軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第554話 最終決戦

―――中央海域

「ええ、ええ! あなた様の全てを、私にくださいね! ではでは、蹂躙を開始します……♪」

賽は投げられた。俺達の戦い、その集大成とも呼べるであろう舞台は、実力を出し合う中で弊害の少ない海のど真ん中だ。世界崩壊の前兆なのか、多少海が荒れたり空が 奈落の地(アビスランド) 色に染まったり、或いは海水を巻き込んで竜巻が発生したりしている。どれもこれもクロメルと比べたら些細な出来事に過ぎないが、短時間でこれなんだ。長引けば今以上な異常気象に発展する恐れがある。軽視はできない。 ……まあ、ちょっとだけ戦いの舞台としては相応しいとか、そんな事も思ったりはしたけどさ。

クロメルと対峙するは飛行する俺とセラに、ボガに騎乗したジェラール。それにプラスして、エフィルと共に前線から離れて狙撃に徹するムドファラクだ。

『うおおおっと、ギリギリか! ギリギリ間に合ったのか!? ケルヴィンの兄貴、助太刀に来たッスよ! この盛大な祭りに参加しねぇ手はねぇッスよね!』

ムドファラクに乗ったエフィル達と入れ替わりで、とんでもない速度で爆走するダハクが到着。更に追加してダハクも参戦、と。遅刻寸前だぞ、この不良め。でも、今は最高に気分が良いから不問。

『ダハク、ボガ。早速で悪いが、開戦の合図を頼めるか? 遠慮はいらない、クロメルなら何だって受け止めてくれるから、景気良くやってくれ』

『お、マジッスか! 今の俺の 息吹(ブレス) 、止まるところを知らないッスよ!』

『おい、ダハク! いいからさっさとやるぞ! 力が 漲(みなぎ) るからって、調子に乗り過ぎなんだよ! おでは知ってるぜ。そういう奴は、毎回痛い目を見る!』

『うるせぇよ、ボガ! 調子が良い時はその波に乗んのが、竜生を楽しむ一番のコツなんだよ!』

『ああん!? なら俺以上の 息吹(ブレス) を出してみろよ! 大噴火の息(イラプションラウドブレス) !』

『言ったなこの野郎!? ぜってぇ俺の 息吹(ブレス) の方が上だかんな! マジですげぇかんな! 腐食退廃の息(ヴェノムバイスブレス) !』

喧嘩するほど仲が良いというが、この場合は仲が良過ぎだ。何もこんな時に、それも感情の抑制が行われている中で、意地の張り合いなんてしなくても良いだろうに。ある意味感心してしまう。

しかし、ダハクとボガの 息吹(ブレス) の威力は本物だった。メルフィーナのステータスで解き放たれた緑と赤の光線は、それだけで大地を跡形もなく消し飛ばしてしまうほど。戦いの合図として相応しく、放った本人達もかなり驚いている様子である。それでも力を発揮できているのだから、メルの加護が上手く機能している事が窺える。

「 終焉の象徴(クルエルディマイズ) ・ 竜哮(ロア) 」

図体の割に、あまりの威力に動揺する2体の竜王。そんなダハクらとは逆に、クロメルは興奮を露わにしつつも冷静だった。機竜に寄生した触手達が一瞬で2つの竜の頭を形作り、あろう事かその大口から漆黒の 息吹(ブレス) を吐き出したのだ。狙うのはもちろん、クロメルに迫るダハクとボガの攻撃。真っ向から衝突した彩り鮮やかな息吹らが、途轍もない衝撃波を周囲に撒き散らす。

「ぐおお……!」

「こん、ちくしょうがっ……!」

2対1での撃ち合いだというのに、両者の余力には明らかな差があった。以前とは比べ物にならない筈のダハク達の 息吹(ブレス) がギリギリで拮抗、いや、押し負けそうになっているのだ。体の構造上、 息吹(ブレス) を吐く感覚というのは分からないが、ダハク達が体の底から気張っているのは十分に理解できる。それだけに汗1つ流さず、片手間に片付けるようなクロメルの余裕が際立って見えた。

