入りを祝福する。今までとは毛色の違う仲間、いや、武器? だけど…… まあ、兎も角今はアレだよ。
「……でかくて重くて掲げ辛いから、やっぱり適度な大きさの杖になってくんない?」
「雰囲気ぶち壊しですね、あなた様」
こうして俺達は、ハードを正式に仲間へと迎え入れるのであった。
「そういえば、ハードはどの程度まで変形が可能なのでしょうか? 権能の力がどの程度残っているのかも気になりますね」
「それを言ったら、俺のイメージがどの程度まで反映されるのかも確認しておきたいな。この際だから、徹底的に検証しておこうか。ハード、今夜は寝かせてやらないぞ?」
「あなた様、それは私に言う台詞! 私に言うべき台詞ですから!」
有言実行、ハードの機能を洗い出す為、俺達は夜が明けるまで調査を続けるのであった。