軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

188話 牧場ダンジョンだぞっと

鷹野家の牧場ダンジョンは、鎌倉から離れること、徒歩で5時間といったところだ。車だと一時間もかからない。

鎌倉を復興するにあたり、周囲に危険なダンジョンがないか確認していた際に発見された。

牧場ダンジョンはわかりやすく、ポヨポヨがたくさん出現する場合が多いらしい。

「ホーンベアカウは、二層からいるんだね」

ガタゴトと装甲車に揺られながら、みーちゃんは資料をホログラムとして表示させて読んでいた。

「グレーターホーンベアカウが6層とあります。そこまでだいたい2時間。ですので、9時から15時までは狩りができるようです、みー様」

「準備はオーケーだよ、コンコンだよ、コンコンッ」

隣に座り腕にしがみついてきながら闇夜が説明してくれて、玉藻がふさふさ尻尾を振る。とりあえず、尻尾を撫でていいよね?

「ここは発見されたばかりなんですね」

「でも、道は舗装されているから凄いよね」

外へと視線を移せば、魔法アスファルト舗装が敷かれた4車線の道路が林の中を突っ切っている。

周りの森林は鬱蒼と繁っており、草むらからは、時折鹿が飛び出してきたり、山猫が逃げていくのが見えた。

「聖花のおかげでもあります。ほら、みー様、道路脇に時折聖花が植えられていますよ」

「うん、とっても綺麗だよね! お花畑がたくさんだよ!」

道路脇には聖花が咲いており、誰よりも頭がお花畑のみーちゃんは、咲き乱れる聖花にご満悦だ。

いつもなら、このまま踊っちゃうダンシングみーちゃんだが、今日はキリリと少し真剣な顔へと変える。

「でも、周りの森林から襲撃を受けてもおかしくないよね?」

森林を貫く形で無理矢理道路を作ったために、正直視界が悪いのだ。

「そうですね。みー様はもちろん、聖奈さんも重要人物です。命を狙われる可能性はありますので、斥候はきちんと先行させています」

「ドローンゴーレムも展開させていますし、安心ですよ」

闇夜と聖奈が自信有りげに、ニコリと微笑む。たしかにこの人数の護衛を前に襲撃してくるとは考えにくい。

しかも近衛兵もいるのだ。襲撃してきても、簡単に撃退できる。

「軍隊でも連れてこないと、玉藻たちに近づくことはできないよね〜。ポカポカって倒しちゃうよ!」

「だね。魔物が現れても、あっさりと倒せるよね」

そうなんだよね。テンプレの襲撃があるとは思えない。この話もフラグにはならないと思う。それだけ厳重な警備なのだ。

「鷹野伯爵。杞憂だと言っておきましょう。たとえ襲撃してきても、我ら近衛兵が全て撃退すると宣言しましょう」

自信有りげに声をかけてくるのは、聖奈の護衛隊長だ。名前は後藤。鍛えられた兵士特有の厳しい顔つき、片眉の上に古傷があり、歴戦の戦士だとわかる。

歩き方一つとっても乱れはなく、背筋をピシリと伸ばして、中肉中背の男だ。

みーちゃんたちの装甲車に同乗しており、聖奈を守っている。真面目一徹で、融通のきかなそうな相手である。

でもなぁと、もじもじと上目遣いとなって答える。

「襲撃は撃退できても、せーちゃんが襲われるだけでも、鷹野家の責任問題に発展するかも?」

「安心してください。今回のことは、私が無理を言って皆さんに合流しました。もし襲撃を受けても鷹野伯爵に瑕疵はないと宣言します」

後藤隊長の言葉に続けて、みーちゃんの言葉にピンときた聖奈は胸に手を当てて、凛々しい表情で、なにがあっても鷹野家に瑕疵がないと宣言してくれた。

その言葉に安堵する。正直、問題なかったのに、責任問題に発展するかもしれなかったからだ。

「これだけ警備が厳重なら大丈夫かな」

既に『 魔法発信(ターゲット) 』をかけた加藤カレンの居場所はわかっている。そして、襲撃のために準備をしていることも。

だから、この宣言は助かります。襲撃といっても、どうやら本気の襲撃ではなさそうだ。原作での立ち回りを考えると、恐らくは同じ展開になるだろう。

正直肩透かしの茶番のようだから、気にしないことにする。聖奈の言質だけ取れれば問題ないや。

なので、他に隠された作戦がないか、周囲を調査するようにフリッグお姉さんたちにはお願いをしてる。気にしないんじゃ? と言われれば他にも敵は大勢いるでしょと答えたい。

気にしないのと、警戒するのは別問題なんだよ。

闇夜たちは絶対に怪我をさせたくないから、ホーンベアカウ狩りの中止を口にしても良いんだけど……これからも同様に狙われる可能性があるなら、それでも守れるところを見せておかないとね。

襲撃があるよと、遠回しに言っているから、護衛は油断はしていない。できることはしっかりとしておかないとね。

この間、鷲津家を潰したことにより、後藤隊長が時折みーちゃんを警戒するように見ることがあるから、襲撃の発言に対して、なにか情報があるんだなと予想しているだろう。端末で部下と忙しくやり取りを始めたし。

