軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第93話 学園の危機

「た、ただいまの試合については、対抗戦運営部にて協議致します。ラストを飾る第五試合に入る前に、少し長めの休憩時間を取りますので、今のうちに観戦の準備をしておいてくださいね~。ではでは、また後ほど! ……ミミミ、ミルキー教官どうしましょ―――」

よほど動揺しているんだろう。実況の子、放送を切り終える前に本心を曝け出しちゃったよ。

「本当にどうしたんだろうな? うちの総長も向こうの学院長も」

「そうねぇ、未だにここへ戻って来ないというのも不可解よねぇ」

「二人して密会でもしているんじゃないかい? まっ、何をしているかは知らないけどねぇ」

「バッケちゃん、ま~たそんな事言ってぇ。スズちゃんに叱られちゃうわよん?」

しこたま酒を飲んでいるバッケであるが、別に酔っていらん事を言っている訳ではなさそうだ。つまり、これで平常運転。ファーニスの王様、毎日大変なんだろうなぁ。俺と会った時も、心なしか疲労していたみたいだったし。

「アート学院長、ルミエストが危ないとか、そんな事を言ってたか? 何でんな事を言い出したのかは知らないけどさ」

「噂によるとアート学院長には、周りの者達に迫る危険を察知する力があるらしいわよん。それも、結構な規模のねん」

「所謂『危険察知』の拡張版だわな。それを使って学園の経営やら生徒の安全やらを守って来たとか、そんな話もあるくらいだ」

「へえ、そんな力が…… って、それじゃあさっきの話、尚更真実味が帯びてるじゃないか! 何だ何だ、テロでも起きるってのか?」

「ハハハッ、テロと来たか! S級冒険者がこれだけ集って、それに対抗できるほどの生徒も居るこの場所で、そんな馬鹿な真似ができたら大したものさね!」

「ハッハー! その時は俺が撃退してやるぞ!」

「ちょっとー、笑い事じゃないんだってばぁ。これだけ厳重に警備している理由を考えてみなさいよん。可能性としては十分にあり得るわよぉ」

まあ、確かに。今のルミエストには各国の有力者達が集まっている。となれば、それだけ敵対する者も多くなるってものだ。 ……大事をとって、動ける仲間達に警戒にあたってもらうか。ええと、義父さんやジェラールがいつ暴れ出すか分からなかったから、外のキャラバン付近に移動してもらったんだったか。そっちはそっちで心配だが。

『セラ、アンジェ、シュトラ、聞こえるか?』

『あっ、ケルヴィンお兄ちゃん!』

『お疲れ~。なんだかそっちは大変な事になってるみたいだね』

『でも、こっちはこっちで大変な事になっているのよ! 今、すっごく忙しいんだから! 間が悪い!』

『ええっ……』

連絡するなり、いきなりセラに怒られてしまった。

『えっと、私が説明するね』

『頼む、シュトラ』

『第一試合が終わってからグスタフのおじ様が、第三試合が終わってからジェラールお爺ちゃんが段々ヒートアップしちゃって。それから色々あって、今は何とか大人しくしてもらっているところなの。目立たないように私が結界を施して、ゲオルギウスやロイヤルガードのお人形達で押さえ込んで……』

『その隙に私が『血染』を使って、強制的に体を動けないようにして!』

『止めに私が対S級モンスター用の痺れ薬と眠り薬を注入して、完全に鎮静化させようとしたんだけどさ、これが笑っちゃうくらいに抵抗されちゃって。子供と孫の為ならば、この程度の試練打ち破らん! みたいなノリで、段々と耐性みたいなものが出来てきたの。ジェラールさんに至っては、わざわざセラさんに命令させて、実体化までしてもらったんだけどね~』

