軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第133話 先行

―――ケルヴィン邸・リビングルーム

トライセンから出撃した竜騎兵団の足止めをする為、迎撃班に配属された俺とサバトのパーティ。予想されるパーズへの到着は大よそ1週間、幸いなことに時間はある。一度サバト達と別れ、今は屋敷に戻って内々での作戦会議中である。セラはソファに寝転がり、メルフィーナはお菓子をボリボリ食べているが、それでも作戦会議中なのである!

「まあ、それではご主人様が向かわれるのですか?」

「ご主人様、大丈夫?」

経緯を説明するなり、エリィとリュカは心配げな表情を浮かべた。

「前に戦った混成魔獣団程度であれば全く問題ないけど、どうだろうな。偵察の報告じゃ、古竜らしき姿も何体か目撃されているようだし」

黒き巨竜や地を走る岩竜、竜騎兵団はなかなかバラエティに富んだ集団だ。しかし、亜竜であるワイバーンなどに騎乗する者も多く、必ずしも正規の竜を連れているという訳ではないようだ。まあ直に目にして確認するとしようか。

「あ、そうだ。エリィとリュカをパーティに入れておくか。レベル上げにちょうど良いだろ」

そう言いながら二人にパーティ招待のコマンドを送る。

「楽をしてレベルを上げているようで大変恐縮なのですが、いいのでしょうか?」

「気にするなって。二人は戦闘向きのステータスじゃないからな。パーティに入って間接的に手に入れた経験値でレベルを底上げするなんて話、よくあることだろ?」

この世界ではレベルが上がらないことにはスキルポイントを新たに入手することができない。だが、人里に住む一般的な人々はモンスターとの戦闘なんてしたことがないのが普通だろう。では、そういった人々はどうすれば良いのか? 答えは簡単、冒険者などのパーティに入り他の者にモンスターを倒してもらえばいいのだ。街や集落では年に一度、ある年齢に達した者をパーティに入れてレベルを上げるという催事があるほど、この手法は大衆的なものらしい。

モンスターを倒した者が大方の経験値を得て、残った微少な経験値を戦闘での貢献に応じてパーティ内の者に配分されるのがパーティでの一般的な経験値取得方法だ。戦闘中、何もしなければ殆ど塵のような値しか配分されないのだが、それでもレベルが初期の者にとっては十分な経験値となる。ゲームでいうところの寄生みたいなもんだが、この方法でも頑張ればレベル5位まではいけるのだ。尤も、それ以上となると必要経験値が大幅に上がり、どんなに強いモンスターを倒してもらったところで得る経験値は最小値なので、この方法でのレベル上げは厳しくなる。それ以上を望むのならば自分も何らかの貢献をしなければならなくなる訳だ。

「ご主人様の場合、限度がありませんので不安になってきます」

うん、例外的に俺たちは経験値共有化で経験値良いとこ取りだからね。

「そうだなー。それなら今度二人にも実戦を経験してもらおうかな。護身にもなるだろうし」

「王よ、剣術ならワシが!」

「剣術! ジェラールお爺ちゃんに教えてもらう!」

ジェラールとリュカが食い付いてしまった。何か護身程度に収まる気がしない。いや、それでも問題ないけどさ。

「それなら僕も手伝うよ。一緒に 空顎(アギト) 撃とうよ 空顎(アギト) !」

「うん! 空顎(アギト) ー」

ジェラールの真似をしてリュカは素振りをする。うちのメイド達が斬撃を放つようになる日も近いかもしれない。

「それもパーズの防衛を乗り越えてからだからな。もしもの際はエリィとリュカが屋敷のゴーレム達を運用してくれ。可能性は薄いだろうが、防衛線を抜ける奴もいるかもしれないからな。セラ、寝るな。メル、物欲しそうな顔で空皿を見詰めるな。そろそろ真面目に作戦練るぞ」

