軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第457話 魔王探し

一悶着あると思われていたリゼア側の検問所であったが、意外にもケルヴィン達はここをすんなりと通過。それどころか、デラミスの時と負けず劣らずの歓迎を受ける有り様で、舞桜の到着は大変喜ばれていた。

「国同士の事でお上は難しい立場にありますが、私達にとって勇者様はありがたい存在ですよ。魔王討伐、頑張ってください!」

「ええ、誠心誠意頑張ります!」

大体がこのような反応で、リゼアの民や兵士にとって勇者は憎むべき存在ではなかった。この調子でリゼアの王に謁見できるかと期待をしたものだったが、挨拶は不要と流される。流石にトップは一筋縄ではいかないらしい。

「そう言えばさ、リゼア帝国ってのはどんな国なんだ?」

リゼアの首都散策中、休憩がてらに立ち寄った酒場にて、ケルヴィンがそんな疑問を口にした。ここまでの道のりで目にしたリゼアの街の印象は、一言で言えば華やか。整備が行き届いた街並み、潤沢に並ぶ商品、人々の顔にあるのはどれも笑顔。注文できる料理の種類は多く、調理もなかなか手間暇かけている。何一つ不自由する事なく、この首都に限るのであれば裕福で豊かな国であると推測する事ができた。

「圧倒的な軍事力で周辺諸国を取り纏める覇権主義国家ですね。西大陸において1、2を争う規模の大国でもあります。この首都はそんなリゼアの象徴でしょうね」

「へー、まんま帝国! ってイメージなんだな」

「降伏して支配下となった領土は、それほど悪い扱いをされていないようですね。少なくとも、飢餓や飢饉に苦しむ事はないそうです。まあこの辺りは、トップが変わればどうなるか分からないものですけど」

「他国を支配するのはどうかと思いますけど、食べ物に困らないのは良い事です。空腹は辛いものですから」

舞桜は何か思うところがあったのか、少しだけ遠い目をしていた。ケルヴィンはそれに気付きはしたが、その目が意味するところが掴めなくて、仕方なしに話を進める。

「ふーん。そんな大国リゼアを相手に、デラミスはよく敵対できてるのな。聞いた話じゃ、武力衝突した事があるんだろ?」

「デラミスとて東の大国ですからね。それに、二つの国を結ぶのは 十字大橋(クルスブリッジ) のみで、起こるとしても局地的な戦いにしかならないのでしょう。船で海を渡って、なんて事は尚更手間です。漁をしていた方が、まだ有益ですね」

「それに、リンネ教の総本山であるデラミスと公然と対立すれば、世界中にいる信者も黙っていませんからね。国内に信者を抱えるリゼアも、できればデラミスとは対立したくないんだと思います」

「宗教って怖いのな…… しかし、舞桜。勇者なのに領土の支配は黙認するんだな? 俺の勝手なイメージじゃ、勇者は率先して平和を訴えるお人好しだと思ってたよ」

「黙認と言いますか、何て言えば良いんでしょうね…… 国と国との争いって、どっちが良いとか悪いとか、ポッと出て来た俺が文句の言える、簡単な事じゃありませんから。介入するのなら、まずはそれなりの知識を備えたいです。俺が前にいた世界でも、色んな国々が、俺の住んでいた国だって今も戦争していましたし…… あ、もちろん目の前で非道な行いがされていたら、俺は止めますよ!?」

「「………」」

ポカンとした表情を浮かべるケルヴィン。メルフィーナは料理に夢中になっているだけである。

「あの、どうしました?」

「ああ、いや、同年代なのにすげぇ達観してるなって。うん、それが正しいと思う。俺やメルにも、舞桜くらいの落ち着きがあればなぁ」

「え、私も含まれるんですか!?」

「含まれないと思ってるお前の頭を疑うわ」

「あはは、何を言っているんですか。お二人とも、俺なんかよりも凄く頼りになりますよ」

その後腹ごなしが終わり、3人が向かった先は冒険者ギルドだった。魔王を探すにしても情報がなければ始まらないという事で、この2年間で培った冒険者流の探索方法を取る事にしたようだ。依頼をこなし食費を稼ぎつつ、リゼアを巡る。ケルヴィンとメルフィーナの欲求を満たしつつ、舞桜の使命をも果たす最高の布陣である。舞桜を冒険者として登録してもらい、早速討伐依頼を掻き集めるケルヴィン。受け付けから帰ってきた彼の顔は、実にホクホクとしたものだった。

