軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第530話 機竜

―――中央海域

ケルヴィン達が戦艦エルピスに乗り込む最中、エルピス外部の至る場所においても、戦いは苛烈を極めていた。倒しても倒しても方舟より出で続ける鎧天使は統率こそ取れていないものの、数の暴力と個体の強さで 水燕(すいえん) に乗る戦士達に肉迫。各国の代表者達もそれに負けじと、士気を高め連携を強めている。

「マジでゴマの奴はどこに行ったぁー!?」

「落ちる、落ちるっスー!」

獣王レオンハルトがゴマに化けて船に乗り込んでいた為に、本物のゴマは兄達と共にガウン本国の防衛に回っていた。その事実を知らないサバトらガウン冒険者パーティは、抜けたゴマの穴を気合いと根性で何とか凌ぐ。これはこれで獣王の試練だったりするのだが、サバトらにその意識はないだろう。

「いないものは仕方ありません! どうにか我々だけで踏ん張りましょうぞ!」

「無理っス~! もう俺は駄目ッス~~~!」

「ま、あそこよりはマシだと思うしかねぇか。グイン、派手に逃げると狙われっぞ!」

「ギャー!」

目まぐるしく状況が変わるこの戦場での戦いは、どれも歴史に残るべき大勝負ばかりだ。しかし、その中で最も激しい戦いを挙げろと言われれば、この戦場にいる誰しもが声を揃えて、ある場所を示すだろう。竜と神の融合体、大いなる力を持つその者と戦う、異次元の領域に至った者達のいる場所を。

神機デウスエクスマキナの鎧を纏うは光竜王サンクレス。心臓部にはオリジナルとされるジルドラが搭載され、莫大なエネルギーの供給源となっている。トリスタンよりジルドラ・サンと名付けられた光の化身は、正にジルドラの集大成とも呼べる究極の生命体だった。言うなれば機竜であろうか。そしてそれに抗うはエフィルとムドファラク、ジェラールにボガ、最後に自身の翼で大空を舞うセラとグスタフの混成部隊である。

「 極蒼炎の焦矢(メルトブレイズアロー) !」

「 天壊(テンガイ) !」

初手より最大火力で迫るはエフィルとジェラールだ。蒼き炎の矢と漆黒の斬撃の挟撃、並のS級モンスターであれば塵も残らないであろう恐ろしき猛攻が、機竜に衝突する。

「フハハ、やったか!」

「父上、その台詞はエヌジーね。戦闘中は絶対に禁句だって、ケルヴィンとリオンが言っていたわ!」

「む、なぜだ?」

「理由云々を抜きに致命傷を与えた敵が、無傷のままで生き返っちゃう言霊らしいもの!」

「そうなのっ!? パパショック!」

「すまんがそこの御二人さん、もっと緊張感を持ってくれんかのう!?」

グスタフがフラグを立ててしまったのが原因だったのか、渦巻く炎と斬撃へ呑み込まれても、機竜の反応は途絶えない。それどころか、その中からはそれ以上の魔力が膨れ上がっていた。攻撃が晴れそこにあったのは、両手の先から光の盾のようなものを生成する機竜の姿。一瞬でその盾を形作る事が可能なのか、攻撃が止んだ途端にその盾は消えてしまう。

『最初と同じ結果、ですか。予想以上に強固ですね…… 』

『あの巨体を丸ごと包み込むほどの盾か。あれを破壊するには、なかなか骨が折れそうじゃわい』

攻撃を与えた触感からして、機竜の結界は戦艦エルピスが周囲に張っていた風のバリアを、そのままミニサイズに変換したかの如くの強固さであると、暫定的にエフィルとジェラールは踏んでいた。全ての竜王が全力で放った 息吹(ブレス) で、何とか破壊できたのが目安となると、如何に超火力特化の力を持つエフィルの狙撃爆撃でも、これを破るのは難しい。

『ジェラールの旦那、おで達も合わせて攻撃するかい?』

『疲労はまだあるけど、やるなら頑張る……!』

『いや、今のお主達が無理をしたところで、焼け石に水じゃろう。今は攻撃に参加せず、 彼奴(あやつ) が怪しげな行動を取らないか警戒を続けてくれ』

2人が騎乗するムドファラクとボガは、先の 息吹(ブレス) で未だ消耗状態にある。これ以上下手な攻撃をさせて疲弊させるより、今は回復に努めさせた方が賢明だ。

『少し疑問なのですが、いくら光竜王と神柱が融合したとしても、あそこまで強くなるものなんでしょうか?』

『うむ、それはワシも思っておった。核となるのがジルドラだったとしても、今となってはトリスタンの操り人形に過ぎんじゃろう。神柱が数を減らし、その反動がこの強さとなって表れたのか…… むう、難しいところじゃわい!』

エフィル達の疑問は尤もだった。エフィルは先代火竜王を相手に単独で勝利できるだけの実力があり、ジェラールとてそれは同様。如何に機竜が頂点に属する種の融合体とはいえ、そんな2人の攻撃が一切通じないのは、おかしな話なのである。

『もう1つ、私も変に思った事があるわ』

『セラさん?』

『こいつ、さっきから攻撃する素振りを全然見せないのよ。唯一自発的に動いたのは、エフィル達が攻撃を放った時。あの盾を消した後は、何もしないで宙に止まっているだけでしょ? やる気が一切感じられないわ』

『言われてみれば、確かにそうじゃな……』

3人は高速で念話をしている為、この間も時間は大して進んでいない。精々がコンマ数秒の出来事だろう。しかしながら、機竜はあれだけの障壁を作り出してみせた実力者だ。攻撃を防いだのであれば、この刹那の時間ですらも利用して、次の行動に移るものだと、セラは注視していたようだ。

『こうしている今も、あいつに動きは特になし。罠を張っている――― という気もしないのよねぇ。うーん……』

『主である召喚士のトリスタンが、アズグラッド様の不意打ちで遠くまで吹き飛ばされたから…… という線はあるでしょうか? 今のところ自衛しか命じられていない、とか』

『そんな事があるものかのう? ワシやセラも立場上は王の配下じゃが、めっちゃ自由じゃよ?』

『そうね! 命令とか普段されないし、とっても自由ね!』

胸を張るジェラールとセラ。凄まじい説得力である。

『そ、それはご主人様の方針ですので…… トリスタンの場合、配下は徹底的に、思うがままに支配するといった印象でした。シュトラ様の能力で限定的に縛り付けているとはいえ、その辺りの行動原理は不変だと思います』

『って事は、こういう意味? トリスタンは自分の戦闘で手一杯で、あのジルドラゴンに指示をしている暇がない。ジルドラゴンはジルドラゴンで、トリスタンの命令がなければ自衛以外の行動ができない』

『……それってすんごい好機じゃね?』

『絶好の機会ですね』

『大チャンスよ!』

念話を介しての意見は纏まった。3人は改めて機竜に向かい、それぞれの得物を構える。

「セラよ、パパも会話に参加させてほしいのだが……」

「あら、父上もケルヴィンの配下になりたいの? 確か、まだ枠の空きはあった筈よ」

「それは1人の厳格な父親として、絶対に御免こうむる! しかしだ、セラがどうしてもと言うのならば、パパも全く考えない訳では―――」

「―――で、作戦なんだけど!」

「うむ、話を遮ってごめんね!」

潔く発言権を娘に渡すグスタフ、本日も魔王っぷりが甚だしい。

「あのシールドをどうにかして、速攻でジルドラゴンを片付ける! これで決まりよ!」

「セラ、お前…… 天才か!」

魔王っぷりが甚だしい。