軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

310話 衝撃の真実

シンの一撃は細身の刀とは思えないほど重かった。歯を食いしばり、こちらはバスタードソードであり、刀身の厚さを利用してへし折ってやると、勝利は気合を入れて押し返す。

「うぉぉ!」

「おっと」

しかし、シンは力比べをせずに受け流し、あっさりと後ろに下がってしまう。力を入れすぎて、たたらを踏みそうになってしまい、その隙を逃さずにシンが鋭い突きを繰り出してきた。

矢の如き速さの突きだが、勝利は動揺を見せることなく、攻撃を躱すこともせずに体勢を立て直して剣を構え直す。

ギン

とガラスを引っ掻くような音がして、シンの突きは勝利の顔面目前で止められた。

6個の紅き水晶片が支点となって、魔法の盾を作り上げ防いだのだ。

『 紅蓮水晶(プリズムクリムゾン) 』

今や勝利の代名詞とも言われる自動行動を取る魔法水晶だ。躱さずとも、水晶盾が防いでくれると勝利は確信していたのである。

「君のその魔法はとっても厄介だね」

完全に虚をついた攻撃が防がれたにもかかわらず、余裕の笑みをシンは見せる。

「ふっ、この水晶がある限り、僕の勝ちは揺るがない。攻守共に隙のない『 紅蓮水晶(プリズムクリムゾン) 』。本人よりも優秀だと言われるこの魔法の力を知るんだな!」

正直すぎる返答をしながら、勝利が思念を送ると、32片の紅き水晶は周囲を旋回して、指示どおりに動き出す。

『 紅蓮槍雨(クリムゾンレイン) 』

18の水晶が素早く集まると、3本の火炎の槍へと組み合わさる。

「喰らえっ!」

剣を横薙ぎに振り、間合いを突き放すと同時に宙に浮く火炎槍を発射する。

右足、左肩、最後は予測される回避先へと。

「なかなか考えているようだ」

『破邪の剣』

シンは薄笑いをして呟くと、手に持つ刀が蜃気楼のように歪む。そして、鋭い踏み込みをして、右足に迫る槍を迎撃する。

パリンとガラスの割れる音がして、火炎槍は分解してしまい、刀が触れた水晶片は消えてしまう。

「はっ!」

『三連翔撃』

裂帛の声をあげて鋭い呼気を吐くと、シンは刀を返して左肩に迫る槍を切り落とし、くるりと体を回転させると、腕を伸ばして最後の槍をも撃墜してしまう。

シンが刀を振るった後には、3本の剣閃が残る。尋常ではない剣の腕だ。

「マジかよ! もう『破邪の剣』をマスターしてやがったのか!」

シンだけが使える魔法『 魔法破壊(マジックブレイク) 』の付与版だ。刀に付与して触れた魔法を消してしまう恐ろしい魔法剣である。

その攻撃は驚くことに『魔法障壁』を無効化してしまうのだ。

本来は原作の後半に覚える魔法剣のはずだと勝利は驚いてしまう。

だが、それでも動揺はしなかった。

来たるべき、たぶん来るだろうシンとの戦闘を考えて、常に勝利は仮想戦闘を脳内で描いてきた。その中には『破邪の剣』を使ってくるパターンもあったのだ。

「その技には致命的な弱点があるっ!」

『紅蓮豪雨』

槍は砕かれたが、その場には槍を形成していた水晶片が残っていた。残っていた水晶片はシンを包囲すると、矢となって射出される。

『破邪の剣』は強力だが、触れた箇所の魔法しか解除できない。いくつもの水晶片で形成されている槍のために、打ち消しても触れていない箇所の水晶片は無事だったのだ。

しかも、シンの目の前に散らばって浮いていた。再び攻撃する絶好のチャンスとなっていたのである。

今度は刀では防ぎきれないように、全方位からの無数の矢での攻撃だ。

「一発でも当たれば終わりだろう、シンッ! 僕の勝利だ!」

勝ちを確信して、フハハと得意げに叫ぶ。シンの弱点、あらゆる魔法に弱いという紙装甲を知っているので、数撃ちゃ当たる戦法をとったのだ。

「やるね! でも、これならどうかな?」

『 静寂領域(サイレンスフィールド) 』

シンは体内のマナを練ると、魔法を発動させる。周囲の空間が僅かに揺れて、透明なドームが作られた。透明であるために、空間が僅かに歪んでいなければ魔法が発動したとは普通は気づかないだろう。

