軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

316話 失墜の日が始まるんだぞっと

『神意』

『召喚契約』

みーちゃんは、お布団の上にお腹を見せて横たわるポメラニアンに手を翳すと魔法が発動し、ポメラニアンの身体が白金の粒子に覆われて、その体内に吸収された。

『リルをペットにしました』

『リル:レベル120、闇無効、人化封印、ポメラニアン固定』

結構レベルが高い子犬だ。アホでなければ苦戦しただろう。『人化』は封印されたらしい。ふむふむ、みーちゃんもポメラニアンの姿の方が良いから、システムさんはわかってるね!

なぜかポメラニアンは慌ててジタバタと足を動かすけど、きっとペットになれて嬉しいんだろう。

「キングホーンベアカウのジャーキー食べるかな?」

アイテムボックスから取り出して、食べるかなと差しだそうとする。

「人間が食べるジャーキーはしょっぱいから、子犬にあげちゃだめよ、みーちゃん」

「ヒャンヒャンヒャンヒャンッ!」

ママが犬には塩っ気のあるものは駄目なのよと、注意してくれる。なるほど。でもポメラニアンは目を輝かせて、ぴょんぴょんと飛び跳ねてしがみついてきた。

ジャーキーが食べたいらしい。ペット用のジャーキーを作らないとね。

がうがうと唸り、みーちゃんの腕に前脚を絡めてくるけど、あげたら駄目なんだってさ。だーめっ!

「名前はリルにしようと思います!」

抱っこして子犬の名前を一応つける。ポメでも良いと思ったけど、リルでも良いか。

「仕方ないわねぇ。ちゃんと散歩をさせるのよ?」

「はぁい」

するのよではなくて、させるのよとの言い回しが少し貴族っぽくなったママである。

「それじゃ、蘭子さん、パパ呼んできて!」

「かしこまりました」

オーディーンのおじいちゃんが『マナ』覚醒を勧めてくるのは珍しい。本当にやらないと危険なことになると予想しているに違いない。

みーちゃんがジャーキーをアイテムボックスに仕舞ったことに気づかず、手の中にあるのかなとリルが懸命に鼻面を押し付けてくるので、頭を撫でながらママへと顔を向ける。

まずはママの『マナ』を覚醒させることにしておこう。

『神意』

『 神癒(ゴッドヒール) 』

白金の粒子がサラサラと空中に舞い散り、ママの身体を覆う。

驚いた顔のママだが、粒子が吸収されて身体が淡く輝くと、少し困惑した顔となって首を傾げる。

「みーちゃん、これはなぁに? なんだか、身体が少し元気になったみたい」

少しか……。まぁ、そうだろう。今まで平民だったママは元々マナが少なかっただろうからね。

ムニンよろしく。

カラスに思念を送ると、カァとどこからか鳴き声が聞こえてきた。

『鷹野美麗:レベル8』

……まぁ、元平民のマナ量しか持っていなかったにしては高い方かな? でもこれで空と舞のマナ量はみーちゃんの『 祝福(ブレス) 』が効果を表していたと証明されたかも。

それでも、魔法抵抗値が付いたのは素晴らしい。今までとは天と地の差の魔法防御力となったので、少し安心したよ。これで自前の魔法障壁も使えるしね。

「あんまり変わらないかもしれないけど、初級魔法で大怪我を負うことはなくなるよ!」

「あら、それは良かったわ。でも、みーちゃんは体調は大丈夫? まだまだ寝てなさい?」

自分の『マナ』覚醒よりも、みーちゃんを心配してくれるママに嬉しくなっちゃう。みーちゃんは本当に家族に恵まれたね。

「みーちゃん、起きたんだね。良かったよ」

「うん、さっき起きたところ!」

バタバタと足音がすると、汗だくのパパが息を切らせて部屋に入ってきた。たぶんとっても忙しかったはずだから、少し悪いことをしたかなと思うけど、必要なことなのだ。

「それで、とっても大変なことがあるんだって?」

「うん、ししょーのめーれーでパパの『マナ』を覚醒させるね!」

「え? ちょっと、待って」

悪いが待たない。

『神意』

『 神癒(ゴッドヒール) 』

ママの時と同じように白金の粒子が舞い、パパの身体を癒やす。即ち、マナを扱える身体へと。

「こ、これは? こんなに変わってしまうのか………」

手をわきわきと動かして、自分の身体の変わりようにびっくりするパパだけど、どれぐらい強くなったのかな?

『鷹野芳烈:レベル22』

まったく鍛えていない割りには、そこそこの強さだ。鍛えれば強くなれる可能性はあるけど……忙しいパパでは無理だね。社会人は仕事があるから、運動不足になる方が多いのだ。

「これが魔法使いの視界というやつなのか。『マナ』が見えるとこんなに世界が違うものだとは思わなかった………」

なんだか、力に溺れそうなキャラみたいなことを口にするパパを見て、ちょっぴり心配になっちゃうみーちゃんだ。まぁ、パパなら大丈夫だろうけどね。なにしろみーちゃんのパパだもん!

なので、心配するのはやめて、オーディーンのおじいちゃんへと、ちょっと真剣な表情を向ける。

「パパとママのマナは覚醒させたよ! ししょー、これで良いのかな?」

「うむ、まぁ、よかろう。杞憂であれば良いのだがな」

「みーちゃんは知ってます! お空は落ちてこないよ!」

杞憂という意味を知っているよと、アイスブルーの瞳を輝かせて、褒めて褒めてとフンフンと息を吐くみーちゃん。難しい漢字を知っているでしょ?