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「いやー、今日も大量だったな!」

「これで今日も晩御飯にありつけますね!」

リゼアに到着してから1週間。2人は充実した毎日を送っていた。新たな地で初めて目にする珍しいモンスター、首都の品揃えは武具食品問わず豊富であり、食堂はそこらかしこに並んでいる。しかも質が良く、美味いとくれば最高だ。ケルヴィンとメルフィーナはこの日々を楽しみ、使命を割と本気で忘れかけていた。

「あの、お二人とも…… 充実しているのはとても良い事なのですが、肝心の魔王の情報が全く進展していないんですが……」

「「あっ」」

―――とか言う始末である。やっぱりちょっとは落ち着いてほしいと、ほんの僅かに舞桜も思ったり。

「いや、すまん。リゼアって土地が広大で色んな国に跨ってる分、討伐モンスターも選り取り見取りで、つい……」

「私も同上の理由で、つい……」

「いえ、悪い事ではないので、そこまで気にする必要はないですよ。ただ、この1週間でリゼアの色々な場所を巡りましたけど、魔王やらの悪い噂は耳にしませんでしたね」

「魔王どころか、盗賊も希少な存在になっていましたものね。治安はかなり良いと思います」

「そもそもさ、ノーヒントで誰とも知らぬ魔王を探すって結構な事なんじゃないか? 神託で導かれたとかいう枠組みは西大陸で、このリゼアにいるかも分からないんだろ?」

魔王とはあくまでも災いを齎すものの総称であり、種族や名前を示すものではない。悪人がなるのかと思えば、必ずしもそうなるのではなく、可能性が高いというだけの話。世界を揺るがす力を持つのであれば、その力は個人のものでも集団のものでも、国のものでも構わない。知略に長けた者であれば、高確率で裏方に回っているだろう。そうなれば本当に手に負えない。分かる事と言えば、ステータスに『天魔波旬』の固有スキルがある事くらいなものだ。

「……うん、無理だろ」

色々考慮したが、ケルヴィンは匙を投げた。

「先行きは厳しいですね……」

「せめて指定された場所が 奈落の地(アビスランド) なら、目に付く悪魔を倒しまくれば、いずれ魔王にぶち当たるんだろうけどな」

「それもなかなか横暴な考えなような気がしますけど…… あ、そうだ! 丁度良い機会ですし、お伝えしたいものがあるんです! 巫女様から預かっていた道具なんですけど、ええと……」

舞桜が自らの首に掛ける革紐に手を掛け、鎧で隠れていたネックレスを出して見せた。

「それは?」

「『天麟結晶』という太古の石です。唯一無二のデラミスの国宝らしいので、気を付けて取り扱ってください」

「うわー、壊したらやばいな……」

「綺麗なものですね。でも、少し濁ってません?」

「純粋な悪である者、所謂魔王に近い素質を持つ者に近づくほど黒く染まるそうです。旅の最中に時折水晶の色を見ていたんですが、やはり西大陸へ渡ってから濁りが強くなっていたんですよ。西大陸に魔王がいるのはこれで確定! 後はこれをもとに西大陸を探していけば―――」

「「―――魔王に近づける!」」

「でしょう!?」

わっと、ケルヴィンとメルフィーナは立ち上がり、舞桜と共に喜びを分かち合う。暗雲立ち込めていたところに、一筋の光が差し込んだのだ。

「……でもさ、もう少し早く言ってくれればもっと良かったかな」

「す、すみません。お二人があまりに夢中になってモンスターを狩っていたもので、タイミングを逃してしまいまして……」

「それを言われてしまうと、言い返せませんね!」

「だな!」

反省はしている。直す気はない。さて、舞桜から更に詳しく話を聞くに、この1週間で巡ったリゼアの領土では、どの場所も天麟結晶の色に大した差はなかったらしい。

「そうなると、もうリゼアを探す意味はないかもしれませんね。ここの料理と離れるのは心苦しいものですが、次の国へ移りますか?」

「……いや、まだ訪ねてない場所があったな。どうせなら、そこも行ってみよう」

街の大通りからケルヴィンが指差した先、そこはリゼアの王が住まう城だった。