軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第395話 世話焼き

―――魔王城・議場

ベルはコップに注がれた水を一口飲み、ゆっくりとした口調で再び話し出した。

「負の力に染まった魔王を倒せば、放出した魔力を黒の書が吸収する。その時点で黒の書はこの世界から姿を消して、次に役割を全うするその時まで、長い時間を掛けて吸い出した魔力を浄化していくの。裏返った魔力は世界へと返され、また循環していく…… これが黒の書の正しい使い方よ、本来のね」

「本来のって事は、今はそうじゃないんだよな」

「そうね、貴方も見たでしょ? 生還者が黒の書を持っていたのを。アレ、魔王ゼルが倒されて消え去る前に、アンジェがトライセンの城から回収していたのよ」

「……黒の書に秘めたその魔力を、エレアリスの復活に充てる為、か」

「正解」

邪神が集めようとした魔力を神様を復活させる為に活用する。確かにそれなら通常の方法では無理であろう、途轍もない魔力が供給できると思う。ゼルが魔王化した時のものに加え、完全でないとはいえベルの分も入っているんだ。だが―――

「―――それだと、黒の書に溜め込んだ魔力は浄化されていないんじゃないか? 本来は長い時間を掛けてするんだろ?」

「さあね。神の復活にそんなエネルギーを使って良いかなんて、私にも分からない。ただ、代行者は黒の書の浄化を待つ気はないみたいだった。でなければ、守護者や生還者を使ってメルフィーナを聖域に招待しようなんて、絶対に思わないでしょうし」

「まあ、そうだよな……」

駄目元でメルフィーナに相談してみるか? 義体の制限で話せなくとも、表情や仕草で何か察せる事があるかもしれない。

「私が黒の書で知っている情報はこれくらいね。ああ、そうだ。私の知る残りの使徒の情報も教えてあげるわ。精々役立てなさい」

今残っている他の使徒について、ベルが説明してくれた。アンジェが使徒を抜けた後に知った話も含め、事細かに。 ……ここ最近で何となく感じ始めてはいたんだが、ベルってかなり面倒見が良いな。アンジェも良い子だと褒めちぎっていたし、今となっては出会い頭のツンツンは錯覚だったのかと思えてしまう。情報、本当に助かります。

早速アンジェの話と統合して、こう――― よし、配下ネットワークに貼り付け!

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序列第10柱『統率者』

実名はトリスタン・ファーゼ。代行者より授けられたギフトはベルにも知らされておらず不明だが、どうも召喚術関連のものらしい。トリスタン自身の戦闘力はそれほどでもなく、使徒の中では最弱クラスな模様。地上にて各地を回り、配下を見繕っている。根城の聖域には基本的にいない。

序列第9柱『生還者』

実名はニト。代行者より授けられたギフトは『 帰死灰生(きしかいせい) 』。自己申告ではエレアリス、もしくは代行者を倒さない限り無制限に生き返るといったスキルだったが、どうも話と齟齬がある。ベルの所見では、嘘を付いている様子はなかったとの事。能力を抜きにした戦闘力はベルよりも下。現在ボガ、ムドファラクから逃走中。任務以外の時は聖域内で寝ている事が多い。

序列第5柱『解析者』

実名はリオルド。代行者より授けられたギフトは『神眼』。隠蔽や偽装を無力化し、更には魔眼系統のスキルを自在に使えるという。ベルやアンジェは直接実力を見た事はないらしいが、2人ともあまり戦いたくないタイプだと口を揃えて言っていた。西大陸に未だいるようで、根城に顔を出した事も殆どない。

序列第4柱『守護者』

実名はセルジュ・フロア。代行者より授けられたギフトは『新たなる旅立ち』。ひと月に一度だけ、死を無効化して指定した場所に戻る事ができる離脱スキル。その他にも固有スキル『絶対福音』を所有する使徒最強の実力者。いつも聖域で代行者を護っている為、戦闘は避けられないと思われる。

序列第3柱『創造者』

実名はジルドラ。転生者でないからか、代行者より授けられたギフトはない。代わりに固有スキル『永劫回帰』で他人の体を乗っ取る事ができる。条件は対象がある程度疲弊している、対象の素性を知っている、対象の頭に手を置いている、一度発動するとある程度のクールダウン期間が必要である事の4点。ジルドラが、というよりも聖域内の研究施設にあるゴーレムが厄介。研究所内にはトライセンで戦った青いゴーレム級の機体が幾つもいるらしい。ここ最近は自身の研究所に籠って何かの研究を続けているとの事。こいつも聖域内で出くわす可能性大。

序列第2柱『選定者』

実名は不明。アンジェもそうだったが、やはりベルも聖碑越しの声しか聞いた事がないという。代行者のみが所在を知っている? 当然ながら代行者より授けられたギフトや実力も不明。聖域内でそれらしき気配はしないらしく、どこか別の場所にいる可能性が高い。

序列第1柱『代行者』

実名はアイリス・デラミリウス。エレアリスより『転生術』と『神の十指』を授けられている。神の十指は転生術の付属スキルで、転生した相手に強力な固有スキルを与えるというもの。同時に付与できるのは10回までで、それ以上行う場合はギフトを贈った対象が死ぬ、もしくは対象からスキルを回収しなくてはならない。回収は対象の近くに代行者か守護者がいれば可能だそうだ。聖域の最奥にてエレアリスの復活を目論み、メルフィーナを待つ。

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アンジェやベル、エストリアが使徒を離反したとはいえ、まだまだ一癖も二癖もある奴らが残っている。こいつは骨が折れそうだ。

「……嬉しそうね? さっきの顔が嘘みたい」

「え、そうか?」

「口の端が無駄につり上がっているわよ」

すみません、無自覚でした。

「分かっているとは思うけど、使徒の全員が聖域にいる訳じゃないわ。中には選定者のように行方知らずな奴もいるし、解析者や統率者は地上で自分の任務に当たっている。まあ、私の情報が全部正しい訳じゃないけど、重要なのはあくまでエレアリス復活の阻止なんでしょ? 戦うべき相手、すべき行動は弁えなさい」

「は、はい……」

「そもそもね、貴方は戦いに傾倒し過ぎる傾向にあるのよ、ケルヴィン。パパの誘いにまんまと誘導されて、試練の塔で平気で連戦するし。ある程度冷静なところを見ると、どこかでブレーキを掛けて反省はしているようだけど、まだ足りないわ。もしもの事があって残されるセラ姉様の気持ちを―――」

おかしい。いつの間にかお説教が始まってしまったぞ? どれも的を射ているだけに、とても俺の心に突き刺さる話ばかりだ。

「―――ケルヴィン。貴方、自分よりも強い奴がいなくなって欲求不満気味?」

ぎくっ。

「やっぱりね。今や貴方は神の使徒にも勝てるまで実力を付けた。悪魔でも最上位の存在であるパパにも勝ったくらいだしね。この 奈落の地(アビスランド) においても、もう相手になるのは竜王くらいなものでしょう」

「ええっ……」

こ、ここは夢の国ではなかったのか?

「残念がるな。それだけの力がある自覚をして―――」

不味いな、長引きそうだ。このままではセラの約束に遅れてしまう。 ……ちょっと反撃しますか。

「悪かった。でもさ、ベルも自己犠牲はもう止めてくれよ? セラや義父さん、あと家庭教師四天王が悲しむ」

「わ、分かってるわよ!」

よし、そっぽを向かれた。うーむ、ここの悪魔は利他的な奴らばかりで困る。