軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

246話 学食なんだぞっと

中等部の授業は退屈である。なにせ、前世の記憶があるからね。無双確実なのだ。

でも良い子なみーちゃんなので、授業はしっかりと受けるのだ。

「微分積分って、なんだっけ……」

ちょっと額から汗をかいちゃうけど、今日は暑いからね。手に持つペンがぷるぷる震えているのは気のせいだよ。

「しっかりと覚えろよ〜。ここらへんはテストに出るからな〜」

ロリ先生が、宙に浮かせた指揮棒でぺしぺしと黒板を叩く。

もう忘れたよ。いや、記憶にはあるから大丈夫。真面目にやれば、数学は簡単だ。大丈夫、みーちゃんは大丈夫。

教室内で、外からポカポカ暖かい陽射しがさす中で、みーちゃんは授業を受けていた。あと一時間で昼休みだから、そこまで頑張るよ。

睡眠無効の指輪を嵌めて、授業を受ける準備は万事オーケー。

周りを窺うと、セイちゃんはピシリと背筋を伸ばし座っており、しっかりと勉強をしているように見える。

でも魔法のかかっていると思われる度の入っていない伊達メガネをつけており、口元からはよだれを垂らしていた。

寝てるだろ、あれ。一見すると起きているように思えるけど、確実に寝てるだろ。コクリコクリと頭が揺れているし。

あのメガネ貸してくれないかな。もう微分積分は思い出したよ。一度思い出せば、昔とった杵柄。数学は公式を当てるだけなので、楽勝だ。

なので、みーちゃんもメガネをかけて、真面目に授業を受けたい。

ナンちゃんは教科書を立てて、隠れてモキュモキュとおにぎりを食べている。あのおにぎりはどこから出したんだろう。

水筒からお味噌汁を出して、飲む完璧っぷり。うんうん、おにぎりにお味噌汁は必須だよね。

「夏井、お前は私がどれぐらい節穴だと思っているんだ〜?」

しかしお味噌汁の匂いは致命的だったらしい。さすがに先生が顔を引きつらせて、ナンちゃんの目の前に立っていた。

「うぅ、ごめんなさーい。あと2杯で空になりますから少し待って〜」

空になったコップに水筒を傾けて注ぐナンちゃん。

「飲むんじゃねーよ! お前、先生を舐めてんの! コラッ、おにぎりを食べるんじゃないっ!」

「生たらこ入りなので、午前中に食べてってコックさんに言われたんですよぉ」

「家庭訪問、家庭訪問に行くからな! 親でなく、そのコックに会いに行くぞ!」

「そのコックはわたしぃ〜」

「よし、決闘だ!」

おんどりゃあと、遂に怒り狂う先生を見ながら、これで午前の授業は終わりだねと、みーちゃんはクスリと笑っちゃうのだった。

午前の授業が終わり、ナンちゃんも決闘を免れて、皆でお昼ごはんの時間である。

ぽてぽてと学食に向かう。お腹ペコペコだよ。

「今日の学食は何にしようかなぁ。お腹空いちゃったぁ」

「ナンちゃん、さっきの早弁は?」

手足をご機嫌に振りながら、ナンちゃんが先頭を進む。さっきまで食べていた記憶は消去したらしい。

「………ムー。真面目に授業をしていたから眠い。おんぶして〜」

伊達メガネを外して、眠そうなセイちゃんである。みーちゃんの背中に飛び乗って、早くもうたた寝をし始めてる。

「今日の学食は〜、指の向くまま、気の向くまま〜」

ホクちゃんがスキップをしてくるりと回転する。廊下では回転しないほうが良いよ。

「今日はお魚にしましょうか。みー様はどうします?」

「玉藻は狐そば〜」

「う〜ん、どうしよっかな〜」

ぞろぞろと連れだって、食堂に向かう。

魔道学院の食堂は、学園物の小説などではテンプレの豪華なホテルのレストランといった感じだ。

シャンデリアが天井から吊り下げられており、真っ赤な絨毯が敷かれており、シックで上品な内装、きっちりとした制服を着込んだ店員さんたちが、お客様に呼ばれたらすぐに向かい、サービスも行き届いている。

