軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第126話 奇跡的な再会

権能顕現、ね。変身能力の一種として認識しておこうか。で、新たなる奴の武装は――― 左右の腕、脚部に一体化した重火器が複数丁、先ほどよりもごつい機関銃が両肩に備わり、翼にも新たに刃のような巨大な兵器が追加されているのを確認。それに、さっき言ってた爆発反応装甲とやらも気になるな。 大食の毒泥沼(マッドグラトニー) を一瞬で吹っ飛ばしたあの光景から察するに、衝撃を与えたら爆発でもするんだろうか? 見た感じの威力からして、俺自身も軽く吹っ飛べる。なるほど、迂闊に近づくどころか、触れるのにも命懸けになった訳か。絶対的な防御に加えて、武装もここまで潤沢とは……

「ハハッ、この欲張りさんめ!」

「欠片も残さん」

耳を塞ぎたくなるような銃声の嵐。呑気に分析している暇はなさそうだ。流石にこれだけの銃を一斉掃射されては、弾幕の中に躱す隙間は最早ないだろう。大急ぎで弾幕の外に出てしまうか? もしくは、ルキルを盾にしてみるとか? あ、いや、最初のやり取りからして、こいつらの関係は良好とは言えないものだった。その気になれば、リドワンはルキルを見捨てる事を選ぶと、容易に想像できる。近くにはメルもいるし、下手をすれば真下の結界に攻撃を通す事になってしまう。これは却下だな。となれば…… あっ。

「良いもん見っけ!」

俺は全速力で上空へと舞い上がり、丁度良さそうな盾の下へと急ぐ。

「逃がすと思うか?」

その盾とは例の巨大な杭の事だ。俺を追いかける奴の銃撃、その射線上に杭が入れば、破壊を恐れて奴は銃撃を止める可能性がある。

「笑止」

あれ、おかしいな? 攻撃をぶっ放す射程範囲に巨大杭が入っても、リドワンは一向に銃撃を止める気配がない。相変わらずのトリガーハッピー状態で、弾幕が迫って――― 取り敢えず、杭の後ろに緊急退避!

―――ガガガガガガガガガッ!

俺が杭の後ろへと隠れた次の瞬間、銃弾と杭とが衝突する騒音が鳴り出した。へえ、驚いたな。リドワンが構わず銃撃を続けた事もそうだけど、この杭もあの弾幕攻撃に耐え続けている。この杭もリドワン並みに頑丈って事なのか? それとも、この杭も能力の対象になってる?

「貴様、 聖杭(ステーク) を盾にするつもりか?」

「丁度良いところに浮いていたもんでな! というか、もっと大きな声で喋ってくんない!? 銃撃の音がうるさくて、聞こえ辛いんけど!」

心境的には直ぐ隣で工事をされている気分である。

「ふん。ならば、そのまま耳を澄ますと良い」

「あ?」

盾としている巨大杭を避けるようにして、何かが俺の左右に投じられて来た。銃弾ではない。もっとこう、爆弾的な形状をした―――

「―――スタングレネードぉ!?」

そう口にした直後、眩いにもほどがある閃光が、耳をぶっ壊す気しか感じられない爆音が、俺を容赦なく襲った。いっつぅぅ…… ク、ククッ、なるほどなるほど、そんな搦め手もアリなのか。目の眩みと耳鳴りが酷い。が、これは白魔法でどうとでもなる。問題なのは、今の一瞬でリドワンを見失ってしまった事だ。銃撃が止まり、さっきまで杭の向こう側にあった奴の無機質な気配も一緒になくなっている。

―――ギギィィィン!

「まあ、そう来るわなッ!」

アフターバーナーの噴出音で、真上から奇襲を仕掛けようとしているのが瞬時に分かった。目と耳が死んだ状態のままだったら危なかったんだろうが、それらは既に回復魔法で復帰済み。リドワンが振り下ろした刃の翼を、 剛黒の黒剣(オブシダンエッジ) で表面をコーティングした黒杖で次々と受け止めて行く。迫り来る翼の数は多く、また例の如く強度も凄まじい。コーティングが削がれる度に付与し直し、また防ぐ。これを一通りいなした後、渾身の 多重衝撃(ハイパーインパクト) でリドワンを吹き飛ばした。が、その瞬間にリドワンの装甲が爆発を起こし、爆炎と吹き飛んだ表面装甲の一部が、俺に襲い掛かる。

