軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

233話 主人公を応援しちゃうぞっと

シンがエーギルに迫ろうとするが、フレッシュゴーレムが立ちはだかる。

「オァァァ」

地の底からの怨念が声となったかのように、フレッシュゴーレムは唸りながら拳を繰り出す。

キュインと機械音をたてて、ロケットのような速さでシンを狙うが、軽くステップをしてシンは攻撃を躱す。

「見た目よりもかなり速い! 気をつけて戦おう」

続けて繰り出されたフックを屈んで躱し、カウンター気味にフレッシュゴーレムの胴体を横薙ぎにするシン。

ざくりと胴体に深い傷が入り、フレッシュゴーレムはたたらを踏んでよろめく。

「さすがお兄ちゃん! 私だって!」

『 氷蔦(アイスプラント) 』

月の両手から冷気が吹き出し、氷の蔦が地面を這っていき、周りのフレッシュゴーレムの足を凍らせて動きを止める。

「わたくしの力を見せる時ですわっ!」

『金狼風牙拳』

黄金の狼をオーラとして纏い、エリザベートがそれぞれの手に持つ短剣を素早く振りながら、フレッシュゴーレムたちの間を素早く通り過ぎながら切り刻む。

「動きを止めることなく、フレッシュゴーレムたちに攻撃を加えるんだ!」

『蓮華連刃』

剣閃が花のような軌跡を描き、フレッシュゴーレムたちの間を奔り、鮮血を噴き出させていく。

しかし、深く斬られた胴体の傷がみるみるうちに修復されていってしまう。

「これは! 傷が治っていく!」

「強力な再生能力持ちだよ、お兄ちゃん!」

「くっ、瑪瑙家の革命的な新技術が悪用されなければ、聖奈さんの神聖魔法が助けになるものを! 敵にすると、恐ろしく強い性能ですわっ!」

シンたちがフレッシュゴーレムの能力を見て、驚きの顔になる。エリザベートだけは常に『犬の子犬』アピールを繰り返す。

フレッシュゴーレムたちは凍った足元を破壊して、動こうとしていた。

あの束縛が剥がされたらヤバいかもしれない。レベル50のフレッシュゴーレムだからね。

3人のレベルはいくつかな?

『神無シン:レベル65、弱点火水雷土風闇聖』

『神無月:レベル33』

『瑪瑙エリザベート:レベル34』

月とエリザベートのレベルは予想通り。シンはレベルが高すぎる。

………予想していたレベルを分体で分けているという説は無くなったな。弱点が多すぎるのは予想通り。

うん、実はシンは全属性弱点なんだ。原作では『虚空』属性を扱うデメリットとして、他の魔法に極めて弱いと設定されている。主人公あるあるの弱点だよね。

即ち、今のシンは間違いなく原作主人公のシンと言えよう。

だが、シンだけでは抑えきれない数だ。周囲には神聖魔法を封じる粒子が舞い、聖奈の魔法を阻んでいる。

フレッシュゴーレムの性能を前に、ジワジワと追い込まれていくシンたち。エーギルはその様子に高笑いをし……てないな。みーちゃんをジッと見ている。油断しないな、この骨。

「これはヤバいんじゃないか?」

「あぁ……俺たちは森で助けられたよな?」

「マナも少しは回復してきたよ」

一年生たちがザワザワと騒ぎ、救援に入ろうとするので、そろそろお遊びは終わりかなと思っていたら

「ここは僕がいこう! マナがだいぶ回復したからな!」

皆の話を遮り、勝利が真剣な顔で立ち上がった。その手からはマナポーションの空瓶がカランと捨てられる。

どうやら希少なマナポーションを準備してきたらしい。準備万端な男だなぁ。

「お前らが救援に入っても無駄に死ぬだけだ! 4巻、瑪瑙家の危機だと、モブなお前らは大勢死んじまうからな!」

赤毛を燃え盛る炎のように立たせて、力強い笑みを浮かべて、何やら叫ぶ。4巻?

………思い出した! 原作4巻、瑪瑙家の研究所襲撃事件と、その後の学年別サバイバル訓練だ。

瑪瑙家の研究所に何者かが襲撃。その力を使って、その後に行われる学年別サバイバル訓練で『ニーズヘッグ』の悪の魔法使いが現れるんだ。

同じ展開だ、悪の魔法使いでなくてエーギルなのが、難易度を恐ろしく跳ね上げているけどね。

なるほど、たしかに4巻だ。1巻と複合ストーリーに変化しているな。

そして同じ展開だとすると、シンを助けようとする一年生たちが次々に殺されるんだよね。シンの活躍でなんとか助けられて、大勢の一年生たちがシンに好意的になるストーリーだったはず。

なるほど、それを防ごうと考えたのか。……でも、なんでこいつ原作を知っているわけ?

僅かに危険な目つきとなるみーちゃんには気づかずに、勝利は自分の身体から炎を吹き出し、手を振って偉そうに胸を張る。

「僕ならば、雑魚っちいてめえらを合わせたよりも戦えるんだよっ!」

「ここは勝利さんに任せましょう。私たちは遠隔からの支援に撤するべきです!」

ムカつく口振りだが、勝利ならば互角に戦えるのだろう。聖奈が強く頷き、周りを説得する。

チッ、ここは聖奈に免じて確かめるのは止めておこう。

「それじゃあ、行くぞっ」

『 暴虐豪雷(テンペスト) 』

モブな主人公だぜと、期待でニマニマとだらしなく顔を緩ませる勝利が腰を屈めて戦闘に加わろうとするが、空中を雷が埋め尽くし、フレッシュゴーレムたちを撃ち貫く。

「え、だ、誰だよ? 僕のかっこいいシーンが」

「……ここは任せて。たっぷり寝たから身体は万全」

オロオロと困惑して周りを見渡す勝利が、グーちゃんの背中に乗って、片手を翳した体勢で得意げに胸を張る眠たそうな少女に気づく。

セイちゃんだ。その手から未だに電撃がパリパリと放電している。

寝ていたから、マナドレインを免れたのかな? え、どんなスキル? 寝ている間は無敵とか?

