軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第107話 神狼

―――新ダンジョン・広間

「ふっ!」

セラの強打により人形の頭が潰される。この人形が広間にいる最後のモンスター、自動人形との戦闘は開始7分で幕を下ろす結果となった。

「外見は同じなのに、剣を出したり火を吹いたり、小さな玉みたいなのを沢山飛ばしてきたり…… 個体によって攻撃手段が違っていたわね。変なの! ま、食材のバリエーションが増えたからいいわ!」

セラはまだケルヴィンにこれらを食わす気だった。戦闘から戻ってきたジェラールが難しい顔をする。

「セラよ、クロトならまだしも、流石にこの人形は食材にはならん」

「エフィルなら何とかしてくれるわよ。きっと!」

「無理じゃって」

「ええー……」

せっかく手に入れたA級モンスターの素材が調理に使えないことを知り、セラはガックリと肩を落とす。

「信頼するのはいいが、エフィルにも限度があろうて…… それよりも、お主と王が作っているゴーレムの改造に充てた方が良いのではないか?」

「……それもいいわね!」

が、直ぐに立ち直った。

「あら、セラちゃんゴーレムも作れるの?」

ゴルディアーナも無事に戻ってきたようだ。

「私のじゃないわ。ケルヴィンの趣味がゴーレムいじりなのよ」

「ふうん。つまり、ケルヴィンちゃんは緑魔法を使うのね。模擬試合が楽しみねぇ」

「ふふん、ケルヴィンは強いからきっと圧勝しちゃうわ!」

セラは誇らしそうにケルヴィンについての話を続ける。

(これって惚気話なのかしらん? でも、自覚があるかが微妙なのよねぇ、セラちゃん)

「みんなー、遅いよー」

「ウォン!」

集合場所に指定していたダンジョンの入り口前には既にリオンとアレックスが待っていた。

「おお、リオン達は早かったのう」

「セラねえ達がゆっくり世間話しているからだよー…… それでさ、広場のモンスターは片付けたけど、もっと奥に行ってみる?」

「奥に祭壇があったわね。次はそこを目指しましょ」

「となると、この抜け穴をどうするかじゃな」

「誰か残って見張る?」

「私は嫌よ。壁でも作って隠しておけばいいんじゃない?」

「ケルにいがいれば簡単だろうけど、僕やセラねえの魔法じゃちょっと合わないかなー」

「あら、それなら私に任せなさいな。ちょっと離れてくれるかしらん?」

意外にも手を上げたのはゴルディアーナだった。近くにある半壊した建物まで歩いていき、ゴルディアーナはそれを抱えるように腕を広げ、そして―――

「ふぅぅーーーん!」

気合と共に建設物を押し出した。地響きを立てながら、巨大な壁が移動していく。元々ボロボロだった為に動く度にブロックが崩れていくが、ゴルディアーナは頭にそれが当たろうと歯牙にもかけない様子だ。

(ええー……)

(その手があったわね!)

見守る各々の感想も実に多種多様、そうこうしているうちに押し付けた巨大な壁によって穴は塞がれた。

「これで時間稼ぎにはなるでしょう。さ、奥の祭壇を目指しましょ!」

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―――新ダンジョン・祭壇

朽ちた建設物が疎らに乱立する広間を通り過ぎ、ダンジョンの最奥へと歩を進める。ある場所からはぱったりと建物はなくなり、代わりに装飾が施された柱が中央の道沿いに規則正しく立ち並ぶようになった。

「見るからに怪しいわね。あの祭壇」

「この道も広間にあったものより豪華な作りだね。何かを祀っているのかな?」

「そうねぇ、用心して進みましょうか」

見かけよりも長い道のりを歩き、漸く一同は祭壇が置かれる場所へと辿り着く。確かにセラが遠方から発見したものだが、思っていたよりもサイズが大きい。ケルヴィンの屋敷と同じ高さぐらいだろうか。祭壇は塔のように天井へと伸び、腐食することなく真っ白であった。これまでの建設物とは対称的である。