『もちっと耐えるのじゃぞ、ボガ!』

『アンタもね、ダハクっ!』

だが、クロメルに迫るはダハクとボガの 息吹(ブレス) だけではない。方舟内部で見せ付けられた圧倒的なスピード、それに見紛うばかりの速度でセラが飛翔し、ボガが密かに発射させていた追尾型の炎塊、 追躡砲火(ヴォルテルム) にはジェラールが乗っている。もちろん、接近を開始したのは俺だってそうだ。

これまでであれば、 息吹(ブレス) の衝撃でクロメルに近づく事もままならなかっただろうが、今であればそんな無茶も通ってしまう。クロメルに近づくほどに衝撃の波が強くなるも、今はそれが心地好いとさえ感じられた。ここで感じられる、或いは見て取れる全てが、これまで俺が知覚してきた世界とは次元の異なるものなんだ。抑制された心にも、多少なりワクワク感が芽生えるというものである。当然、これも仕方ないので不問だ。いやはや、説明せずとも分かり切った事柄だったな。

「まずは挨拶代わりじゃて! 纏ノ空顎(マトイアギト) !」

ジェラールが 追躡砲火(ヴォルテルム) から飛び降り、後続の 追躡砲火(ヴォルテルム) へと移動。その跳躍の際に、前方へ 空顎(アギト) を放つ。ボガの炎と合わさった斬撃は炎を纏い、そのままクロメルへと直行して行った。

「合体技とは好奇心が刺激されますね! ですが―――!」

クロメルが振るった大槍が、ジェラールがそうしたように斬撃を放つ。 息吹(ブレス) 同様、こちらも打ち消されてしまった。

「ジェラール、古くから私の最愛の人を支えてくださった事を感謝しますよっ! これはその、せめてものお礼です!」

機竜の肉体、その腹部に当たる部分が唐突に膨れ上がる。また触手で何かするのかと思ったが、どうも違うらしい。触手群の中に、何やら球体のようなものがある。でかい水晶の中に、人柄らしき黒い影が蠢いていた。ひょっとして、あれはコアか?

『黒い姫様直々の招待か、面白い! 王よっ!』

『ああ、分かってるよ。あれ、ジルドラのオリジナルが中にいるんだろ? コアはジェラールに任せる。けど、どっちにしたって時間との勝負だ。クロメルの注意をある程度削いでいる、ダハクとボガの攻撃が続いているうちに蹴りを付けてくれ。他は俺達で何とかする!』

『承知したっ!』

『弱点が露出してるからって、油断するなよっ! あからさまな罠だかんなっ!』

『ガッハッハ! 心遣い、痛み入る!』

俺とジェラールの話を聞いて、ボガが炎ミサイルの行先をコアへと変更。盾をしまい魔剣のみを携えたジェラールが、機竜腹部から飛び出すコア部分へと突貫した。

『ケルヴィン、私はどうする?』

『セラは神機の心臓部を見つけてくれ。ぶっちゃけ、これっばっかりはどこにあるのか分からん。お前の勘だけが頼りだ』

『ふふん、私ったら頼りになる女ね! 任せなさい、プチッと潰してくるから!』

一度状況を見極める為だろう、そう言ってセラは上空へと羽ばたいて行った。時間は僅かしかないというのに、セラのあり余る自信は相変わらずだ。本当に頼りになる。

『残るは 曼荼羅(まんだら) とクロメル本体…… この状態でも助言くらいはできます。あなた様、微力ながらにお手伝いしますよ』

『ハハ、何だか最初の頃を思い出す構図だな。これ以上ないくらいに心強いよ』

クロメルはこちら側の攻撃にしっかりと対応した上で、視線はずっと俺の方を見据えていた。まるで俺にこっちに来いと、自ら手招きしているような感覚だ。実際、そういう狙いもあるんだろう。けど―――

「―――心配すんなって! お前の相手は俺に決まってんだろうがっ!」

互いに口端を吊り上げる、俺とクロメルの得物が交差した。