しかし神である勝利はその魔法も知っていた。シンの技は全て把握しているのだ。

ドームに触れる寸前で炎の矢はピタリと停止して、勝利は腰から投擲用ナイフを引き抜くと、シンへと放つ。

「なにっ?」

予想していた結果と違ったことに、シンは驚きの表情となり、慌てて魔法を解除すると、迫るナイフを弾き落とす。

「ふははは、シン、お前の能力は全てわかっているんだよ! その魔法の効果範囲に入った魔法は全て解除されるんだろ、自分の身体強化もな! だから、物理攻撃に対抗できなくなるんだ!」

調子にのって、ぴすぴすと鼻を鳴らして説明しなくとも良いことを説明する勝利。きっと正々堂々と戦いたいがため、わざわざ説明をしているのだ。

「君は良い意味で、僕の予想を外してくれる」

クールにシンは笑い、手を前に翳す。

『 氷蔦(アイシクルアイヴィー) 』

その手のひらから、冷たく光る氷の蔦が生み出されて、みるみるうちに周囲を覆い尽くす速さで繁茂する。

吐く息が白くなり、床が凍り始めて、魔導鎧に霜が降り、勝利は寒さを感じ始めた。

シンが魔道具を使わずに魔法を放ったことに、舌打ちをして勝利は絡みついてくる氷の蔦を剣で切り払っていく。

「くそっ! なんで他の魔法を使えるんだ?」

やはり本当に属性魔法が使用できるらしい。原作ではなかったことだ。

「属性魔法を使わなければ、君には勝てそうにないからね」

氷の蔦を足場にし、スケートのように滑りながら距離を詰めてくるシン。

「力を隠していたってのか? 僕を甘く見るなよ、唸れ炎よ! 氷なんぞ、全て溶かし尽くせ!」

『 火山溶岩流(マグナラヴァーズ) 』

大きく剣を振りかぶると、豪炎を纏わせて地面に突き刺す。

床が捲れ上がり、火山が噴火するかのように、全てを焼き尽くすマグマが吹き出した。

シンが走る軌道へと、一直線に次々と噴火してマグマの河を作っていく。

ドロドロに溶けた高熱の溶岩は氷の蔦に触れると、すぐに溶かしていき、水蒸気がもうもうと生み出されて、濃霧の中にいるかのように視界が塞がれてしまう。

勝利はゆっくりと深呼吸をして、周囲の気配を感じるために集中する。僅かな物音も、空気の流れさえも感じ取れるように、感覚を研ぎ澄ましていく。

観衆の応援、司会者の実況、戦闘を盛り上げようとする音楽隊の奏でる音。全てが遠く感じられて、勝利は水面のように心を落ち着かせ、剣を構える。

「そこだっ!」

ゆらりと揺れた水蒸気へと、即座に振り向くと剣を振り下ろす。

ガキンと金属音が響き、手応えを感じる勝利。だが、振り下ろした先を確認し、目を見開いて驚く。

そこには肩当てが氷の蔦にかけられていただけで、シン本人の姿はなかったからだ。

「囮だったのか!」

「そのとおりさ」

驚愕の声をあげる勝利。その後ろから剣を突き出す体勢で、シンが水蒸気の中から飛び出してきた。

「悪いね勝利君。これで終わりだよ!」

『破邪落葉』

魔法を無効化し、鋭き一撃で敵を倒すシンの必殺の武技が繰り出される。木の葉が舞い落ちるように優雅で滑らかな一撃は、するりと勝利の胴体へと滑り込み、胴体を切り裂こうとした。

