作品タイトル不明
第69話 出場者達
エドガーとダイアが担架で運ばれ、対抗戦メンバーに選出されなかった生徒達も模擬戦場を後にした。これによりこの場に残ったのは、リオンら対抗戦メンバーの選出を行ったメリッサ、そして特例的に教官側からメンバー入りしたアートのみとなった。
「これにて正式に対抗戦のメンバーが決まった。学院長として、改めておめでとうと言っておこう」
「んんっ? 学院長、最初からこうなるって分かってたっぽくない?」
「ハッハッハ、まさか! ただまあ、予定よりも早く決まってしまった事だし、当日の作戦会議でも少ししておこうかな?」
「そういう事でしたら、生徒会室をお使いください。ここから近場にありますし、この時間なら誰も使っていませんので」
「流石はメリッサ君、準備が良いね。ミルキー教官、冒険者ギルドへの連絡を頼めるかな? こちら側のメンバーが決まったってね。ま、その詳細はこれから詰める訳だけど」
「承知致しました」
一同は生徒会室へと移動する。生徒会室は床に赤絨毯が敷かれ、天井にシャンデリアが当たり前のように設置されているなど、リオンの想像よりも格段に豪華な造りとなっていた。当然、テーブルや椅子も同様の仕様である。ベルも「まあまあの部屋ね」と、及第点を与えていた。
「それではアート学院長、私はこれで失礼致します」
「ああ、メリッサ君。すまないけど、まだ残ってもらっても良いかな?」
「はい?」
「例年であれば私が対抗戦の監督を務めていたんだが、今年は実際に出る側になってしまっただろう? 万が一に備えて、監督は別の人に任せたいんだ。という訳でメリッサ君、よろしくお願いするよ」
「……はい!?」
どういう訳か、先ほどまで退室しようとしていたメリッサが、ルミエスト対抗戦軍団の監督役を務める事になってしまった。これには彼女も驚きを隠せないようだ。
「……これより、対抗戦の作戦会議を始めます」
しかし、流石は栄光あるルミエストの生徒会長メリッサ・クロウロードと言うべきか、間髪入れずに指定された役職を全うしようと奮起していた。
「切り替え早っ!? せ、生徒会長ちゃん、それで良いん?」
「この程度の事、生徒会長にとっては日常茶飯事です。確かに驚きはしましたが、尾を引くほどではありません。アート学院長が望まれるのであれば、全力で監督の任を賜りましょう」
「流石ね。メリッサ、この学園を卒業したら、私の国で働く気はない? 北大陸と西大陸を結ぶ橋渡し役、貴女ならきっとできると思うの」
「……即答はできませんが、前向きに検討させて頂きます」
何だかんだありつつも、ベルはメリッサの事をそれなりに気に入っているようだ。
「まずは簡単に対抗戦の概要説明を。例年の対抗戦では一対一の試合が五戦でしたが、先ほどアート学院長の話にもあったように、そのうちの一試合がタッグでの戦いになります。ですので、まずは誰と誰がペアとなって戦うかを決めたいと思うのですが…… 誰か、立候補される方はいらっしゃいますか?」
「はいはいッ! それなら私とリーちゃんが出るし! ズッ親友だし、コンビネーションもばっちしっしょ!」
稲妻の如き挙手からのマシンガントークが発せられる。もちろん、この特徴的な喋り方はラミのものだ。
「僕と雷ちゃん? あっ、なるほど! 同じ赤魔法の使い手で、それも雷に特化しているから、二人だと威力が倍増するって作戦だね!」
「……うん! 何だかよく分からないけど、多分そんな感じで良い感じ!」
完全に直感からの発言であったようだ。
「ラミさんの発言ついては、その場の勢い感が強い気もしますが…… 他に立候補者がいなければ、私は大いにアリだと思います。リオンさんの仰る事は尤もですし、元々ご友人という事で、試合中の連携もやりやすいでしょう。如何でしょうか、学院長?」
