軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第129話 挫折

―――ケルヴィン邸

「えーっと、あのお屋敷がケルヴィンさんのお宅かな?」

「り、立派なお屋敷ですね……」

「ん、おっきいね」

街道を歩き、ケルヴィンの屋敷を目指すシルヴィア一行。途中、シルヴィアの食べ物目的による寄り道は多々ありはしたが、何とか目的の場所へと到着することができた。

「っは、こんなの全然大したことないぜ」

「って何でナグアがいるんですか」

3人の後ろには少し離れてナグアがいた。

「 ケルヴィン(あいつ) の見張りだよ。放っておけばシルヴィアに何をするか分かんねぇからなぁ」

「ハァ、貴方って人は……」

「?」

呆れるアリエル。対してシルヴィアはよく分かっていない。

「まあ、いいでしょう。問題を起こすような行動は控えてくださいね」

「わーてるよ。相変わらずアリエルは小うるせぇな」

「貴方のせいでしょうが!」

「はいはい、夫婦漫才もそのへんに。ほら、門が見えてきたよ」

エマが手馴れた様子で止めに入り、屋敷を指差す。やがて見えてきた屋敷の門、その両脇には門番らしき黒鎧が警護にあたり、ハルバートを片手に不動を保っている。余程錬度が高いのだろうか。その格好がケルヴィンの仲間であるジェラールにあまりに酷似していたので、背丈こそ違うものの本人かと勘違いしてしまいそうだ。

「すみません。本日、来訪の約束をしているエマと申します」

エマが門番に話しかけると、それまで静止していた門番の顔が僅かに動いた。

「エマ様、シルヴィア様、アリエル様デスネ。主カラ伺ッテオリマス。ドウゾ、オ通リクダサイ。今、メイド長ノエフィル様ガ参リマスノデ」

間延びした口調の門番がそう言うと、屋敷の門がひとりでに動き出し開門される。

「魔力で動いているんでしょうか? 凝った仕掛けですね」

「ありがとうございます。それじゃ、行こっか」

エマがシルヴィアの手を引き門を潜り、アリエルも続いていく。ナグアもそこに続こうと歩き出すが―――

ガシャン。

「……何の真似だ?」

門番の二人はハルバートを交差させ、ナグアの行く手を阻む。

「申シ訳アリマセンガ、貴方ノ来訪ハ予定ニアリマセン。確認シマスノデ、少々オ待チクダサイ」

「ああん? シルヴィアの仲間のナグアだよ。これでいいだろうが?」

「申シ訳アリマセンガ、少々オ待チクダサイ」

「……ふざけてるのかぁ!?」

頑なに退こうとしない門番に、ナグアは思わず喧嘩腰になる。彼の頭の中では巫女に手を出し、味を占めたケルヴィンがシルヴィア達を誘い出して屋敷で何かするんだろうという構図が既に出来上がっていた。

「待って、ナグア。止めておいた方がいいよ。」

これにはシルヴィアも流石に止めに入る。

「シルヴィア、まさか酒場のときのように止めるってのか!? 俺が門番風情に負けるとでも!?」

「……割と良い勝負?」

そしてナチュラルに火に油を注ぎにいく。ナグアと門番は一気に一触即発の雰囲気になってしまった。

「トゥー、スリー。ご主人様の了解を得ました。ナグア様は正式なお客様です。お通ししなさい」

「ハッ、承知シマシタ」

ガチャンガチャンと音を立てながら一糸乱れぬ動きで直立の姿勢に戻る門番達。命令したのは庭園中央の噴水前に控えたエフィルであった。

「お迎えが遅れてしまい、申し訳ありません。更には門番がとんだご無礼を致しまして……」

「いえ、ナグアを勝手に連れてきたのはこちらですし……ほら、ナグアも!」

「ケッ!」

グググッとナグアの頭を無理矢理下げさせようとするアリエルと耐えるナグア。そんな様子にエフィルは微笑みながら、屋敷への案内を始めた。

「エフィルさん、今日はよろしくお願いします」

「ん、とっても光栄」

「私もとても楽しみにしていました。そういえば、皆様はどれほど料理をなさるんですか?」

「恥ずかしながら、私たちはあまり料理が得意ではなくって。うーん、できることと言えば……」

3人娘が考えるような素振りをし、各々の得意分野を話していく。

「ん、斬るのが得意」

「赤魔法で焼くことくらいなら…… 火力は誰にも負けません」

「げ、解毒なら可能です!」

だが、それはおそらく料理の特技ではなかった。

「ぶっちゃけ、旅の最中は俺とコクドリが交互に料理番してんだよ。こいつら料理に関しては破滅的だから覚悟した方がいいぞ。俺は途中で諦めた」

「そ、そうでしたか。善処します……」

苦難の挙句、エフィルはナグアに料理を教えることにした。

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「いやー、思わず熱中してしまったな。時間を忘れるとはこのことだわ」

