軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

338話 みーちゃんの技なんだぞっと

完全装備の美羽なら、平将門とのバトルにも勝てる。少なくともゲームでは勝てた。今のレベルならばぎりぎり勝てたと記憶している。

でも、あの時はソロだったし、守る相手もいなかったんだよなぁ。

鈍色の魔導鎧を着込み、神のオーラを宿らせる剣を手に艷やかな灰色髪を靡かせて、凛々しい顔で美羽は平将門と対峙した。

「平将門、ここで終わりにするとしようか!」

狂暴なるオーラを纏わせて、美羽は手のひらを上に翳す。まずは皆をなんとかしないといけないよね。

『 極大神癒(エクストラゴッドヒール) 』

その手のひらに白金の魔法陣を形成させて、美羽は回復魔法を使った。ただし、バージョンアップした範囲回復魔法だ。

手のひらから生み出された白金の帯が辺りへと舞いながら、全てを回復させて、その構成を変えていく。

闇夜たちの構成は黄金の糸から、白金の糸へと変換されていき、阻害されていた動きが解除された。

ただし、構成を変えられたのは闇夜たちだけであった。残念ながら、敵には効果はない模様。抵抗するものには効果がないことが判明した。

まぁ、闇のオーラを剥ぎ取れたから良いんだけどね。今の力ならその程度だろう。

「ぐわぁっ! なんだ、その光は?」

平将門が身体から、シュウシュウと煙を吹き出して、苦しみのたうち回る。その身体は緑の蔦へと変わっており、先程までの漆黒のオーラは溶けるように消えていた。

「みーちゃんの回復魔法はいかなる状態異常も治すんだよ!」

「な、わ、我の執念をも癒やすというのか? 長年に渡り降り積もる雪の如く重ねてきた執念をもっ!」

地の底から響かせるかのように、おどろおどろしい怨嗟の声をあげて平将門は頭を抱えて叫ぶ。

「許さぬっ! 許されぬっ! 我の思いは、怨みは魔法の力などで溶けて良いものでは断じてないのだっ!」

「むむっ?」

叫ぶと同時に浄化したはずの平将門の身体が再び黒く染まっていき、元の禍々しい姿へと戻ってしまった。どうやら、怨念は深すぎるようだ。

「哀れだね、平将門! 助かる道を自身で閉ざしちゃうなんて!」

「なんとでも言うが良いっ! 我の怨念はそう簡単には消えぬのだ」

「呪いではないとか言っていたけど、その怨念が既に呪いとなっているよ!」

闇のオーラを剥ぎ取れば全弱点になって、簡単なはずだったけど、そうはいかないらしい。まぁ、ゲームでもこの裏技は平将門には通じなかったから期待はしていなかったけどさ。

「闇夜ちゃんたちは、周りの化け物を倒して! 私は平将門を退治するよ」

「わかりました! 動きも元に戻りましたしいけます!」

「ニッシッシ〜、任せて!」

闇夜たちはコクリと頷き、なり損ないたちに立ち向かう。

さっきの『極大神癒』で白金の糸へと全てが変わったので、『運命』という黄金の糸による束縛から闇夜たちは解放された。

なので、意気軒昂に皆はなり損ないたちと戦い始める。

「何者かはわからぬが、我の力を甘く見ないでもらおうか」

『羅生の金棒』

平将門が再び両腕を鬼の腕に変えると、床から巨大なる金属の棍棒を引き出す。棘だらけの鬼の金棒だ。

何百kgあるかわからない巨大なる金棒を掴んで、平将門は一振りする。たったそれだけで暴風が巻き起こり、砂煙が舞い散る。

「まだまだ! 全ての力を見せようぞ」

『不死なる羅生の皮膚』

『打ち砕く羅生の怪力』

続いて支援魔法を平将門は使用する。

「これで貴公の負けは決定した。いかなる攻撃をも防ぐ皮膚と、触れるもの全てを打ち砕く鬼の力! その目に焼き付けよ!」

「たしかに良さげな魔法だよね!」

『不死なる羅生の皮膚』は万能以外の攻撃を無効化し、『打ち砕く羅生の怪力』は攻撃力を3倍にしてクリティカル率大幅アップの平将門専用の魔法だ。しかも『貫通』が備わるので物理無効化を持っていても普通にダメージを負う。

なんで知っているかというと、ラスボスのアシュタロトよりもたくさん倒したからね! その技は全部知っているのだ。

まぁ、わざわざ知っているよと教える義理はないから黙っておくけど。

『羅生の一撃』

横殴りに金棒を振るってくる平将門。金棒を闇のオーラが覆い、ただでさえ巨大な金棒を数倍の大きさにしてくる。

ガガガと床を削り迫りくる金棒へと、美羽も対抗して神気の剣を鞭のように振るう。

『神気神龍剣』

白光を纏い、神気の剣が神々しい龍の姿に変わり、鬼の金棒へとアギトを開き噛み付く。

「うぬっ!」

「むにゅにゅ」

お互いの力がぶつかり合い、お互いに力を籠めて打ち勝とうとする。龍と金棒がぶつかり合う箇所から莫大なエネルギーの奔流が巻き起こり、床を捲りあげて、天井を崩してゆく。

「ぐうっ!」

「うにゃっ」

遂に二人の攻撃は弾け飛び、平将門は体勢を崩し、美羽は後ろでんぐり返しをして転がってしまった。

「我と互角とは! しかし、これならどうだっ!」

『羅生大旋風』

「一つ一つが雑な技なのに強力だよなっ!」

『神気帝龍剣』

平将門が金棒を扇風機のように回して、美羽を潰そうとする。

さっきの技よりも威力は弱いが、多段で攻撃してくる技だ。一撃でも受けると体勢を崩してしまい、連撃を喰らってしまうに違いない。

対抗するために、こちらも多段攻撃の武技を発動させる。手元で剣を翻し、空を漂う白金の帯と化し、金棒へと叩きつけた。

ガィンガィンと重々しい金属音が響き、金棒の軌道が変化して、神気の剣が弾かれる。金棒が壁に触れると砂糖菓子のようにあっさりと崩れて大穴が開き、神気の剣が床を削ると、深き溝ができていく。

