軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第221話 決勝トーナメント

―――ガウン・総合闘技場医務室

ここはガウン総合闘技場にある医務室。今日も今日とて試合にて傷付いた者達を癒す治療部屋である。

「―――大天使ぃ!?」

「あらやだぁ、酷くデジャブを感じるわん」

「プ、プリティアちゃん!? ここは……?」

医務室のベッドにて素っ頓狂な叫びと共に目覚めたダハクを迎えたのは、リンゴの皮を剥く大柄な男――― 女性の姿、先程までの対戦相手であるゴルディアーナ・プリティアーナだった。

「取り合えず、栄養の為にもこれでも食べなさぁい。ダハクちゃんもこれなら食べれるでしょん?」

「……ほわぁ!?」

ゴルディアーナが愛々しい兎の形に剥いたリンゴを手渡すと、ダハクの思考は混乱の渦に飲み込まれてしまう。なぜ自分がこんな所にいるのか? 試合はどうなったのか? 夢にまで見たゴルディアーナの手料理(?)が自分の手の中に何であるのか? 今日も超可愛いなぁ――― 等々と堂々巡りである。

「落ち着いてぇ、順番に説明していくからぁ。まずここは闘技場の医務室よん。言い難いけど、私に負けて気絶しちゃったのよぉ、ダハクちゃん」

「……負けた、か。くっそぉ、いけると思ったんスけどねぇ。 ……ってうまぁ!?」

シャリッっとリンゴに齧り付くダハクが驚きの声を上げる。この衝撃はエフィルが調理した野菜を食べた時以来だ。

「元気になったかしらぁ? でも見直したわよぉ、ダハクちゃん。私、本当は『 慈愛溢れる天の雌牛(ローズイシュタル) 』まで使う気はなかったんですものぉ。貴方の力と想い、確かに受け取ったわん」

「そ、それじゃあ!」

「で・も、女の安売りはしない主義なのぉ。私を振り向かせるにはまだまだ足りないわん。次はジェラールのおじ様を倒せるくらいになったら、また相手してあげるぅ」

ゴルディアーナはその大きな手で器用にリンゴを剥き続ける。心なしか上機嫌だ。

「だ、旦那をッスか。そりゃ遠い道のりッスね……」

「そうよぉ、お姉様を相手にするんだものぉ。まずは恋敵に決着をつけないとぉ」

「お、お前は、ハゲ野郎!?」

「誰が野郎よぉ」

不意の声にダハクが振り向くと、そこには同じくベッドにて横になるグロスティーナの姿があった。どうやらハゲは否定しないらしい。

「怪我に鞭打って試合を見させてもらったわぁ。貴方、見た目に反してトリッキーな戦い方をするのねぇ。私、親近感が湧いちゃった」

「恋敵に親近感覚えられても嬉しくねぇよ! プリティアちゃんもプリティアちゃんッスよ! ジェラールの旦那と言う者がありながら、こんな奴を傍に置くなんて……」

「ううん、私が恋敵……? 何早とちりしてるのよぉ。私にとってお姉様は姉のような存在ぃ、決してそんな関係ではないわぁ」

「……は?」

「あらあらぁ。妙にグロスティーナに向ける視線が厳しいと思ったら、そんな勘違いしてたのねぇ。私たちは同じ師のもとで武術を学んだ、言わば姉妹弟子みたいなものよぉ。ロノウェちゃんのアナウンスでもそう紹介されていたでしょん。聞いていなかったのぉ?」

