作品タイトル不明
第412話 俺達の戦いはこれからだ!
神々によるこの世界への逆侵攻、その可能性に危機感を抱いた俺は、仲間達を引き連れ大急ぎで現場へと駆けつけた。
「アダムスめ、扉を開くにしても面子が揃ってからにしろってんだ!」
向かう先は 奈落の地(アビスランド) の禁断の地、『邪神の心臓』。かつて神の使徒の本拠地があったこの場所は、その昔は瘴気に溢れるやばい場所だったんだが、ダハクの緑化作戦によって今は自然豊かな土地となっている。尤も、いわくつきの場所である事には変わりなく、今でも現地の住民は近づこうともしないようで、今回めでたく神域への道を繋ぐ場所に選ばれてしまったんだそうだ。あとは何かとアダムスと因縁のある場所だから、ってのもあるんだろうか? いや、そんな事を気にするよりも、今は急ぐのが先決だ。
「アダムース! 来たぞ何も異常はないかぁぁぁ!?」
お騒がせの邪神様の姿を発見して、そのままそこへと直行。って、よく見たら十権能にゴルディアーナ、それにマリアと久遠の姿もあるじゃないか。何だ何だ、この豪華面子は?
「む、ケルヴィンとその仲間達か。随分と早い到着だな? よほどこの時を楽しみにしていたと見える」
「ああ、この時を今か今かと待ち侘びていてなって、そういう話じゃなくて! ……お前さ、道を繋げるにしても俺達が到着してからにしろよ。こっちから仕掛ける前に、向こうがこの世界にやって来たらどうするつもりだったんだ?」
直球で不満をぶつけてやる。
「ああ、その事か。何分、気分が乗ってしまったものでな。今ならできるかも? と、 幻想掴み取る啻人(ブラックファンタズム) を使ってみたところ、本当にエバの居場所と繋がってしまったのだ。ククッ、ただの我もこれには反省」
「気分で世界を危険に晒さないでくれよ……」
「ぷぷっ、妾も爆笑しちゃった。力業で別次元に道を繋げるとか、流石に無茶苦茶過ぎ~。でも、面白いから良し! あ、もう空気を読めてると思うけど、妾と久遠も同行するから~。もっと面白いものが見られそうだし♪」
「ええっ……」
「わっ、あからさまに嫌な顔をされちゃった。おばさんは悲しいなぁ」
いや、だって君らまで来たら、俺の取り分が減っちゃうじゃん。ただでさえアダムスが居るってのに。
「色々とすまなかったな。ただ、恐らくエバはこちら側には来ないと思うぞ? 彼奴が得意とするのは策を講じての待ちの戦術、自ら敵の陣営に打って出る事は滅多にない。恐らく今頃、地の利を活かす事に執着し、忙しなく罠などを仕掛けている事だろう。まあ虚を突いて打って出たところで、ただの我が出迎えてやるまでよ」
「あ、そうなの? いやあ、ケルヴィムが急かすから、要らぬ心配をしちゃったよ」
「攻める為に急いでいると、俺はそう言った筈だが?」
んー、だってケルヴィムの場合、ちょっと抜けているところもあるし…… あ、そもそも神様は義体にならないと地上に来られないんだっけ? わっ、抜けていたのは俺の方じゃん。恥ずかし!