遠回しの忠告に気づくやり手のおっさんだね。近衛隊長なだけはある。それを見て、みーちゃんたちの護衛もより一層の警戒を始める。

「あ、森林を抜けたよ、エンちゃん!」

玉藻が指差して楽しそうに声を上げる。聳え立つ森林を抜けて、明るい日差しが入ってきた。トンネルを抜けると、そこは牧場ダンジョンでした。

「穴場なのかな! ………違うみたいだね」

どんなダンジョンなのかと、期待感に満ちて、窓にムニッとほっぺをつけて眺めるが、半眼になってしまう。

広々とした敷地を魔法コンクリートの壁が囲んでいる。敷地の半分は駐車場になっており、300台は駐車できるだろう。

輸送用のトラックが何台も並んでおり、奥には冷凍倉庫がドデンと建っており、その隣には3階建ての建物があり、一階は土産物屋、二階はレストランと壁にシールで貼ってある。

フードコーナーもあるようで、抹茶ソフトクリーム始めましたと幟が立っていた。蒸かしたてのジャガバターが美味しそうです。

『歓迎! 鎌倉牧場へようこそ!』

門の前には安っぽい看板が置いてあり、観光地にありがちな感じだ。

「 SA(サービスエリア) ?」

「そうですね。管理ダンジョンの中でも牧場ダンジョンは敵が弱いことで有名ですから」

がっかりして、ポツリと呟くみーちゃんに、慰めてくれる闇夜。そうか、だから牧場ダンジョンかぁ。

「こういう所ですと、安全に魔法の実験とかができると思うのですが、闇夜さんはどう思いますか?」

「? 牧場ダンジョンはとても希少ですから、駄目にするようなことはしないと思いますよ」

「そうですね。もしもそのようなことが起きたら、大損害にもなるので大変です」

なぜか硬い口調で、僅かに緊張感を見せて聖奈が尋ねてくるので、不思議そうに闇夜が答える。

「たしかに牧場ダンジョンが壊れたら困っちゃうよ! まだここに投資したお金も全然回収できていないし!」

大損害だ。こんなに建物を建設して、道路を敷いて、他にも人件費や何やらかかるんだ。ダンジョンコアを破壊しようとする敵は絶対に許さない。

……許さない? まずいな、その可能性があったな。嫌がらせには最高だ。フリッグお姉さんに追加の指示を出しておこうっと。

「ほら、おこちゃまたち、入場するよ〜」

「は〜い!」

金剛お姉さんが先導してくれるので、てってけと追いかける。ニムエだけは、フラフラとソフトクリームを買いにフードコーナーへと歩いていったけど。

建物横に小さいが頑丈なドームがあり、牧場ダンジョン入場口と書いてあった。

「えーと、団体でもうチケットは買ってるんだっけ?」

「はい、お嬢様。既に人数分を旅行期間分買ってあります」

「ありがとうございます、蘭子さん」

さすがはできる侍女さん。ニムエの首を掴みながら、丁寧に頭を下げてくれる。

「多弾葡萄狩りに、ロケットさつまいも掘りコース………。他にも色々とあるね!」

怪しいコースばかりだね。なんというか、魔法使い向けなのかなぁ。

それにしては、一般人も多いな?

入口前には一般人も大勢並んでいる。家族連れやら、カップルやら。皆楽しそうだ。服装は軍手に厚手の服だけどね。

「多弾葡萄は単に葡萄を飛ばしてくるだけだし、ロケットさつまいもは、畑から時速10キロくらいで飛んでくるだけ。ポヨポヨも金属バットがあれば倒せるし、一般人でも楽しめるのが、牧場ダンジョンさね」

金剛お姉さんが親切に教えてくれる。

「へー、スリルが味わえるテーマパークなんだ」

「免責事項に、怪我は自己責任と書いてあるよ」

まぁ、そんなもんかと、行列の横をポテポテと歩いていく。高位貴族用の通路があるんだ。待っている人たち、ごめんね?

ポッカリと開いたダンジョン入口。なだらかな斜面となっており、内部は明るかった。

天井までは高く、まるで日差しが射し込んでいるように明るい。そよ風がそよそよと吹いており、辺り一面平原だ。

「おぉ〜。これが牧場ダンジョン!」

平原は柵で区切られており、畑や田んぼ、果樹園がある。遠くにはポヨポヨがぽよんぽよんと跳ねており、空にはぴよぴよとひよこが飛んでいた。

平和な風景だ。長閑と言えるだろう。ひよこ飛んでるけど。あれは本物のひよこなのかな。

「長閑と言えるよね。人混みがなかったらだけど」

夏の海の芋洗いというわけではないけど、混んでる。あれだ、始まったばかりのネトゲーの最初の街の外。皆が雑魚敵を狩って混み合ってる風景。

「ドルイドの皆様が田畑を管理していますので、他の牧場ダンジョンよりも、味が良いらしいですよ」

「それに10階層もあるのに、出現する魔物はあまり変わらないし、弱いんだよ。5層までは、一般人でも進めるぐらいらしいさね」

蘭子さんと金剛お姉さんが教えてくれるが、なるほどこんなダンジョンがあるんだ。ゲームでは無かったタイプだよ。

「それでも危険があるので、一般人は二層止まりのようですよ。みー様、六層まで行きましょう」

「うん!」

闇夜が手を握ってくるので、コクリと頷き階下まで進む。

進む間、殆どの魔物は一般人や冒険者に狩られて、目にすることもできなかった。こりゃ、厳しい人数制限が必要だね。

そして三層に辿り着いたところであった。

「あ! ホーンベアカウがいるよ!」

玉藻の声にみーちゃんは期待の目になる。

親子連れがレジャーシートを敷いて座っていた。父親だけは魔物の前に立っている。どうやらホーンベアカウ狩りらしい。

「あれがホーンベアカウ?」

「そうだよ。あれがホーンベアカウ!」

「へー!」

初めてみたよ。あれがホーンベアカウかぁ。

………あれが? 見覚えあるなぁ。初見じゃないや。