軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第574話 エコでエゴな戦い

「皆様、仮にここでの戦いにご主人様が勝利された場合、この後に再び各国を巡る事になります。時間を考慮して、そろそろ始めた方がよろしいかと」

纏まりそうにない4大国同盟の愉快な仲間達に対して、ロザリアがそんな忠告をしてくれた。ツバキ様をはじめとして、そうだったそうだったと暴走気味だった会話がストップ。流石は我が屋敷のお姉さん的メイド竜、締める時はきっちりと締めてくれる。

「コホン! 改めてここでの勝負形式を説明しようぞ。見ての通り、今この場には各国の主要人物達が集っておる。これからケルヴィンにはそんな妾達と戦ってもらうのじゃが、制限を2つ加えさせてもらう。そのまま戦ったのでは、妾らに勝ち目はないからのう」

「俺は純粋な殴り合いで良いと思ったんだけどよ、それじゃ勝負にならねぇって他の奴らが言うんだよ。ま、俺がケルヴィンに負けちまった事があるのも事実だ。わりぃが、この姫王の言う制限とやらに従ってくれ」

「こればっかりは、実力的に仕方ねぇんだよなぁ。俺だって毎日崖に突き落とされているんだし、いつかは……!」

アズグラッドやサバトは少しばかり不満らしい。とは言え、戦いに制限を課すのは第2の試練でも経験済み。今更俺がどうこう言うつもりは毛頭ない。逆にハンデを課せられる事で、対等な戦いになるのなら喜んで手錠でも足枷でも付けて――― あ、いや、俺はマゾではないからな?

「制限その1、妾らを傷付けてはならん!」

その1からすげぇ制限ですね、おい。

「くく、予想外といった表情じゃな。痛快痛快。じゃが、尤もらしい理由もあるのだ。妾らは王族、或いは重要な役職に就く者が殆どじゃ。コレット殿の秘術で死ぬ事はないとはいえ、そう簡単に傷付く事は許されん。すまないが、それは理解してほしい」

「別に俺らは構わねぇけどな?」

「なあ?」

「お主ら、普通王族は自ら先頭に立つものではないのだぞ……」

ガウンは王族が戦ってなんぼ、アズグラッドは戦闘大好きっ子だもんなぁ。仕方ないよなぁ。

「妾らにはコレット殿の秘術の力で、一定以上ダメージをもらうと緊急転送される効果が施されておる。ケルヴィンはこの効果が発動せぬよう注意を払いながら、妾らを全員行動不能にしなければならぬという事じゃ。気絶させる、拘束するといった風にな。方法は問わぬ」

「一定以上というと、どの程度で?」

「掠り傷程度であれば問題ないぞ!」

基準がアバウトぉ……!

「制限その2、環境破壊絶対禁止! この湖はトラージが誇る保護指定の貴重な自然環境でな、希少な生物が多岐にわたって生息しておるのじゃ。水を汚したり木々を害する行いはご法度、魔法で地面に負荷をかけるのも駄目とする!」

「……詰まりこの試練、人にも自然にも優しくした上で突破しろと、そういう事ですね?」

「うむ! しか~し、妾らは環境に配慮する事なく攻撃を行うからのう。それらからもしっかりと、この自然を守るのじゃぞ? この『水天ノ一振』は、少しばかり威力があるのでな!」

そう言って、湖の水から薙刀を形成させるツバキ様。フーバーの得物に似ているけど、こっちの方が格は高そうだ。

「なあ、姫王。流石にそれはやり過ぎじゃねぇか? 全部無茶な要求ばっかりになってるぞ」

「トライセンの王よ、何を言っておる。これくらいがちょうど良いんじゃよ。ああ、言い忘れておったが、もし湖に何かあった場合はケルヴィンの体で補ってもらうぞ。くくっ」

ツバキ様が今日一番の悪いお顔をされる。俺は一体何をさせられるんだ、その場合!?

「別に構わないよ。アズグラッド御兄――― アズグラッド。何かあった場合、責任を取らされるのは俺だ。それにだ、それくらいのハンデありでクリアできないようなら、この先の試練は到底突破できない。それを言いたいんですよね、ツバキ様?」

「……うむ!」

今の間は何だろうか。俺を囲うのにもう意地になってるとか、そういう事じゃないッスよね?