「でかいのう…… 一体何の為にこのようなものを地下に?」

リオンが白き祭壇に触れる。石のような手触りでヒンヤリと冷たい。

「うーん、特に異常はなさそうだね」

「ええっ、ここまで来て取り越し苦労!? ボスモンスターは!?」

「セラちゃん、落ち着きなさいな。冒険なんて予想通りにはいかないものよ。A級モンスターも粗方討伐したことだし、今回はそれでいいじゃないの。ほら、建物の中に宝箱があるかもしれないし」

「でも、食材は全然見つけてないわ……」

セラが意気消沈しながら祭壇に背をもたれる。

「セラねえ、元気出し――― あれっ?」

リオンがセラを元気付けようとしたその時、異変を感じる。セラも何かを察知したのか、ハッと顔を上げた。

「セラねえ、祭壇から離れて!」

「分かってるわ!」

すぐさまセラ達は祭壇から距離を取り、何が起きたのか再確認する。

「祭壇が……」

「光っておる!」

先程まで不動を保っていた祭壇が、眩く白い光を放っていた。やがて、その光は広場一面を覆い出し、視界が白で塗り潰されていく。

『セラよ! 察知スキルを怠るな!』

『やってるわよ! 祭壇があった場所に生物反応! 注意して!』

『うわぁ、僕の危険察知も大変な事になってるよ!』

白の世界で聞こえてくるは獣の咆哮。聞き慣れたアレックスのものではない。獣の声でありながら感じるのは威風堂々たる神聖な波動。声の呼応する様に、光がかき消されていく。

「あらぁ、これはまた……」

ゴルディアーナの額から汗が流れる。

あれほど際立っていた祭壇が跡形もなくなっている。が、そこには祭壇と同等の高さはあろうモンスターが鎮座していた。そのモンスターは純白で穢れが感じられない。姿形だけ見るならば白き狼が当て嵌まるだろう。だが、言葉で言い表せられない何かをセラは嗅ぎ取っていた。

「 魔人闘諍(ジンスクリミッジ) !」

静寂を保つ白狼に対し、自身の奥の手をセラは最速で為す。メルフィーナとの戦いで発動させた局部への付与ではなく、正真正銘完全なる 魔人闘諍(ジンスクリミッジ) 。両腕、両足は勿論のこと、翼と尻尾をも黒き魔力が侵食していく。セラの頭部をも魔力が飲み込んだその姿は、正に悪魔であった。

「―――! 霹靂の轟剣(ジェネレイトエッジ) !」

「 空顎(アギト) ・ 連牙(レンガ) !」

僅かに遅れ、リオンとジェラールも行動を開始する。魔剣カラドボルグに稲妻を轟き、魔剣ダーインスレイヴより斬撃の三連射が放たれる。

「グル……」

白狼が小さく唸る。それは敵を認識したサイン。臨戦態勢へと移行した白狼は全身の毛を逆立て始めた。

空顎(アギト) の飛来と共にリオンとゴルディアーナが左右に、セラが正面上空へ散る。今のところ白狼の目線はジェラールにある。

(いや…… 此奴、 空顎(アギト) が見えておる!)

白狼の前足が空を切るように振るわれる。それは一見素振りをしただけのような、ただそれだけの行為。だが、その行為は前方に強力な衝撃波を生み出し、 空顎(アギト) の軌道を変えていた。

「何ぃ!?」

「ちょっ!」

空顎(アギト) のひとつはジェラールに反され、残りふたつはゴルディアーナへと向かう。白狼は衝撃波で 空顎(アギト) を逸らすだけでなく、逆に攻撃へと転じさせたのだ。

『でもそのお陰で、隙ができた!』

A級赤魔法【 稲妻反応(ライトニングエンハンス) 】で敏捷と反応力を激化させたリオンは白狼の懐へと攻入っていた。右手に 霹靂の轟剣(ジェネレイトエッジ) を施した魔剣カラドボルグ、左手には刀哉の聖剣を模倣してケルヴィンが作り出した偽聖剣ウィル。本物の聖剣の特性はないが、切味は相違ない出来栄え。2本の魔剣聖剣による連撃を白狼の腹に叩き込む。が―――

「あれっ?」

魔剣カラドボルグの雷が、白狼に吸収され始めた。