「いつ見ても、この食堂すごいね〜」

「メニューもたくさんあるし、味も一級品だよぉ」

「前はもう少し普通だったらしいんですけど、今年から大幅なリニューアルとなったんですよね、みー様」

「こういう学食って、憧れてたんだ!」

今年からリニューアルなんてラッキーだったよ。やはりこういういかにもな小説の世界のありえないほど豪華な学食は憧れる。

真心(マネー) を込めて、理事長にお願いした甲斐があったよ。

3階建ての食堂だから、生徒が座れないなんてことはない。3階はVIP席もあるしね。

「おかしいな……。こんな食堂じゃなくて、もう少し普通の食堂だったはずなんだけど……。中等部だからか?」

前方で勝利が顔を顰めて、なにやら呟いている。周りの取り巻きたちは気にしていないようで、なにを食べようかと話し合っていた。

「勝利さん、このグレードザピザを食べてみたいのですが、食べきれませんので一緒に食べませんか?」

プロレスラーみたいな名前のピザを指差すお淑やかそうな女の子。それ四人前と書いてあるんだけど。

「パワフルロングホットドッグなら両端から一緒に食べられますよね?」

もじもじと頬に手を当てて、大人しそうな女の子がおとなしくなさそうなホットドッグを勧めていた。反対側から食べていくと、どうなるんだろう。

「このショートケーキを一緒にカットしましょう、勝利様」

楚々とした上品そうな女子がデザートを食べたいらしい。三段重ねのホールケーキがメニューにあるとは、学園七不思議に入りそうだ。

「ああっと、僕は素うどんにするので大丈夫です」

女の子に囲まれて、顔を引きつらせながら、質素なメニューを選ぶ勝利。手早く食べて逃げるつもりなのが丸わかりである。

しかし、女子たちもそれを理解しているのだろう。ガッチリとスクラムを組んで逃がす様子はない。

お嬢様な見かけと違い、アメフトでもできそうな女子たちだった。

モテモテすぎて、男子に睨まれているかと思いきや、手を合わせてお祈りを捧げたり、気の毒そうに見ている。

どうやら、ジャッカルに囲まれた羊のように思われている模様。

恋人が大変なのに、聖奈はどこにと周りを見渡すと、シンたちと一緒にご飯を食べていた。うーん、原作補正が働いているのかなぁ……。

いや、メガ盛りカツ丼を食べているので、シンに対する遠回しの嫌がらせの可能性が高い。勝利とカツ丼を掛けているような予感がするんだ。

それならばカツ丼にすれば良いと思うんだけど、3人前はあるメガ盛りカツ丼を食べる勇者な聖女だよね。驚いたことに食べ切れそうだし。

もしかしたら、『料理Ⅳ』で製作した万能調味料である『神のスパイス』が使われているからかもしれない。

閑古鳥が鳴かないように、大量に納品したんだよね。

よくよく見ると、皆はメガ盛りばかりを頼んで、夢中になって食べている。ま、まぁ、スパイスは一ヶ月程度で無くなるはずだから大丈夫だと思う。

一応ダイエット料理を考えておこうっと……。

それはともかくとして、勝利が前世の私を殺した相手か知りたいんだけどなぁ。今は推定でしかない。聖奈が好意を抱いているようだし、慎重にいくか。

なにもせずとも、なんか自分からボロを出しそうな男だし。

仕方ない。スルーしていこうかな。

「いらっしゃいませ、鷹野伯爵。今日はご来店ありがとうございます」

店員さんが頭を下げて、出迎えてくれる。うん、少しやりすぎたかも。どんな学園物の小説でも店員さんが出迎えてくれる学食はなかったかも。

「これだけやりすぎても黒字なんですか?」

「うん、2階から上は完全予約制のレストランとして使われているから!」

ちょっと赤字かもと考えたので、2階から上は空中廊下が張られていて、外部のお客様を招いている。半分は本物のレストランとして稼働しているのである。

もちろんセキュリティはバッチリだよ。正門以上に学園側と繋がるゲートは警備が厳重だからね。

「学食とレストランを合体させるなんて、エンちゃんしか思いつかないよね〜。玉藻は初めて見た時驚いちゃった〜」

尻尾を振りながら、ニシシと可笑しそうに笑う玉藻。

「学食補助金が出ているから、相場よりも安いし、とっても美味しい上に、他のレストランよりも遥かに警備が厳重だから、いつも予約はいっぱいなんだ!」

このレストラン兼食堂は善意で鷹野レストランが経営しています。生徒の皆のために用意したんだよ。

「それじゃあ、3階のVIP室に行こう〜!」

「お〜っ!」

皆へと声をかけて、エレベーターの前に立つ。

「3階はマイ厨房もあるんだ。私も簡単なものをちょっと作るね!」

『料理Ⅱ』くらいの料理なら問題ないよねと、にこりと微笑む。

「お待ちなさいっ、鷹野伯爵!」

エレベーターの扉が開いたので乗り込もうとしたら、声をかけられて振り向く。

「ちょっとお話がありますの、よろしいかしら?」

「あれ、エリザベートさん、こんにちは。どうしたの?」

目の前には古き良き金髪ドリルヘアーの瑪瑙エリザベートが立っていた。警戒を露わにしており、犬耳がピンと立っており、尻尾が膨れ上がっている。

ガルルと牙を口の端から覗かせて、エリザベートはキッと睨んできた。

「貴女のお持ちのホーンベアカウジャーキーはどこで売っているのかしら?」

「あぁ、これのこと?」

なんだ、ホーンベアカウジャーキーが欲しかったのか。あれは力が20%上がるから、何時も大量に持っているよと、アイテムボックスから、サッと取り出す。

「それですわ! どのお店をさがしても無かったんですの! 譲ってくださいませ」

「えぇっ? これそんなに美味しかった? ちょっとしょっぱくて固くない?」

「その味がちょうど良いんですのよ!」

「ふーん」

手に持つジャーキーを右に左にと振ると、動きに合わせて顔を振るエリザベート。なんだかペットの犬のようで可愛らしい。

そうか、狼の噛む力ならちょうど良い固さなのだろう。納得。

「ひと袋あげるね。12個入りだよ」

「ありがとうございます! ワオーン!」

喜びの叫びをあげて、飛びつくエリザベート。袋ごと手渡すと喜んで受け取る。

そうして聖剣でも抜くかのように、大事そうにジャーキーを一本取り出すと食べ始めた。

良かった良かった。これで用件は終わりだねと、今度こそエレベーターに乗ろうとすると裾を掴まれる。

「まだなにかようなの?」

「えぇ、少しお話がございますの。貴女にとっても良いお話ですわよ」

怪しい雰囲気を見せようとするエリザベートだが、モキュモキュとジャーキーを食べているため、なんとなく緊張感がない。

まぁ、良いや。危険や罠はビジネスのチャンスとも言うしね。話を聞いてあげようかな。