エフィルにリオから拝借した国境付近の地図をテーブルに広げてもらい、俺たちは漸く本腰の作戦会議を開始した。

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―――とある宿

「サバト様、本当に俺たち連れて行ってもらえるんスかね?」

ここはサバトのパーティが宿泊する宿。サバト達はギルドでケルヴィンに「先に準備を整えたい。少ししたら連絡するから」と言われ、一度別れて宿の酒場にて時間を潰していた。

「今はケルヴィンを信じるしかねえだろ。俺たちがない頭で考えるより、何をすればいいか指示してもらったほうが効率的だ」

「ハァ、そんな調子じゃ次期獣王なんて夢のまた夢よ、サバト? 今でも兄さん達はトライセンと戦っているんだから」

「うるせえよ、ゴマ。武者修行中だってのに、おめおめと祖国に帰れるかっての。それに、今はパーズの危機なんだ。困った人を見過ごして、何が獣王だ」

「この場合、ケルヴィンさんを困らせてないかしらね?」

「ガハハッ、ゴマ様の言う通りですな!」

片耳が欠け、体中に数え切れぬ傷跡を残す獣人が相槌を打つ。歴戦の勇士、という言葉がいかにも似合う風貌だ。

「くそ、口じゃ勝てねえ……」

「サバト様、腕っ節でも勝てないッス」

すかさずスコーンと鳴る気持ちのいい音。頭の軽そうな獣人の若い男がその頭を両手で押さえる中、宿のドアベルがカランカランと酒場に響き渡った。誰かが宿にやってきたようである。ケルヴィン達が準備をし終えてやってきたのだろうか? そんなことを考えながら獣人6人は宿の入口に目を向けた。

「すみません。こちらの宿にサバト様という方は宿泊されていますでしょうか?」

そこにいたのは妙齢のメイドであった。宿の主人にサバトのことを聞いているようだ。

「あのメイド服、ケルヴィンさんの仲間のメイドさんと同じものじゃない?」

「ああっ、そうッス! 間違いないッス! あのメイドさんも超絶可愛かったッスよね~」

「その意見には同意するが、ゴマ様が仰っているのはあのメイドがケルヴィン殿の使いではないか、ということだ、グイン」

「な、なるほど……! ゴマ様もアッガスの旦那も頭が良いッスね!」

「お前の頭が軽過ぎるだけだ、全く。それはそうとサバト様―――」

「サバトとは俺のことだー!」

アッガスが言葉を投げかけるよりも早く、サバトが叫びを上げ飛び上がる。その様はエサを前にして主人の待てから解放された犬のような俊敏さであった。

「……馬鹿だから行動は早いのよね」

その叫びにメイドと宿の主人はビクリと体を震わせる。サバトは盛大に驚かせることに意味もなく成功した。

「そ、そうでしたか。失礼しました…… 私、ケルヴィン様に仕えております、エリィと申します」

メイドの顔はかなり引きつっている。

「いいんだ! それで、ケルヴィンはどうッシュンダッ!」

「……3回目ッスか。サバト様、今日は絶好調ッスね」

「あれを絶好調と言っていいものだろうか……」

宙を舞うサバトを見ながらグインが食べ残していた麺をすする。

「失礼しました。それで、ご用件は?」

笑顔で接するゴマ。しかし、メイドは最早怯えている。

「ケ、ケルヴィン様から手紙を預かっております。ど、どうぞ……」

「手紙、ですか?」

メイドの震える手からゴマが手紙を受け取る。

「どれどれ」

「俺も見たいッス」

「ふぅ、ふぅ…… 俺にも見せろ……」

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―――サバトへ

思ったよりも時間がなさそうなので、先に迎撃予定場所に向かいます。そちらも準備を整え次第、こちらに来てください。場所はパーズとトライセンの国境『朱の大峡谷』です。お互い全力を尽くして頑張りましょうね! ではでは。

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「………」

固まる一同。されど、心に秘める思いは同じようで。

(((置いてかれたー!?)))

各々同じ叫びを心の内で上げるのであった。