「それでは、早速始めて頂いても良いでしょうか? これでも結構ウズウズしているので」

「貴殿の口端を見れば一目瞭然よな。よかろう、ではこのカゲヌイの合図を以って開始としようではないか。 此奴(こやつ) が天に向こうて硬貨を弾く。それが地面に落ちた時が、試練開始の瞬間じゃ。皆、それで良いな?」

一様に頷いてみせる4大国同盟、もちろん俺も同意する。

「ではケルヴィン、存分に楽しもうぞ」

ツバキ様がパチンと扇子を畳んだ瞬間、横にいた覆面の男が硬貨を真上に弾いた。

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―――トライセン・とある砂漠

「鎧袖一触でしたね、パパ!」

「ありがとう。それにしても、クロメルは難しい言葉を知っているんだなぁ。パパは鼻が高いよ」

俺が次の目的地へと向かっていると、肩に乗るクロメルが俺を褒めてくれた。お返しにと、俺もクロメルを褒めてやる。親子でニッコリ心地良い気分だ。同志キルトの懐に俺とアズグラッド連名の招待状を入れておいたし、全てにおいて完璧な戦いができたと自負している。

「ふふっ、シュトラさんと一緒に勉強していますもん。えへんです! あっ、それよりもパパの話ですよ、パパの話! コインが地面に落ちた瞬間、パパが皆さんの首に当てたあの攻撃…… あれって、セラさんが得意とする当て身ですか? 昔、パパがセラさんに憧れて研鑽を積んだという、あのっ!」

「あ、いや、そうなんだけど、詳細まで語られると恥ずかしいと言うか……」

「恥ずかしがる必要はないじゃないですか。憧れた技を努力で会得するなんて、パパはとっても素敵ですよ。ロザリアさんなんて竜の姿だったのに、よく的確に決められましたね? 凄いです!」

「う、うん。それくらい研鑽を重ねたからな……」

確かにクロメルの言う通り、昔セラが首トンをしていたのに憧れて、セラ師匠の下で猛練習していた事がある。それを行った理由は簡単だ。格好良いから、単にそれだけの理由なんだ。だから娘にピュアな瞳でそう迫られると、俺としては何とも面映ゆい気持ちになってしまう。

それでも開幕と同時に勝負を決する事ができたのは、間違いなくその鍛錬があったからだ。あと、前のチェックポイントで刹那を相手した時と同じスピードでやってしまったから、かな? 刹那の剣速を掻い潜る速度で飛ばしたら、そりゃ一瞬で勝負がつくってもんだろう。超高速首トン、我ながら上手くできたものである。

ただ、ここから先は本格的に辛くなりそうだ。あれで漸く第3チェックポイント、まだ半分も終わっていない。それはそれで喜ばしい事だけど、問題はクロメルの能力をどこで使うかだ。うーん、やっぱそれが考えどころ。

「パパ、そろそろ次のチェックポイントに着きますよ」

「次はトライセンの砂漠地帯が舞台だったっけ? クロメルの魔法で涼しくなってるから、真昼間の猛暑も何のそのだ。本当に助か―――」

いつものようにクロメルはべた褒めしようとした矢先、俺は次の対戦相手を目にしてしまう。というか、目が合ってしまう。紅い瞳を 滾(たぎ) らせ、俺の頭部を視線で貫通させんとする者と。

「愚息ぅ、やけに待たせてくれたではないかぁ……! 貴様も偉くなったものだなぁ? ええっ!?」

人気のない(ついでにモンスターの気配もない)砂漠のど真ん中にて、一際目立つ大柄な大魔王が、そしてその周りには戦意に満ちた悪魔四天王が立ち並んでいたのだ。言うまでもないが、グスタフ義父さん、ビクトール、ベガルゼルド、ラインハルト、変態執事の5名である。

「お久しぶりです。義父さん達もこの催しに参加していたんですね」

「何がお久しぶりだ。1から3までのあの程度の戦い、速攻で終わらせ我に会いに来るのが筋であろう。夜明けから待っていたのだぞっ!」

よ、夜明けから!? その時、まだバトルラリーを知らされてもいないんですけど!?

「ヒソヒソ(パパ、グスタフさんは実のところ、結構ノリノリで参加されています。スタンバイが早かったのも、楽しみにしていたのが原因でしょう。言葉が辛辣でも、本心ではパパを認めていらっしゃいますから、ご安心を)」

「ヒソヒソ(そうなのか?)」

クロメル、いつの間に義父さんの事をそこまで知り尽くして――― いや、今は眼前の試練を乗り越える方が先決か。

「それはすみませんでした。それで、ここでの戦いはやはり義父さん達がお相手で?」

「当然だ! 『地獄の親馬鹿衆』、ここに見参である!」