勝ちを確信していただろうシンは、勝利の魔導鎧ごと胴体を切り裂いた。そう思われた。

「手応えが軽すぎるっ! ダミー!?」

だが、今度はシンが驚く番であった。切り裂かれた勝利は炎となって、消えてしまったのだ。核となっていた数個の水晶片が砂のように崩れ去り、散っていく。

「てめえのやり方は知っているって言っただろ!」

咆哮すると勝利は隠れていた水蒸気の中から飛び出して、猛火を纏う剣へとマナを注ぎ込む。

『火炎三連』

猛火の剣閃がシンへと迫り、シンもすぐに対抗するべく刀を振るう。

『破邪六連』

シンの鋭き剣閃が空中を奔り、勝利の剣とぶつかり合う。

勝利の剣は、猛火が消え去るが、すぐにマナを追加して、薪のように燃やすとシンへと攻撃を続ける。

パワーは勝利の方が上であり、剣速はシンの方が上であった。

お互いに体を多少傷つけられても、気にせずに剣を打ち合う。

「ここで決めるっ!」

「強引すぎると思うがね」

勝利は気合を入れて、最大限に身体能力を高めて、パワーで押し潰すべく剣を振るう。

対するシンは軽やかにステップを踏んで、勝利の剣を躱しつつ、速さで上回り刀を振るう。

勝利の剣が強化された魔法床を砕き、突風を巻き起こす。暴風の如き攻撃の間を縫って、シンが勝利へと攻撃を命中させるが、この日のために装甲を分厚くしていた勝利は装甲に傷を作るだけで、なかなか傷を負うことはない。

「素晴らしいよ、勝利君。君こそ僕の探していた仲間だ」

「はっ! 僕を褒めても何も出てこないぜ!」

「この先の戦いについてこれる仲間が欲しかった。君が相応しいか、これで試させてもらう!」

シンが動きを止めて、刀を下段に構える。刀に神々しい星の光が集まっていき、周囲へとシンの膨大なマナが吹き荒れる。

僅かな時間の溜め。しかし、それこそが勝利の狙っていた瞬間だった。

原作では、相手は何をするつもりだとシンを警戒し手を出さなかったが、この溜めこそが最大の隙だったのだ。と、原作者がインタビューで答えていたことをしっかりと覚えていたのだ。

「弾けろ、 紅蓮水晶(プリズムクリムゾン) !」

周囲を旋回していた紅蓮水晶が、勝利の指示に従い一斉に砕ける。水晶は砂のように崩れ去ると、全てが火薬のように燃え始めて、一気に勝利とシンを炎で包む。

「こ、これは!」

魔法障壁が明滅し、痛みを感じてシンが炎を解除しようと、技の発動を諦める。だが、その行動は遅すぎた。

「これで終わりだぁぁっ!」

『豪剣』

シンプルにして、基本技とも言われる、パワーだけの武技を使い、勝利はシンへと突進した。純白の装甲が大きくへこみ、ボールのように床を跳ねると、シンは床に叩きつけられるのであった。

シンはなんとか立ち上がろうとするが、体をよろめかせて倒れてしまう。

「勝者、粟国勝利〜っ!」

その様子を司会者は確認し、勝利の勝ちを宣言するのであった。

「わぁ! やりましたよ魅音さん」

「アハハハ、ボロボロじゃん、おめでとう勝利!」

「よくやったぞ、息子よ!」

聖奈や魅音、親父が褒め称えてくれて、観客が歓声をあげる。

やったぜと、飛び跳ねたい気持ちを我慢しながら、口元をニヤニヤと歪めて、勝利は倒れているシンへと近づき、手を差し出す。

遂にまともに戦い勝ったのだ。内心は狂喜乱舞していた勝利であるが、主人公っぽい爽やかな行動をとりたかったのだ。

「強かったぜシン」

「君はとても強くなったね」

手をとって立ち上がるシンが褒めてくれるので、うっきーと木に登りたいほど調子にのる勝利。

『実はさっきも伝えたけど、僕は魔神を復活させようとする組織と戦おうとしているんだ。そして密かに仲間を集めている』

思念通話に切り替えたシンの言葉にピクリと眉を動かして反応する。真剣な顔のシンにニマニマ笑いが止まらない勝利。

『聖奈さんたちにも誰にも秘密にしてほしいんだけど、君にも協力してほしい。『空間の魔女』のもとで修行をして、来る日に備えたいんだ』

『ふっ、仕方ないな。この勝利様の力が必要となれば、手を貸すことに異論はない。魔神とか普通は信用できないが、シンは信用できるからな。詳しく話してみろよ』

キタキタキタ。遂に原作主人公との共闘イベント。『空間の魔女』のもとで修行をして大幅にパワーアップするんだなと、得意気な顔になり、シンと固く握手をする勝利だった。

観衆の歓声と拍手の中で、ライバル同士が手を組む光景は、たしかに感動的なものであった。

一見するとだが。