軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第279話 勇者の道筋

―――英霊の地下墓地・第1層

「お前ら、これから試練を与える。10層目指して付いて来い」

そんな言葉を残してダンジョンの奥へと全力疾走(たぶん、全力)で消えてしまったケルヴィンさん。まさかエフィルさんにまで置いて行かれるとは思っていなかったけど、兎も角セラさんとシュトラちゃん、そして私たちだけが1層に残ってしまった。

「師匠からの試練だ! 皆、頑張ろうぜ!」

「お、おー!」

刀哉は完全に出来上がっており、奈々もそれに釣られてしまっている。拳を天に掲げやる気十分な様から、とてもではないけど説得できそうにない。これでも引き際を覚えたから成長はしているんだけど、まだまだ私の苦労の種は尽きることはないだろう。

「ええと、セラさん?」

「悪いけど今、こいつらの死体を全部 血を浴びし黄泉の軍勢(ヘイディーズブラッズ) にしてるから、ちょっと話し掛けないで。何かあったらシュトラに聞きなさい」

私たちと同様にこの場に留まってくれたセラさんに助けを求めるも、反対派の亡骸から真っ赤な骸骨を作る作業で忙しいらしく、相手にしてくれない。どうやら私たちの為に残ってくれた訳ではなく、あの骸骨戦士を生成するのが目的だったようだ。

「ほう…… ほう……!」

雅は雅でセラさんの作業に夢中になっている。同じ黒魔法を扱う者にしか分からない何かを感じているんだろうか? 最初から期待はしていなかったけど、私の悩みを分かち合ってくれそうにない。となれば、残るは―――

「刹那お姉ちゃん、大丈夫? 顔色が悪いわよ?」

ついさっきまでコレットに化けていたこの金髪碧眼の少女、シュトラちゃんしかいない。巨大な熊人形に乗りながら実に20騎以上の騎士型ゴーレムを操った上で、私の体調にまで気を使ってくれる心優しい女の子。この子自体がお人形さんのようで非常に可愛い、抱きしめたい、愛でたい、癒されたい。

「ううん、私は大丈夫よ。ありがとね」

「そう? なら良かったわ。これからケルヴィンお兄ちゃんを追いかけなきゃならないものね」

……うん、冷静に考えればシュトラちゃんも規格外な存在だった。彼女が指を動かせば、即座に支配下にあるマリオネットが行動を起こし、敵対者を殲滅してしまう。地面で見るも無残な死体となってしまった反対派の人達が良い例だろう。彼女の操る人形達は軍隊のように規律があり、個々が圧倒的な戦闘力を秘めながらも集団戦法を得意としている。それを可能としているシュトラちゃんの視野の広さには驚かされるばかりだ。

「あ、ゲオルギウスが気になるの? この子はね~―――」

そんなことを考えながら人形を注視していると、シュトラちゃんが嬉しそうにはにかみながら人形について解説してくれた。

まず彼女が乗る熊のヌイグルミ『ゲオルギウス』はエフィルさんからプレゼントされたものらしく、最強の戦力となっている。ちなみにお願いしたら一晩で仕上げてくれたそうだ。弓や料理以外にも裁縫まで完璧にできるなんて、本当に何でもできるのね、エフィルさん。同じ女の子として自分の女子力のなさに不甲斐無くなってしまうわ……

そして彼女の周囲を守護するように陣を敷くのは、ケルヴィンさんが作り上げたゴーレムのシュトラちゃん仕様、『ガード』と呼ばれるもの。仕様がどうの以前に普通のゴーレムの力量が不明なところが難点ではあるけれど、恐らくはケルヴィンさんのお屋敷を警護していた騎士達がそれなんだと思う。

同じく全身甲冑のジェラールさんよりもひと回り小さな、とは言っても180センチ以上の身の丈はありそう。装備する盾はまあ、普通(それでも恐ろしく強固なんだろうけど)。問題はガトリング砲を内蔵するランスの方だ。私が知る銃のように実弾を発射する訳ではなく、代わりとして魔力を弾に変換して扱う代物、らしい。刀哉などは何に興奮するのか目を輝かせるばかりだったけど、正直ツッコミどころはそこじゃないと思う。思うんだけどな…… これを製作したのもケルヴィンさんとのこと。あの人達は何でもありなんだろうか?

