軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

239話 無敵の敵なんだぞっと

美羽と男の激闘は続く。

広大な洞窟を美羽はその素早さを活かして駆け回る。戦闘にて崩れ始めた天井から落下してくる瓦礫を踏み台に、目まぐるしく移動して武技を発動させる。

「とやっ!」

『石火』

目にも止まらぬ速さで腕を振り下ろし、ゴーレムからドロップした石ころを牽制に放つ。石ころといえど、レベル97の忍者の投擲だ。その威力は並大抵のものではない。

音速の壁を打ち破りソニックブームを発生させ、地面に立ち、拳を握り締めて構えをとっている男へと迫る。

「はっ! んなもんを喰らうかよっ!」

石ころが命中する寸前で、男は風の速さで拳を打ち付けてくる。

魔法にて強化された石ころは、金属のような音をたてて弾かれる。弾かれた石ころは洞窟を支える巨大な岩柱の一つに飛んでいくと、あっさりと貫く。

巨大な石柱全体に微細なヒビが走り、衝撃により爆発し欠片となって地面へと落ちる。

小さな小さな石ころ一つで、石柱は破壊された。途轍もない威力だとわかる武技であった。

それだけの威力がある一撃を拳だけで男はあっさりと弾いていく。周囲へと石ころは弾かれていき、大爆発をして、洞窟全体を震わせる。

「おらあっ!」

男の拳が魔法の光を放ち繰り出される。その一撃は光線のように撃ち出され、光の速さで、美羽の身体を貫く。

「むむっ、速いっ!」

貫かれた箇所に穴が空き、眉根を顰めて空を駆ける。痛みはどうでも良いが、回避不能な速さが厄介だな。

「そらそらそらっ!」

『曲雨拳撃』

ニヤリと楽しそうに嗤いながら、両腕を引き戻しバネのように男は拳の連撃を繰り出す。

ボクサーが撃ち出すように、腰をひねり軸足を強く踏み込み、止まらぬ拳の連撃から光線が放たれて、美羽へと襲いかかってきた。

「回避するには面倒くさい技だね」

フッと薄笑いを浮かべて、前傾姿勢となりスキルを発動させる。

『縮地法』

超加速をして空舞う瓦礫を足場に立体機動を行い、瞬間移動のような速さで移動する。

足場にする瓦礫の上に美羽の残像が残り、光線はただ少女の残像を貫き、全ての攻撃は空振りに終わってしまう。

「どこまで逃げることができる?」

拳をおさめて眼光鋭く視認も難しい速さで移動する美羽を睨みつけながら、男は次なる攻撃へと移す。

洞窟を埋め尽くすかのような蛇の胴体が蠢き、鞭のようにしなり、美羽を叩き落とそうとする。

『タイダルプレッシャー』

津波とでも言うつもりか、黒曜石の地面を削り、柱を打ち壊し、天井を砕きながら美羽へと巨大なる胴体が迫ってきた。

「ぺちゃんこはお断りだ!」

槌を構えて、くるりと身体を回転させると迎え撃つ。

『 超重圧槌(グラビティハンマー) 』

津波に対して、オールで防ごうとでもいうような馬鹿げた一撃だが、超重力の槌は巨大なる胴体をせき止め弾き返す。

「隙だぜぃっ!」

『シュトロームパイク』

「手数が足りないっ!」

『魂覚醒』を使用した武技を繰り出したために、僅かに硬直した美羽に、猪のように突進してきて、間合いを瞬時に詰めた男の武技が発動する。

拳を覆うオーラをドリルのように回転させて、美羽の身体に命中した。身体が抉られて、鮮血が舞い肉片となっていく。