「ぬぅぉぉぉ!」

「てやてやてやー」

お互いに叫びながら攻撃を続ける。

「くっ! これも互角か」

「いや、そうはならないよ!」

『魂覚醒』

『神気帝龍剣』

『神気帝龍剣』

『融合しました』

『神気皇龍剣』

切り札を切ることにして、奥義を重ねて使用する。白光の帯は巨大なる光龍へと変化すると金棒へとその身体をぶつける。

回転させるように美羽が神気の剣を振るうごとに、金棒は激しい衝撃で拉げていく。

「うぉぉっ! まさか鬼の金棒を壊すかっ!」

「武器破壊成功だね!」

拉げて使い物にならなくなった金棒を放り捨てると、平将門はギリリと歯ぎしりをする。

くるりと手元に神気の剣を戻して、美羽はニカリと得意げに笑ってみせる。

「本当に何者なのだ!」

『鬼王襲爪撃』

金棒での攻撃を諦めて、平将門は爪での攻撃に切り替えてきた。破壊力があり、高速での斬撃。しかも器用にも指を曲げて、一本一本爪の攻撃角度も変えてきている。

さすがに完全回避は不可能で、神気の剣を叩きつけ、身体をずらして回避するが喰らってしまう。

「本気になった私にダメージを与えることができなかったら泣いちゃうところだったよ!」

「ぬう! その上から目線の言いよう。我を下と見るかぁっ!」

ますます速度を増して、鬼の爪は美羽にダメージを与えていく。神気の剣で弾き返し、美羽も迎撃するが、少しずつ押されていっていた。

息もつかせぬ超高速での細かな攻撃を繰り出す鬼の爪の前に、武技を発動する暇もない。

激しい剣撃は続き空中を所狭しと駆け巡り、美羽は追いかけてくる爪を弾く。

「フハハ、勝った! やはり地力が違うのだ!」

「勝ちを確信するのは少し早いぜ!」

平将門が哄笑するのを見て、ヘヘンと笑い返して周りを見る。

なり損ないたちと戦闘を続ける中で、ニムエが僅かに首肯する。

「準備オーケーだ!」

「了解です、ご主人様」

合図を送るとニムエが人差し指をタクトのように振るう。

『永久樹氷』

床から絶対零度の樹氷が突き出して、鬼の手へと迫ると絡めとった。パキパキと音を立てて、鬼の手は凍り始める。

「小癪な真似を! だが、その程度では阻むことなどできぬわっ!」

鬼の手は一瞬動きを止めるが、すぐに樹氷を破壊して動きを取り戻す。

だが、その一瞬で問題はないんだ。僅かな敵の隙が欲しかったんだよ。

『絶歩震脚』

美羽は脚に魔法の力を巡らせて、前傾姿勢となり狂暴なる笑みを浮かべる。

「全て、踏み潰しちゃうよ!」

そして、鬼の手へと身体を向けると足を一歩踏み出す。瞬間、美羽の姿がかき消えて、鬼の手が爆発した。

「なっ!」

驚きの表情になる平将門を前に、鬼の手が砕けて、腕が拉げて爆発していく。平将門の超動体視力を以てしても、なぜ爆発したのか辛うじて見える程度だった。

美羽が転移にも見える超高速で移動している。しかも踏み台にしている鬼の腕を砕きながらだ。

「ま、まずい、まずい! 鬼の腕を解除して――」

美羽を捕まえるために伸ばしてしまった鬼の腕はすぐには回収できない。だが、回収しなくては両腕を無くして、あの化け物と戦うことになると、平将門は慌てふためく。

「平将門さんは、鬼のように馬鹿だったということかな?」

「うぬっ!」

平将門が対抗策を考える間もなく、美羽は眼前に降り立った。後ろでは砕け散った鬼の腕の残骸が落ちていく。

「ほ、本当に貴公は何者なのだ?」

「幼子代表鷹野美羽! 来年中学二年生だよ!」

神気の剣を振り上げて、魔法の力を集めていく。眩いばかりの白金の光が輝き、神気の剣に膨大なる力が宿る。

「ひっさーちゅ」

『魂覚醒』

『神気神龍剣』

『神気神龍剣』

『融合しました』

『神気超龍剣』

白金の超龍が天に浮かび、地へと舞い降りる。平将門はその光景を呆けたように眺めるばかりで、抵抗することもなかった。

「この光……このような光がこの世にあるとは思えぬ……」

「ギャォォォォン」

平将門の身体に白金の超龍が咆哮をあげて噛み付くと、その膨大なるエネルギーで消滅させていく。

漆黒の蔦もろとも、全てが消滅していく中で、平将門は美羽へと消えゆく中で語りかける。

「そうか……今、理解した。これこそが本物の力……貴公は……」

そうして、平将門は消滅し、辺りに這う蔦も枯れて、なり損ないたちも砂となって消え去るのであった。

天井が崩れて青空が広がる中で、神気の剣を手元に引き戻し仕舞うと、美羽は灰色の髪をかきあげて、宙を仰ぎ見ると薄っすらと微笑む。

「宿屋に泊まれば平将門復活するかなぁ」

ログに表示されたドロップアイテムがカスだったので、戦いの虚しさを悟り、泣きそうになる美羽だった。