軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第39話 パブ三大冒険者

ダンジョンの行き止まり部屋にてシートを広げ、ピクニックの弁当としては少々豪華過ぎる、エフィル特製弁当を箸でつつく。うん、今日も今日とてベリーベリーデリシャス。これ以上の弁当はこの世に存在しないだろうと、そんな事を確信させてくれるくらいに美味しい。

「……ッ! ……ッ!?」

「あらあらまあまあ」

「……(はぐはぐ)」

で、そんな風に満足する俺の向かいでは、現在立ち入り禁止となっているダンジョンの中にいた先客達が、貸したフォークを片手に無我夢中な様子で食に興じている。一口食べる毎に色男は変顔を晒し、少し歳の離れた淑女は「あら」と「まあ」を交互に連呼、トンガリ帽子を被った小柄な魔法使い少女は、無言のまま料理を口へ掻き込んでいる。何と言うか、色々な意味で賑やかな食事風景だ。

「ハッ! な、なぜ私は厚かましくも食事を頂いているんだ……!? 如何に顔が良くとも、道理を弁えなければならない時がある! 私はこのようなご馳走を頂ける立場ではないというのに!」

賑やかというより、どちらかというと騒がしいかも。

「そんな事を気にするなって。俺の方から誘った話だ」

「し、しかし……!」

「それよりも、そろそろ自己紹介をしてもらって良いか? こう言っちゃ失礼かもだが、君らの事はよく知っていなくてさ」

「っと、これは失礼した。私はA級冒険者のシンジール。パブの三大冒険者の一人、美し過ぎる冒険者と言えば、流石に分かるかな?」

「いや、まったく」

「え゛?」

「私はリスペクトと申します。年齢による衰えは隠し切れませんが、年の功を活かして何とか冒険者稼業を凌いでいるところなんですよ」

「………(はぐはぐ)」

「この子はアイスちゃん、見ての通り可愛らしい魔導士さんです」

「リスペクトさんとアイスちゃんですね。よろしくお願いします」

「え゛っ!? な、なぜにレディ・リスペクトには敬語!?」

なぜか知らないが、シンジールは愕然としている。顔が凄まじくうるさい。

「いや、目上の人に敬語は普通だろ。リスペクトさんも敬語使ってくれてるし」

「あ、ああ、そういう事か。なるほどね、それなら納得だ。ちなみに私は今年に二十歳になる。ケルヴィンさん、貴方はおいくつかな?」

「二十三」

「よし、それならオーケー! 神々しい私は立ち直った!」

何だろうか、この既視感。あ、分かった。この美意識と騒がしさ、最近出会った誰かに似ていると思ったら、ルミエストのアート学院長だ。種族が違うからそんな事はないんだろうけど、親戚かってくらいに親和性がある。

「それとこの天上の如き美味なお弁当、どうもありがとう! 私達のパーティもレディ・リスペクトがたまに作ってくれるんだが、それに引けを取らない出来だったよ! 端的に言って美味しかった!」

「それは良かった」

「いいえ、私の料理なんて足下にも及びません。それほどに途轍もないお弁当でした。調理した方に、今度お料理を習いたいくらいです」

「………(はぐはぐ)」

「それなら今度紹介しますよ。アイスちゃんの好みにも合ったみたいですし、一緒にいらしてください。訳あって冒険者の仕事を休業しているんで、エフィルも喜ぶと思います」

「まあ、エフィルさんって、あのエフィルさんですか? 訳あって…… 休業中…… まあまあまあ!」

何だろうか、また既視感である。あ、分かった。この噂好きで勝手に色々と察してくれる感じ、ミストギルド長にそっくりなんだ。たぶんだけど、リスペクトさんはミストギルド長とお隣さんかってくらい親和性がある。

「………(はぐはぐ)」

「ねえねえ、美味しい? こっちのデザートは僕のお勧めなんだぁ。食べてみない?」

「………(コクコク)」

リオンは早速アイスちゃんと仲良くなったみたいだ。端的に言って癒し。っと、和んでる場合じゃなかった。そろそろ本題に入らねば。

「シンジール、弁当つついて親交も深めた事だし、いくつか質問して良いか?」

「ええ、もちろん。私に答えられる事なら、何でも答えるとも!」

「そいじゃ一つ目。今このダンジョンは立ち入りを禁止されている訳だが、何でシンジール達はこんなところにいるんだ? 見たところ素行不良な冒険者って感じでもないし、何か理由があるんだろ? あ、ちなみに俺達はシン総長から特別依頼を受けて来てるから、俺達への逆質問はなしで」