「この家門同士の決闘、空中城の墜落で話が変わりそうだ。決闘は行わせるだろうが、皇帝は墜落する現場に向かうつもりだ」

「さすがにこの一大事です。当然かと思いますよ、大魔道士様」

パパがコクリと頷き話に加わるが、みーちゃんも同意見だ。ここでこの地に残っていたら、評価ガタ落ちだ。

「そうだな。その影響で神無家の行動が慌ただしい。決闘には期日がまだあるのに、家門の連中を急ぎ集めているようだ」

機械にもクラッキングできるおじいちゃんと、情報屋を揃えているフリッグお姉さんの情報なら間違いないだろう。

ふむふむ………?

「空中城の墜落現場で活躍するつもりじゃないの? 『ニーズヘッグ』の残党も探さないといけないしね」

最近落ち目の神無家が功績を増やせる絶好のチャンスだ。

だが、オーディーンのおじいちゃんは隻眼を光らせて、声はそこまで大きくないのに不思議と周りに響く声音で告げてきた。

「鹿狩りにしては勢子が多くないか、という意味だ」

「鹿狩りですか?」

パパたちはなんのことかと、困惑げな顔になる。意味がわからなかったらしい。

でも、みーちゃんはハッと顔を歪めて、驚きの顔となる。

みーちゃんは理解できたのだ。オーディーンめ、日本の歴史をよく勉強してるね。

「しまった! そういうことなんだ! まずいよ、ししょー。ニムエ、すぐに旅館の守りを固めるんだ。蘭子さん、皇帝へーかへ緊急連絡をして!」

「かしこまりました、ご命令に従います」

ニムエは疑問を口にせずに、スマフォを仕舞うとすぐに部屋を飛び出ていく。蘭子さんは、みーちゃんの真剣な顔に何かがあると、言葉を待つ。

しくじった! 神無公爵め、みーちゃんを囮にしたな!

「通信の内容はいかがいたしましょうか?」

「内容は、神無家にクーデターの可能性ありだ! うちとの決闘は囮なんだ。神無家の分家は軍の者たち。兵士も一緒にこの地に集めてるんでしょ?」

バッと小さな手を振って指示を出し、オーディーンのおじいちゃんへと確認する。

「そうだ。不必要に応援団として集めている。兵の数はかなりのものだな」

「お祭りで城から出ている皇帝へーかたち。近衛兵の数も城よりは少ないし、何より防御機構を使えない。そして、神無家のホテルに宿泊してるんだよ!」

「クーデターというわけかい、みーちゃん? でも公爵家が本当にそんなことをするかな?」

考え過ぎだよとパパが言ってくるけど、嫌な予感がする。

「今日だけ厳重な警備にすれば良いと思う。すぐに皇帝へーかはこの地から去るだろうから。予定外の行動に対して、慌ててクーデターを起こさなければ、杞憂だと思う」

「鷹野伯爵のお名前で通信をしてきます」

蘭子さんは頭を下げて忠実に指示に従ってくれて、部屋を去っていった。パパは止めようか迷っていたけど、止めなかったので一安心。

ポケットの中にジャーキーあるんでしょと、顔をつっこんで抜け出せなくなり、ジタバタと暴れるアホ可愛らしいリルの背中を撫でながら、みーちゃんは深い思考に移る。

原作では、ここまで神無家は強引なことをすることはなかった。追い込みすぎたんだ。

だから、家門同士の決闘を装って兵を集めてクーデターを起こす気になった。

たぶんこれは杞憂ではない。みーちゃんの勘が訴えているのである。

鹿狩りに見せかけて、勢子に扮した兵士で敵を襲うのは日本の戦国時代で使われた下剋上の戦法。オーディーンのおじいちゃんは神無家の不自然さに気付いたんだ。

シンはどうするんだ? このクーデターに加わる? ウ~ン、どうも主人公っぽくないなぁ。

なら、このクーデターに反対して……捕まる? 放逐される? クーデターが成功した場合、失敗した場合。

………嫌な予感がする。少し慢心していたかもしれない。

神無公爵は常に2枚、3枚とカードを手にして行動する。これがたんなるクーデター騒ぎなら良いけど……。

考えるふりをして、思念でオーディーンのおじいちゃんへと通信をする。

『オーディーン。運命の糸は修正すると思う?』

『どういう意味だ?』

『もしかして配役が変更されたのかもしれないってことだよ』

『ふむ? どのように配役が変わったと……。そうか、その可能性があるのか。だとすると………クーデターの大義で判明するだろう』

だよねぇ………オーディーンは理解したか。これは嵌められたかもしれない。

「美羽お嬢様! 思念通信がジャミングされております。他の通信機も通信不可です! それに旅館の周囲に軍が展開し始めております!」

慌てて部屋に戻ってきた蘭子さんが叫ぶように報告してきた。ありゃ、行動が早いなぁ。

「そう、それでは防衛の準備をするように。で、軍はなんだって?」

「それが………」

言い淀む蘭子さんだが、すぐに窓の外から拡声器の音が響いてきた。

「鷹野伯爵! テロリストとの共謀、皇帝陛下との裏取引により自作自演にて利益を貪ってきたことにより逮捕する! すぐに武装を解除して外に出てきなさい!」

だよね。そうだと思ったよ。

くっ、そんな嘘に従うみーちゃんじゃないぞ! 神力は使えなくても、負けないもんね!

冤罪には負けないぞ!