「これでどうだっ!」

「まだ余裕!」

男の言葉に、笑顔を浮かべ軽口で返すと、光輝の剣を持つ手を曲げる。

無限なる光の鞭が周囲を揺蕩い、男の身体へと繰り出された。

『光輝光龍剣』

血だらけの体を気にせずに、笑みを浮かべて美羽はクルリクルリと身体を踊らせる。光の鞭が舞い踊り、男を終わらぬ連撃で切り刻む。

光の乱舞は薄暗い洞窟の中で鮮烈に輝き、美しく、そして残酷に対象を光の刃で肉塊へと変えようとする。

「うぉぉっ!」

切り刻まれて驚きの声をあげながらも、男は拳で光輝の剣を弾き、くねる剣身を肘打ちで跳ね返す。

「なんつー硬さ、いや耐久力か?」

ちょっとばかりズタズタとなった身体を『 聖癒(ホーリーヒール) 』にて癒やしながら、うんざりするように半眼となってしまう。

だって、皮一枚を斬るだけなのだ。傷だらけになっても、致命傷からは程遠い。

あいつの身体はどうなってんの? 金属の塊だって、サクサク切断することができる武技だぞ。

「この肉体は肉体にあらず。ほんの一部ってやつなんだよ!」

「洞窟を埋め尽くす胴体が本体なのか」

ネタバレを得意げに口にして、再び砲弾のように飛んでくる。

「ふむ……」

『 幻影歩法(ファントムステップ) Ⅱ』

前傾姿勢となり、複雑なステップを踏み、残像を作り出す。

「全て打ち砕くぜぇっ!」

口を歪めて男は気にせずに雑に拳を繰り出して、暴風を巻き起こし、光速の速さで残像を貫く。

「雑すぎるよ!」

光輝の剣を引き戻し、直剣へと変えると男へと袈裟斬りに振り下ろす。

男も負けじと拳を引き戻し、剣へと叩き込む。ガキンチと剣と拳がぶつかり、二人は押し合う。

「うにゅにゅ」

「ちびにしてはパワーがあるな!」

お互いに力を込めて睨み合う。自信ありげに男が腕を膨れ上げて、さらなる怪力を見せる。

美羽は力を込めるのをやめて、フッと後ろに下がり、横にステップして回り込む。

「うぬっ!」

「もらいっ!」

身体を泳がせて、たたらを踏む男へと剣と槌にて連撃を繰り出す。

「そうはいかねぇなっ!」

右足を軸足にして、無理矢理身体を立て直すと、男が拳で剣を弾き、槌を膝で防ぐ。

高速で舞うように攻撃をする美羽と、力を前面に出して、猛攻を繰り出す男。

技と素早さの美羽。耐久力と怪力の男と、対照的な二人はお互いに終わることのない戦いを続けていく。

しかし好戦的に牙を剥いて、戦闘を楽しむ男とは違い、冷気でも纏うような冷え冷えとした表情にて戦闘をする美羽は考えこんでいた。

影とはいえ、神様なのだろう。恐らくは蛇の神。ナーガラージャと同じタイプだ。

いや、もしかしたらこいつが本当は降臨する予定だったのかもしれない。

この巨大なる蛇の胴体を持つ男の正体はなんなのだろうか?

この人型を倒しても胴体が残っていれば、殺すことはできないのだろうか?

ヒントは貰った。そう、ヒントは貰ったのだ。

こちらの攻撃が効かず、遂に押し負けてしまい左腕を破壊されて、胴体を抉られてしまう。

だが、問題はない。まだMPは残っている。

こいつの正体。そして弱点……。

右手を潰されて、宙に映し出していたHPが赤字に突入した。

他人事のように、自分の身体を確認しながら、遂にピンときた。こいつの正体に目星がついたぞ!