「ケルヴィン、ゴーレムを弄ってるときも最近顔が笑ってるわよ…… とっても素敵だったわ!」

屋敷の地下階段を上る俺とセラ。 黒金の魔人(アロンダイト) の修繕が思いの外早く終わったので、セラとゴレームを改造していたのだが、これがまた夢中になってのめり込んでしまった。ちなみにゴーレム改造中のセラは決まって白衣姿である。おそらく意思疎通で俺の知識から衣装を拾ってきてエフィルに頼んだな。決して俺が無理強いしたり頼んで着せている訳ではない。

さてさて、先日セラ達が攻略した新ダンジョン。そこには素材…… もとい、無数の人形型モンスターが出現した。その際に入手したモンスターの部位が大量にクロトに収納されているのだが、この中にはゴーレムに搭載できそうなものも数多くあったのだ。

「これなんて完全にガトリングガンだよね。実際出てきたのは光の弾だったけど」

「異世界人の遺産なのかねー。まあ弾速と威力を見れば俺等が使うことはないかな。ん、いや待てよ……」

人形と直接戦ったリオンの話を聞いたときにピンときたのだが、これが上手く機能した。通常のゴーレムはスキルを持たない為に魔力の持ち腐れ状態だったのだが、この魔力式ガトリングガンがあれば魔力を使って遠距離の敵にも対応できるのだ。その他にも使えそうなものはあったが、一番の収穫はこれだろう。

このガトリングガンを俺が鑑定眼で諸々解析し、クロトに食わせる。そしてクロトの金属化と分裂によって生み出された同素材から鍛冶スキルで量産と、まあいつもの流れである。途中からは魔法に精通したセラとメルの協力を仰ぎ、より発展したものを生み出したりもしたんだが、使用する魔力を考えるとこれは新型ゴーレム用かな。近頃はトライセンの動きがキナ臭い。俺達が留守の際の戦力の強化も必要なのだ。

そうそう、最近になってこの新型には名前を付けてやったんだ。名前と言っても、ワン、トゥー、スリー、フォーと単純なナンバー付けなんだけどな。見た目は同一の4体だが、鎧に数字を彫っているので見分けは何とかつく。こいつらも結構な戦闘力になったはずなんだが、なかなか対等な相手がいないんだよなー。ジェラールやリオンと戦わせたこともあったが、流石に勝負にならなかった。ちなみに今はトゥーとスリーにはプリティアに半壊されたゴーレムの代わりに門番をしてもらっている。普通のゴーレムと違って会話が可能だし、ある意味適任ではあった。

「あら、そういえばメルは? さっきまで一緒にいたはずだけど」

「先に食堂に向かったよ。一仕事して腹が減ったって」

「そっか、シルヴィア達が来てるんだっけ。私も小腹がすいたし、作った料理を頂こうかしら」

「俺もそうするかな」

階段を上り切る。お、良い香りが漂ってきた。

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―――ケルヴィン邸・食堂

食堂に置かれた出来立ての料理の数々。そのどれもが食欲をそそらせる。だが、そこに立っていたのは意外な人物であった。

「げっ、犬男がいる…… って、何であんたエプロン姿なのよ?」

「っは、この惨状を見て勝手に察しやがれ」

エプロン姿のナグアとはなかなかレアなんじゃないか? そしてテーブルに伏すエフィルとエマ、アリエル。メルフィーナとシルヴィアはパクパクと料理を食べ始めていた。

「ほう、なかなかいけますね」

「ん、私はやっぱり食べるの専門。ナグア、美味しいよ」

「そ、そうかぁ! 食え、もっと食え!」

ナグア、料理できたのか。こちらは問題なさそうだな。

「エフィル。一体どうしたんだ?」

「ご主人様、申し訳ありません。私の手には負えませんでした。力及ばず、です……」

がっくりと肩を落とすエフィル。おいおい、こんなに消沈したエフィルは初めて見たぞ。

「シルヴィア達の料理があまりに酷くってなぁ…… 代わりに俺がそこの嬢ちゃんに教わったんだよ。ったく、何でこんな簡単なことができねぇんだか」

「「ぐふっ!」」

「おい、エマとアリエルがダメージ受けてるぞ」

そしてエフィルは最後まで教え切れなかった自分に落ち込んでいると。しかし、調理場の奥にチラリと身を潜ませているあの劇物のような料理、あれを見るにエフィルの判断は正しかったと思う。何あれ、色が紫だよ?