「……え゛? 立ち入り禁止、されていたのかい? いや、まったくの新情報なんだけど、それ……」

きょとんとするシンジール。どうやら嘘を言っているようでもなく、本気で知らなかったみたいだ。

「先日ケルヴィンさんとギルド本部ですれ違った直後にこの場所へと向かったので、もしかしたら立ち入りを禁止する報と、ちょうど入れ違いになったのかもしれませんねぇ」

リスペクトさんが補足してくれた。うん、急な知らせだったようだし、それなら十分にあり得る。

「なるほど、そういう事だったのか…… ケルヴィンさん、重ねてすまなかった。聞き及んでいない事とはいえ、ギルドの決定は冒険者にとって絶対。完全にリーダーたる私の不備だよ。未探索ダンジョンを手放すのは正直言って惜しいけど、シン総長に指名されたケルヴィンさんこそが、正当にこの場所を探索する権利がある。私達は大人しく帰還するとしよう」

「待て待て、そう急ぐなって。まだ聞きたい事があるんだ」

シートから立ち上がり、この場から去ろうとするシンジールとリスペクトさんを引き留める。アイスちゃんだけは座ったまま、未だ弁当に夢中だった。

「うん? それは構わないけど、これ以上何を聞こうって言うんだい?」

「この国で活動するトップ冒険者について教えてくれないか? 知っているとは思うけど、俺達はパフに来てからまだ日が浅くてさ。同業者についての知識もさっぱりなんだ」

「あ、僕も聞きたい聞きたい! パブトップレベルの冒険者さんって、どんな人達?」

「クゥン……(お腹いっぱい……)」

「―――! 流石はS級冒険者、良い心掛けじゃないか! 微力ながら、この私が教えて差し上げよう! まずはご存知この私、大陸に轟く美形冒険者シンジールについてだけど―――」

瞳を輝かせながら、シートに再度ライドオンするシンジール。よほど自分について力説したかったのか、その判断の早さは尋常ではなかった。説明自体も尋常でなく長かったので、ここでは割愛させてもらう。要約するとシンジールが魔法も使える万能型鞭使い、リスペクトさんが宝箱の鍵開けから罠の察知をもこなす武闘家、アイスちゃんが氷を操る正統派魔導士であるらしい。いずれもA級冒険者最上位の実力者(自称)との事だ。

「私以外の手練れとなれば、同じ三大冒険者に名を連ねるパウルとオッドラッドのパーティかな。パウルについては、もうケルヴィンさんも知っているだろ? 噂ではお連れの女性陣に手を出されて、顔の原形が分からなくなるくらいに、それはもうボッコボコにしたと聞いてるよ」

「いやいやいや…… 喧嘩は売られたけど手は出されてないし、そこまでボコボコにもしてないって。気絶だけさせて、樽の中に叩き込んだたけだ」

「そうなのかい? その樽を土の中に埋葬したとか、海の底に沈めたって話もあったけど……」

なあ、君らの中で俺ってどんなイメージなの? いやまあ、確かに冒険者名鑑でもS級冒険者は爆発物扱いだけどさ。

「ま、まあアレだよ。パーティ人数が多く、総合力に優れているパウル達を容易に一蹴したケルヴィンさんは、やはり凄いという事さ。尤も、A級で今一番輝いている冒険者は、まず間違いなく私達なんだけどね!」

「総合力のパウル、意識高い系のシンジール、と…… なるほどな。それで、残るオッドラッドって奴んとこは?」

「魔法を一切使わないパワー系のパーティだね。確かケルヴィンさんをギルド本部で見た時、彼は私の隣にいたっけな。覚えてないかい? 無駄にいつも大声だから、悪い意味で目立っていたと思うよ」

ああ、あの時の。ゴルディアーナの事を口にしていたっけ。だから自分達のパーティは力自慢が多いと、そういう事だろうか。ただ、ゴルディアーナってパワーだけじゃないんだけどなぁ。そのパワーと同じくらい鍛え上げた武の技術、強靭なメンタル、圧倒的な知識と経験を併せ持ってこその超人なんだ。筋肉を正義とするのなら、是非ともそこまで頑張ってもらいたい。

しかし、なるほど。順当に考えれば、シン総長が選定するメンバーはこの中の者達になる筈だ。さて、どう鍛えていくべきだろうか。