「反撃といくよ!」

頭を狙ってくる拳を小首を傾げて、寸前で躱す。そのまま横回転して、手を広げるとふわりと身体を浮かせてダンスを踊る。

『蝶の舞』

ひらひらと身体を泳がせて、血だらけの少女は美しく舞い踊る。空を飛ぶかのようにふわりふわりとまるで重さのないように。

手足は欠損し、胴体は抉られて、血だらけの姿で踊る。

そこには恐怖を齎す美しき蝶が存在していた。その舞に囚われれば、死をもたらすような、怖気と美しさを持つ不可思議なる舞。

闇に舞い踊り、キラキラと銀の粒子が鱗粉のように空に散っていく。

「まだ手札をもっていやがったか!」

男は美羽の踊りを見て、一瞬動きを止めるが、すぐに攻撃を再開した。

『奈落の牙!』

両腕を合わせると同時に、美羽の頭上と足下から見えざる牙が発生し、噛み砕かんと襲いくる。先程よりも発動は速く、その力も上であった。

だが、美羽の身体を牙はあっさりと通り過ぎてしまい、空間に溶けるように消えていった。美羽はその光景に薄笑いを見せる。

「なにっ!」

「隙ありだよ!」

『蝶の舞』で回避率+30%アップ。『 幻影歩法(ファントムステップ) Ⅱ』で合わせて+70%の回避率アップだ。

そして……『蝶の舞』にはもう一つ効果がある。敵の防御力を15%下げるのだ。

「『聖女』の奥義を見せちゃうよ!」

HPは20%を切っている。即ち、奥義の出番だ。

バッと手を広げて奥義を発動させる。

「神域かっ!」

洞窟が美羽を中心に様相を変えていく。青空の下、様々な美しき花が咲き乱れる美しき花畑となった。

驚きの表情となる男へと、ニパッと花咲くような満面の笑顔を返す。

『聖骸』

「こ、これはっ! このちびぃっ!」

男から紅きオーラが引き出されると、美羽の身体に吸い込まれていく。

そうして、欠損していた手足は元に戻り、抉れていた胴体は傷一つない綺麗な肌に戻る。血塗れだった服も魔導鎧も綺麗な姿に変わると、美羽はクルリと回転して、タンとステップを踏んだ。

ぐらりと身体をよろめかせて膝をつく男が、苦しげな声をあげる。

「な、なんだ今のは?」

「『聖骸』だよ。死せる救世主は復活する。敵の体力と魔力を吸収してね!」

『聖女』の奥義だ。ちょっとばかりしょぼいけど、回復役の奥義としては使えるものだ。状態異常も癒やし、完全回復するからな。

「それじゃあ、トドメだよ!」

「イカサマめいた技を! だが、俺様はまだたたか、グフッ」

立ち上がろうとする男だが、突如としてその胸から槍が生えた。いや、後ろから貫かれたのだ。

「こ、この虫野郎っ! いつの間に」

「チチチチ」

呻き声をあげて、後ろへと憎々しげな顔で振り向く男。後ろには体のサイズを1メートル程に小さくして、こっそりと近づいていたアリさんがいた。

キランと瞳を輝かせて、チチチチと得意げに鳴く。

「『聖騎士』を甘く見たな! そして、やはり視覚外なら無敵めいた防御壁も発動できないんだろ! 『見えない蛇鱗を生み出して防御』しながら戦闘できるのが、お前の能力だっ!」

トンと強く地面を踏み、空高く飛び上がると、ポヨポヨの槌を振り上げる。

「まだだ! 切り札は俺様にもあるんだぜぃ!」

後ろにいたアリさんを殴り飛ばし、すぐに美羽へと振り返り、顎が外れる程に口を大きく開けると、男は魔法の力を口内に溜める。

莫大な闇の力が集まっていき、迫る美羽へと吹きかける。

『終末の息吹』

ゴウッと漆黒の息吹が放たれる。周囲の空気を腐らせて、地面を腐らせて、神をも殺す即死の毒息であった。

『 完全毒耐性(パーフェクトレジストポイズン) 』

だが、毒の息が美羽を包む瞬間、パアッと幾何学模様で描かれた光の障壁が現れて防ぎ切る。

「ふふっ、残念だったわね」

空間から滲み出るようにフリッグお姉さんが姿を現し、妖艶なる笑みを浮かべる。

「ち、ちび助っ! 狙ってたのか!」

必殺の一撃を入れるためだけに、死ぬかもしれない状況で、ジッと仲間を伏せていた美羽に対して、感心すると共に男は心底驚愕した。

「そうだ! それにこの技が効かないとアピールしすぎだったな!」

わざとらしすぎた。効かないとアピールして、演技をしていたんだ。脳筋に見えて狡猾な戦士だったんだ。

『魂覚醒』

『雷鳴龍Ⅰ』

『スピンハンマー』

『融合しました』

『 雷霆槌(ミョルニル) 』

「ヨルムンガンド、これが本当のお前の弱点だあっ!」

「ウォォォッ! ちびぃっっっ!」

プラズマで形成された巨大な槌がヨルムンガンドの頭に振り下ろされて、莫大な雷のエネルギーが周囲を照らし、大爆発を起こすのであった。