「……畳み掛ける」

ババッと手を複雑に交差させると、セイちゃんが追撃の魔法を使う。

『 雷嵐(サンダーストーム) 』

続けて使われたのは、雷撃を纏う嵐であった。シンたちから離れているフレッシュゴーレムたちを覆い隠し、その暴虐なる雷で焼き尽くそうとする。

「……チャンス、グーちゃん突撃して」

セイちゃんが乗っているグーちゃんをペチペチ叩く。ここはたしかにチャンスかも。

今のグーちゃんは召喚石の時と違い、細かな指示を出せるようになっている。なので、セイちゃんの言うとおりにするように指示を出しておく。

「クェェッ」

グーちゃんが突進をして、俊敏にフレッシュゴーレムへと肉薄して体当たりをする。グーちゃんの一撃を受けても、フレッシュゴーレムは立ち上がり、図体に似合わず素早い動きで襲いかかってくる。

「サー」

『 雷撃剣(サンダーブレード) 』

雷がセイちゃんの手の中に収束して、光輝く雷の剣となる。面倒くさそうにセイちゃんが剣を振ると、剣身が伸びて、フレッシュゴーレムの身体を分断した。

そのままグーちゃんとコンビでフレッシュゴーレムたちと激闘を開始する。

「ちょ、ちょっと僕の出番じゃ?」

「おっと、これ以上は駄目っすよ」

勝利がアワアワと慌てて、同じように救援に入ろうとするが、ニヤニヤと笑うアンナルが立ちはだかる。その後ろからはドクロの仮面をつけたボロボロの黒マントを羽織る男たちが現れた。

「くそっ! どけっ、てめぇ!」

「フフン、そうはいかないっすよ。ここで子供たちは残念無念、死ぬんっすから」

ヘラヘラと笑うアンナルとかいう男。その足取りと立ち方からは強者特有の余裕を感じる。

「神聖魔法さえ使えれば………マナも少しは回復してきたのに!」

勝利の後ろで、聖奈が悔しそうに拳を握る。聖奈は殴った方が早いと思うんだけど、まぁいっか。

今はシンたちが優勢だが、エーギルが参戦すると戦況はあっさりと覆る。それにアンナルたちに一年生たちが殺されそうだ。

そろそろお遊びは終わりの時間だな。

「それじゃあ、この粒子をまずは消しておくね」

スッと小瓶を取り出すと宙に放る。空中で小瓶が割れると、中からキラキラと粉が舞い散る。

そして驚くことに、神聖魔法を封印していた粒子があっという間に消えていった。

「な、何をした?」

なぜかエーギルだけはみーちゃんを睨んで目を離さなかったので、小瓶を放り投げたことに気づいた模様。

花咲くような笑みを浮かべて教えてあげる。

「『聖魔香水』だよ。聖花と魔法花から抽出した香水。肌理の細かいのが売りの定価1万円です」

「い、1万? 香水如きで封印の粒子を消したのか?」

「封印の粒子は魔法に反応しすぎるんだ。そして物体に宿るマナには激しい反応を起こして消えてしまう。だから弱い魔法でも形ある香水のような物と接着するとあっさり消えてしまう。シン君の粒子を解析して、対抗策として作ったんだ」

オーディーンのお爺ちゃんは、すぐに看破してくれた。魔法を使わずとも効果を打ち消すアイテムを考えついたんだよね。

「こ、この粒子を作る魔石が、い、いくらするのか知っているのかぁっ! さ、三百億はするのだぞ!」

「この研究はもう打ち止めということだね」

激昂するエーギルに、グワッグワッとニヒルに笑ってやる。

これで瑪瑙家に大打撃を与えることができるだろう。瑪瑙家の危機だっけ? 少し様相を変えたけど、たしかに危機に陥っただろう。

「さて、それじゃあ、班長らしいところを見せる時かな」

闇夜、玉藻、ホクちゃん、ナンちゃん、ついでに聖奈とニニーへと手を向ける。

『魂覚醒』

『女神の加護』

『女神の加護』

パアッと優しい光が闇夜と玉藻を包む。

『闇夜のマナが満タンに回復した』

『玉藻のマナが満タンに回復した』

あれれ? ちょっと意外な効果になったけど、他の仲間も同じように回復させておく。

「これはマナが完全に回復しました!」

「行けるよ〜。コンコン戦えるよ〜」

「なんという力……」

闇夜たちが驚き、力が漲ってきたと不敵に笑う。

「そしてポヨリン〜!」

「ポヨ〜」

ポヨリンを召喚して、迎撃準備オーケー。これで、アンナルと他の雑魚敵とも戦える。

「なんだ、その力はっ! 人のマナを完全に回復しただとっ! どんな力だ!」

「『聖女』だよ」

激昂するエーギルへと、口角を釣り上げて教えてやる。

「は?」

「『聖女』になったんだよね」

今日のみーちゃんは複合ジョブ『聖女』なんだよ。そして『女神の加護』はMP100を消費して、仲間のMPを300回復するスキルなのだ。

なぜかマナの場合は満タンにしちゃうようだけど。

「せ、『聖女』だと……?」

「そうだよ、エーギル。鷹野美羽は『聖女』になったんだ」

ふわりと灰色髪を靡かせて、アイスブルーの瞳に深淵の光を宿し、美羽は嗤うのであった。

『クロウリーの箱』を貰い受けるぜ、エーギル。