「おーい、刹那。何を黄昏てるんだよ? 早くしないと師匠に置いて行かれるぞ」

「……うん、今行くわ」

刀哉に催促されてしまい、刀の柄に手を当て駆け足で追いつく。そうだ、考えてばかりではいられない。安全圏である2層を越えれば、その先は第3層。デラミス領内でも屈指の強さを誇るモンスターが待ち受けているんだ。中にはS級クラスもいるとの噂まである。行くと決まったのなら、覚悟を決めよう。仲間は必ず護ると!

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―――英霊の地下墓地・第3層

第3層は1層・2層の草原と打って変わって、石畳が敷き詰められた無機質な場所だった。空に手を伸ばすかのようにも見える人型を模した不可思議なオブジェはお墓の一種なんだろうか? 独創的過ぎて何とも言えない。それにこれまでの階層よりも広いらしく、向こう側までの距離感が掴めない。ダンジョン自体がひし形、この場合は四角錐を上下で合わせたような立体型となっているとの話は本当みたい。このまま行けば5層と6層が最も広く、そこからは降る度に狭まっていく筈。

「うーん…… お兄ちゃん達は今5層、いえ、6層に降りたみたいね。先行してるジェラールお爺ちゃんとメルお姉ちゃんは8層辺りかな?」

「も、もうそんなに!?」

「速い……」

パーティの仲間との距離感が分かるのか、シュトラちゃんがケルヴィンさん達の居場所を探してくれた。それにしたって速過ぎない? 私たちが敵のいない1層から3層まで移動する間に、どんな快進撃を続けていたのだろうか……

「お爺ちゃんはお兄ちゃんの『召喚術』でスタート地点を大分先に進めていたし、比べたって仕方ないわ。それよりも、ほら―――」

シュトラちゃんが前を睨む。ほぼ同時に、私の察知スキルが敵の接近を告げる。

「うわぁ、いっぱいだよぉ……」

石畳の隙間から這い出るように出現する動く影。よくよく見れば、その辺にあるオブジェをそのまま小さくした外見をしている。奈々が思わず弱音を吐いてしまったのも仕方ない。影のモンスターは無限に湧き出るかのように今も出現し続け、周囲一帯を埋め尽くそうとしているのだから。

「奈々、問題ない。個々の強さはそれほどでもない」

「ああ、俺たちの実力をちゃんと出せれば十分に勝てる相手だ」

こんな時こそ強気なこの2人の存在は心強く感じてしまう。剣と杖を抜き、既に臨戦態勢になっている。

「まだ『神獣の岩窟』よりは大分マシね。あれはB級モンスター『ラビリンスシャドウ』。半端な攻撃をしちゃうと分裂するから気をつけて。狙うなら影の頭部よ」

『鑑定眼』を所持していたのか、シュトラちゃんがゲオルギウスの頭を突っつきながら的確に指示してくれる。よし、数は脅威だけどB級程度なら!

「あと、ある意味運が良かったわね。あれを辿って行けば多少なりとも楽だし、次の階層への道順が分かるわ」

「え?」

その言葉に、もう一度目を凝らす。

「……モンスターがいない箇所がある?」

漆黒で覆われそうな床一面に、石畳が剥き出しとなった部分があった。それは道のように向こう側にまで伸び続け、心なしかキラキラと輝いているようにも見える。

「リオンちゃんが通った跡だもん。たぶん、薙ぎ倒しながら一直線に駆け抜けただけでしょうけど、浄化され過ぎてモンスターが近づけないんだわ」

「え、ええー……」

シュトラちゃんは真顔でそんなことを言い放った。