「ケルヴィンちゃん、今日はよろしくねん」
「ああ、プリティアちゃんか。こちらこそ――― と言って良いのかな、今回の場合?」
「立場上は何とも言えないわねぇ。そもそも私ぃ、未だに正式な転生神になっている訳じゃないしねぇん…… でもだからこそ、この美しき瞳でじっくり見定めなきゃん! アダムっちゃん、私を参加させてくれてぇ、ありがとぉ~(はぁと)」
「礼を言われる事ではない。むしろ、ゴルディアの的確な指導に感謝しているところだ。お陰で次元の壁を打ち破る事に成功した」
「プリティアちゃんが直々に指導していたんかい!? プラス、俺も勝手にゴルディアを教えて大変申し訳ありませんでした……!」
ツッコミと土下座を同時に行う高等テクは、今の俺の力をもってしても難しい技術だ。それをぶっつけ本番で成功させられたのは、そのどちらにも心がこもっていたからだろう。やっぱ、何事にも真心って大事なんだよなぁ。
「なるほど、これが神域に繋がる道ですか」
「……えっと、メルさん? 俺が土下座している真横に立たないでくんない? で、そんな残酷にスルーしないでくんない? せめて、視線くらいはこっちに向けてほしいと言いますか」
気を取り直して、俺もその道とやらを確認する。これは…… ちょっと入るのを躊躇してしまうような見た目をしているな。空中に不定形の穴がぽっかり開いていて、外郭がぐねぐねと歪んでいる。小さなブラックホールというか、それともワームホールと言うべきなんだろうか…… 兎も角、穴の中は向こう側が見通せず、闇と光が入り混じったような光景がどこまでも続いている。
「転生神時代のメルも、他の神々んとこには行った事がなかったんだっけ?」
「ええ、この地を管理する転生神だけは、その特性上扱いが異なりましたので。ただアダムス達の話から察するに、怠惰的な意味で感化されないよう隔離されていたんでしょうね。転生神以外の神達には代替わりがありませんので」
「そそ、そうなんですよ! だからこそ、堕落した者達は粛清する必要がある訳です! むふー!」
「うおっ!?」
唐突に俺達の間に割り込んで来たイザベルが、鼻息を荒くしながら熱弁を振るい始めた。
「イ、イザベル、落ち着いて! 迷惑になるから!」
「グロリア、放してください! 私はまだ、護るべき者達に伝えたい事がッ!」
「それは私が代わりに聞いてあげるから! ……その、二人ともすまないな。どうにも決戦を控えて興奮しているみたいなんだ。ほら、あっちに行くよ!」
グロリアの権能によって強制的に距離を開けられ、向こう側へと飛んで行くイザベル。うわ、まだ何かを叫んでいるよ。今の神々の存在は、それだけ彼女にとって地雷なのか。
「「………」」
しかし、今の神々も色々とアレだが、こいつらが成り代わるのも正直どうなんだって不安もあるんだよなぁ。まあ、その辺りの交渉事はシュトラやコレットが取り纏めてくれているので、今更俺がどうこうできる訳でもないんだが。
「ねえねえ、そんな事よりも早く行きましょうよ! 話なんて後でいくらでもできるでしょ?」
「お、おう? セラはすっかり目が覚めたみたいだな…… けど、その意見には俺も同意だ。アダムス、もう面子は揃ったんだろ? そろそろ出発しないか?」
「ただの我は構わないが…… 貴様の愛娘、クロメルと言ったか? 彼女はまだ来ていないようだが、よいのか?」
「お前、今何時だと思ってんだよ? ―――クロメルはとっくにお眠の時間だ!」
「なるほど、そうか!」
ちなみに当然の事ではあるけど、ララノアもメイド達と一緒に屋敷で留守番です。
「フッ、漸く出発か。今回は俺も前線に出るんだ、勝ちはもう確定したようなものだな。クククッ」
「……えっと、ケルヴィム? その微妙にフラグめいた言い回しは止めてくれないか? 決着前に勝ったな、とか言うやつ。何か不思議な力が働きそうだからさ」
「む? なぜだ、俺は本当の事しか言っていないぞ?」
「あー、お約束を知らない奴に説明すんの、なかなか難しいな…… まあ、アレだよ。どんな敵が相手でも、油断大敵の精神で戦ってほしいんだ。お前にはつまらない事で死んでほしくないからな」
「……ッ! そ、そうか、そういう事なら仕方ないな。どのような場面だろうと、全力を尽くす事を約束しよう」
「ああ、頼むよ」
いやー、ケルヴィムは扱いやすくて良いな。基本的に頼る風の言い回しにすれば、何でも理解してくれそうだ。
「ねえねえ、アダムっちゃん。これって大事な戦いなんでしょ? なら、出発前に号令でもかけてみたら? きっと盛り上がるよ~?」
「号令? フッ、ただの我らに言葉など不要。目の前に極上の戦いがあり、ただただそれを貪るだけなのだからな」
「えー、それじゃ恰好が付かなくな~い?」
不満気なマリアが頬を膨らませている。いかにもそういうのが好きそうだからな、こいつは。
「むう、貴様がそこまで言うか…… ならば、一言だけ」
「やった、流石はアダムっちゃん! 話が分かる~♪」
マリアに促されたアダムスが道の前に立ち、皆の方へと振り返る。
「皆の者、心して聞くが良い。 ……我らの戦いはこれからだッ!」
「うおぉぉい!?」
フラグ以上にやばい台詞をぶち込んで来るんじゃねぇよ!?