「聞きたくなくて、耳を塞いでいたッス。何てこった……」

ダハクはベッド脇の床に四股を踏むように足を開いて立つ。そして腰を低くし、グロスティーナに向かって頭を下げた。

「すまねぇ! 俺としたことが、とんでもねぇ勘違いをしちまった! アンタが色男過ぎてよ、つい嫉妬しちまったんだ……」

誠心誠意の謝罪である。しかし、その格好はヤクザの挨拶のようだ。

「……真っ直ぐな子ねぇ。お姉様、私嫉妬しちゃうわん」

「ふふっ。グロスティーナ、それでどうするのん?」

ダハクはまだ頭を下げ続けている。

「頭を上げて、ダハクちゃん」

「許してくれる、のか? ……って何で笑ってるんだよ?」

「うふふっ。だって誤解が解けたんですものぉ。もう私たちぃ、マブダチでしょん」

「ダチ公…… あ、ああ! そうだな!」

ガッチリと握手を交わすダハクとグロスティーナ。誤解を解消した2人の間には深い友情が芽生えたようである。多くを語らずとも、通じ合うものがあったのだろう。

「思ったんだけどぉ、ダハクちゃんもワイルド系のイケメンじゃない? いつでもお姉様から私に乗り換えていいからねぇ。私は大歓迎よん」

「あん? 何の冗談だ? 言っておくが、いくらグロスが美男だからって俺にそっちの気はねぇからな。俺はプリティアちゃん一直線よ!」

「もんっ! 素直じゃないわねぇ」

……多少の思い違いはあるようだが。

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―――ガウン・総合闘技場試合舞台

交換を終えた新品の舞台に立つは、各ブロックを勝ち上がった勇者達。大義の為に戦う者、己の欲の為に戦う者、愛の為に戦う者――― 各々志すものは違えど、その実力は折り紙付き。会場の視線が集まる中、獣王祭の最後の宴が始まる。

「決勝トーナメント、いよいよ開始だぁー!」

「「「うおおおおっ!」」」

「結局、最後までこのノリなのな……」

「いいんじゃない? 楽しいし!」

ロノウェが熱いトークで観客を盛り上げ、それに負けじと観客も枯らす程の声を上げる。Aブロック代表のケルヴィンは若干呆れ、Cブロック代表のセラは楽しげだ。

「勝ち上がって来ると思っていたわよん。ケルヴィンちゃん、セラちゃん」

「プリティア。さっきはうちのダハクが世話になったな」

「何か迷惑掛けなかったかしら?」

「ううん。同門のグロスとも仲良くなったみたいだしぃ、私の気分転換にもなったものぉ。試合後に回復してもらった恩もあるしぃ、お安い御用よぉ」

「助かるよ」

「そうね! ゴルディアーナには万全の状態で戦ってほしいもの!」

ゴルディアーナはダハクとの試合で少なからず毒の影響を受けていたのだが、試合終了後にケルヴィンから白魔法で毒を完全に治療してもらっていたのだ。

「お兄ちゃん達、少し甘いんじゃない? これから戦う相手を回復するなんて」

「……獣王」

リオンとの試合での姿、シュトラの容姿に変身した獣王が話に割って入ってきた。

「妹のリオンが世話になりました。この恩は何倍かにしてお返ししますね」

「ああ、良かった。腑抜けてはいないようね。ケルヴィン、貴方には個人的に期待しているの。全力で、あらゆる手段で勝ちに来て、我が国にその力を見せ付けてね♪」

「当ったり前でしょ! 私のケルヴィン舐めないでよね!」

「うん、楽しみにしてるね」

「あらん、レオちゃん余裕じゃない?」

「プリティアちゃんも元気そうで何より。もっとお喋りしたいけど、そろそろ時間みたいよ」

獣王が正面を指差す。目を向けると、選手入場口から穴の開いたボックスを持つ獣人の女性が会場へと入って来るところであった。ケルヴィンはそのボックスを見たことがある。トーナメントの組み合わせを決める際に引いた、クジが入っていた箱だ。

「それではこれより、決勝トーナメントの組み合わせ決めを行います。方法はブロック別の決定方法を同様、クジ引きです! それぞれに1~4の何れかの数字が記載されていますので、1と2、3と4が決勝トーナメント初戦の相手とお考えください! あ、クジは一斉に開きますので、まだ開けないでくださいね!」

予感は的中、今回もクジ引きのようだ。A、B、C、Dのブロック代表、ケルヴィン、獣王、セラ、ゴルディアーナの順でクジを引いていき、一斉に開封する。

「……確認致しました。皆さん、上を御覧ください!」

ロノウェがマジックアイテムを操作すると、舞台上空に決勝トーナメントの組み合わせが表示された。

「決勝トーナメント第1戦、『鏡面』レオンハルト・ガウン選手対、『死神』ケルヴィン選手! 第2戦、『女帝』セラ選手対、『桃鬼』ゴルディアーナ・プリティアーナ選手! 組み合わせはこれだぁ!」

早速、リオンの恩を返す時が来たようだ。