軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

185話 ワクワクの遠足なんだぞっと

次の日の朝早く。

空は晴天で、雀が気持ち良さそうにチュンチュンと鳴いている。

まだ太陽は昇り始めたばかりで、朝早い。

遂に待ちに待った遠足の日である。昨日は楽しみで眠ることがなかなかできなかったみーちゃんだ。

神官用の魔導鎧『白猫15式』を装備している。薄手でレオタードのような肌にピッチリと張り付く服を着て、上衣として金糸と銀糸で刺繍がされている神聖さをイメージした純白のローブを羽織っていた。

肩からは水筒をかけて、背中にはリュックサック。艷やかで滑らかな銀に似た灰色髪を腰まで伸ばして、額に大粒の光を閉じ込めた魔法のダイヤモンドを中心に嵌めて、周りにサファイアを散りばめている白金のティアラを付けている。

水筒とリュックサックが邪魔な感じだが、清楚で可愛らしい美少女がそこには存在していた。

「闇夜ちゃんたち早く来ないかなぁ」

正面玄関前で、ソワソワとしながら、車が早く来ないかなぁと首を長くして待つ。

その愛らしさに、皆がほのぼのと癒やされる。メイドがティアラが重くないですかと心配してくるので、笑顔で大丈夫と答えておく。本当に大丈夫だから。もぎとろうとしたら、蹴るからな。

「金剛お姉さん、ホーンベアカウって、どんな魔物なの?」

着ている新型の魔導鎧『ヤマアラシ23式』を撫で回して、ニマニマと嬉しそうに笑っている金剛お姉さんに尋ねる。一週間前に買った最新型らしい。

鷹野美羽の護衛と伝えたら、『猫の子猫商会』のディーラーが大幅に値引きしてくれたとか。それでも36回ローンらしいよ。

「なんだい? ネットとかでいくらでも確認できるさね?」

「実物を見たかったの! だから調べなかったんだよ」

「それじゃ、もう少し我慢するんだね」

「きっとびっくりする」

金剛お姉さんが笑って、横合いから燕さんがフンスと鼻を鳴らす。ほほー、楽しみだね。

牛かな? 熊かな? 大穴でうさぎさんかな?

ソワソワして、とりあえずでんぐり返しをして落ち着こうかなと考えるが、遠く離れた正門が開くのを見て、目を凝らす。

「軍隊?」

「戦車はないようさね………」

「なんで重装甲車?」

コテリと首を傾げるみーちゃんに、呆れた表情の金剛お姉さんと不思議そうな顔のマティーニのおっさんが答える。

なぜならば、これから戦争に向かうのかと思うほど、分厚い装甲に守られた装甲車が5両も入ってきたからだ。屋根には重機関銃も取り付けてあり、装甲が僅かに青白い光を纏っているので、魔法合金だと予想できる。