「……そのしぶとさ、蝿どころではないな。貴様、名前は何という?」

粘風反護壁(リヴェカウンターガム) での炎の受け流し、そして飛んで来た装甲を杖で直接弾き飛ばす事で、何とか窮地を脱する。いなし切れなかったダメージはその都度に瞬間回復だ。しかし、やばいな。ああ、こいつはかなりやばい。だってさ、この戦いが始まって以来、俺の口元はにやけっ放しだ。明日辺り、表情筋が筋肉痛になっていそうだ。

「……ケルヴィン、ケルヴィン・セルシウスだ。アンタの名前はリドワン・マハドだったか? 覚えておくよ、素晴らしい好敵手だったってなぁ!」

「ならば、貴様の名もデータの一つに加えてやろう! 劣等種とは思えぬほどに、骨のある者だったとなぁ!」

ところで刀哉、弟子の技をパクるのも師匠の特権だよな? という事で、黒杖に 天上の神剣(ディバインセイバー) を魔力超過込みで付与する。いつか見た光り輝く剣、死神という二つ名を持つ俺には似合わないかもしれないが、こいつが現状での有効手段、その最善手だ。そして、こっそりともう一つの魔法も無詠唱で唱えておく。

対するリドワンは全身に生えていた銃を剣などの近接武器へと形態を変え、接近戦に特化していると思われる姿になった。へえ、こんな瞬間的に武装を様変わりさせられのるか。『保管』を使って装備を入れ替えたというよりも、刀哉やセルジュが持つ聖剣ウィルのような異能性を感じてしまう。絶対的な防御力もそうだが、 堕天使(ゴーレム) としても大変に興味深い体だ。 ……あの体、欲しいなぁ。

「その首を落とす!」

「悪いが、俺の首は先約済みだッ!」

これは欲望に駆られ、欲望を満たす為の至高の戦い。まあ、そもそもの目的は多少違うような気もするが、何事にもパッションは必要だ。欲望が渦巻き、欲望が欲望を呼ぶ。俺はそんな本能に従って、リドワンに向かって行った。

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「ハァ、フゥ…… ったく、塔と山を降りるのも厄介だったが、首都までの道のりも半端ねぇ……! にしても、あのドンパチ…… 十中八九、マスター達がやってんだよな。あんな空高くで戦うって、正気の沙汰じゃねぇぜ、全く……!」

彼方の空で繰り広げられる極彩色を遠目に見ながら、そんな呟きを漏らしたのはパウルであった。ケルヴィンに留守番を命じられたが、いても立ってもいられず、独自に首都を目指して出発――― したまでは良かったが、その道のりは大変に長いものだった。氷の塔と霊氷山を大急ぎで下り、道中で襲って来たモンスターを倒し、地図を読み間違えて迷子に。それから暫くして、遠くの空に見える激戦を目印に向かえば良い事に気付き、今に至る訳だ。正直なところ、まだまだ首都は遠い。パウルが首都に到着する頃には、もう戦いは終わっていそうであった。

「いや、マスター・ケルヴィンの場合、長引けば長引くほどエンジョイしている可能性もあるか……? よし、ワンチャンある!」

そんな事を考えながら獣道を進むパウル。まだ登山登塔下塔下山の疲れが残っているせいで、上手く考えが纏まらない様子である。

「クッ、なぜに余が道なき道を進まなければならぬのだ。余が進む道は正道にして王道、堂々と正式なルートを行進すれば良いものを……!」

「エドガー様、今回ばかりはそれは避けた方が良いかと。どこに堕天使達の目があるか分かりません」

「そうッスよー。つか、この話題挙げるの何回目ッスか? 弱音を吐くのもほどほどにしてほしいッス!」

「馬鹿、それが不敬だと言っていると言うに!」

また、だからこそ直ぐそこにまで迫る者達の気配も、ここまで察知できなかったようで。ちなみに、ここまでとは獣道でかち合うまでの事を指す。

「ん?」

「む?」

「え?」

「……パウル様? おお、パウル様。王族を辞めて冒険者になった破天荒王子、エドガー様の実の兄であるパウル様じゃないッスかー。こんなところで奇遇ッスねー。チッスー」

「「「………」」」

パウルが偶然出会ったのは、ルミエストで行方不明となっているエドガー、アクス、ペロナの三名であった。あまりに奇跡的な再会だったせいか、ペロナ以外の三人は放心状態が暫く続いた。