『アンジェお姉ちゃん、笑い事じゃない段階にまで来ているんだけど?』

『うん、そうなんだよね。本当にどうしよっか……』

途端に困り果てた口調になるアンジェ。さっきまでのは空元気だったのか。というか、そこまで拘束してまだ元気な爺ーズは一体何なんだろうか? セラの固有スキルまで使ってんだろ? 義父さんに関しては同じ能力持ちだから、そこで対抗しているのかもしれないけど…… ジェラールについては、何で抗えてるのって感じだ。まさか、自称試練に抗う最中に新しい能力に目覚めたとか、そんな冗談みたいな覚醒が? ……あの爺馬鹿っぷりを考えると、絶対にないとは言い切れないのが凄いな。

『私達も頑張ってみるけどさ、次のケルヴィンの試合の相手、クロメルでしょ? 正直その試合の内容次第では、これ以上押さえられるかどうか怪しいんだよね』

『そ、そんなになのか?』

『そんなに!』

『ジェラールお爺ちゃんもグスタフのおじ様も、クロメルの事が大好きだから、その、何かの拍子に怒るような出来事があったら…… 私の計算では、七割くらいの確率で脱出されちゃうかなって』

それ、試合後にほぼほぼ覚醒するって事じゃないですか。シュトラの計算だから、これ以上ないくらいに信頼できる情報だし。

『という訳だから、できるだけ平和的に終わらせてね、ケルヴィン!』

『怒りの矛先がケルヴィン君に向かうのは、むしろバッチ来い! って感じなんだろうけど、流石に周りと巻き込む訳にはいかないでしょ? 任せたよ、ケルヴィン君!』

『ルミエストの未来は、お兄ちゃんの肩に掛かってるよ! 頑張って!』

一方的に励まされ、一方的に意思疎通が切られてしまった。 ……ルミエストの危機ってさ、もしかしてうちの関係者が原因なんじゃないか? うわ、一気に不安になって来た。本当にそうなったら、申し訳ないとかそんなレベルの話じゃ済まないぞ、おい。

……念の為、クロメルに護衛を付けておこう。スズは菓子折り買いに行ってるし、オッドラッドは試合内容が少しばかりアレだったから、学園関係者に変な目で見られるか。となれば――― よし、奴らに任せてみよう。

「あー、あー…… 誰(たれ) かある!」

気配を探り当て、そちらに向かって叫ぶ俺。

「おい、どうした死神? お前まで変になったのか? いや、元から十分に変だったが」

「お前達と一緒にしないでくれよ。いやさ、こうやって呼んでやると、来るんだよ」

「あ? 男か? 良い男か?」

「あらん、どんな素敵な殿方が来るのかしらん?」

こいつら……

―――ダッダッダッダッ!

俺が叫んでから暫くすると、慌ただしい足音が聞こえて来た。んー、ちょい遅いぞ。

「シンジール、華麗に参上! 私を呼んでくれたのかな、マスター?」

「おい、マスター! 急に呼び出すんじゃねぇよ! 飯食ってたんだぞ!?」

俺の呼び出しに応じ、ダッシュでここまで来てくれたのは、今回の対抗戦でメンバーから外れてしまったA級冒険者、シンジールとパウル君だ。片や肩で息をしながらも華麗に、しかしながら口元にお弁当を付けて、片やその辺の売店で購入したであろう、ご当地飯を手に持っての参上である。 ……何気に二人とも、対抗戦を別の形で満喫していたようだ。

「主の命には迅速に対応するべきとか言って、さっきの言葉を耳にしたら直ぐに集合できるように、スズが全力でこいつらを仕込んだんだよ。いやー、使ったのは今回が初めてだったんだけど、マジで集合するのな、お前ら」

今更だけど、さっきの合言葉ってトラージのツバキ様とかが、たまにやっていそうな台詞だよな。天井裏とかから忍者が出て来そう。

「おう、そんな事を確認する為にわざわざ呼び出したのか? 殴って良いか?」

「パウル、落ち着き給え。マスターがそんな事で呼び出す筈がないじゃないか。きっと重要な任務を私達に授けるつもりなのさ! そうなのだろう、マスター・ケルヴィン!?」

話が早くて助かるな。けど、俺の後ろに居る『女豹』と『紫蝶』が、「ほう……」とか言っているのが若干不吉だ。二人とも、強く生きるんだぞ?

「ああ、実はだな―――」