事情を知らなければ、戦争に来たかと思う部隊だ。

一際大きな装甲車が、正面玄関前に停止すると、プシューと空気が抜ける音をたててハッチが開く。

機動兵器でも入っているのかと思うほどに分厚い装甲が開くと、てこてこと少女が出てきた。

「お待たせしましたか、みーちゃん?」

ふわりと花咲くような笑みを見せるのは、弦神聖奈だ。どこかの戦争に向かうのかと思うほど重装甲の魔導鎧を身に着けている。

基本レオタードのようなスーツを身に着けるのが、この世界の常識なのでそれは同じだ。しかし胸部や肩当て、脚甲は明らかにでかい。

なんというか、パワードスーツのような感じ。聖奈の身体のサイズをガン無視した大きさである。

流線型の兜をかぶっており、背中には4枚の天使の翼を生やしている。

アニメでみーちゃんはその鎧の名前を知っている。たしか聖奈専用機の『天使パワー』だ。皇族の雇用している魔導鎧製作者が造った魔導鎧だった。

初期に装備している魔導鎧だったけど、他のヒロインよりも目立っていて、さすがはメインヒロインと思ったものだ。バッタバッタと幽霊系統を倒していた。

この頃から装備していたのか。たしかにオーダーメイドはそうそう簡単に作れないしな。サイズを改修してずっと使っていたのね。

「ううん、せーちゃんが一番だよ。かっこいいね、その魔導鎧!」

「はい、先日ロールアウトしたのを無理を言って受け取ってきました。みーちゃんは旧型ですね?」

「回復魔法使いの魔導鎧って、作っても売れないから開発すらされていないからね。でも、気に入っているよ!」

今みーちゃんが着ている魔導鎧は回復魔法使い専用機だ。『猫の子猫商会』の倉庫に埃をかぶっていたのを買ってきたのである。

「でも可愛らしいみーちゃんに似合ってます」

「このボタンを押すと必殺技が使えるんだよ!」

腕のボタンを押すと、ピカピカと魔導鎧が光る。

『にゃーん』

そして、可愛らしい子猫の声が響いた。

「ね? 凄いでしょ! ボタンを押すと子猫の鳴き声が聞こえるの! この機能を見て、すぐに買うことを決意したんだ」

「そうですね、みーちゃんに相応しい可愛らしい機能ですね」

「だよね!」

ぺしぺしとボタンを押すと、『みゃんみゃん』と鳴き声が変わる。凄すぎる。なんという高性能なんだろう。

鳴き声と合わせて手を猫の手に構えて、腰をかがめて、悪戯そうな笑みに変えて、ニャンニャンと招き猫みーちゃんだ。

「素晴らしいです、みー様! こちらに目線を頂けますか?」

地面に寝っ転がり、カメラを構えて、パシャパシャと写真を撮りまくる少女が現れた。いつの間にか来たらしい。

「闇夜ちゃん、いらっしゃい!」

神出鬼没の闇夜へと、笑顔でご挨拶だ。

「みー様は今日も可愛らしいです!」

黒い装甲の武者鎧のような魔導鎧を着た闇夜がゴロゴロと転がって、写真を撮り続ける。今日はカメラの日らしい。みーちゃんの足元から撮影するのは少し恥ずかしいかも。

「ニシシー、皆揃っているようだね〜、コンコンだね〜」

空中に木の葉が現れると渦を巻き、その中に玉藻が笑いながら現れる。

『魔導の夜』の世界では、こういう変わった訪問の仕方をしないといけないという法律でもあったっけ。

「玉藻ちゃんいらっしゃい!」

玉藻は木の葉柄の着物を模した装甲を付けた魔導鎧を着ている。既にコンちゃんと同化しており、ピンと張った狐耳とモフモフな狐の尻尾を生やしている。

「闇夜さん、玉藻さん、本日は無理を言って参加させていただきありがとうございました」

丁寧な所作で頭を下げる聖奈。きちんとした優等生だなぁと、その様子からは思う。いつもきちっとしていて、疲れないのかな。

「構わないですよ、皇女様とご一緒できるのは光栄の至りですから」

「玉藻も良いよ〜。友達たくさんの方が楽しいもんね!」

撮影に満足したのか、闇夜が立ち上がると、上品な礼をしてニコリと微笑む。さすがは闇夜だ。お嬢様度では、聖奈に負けていない。

玉藻は後ろ手にして、むふふとカラッとした嬉しそうな笑みで答える。

「それじゃ、全員揃ったから、いざダンジョンへとしゅっぱーつ!」

集合予定の四人が集まったので、ぴょんとジャンプして拳を突き上げる。

「おお〜ですね」

「にっしっしっ、頑張ろ〜」

闇夜と玉藻も拳を突き上げて合わせてくれる。しかし、聖奈がわたわたと手を振って慌てて口を挟む。

「あの、闇夜さんたちの護衛は?」

あぁ、そういえば誰もいないね。どうしたんだろ?