「今の私は一参加者なのだから、一々意見を求めなくても大丈夫だよ? だがまあ、その上で言うのであれば、私も賛成かな。理由は全てメリッサ君が言ってくれた」
「ありがとうございます。他の皆さんは?」
「タッグで戦うなんて柄じゃないわ。誰かがやってくれると言うのなら、それで良いんじゃないの?」
「拙者も構いませぬ」
「わ、私も大丈夫です」
全会一致、リオンとラミが二対二の戦いに参加する事が決まった。
「次に対抗戦の出場順についてです。過去の対抗戦をご覧になられた方はもうご存知かもしれませんが、対抗戦は予めメンバーが出場する順番を決め、運営委員会にその情報を提出する必要があります。色々と理由はありますが、まあ伝統的な意味合いが強いですね」
「リオン君とラミ君の戦いは三試合目になるから、それ以外の順番決めになるね。ちなみにだけど、もう冒険者ギルド側は選考メンバーと出場順を提出しているらしい。もちろん、その内訳の全ては私も把握していないから、変な期待はしないでくれ」
残るメンバーはベルとクロメル、グラハムにアートだ。
「相手が分からないのなら、順番なんて話し合ったって仕方ないじゃないの。私、一番最初で良いわ。それで敵の出鼻を挫いてあげる」
「それならば、次戦は拙者にお任せあれ。必ずや、我が軍に勝利を献上するでそうろう」
「この美しき造形がラストに相応しいという皆の気持ちは尤もだ。けれども特例とは言え、教官の私が最後を飾る訳にはいかない。という訳で、四戦目は私に任せたまえ。何、悪いようにはしないさ」
「あ、あれ? という事は、えと、私は……?」
「大トリだね」
「えええっーーー!?」
クロメル、魂の叫び。
「わた、わたわた、私そんな責任重大なところ、自信ないないさんです!」
「そう謙遜するな、クロメル君。私はね、潜在力では君が一番だとさえ考えているんだ。美しきこの私のように、もっと自信を持ちなさい。さあ!」
「ででで、でも…… ううっ、確かに怖がっても仕方ないです、よね? パパとママの娘として、私なりに頑張ります」
「おおっ! その意気でござるよ、クロメル殿! 武士として、共に活躍しましょうぞ!」
「えと、武士さんではないです……」
こうしてルミエスト側のオーダーは、一戦目にベル、二戦目にグラハム、三戦目にリオンとラミ、四戦目にアート、最終戦にクロメルが出る事となった。
「ところでアート学院長、冒険者ギルド側のメンバーはどの程度把握されているのですか? 完全には分からぬとも、一部は既に把握されていると存じますが」
「うん? ああ、そうだね。ちょうど良い機会だし、今のうちに情報共有しておこうか。エヘンコホン」
咳払いで声の調子を整えたアートは、まるでオペラでも歌い出すかのような高らかなポージングで、自らが知り得た情報を語り始める。
「私の耳に入っているのは、対抗戦に出て来ると確定したS級冒険者の名だ。まずは冒険者ギルドのトップに君臨するギルド総長、『 不羈(ふき) 』のシン・レニィハート。私の次に古株のS級冒険者で、掴みどころがないのが特徴かな? 次にS級冒険者でありながら火の国ファーニスの王妃でもある、『 女豹(めひょう) 』のバッケ・ファーニス。暇潰しと男漁りをする為に参戦するとか、かなり不純な噂が出回っているね。三人目はここにいるリオン君の兄、そしてクロメル君の父である、『死神』のケルヴィン・セルシウス。二人も認める根っからのバトルジャンキーらしいから、この対抗戦に参加するのも何ら不思議じゃないだろう。最後に昇格式を今度予定している最新鋭、『 紫蝶(むらさきちょう) 』のグロスティーナ・ブルジョワーナ。ただの変態だ」
「何で最後だけ投げやり!?」
残念な事に、アートの話にはかなり個人的な視点が混じっていた。
「残る二枠はまだベールに包まれている。が、少なくとも彼らに準ずる力を持つ強者が参加するのは、まず間違いないだろう。さあ、私の可愛くも強き生徒達。勝つ為の対策を練ろうじゃないか」