「あぁ、みー様センサーが働いたので、私だけ急いできたのです」

「み、みー様センサー?」

「いつも可愛らしいみー様が、さらなる可愛らしい姿を見せる時に働くセンサーですね」

聖奈は冗談かなと闇夜の顔を見るが、至極真剣な顔で語るので、どうやら大真面目らしいと口元を引きつらせる。

うん、わかるわかる。闇夜は真面目に答えているんだ。でも、カメラを買ったばかりだから、面白くて仕方ないんだろう。

「あ、玉藻の護衛は一人だよ〜。侍女さんと合わせてふたり〜」

「うちの護衛も多いけど、聖奈ちゃんの護衛は多いね」

何この軍隊? うちも20人はいるけど、聖奈はその倍はいるよね?

しかも、車両から降りてきたのは、近衛兵だ。近衛専用機を皆は装備している。威圧感がある漆黒に紅いラインが入っている重装甲の武者鎧だ。

大量の魔道具を身に着けているに違いない。倒すと様々なアイテムや武器をドロップする美味しい敵だったんだよなぁ。

神無公爵側についた近衛兵をよく狩ったもんだ。懐かしい。

「みー様、もう狩人の顔になってませんか?」

「そうかな? ムニムニ〜」

闇夜が顔を覗いて、不思議そうに尋ねてくるので、ホッペをむにむにと揉む。やばい、ついつい獲物を見る目で見ちゃった。失敗、失敗。

「みー様の頬は柔らかそうですね」

「そうかなぁ?」

「ほら、こんなにむにむにです」

「触ると気持ち良いよね〜、むにむに〜」

闇夜に続いて、玉藻もみーちゃんの頬を触ってくるので、とってもくすぐったい。

「せーちゃんも触る?」

「えっと、それでは失礼します」

仲間外れは嫌だもんねと、聖奈へと声をかけると、恐る恐る触ってきて、おぉと目を輝かせる。そんなにみーちゃんのホッペは触り心地が良いのかな。

ひとしきり、四人でキャッキャッとじゃれ合っていると、金剛お姉さんがパンパンと手を打つ。

「ほら、遊んでいないで、そろそろ出るよ。早くしないとお菓子がなくなるよ」

「お菓子?」

不思議に思い、コテリと首を傾げると、親指を立てて、装甲バスを指し示す。装甲バスの横で蘭子さんにチョークスリーパーを極められているニムエが目に入る。足元に空となったお菓子の袋が転がっていた。

「そうみたいだね。ニムエさんが気絶する前に出発しよっか」

「わかりました」

「りょうかーい」

「よろしくお願いしますね」

和気あいあいと笑顔で、四人は移動用の装甲バスへと向かう。

「気をつけてね?」

「うん!」

「騒動を起こさないようにね?」

「はーい、行ってきまーす!」

優しい微笑みで手を振るパパとママの見送りを受けて、手を振りかえしてバスに乗る。

よいせと、後部の座敷へと座り、期待でワクワクと目を輝かす。

「ホーンベアカウ狩り楽しみだね!」

「そうですね。今回は3泊4日の旅ですし、お泊りも含めて楽しみです」

「皆でお泊り〜、う〜ん、楽しみだね!」

今回はお休みを利用して、長期滞在の予定だ。パパとママ、双子へとたくさんお土産を持っていくぞ〜。

「目的地はどこでしたっけ?」

「えっとね、大勢で牧場ダンジョンに入って、狩りをするのは周りに迷惑だから、最近見つかったダンジョンを選んだんだよ」

「鎌倉近くで見つけたダンジョンですね。珍しく10階層まである大きなダンジョンです」

聖奈の質問に答えると、闇夜が補足してくれる。

「最近見つかったから、穴場なんだよね?」

「うん、まだまだ知る人ぞ知るって感じ。内部もまだ完全には調査は終わってないらしいけど、グレーターホーンベアカウの姿は確認しているらしいよ」

「よ〜し、それじゃ玉藻頑張っちゃうぞ〜!」

「ふふっ。私もみー様のために頑張りますね」

ガオーッと、玉藻が両手をあげて、闇夜が口元に手を添えてクスクスと微笑む。

「そうですね、私も頑張ります」

可愛らしくガッツポーズを取る聖奈。全員気合充分みたいだ。

「私が一番になるからね!」

もちろんみーちゃんも頑張るよ。

だから、接待バトルはなしでよろしく。