軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

164話 蛇魔神は強いんだぞっと

美羽たちは最終形態となったナーガラージャとの戦闘をすることとなった。何だか、俺達と同じ神様らしい。

他の世界から召喚されたとのこと。気になることはたくさんあるけど、気にするのはオーディーンのお爺ちゃんに任せよう。

今は戦闘あるのみだ。

「それじゃ、私からね」

くるりと手の中で短銃を回転させると、フリッグは妖艶なる笑みと共に引き金を引く。

『 防御上昇(プロテクション) Ⅴ』

フレイヤの身体を光る格子のバリアが包み込み、その防御力を200%上昇させる。

「ありがとうございます」

水鏡の丸盾を前に構えて、淡々と礼を言い、フレイヤがスキルを使う。

『聖剛体』

フレイヤの身体に純白の粒子が現れて、キラキラと光り輝く。防御力さらに200%アップだ。

「それじゃ、俺はこれだ。こい、インペリアルアント!」

ぴょんと小さくジャンプをして、空中に魔法陣が描かれると、いつものアリさんが姿を現し、美羽たちの前に降り立つ。

アリさんには、後衛を守ってほしいのだ。フリッグお姉さんは、ナーガラージャの装飾品に突進して、しがみつきそうだからな。

わかってますと、アリさんがぶんぶんと横に首を振る。うん、やる気満々だ、良かった良かった。

「さてさて、準備はできたかな?」

「オーケーだ!」

余裕を見せるナーガラージャへと、答えながら武器を構える。

睨み合う美羽とナーガラージャ。そこに雷で身体を作っている鳥が飛来して、ナーガラージャへと向かう。

「さてさて、戦いの鐘は鳴ったようですね」

ナーガラージャは余裕を崩さずに、右手の一本を雷光鳥へと向ける。

『水葬』

紫電を散らしながら、ナーガラージャの眼前に迫っていた雷光鳥が水球に包まれると爆発する。オーディーンの魔法が破壊されてしまったのだ。

「カーン! 戦闘開始だぜ!」

雷光鳥の爆発により、水蒸気が周囲を埋めようとする中で、美羽は前傾姿勢となり突撃する。

時間の流れが緩やかになり、高速の世界へと入る。ナーガラージャへと転移に近い接近を図ろうとするが、敵はこちらをはっきりと視認していた。

「俺の高速移動を視認できてるのね」

『縮地法』での移動は相手からしたら、視認は難しいはずだ。しかし、ナーガラージャははっきりとこちらを見据えており、尻尾をバネのように撓らせて、後方へと飛び退く。

ナーガラージャは、隣の倉庫へと身体ごと突進して破壊しながら間合いをとっていく。

美羽には及ばないが、かなりの素早さだ。やるね、あの蛇。

さらに間合いをとっていくナーガラージャへと、足を早めて追いつこうとすると、隻眼の老人がホログラムで浮かぶ。

『お嬢。やつは『神鎧』を恐らく無効化している』

『無敵の装甲なのに?』

『そうだ。雰囲気が変わったので、もしやと雷光鳥を使って試したのだ』

隻眼を細めて、楽しそうな笑みでオーディーンが言うが、なんで不利になるようなことを?

『恐らく『神鎧』のデメリットである他の魔法使用不可を嫌がったのでしょう。観察していましたが、長政はろくな魔法を使えませんでした。多彩な魔法を使うのに、細胞レベルで身体を包む『神鎧』は邪魔だったと推測します』

『それじゃ、お互いに遠慮なく攻撃できるわけね。思い切りの良い敵のようね』

『頭の良い敵でもあるみたいだぜ!』

フレイヤもフリッグも楽しそうに微笑みながら話に加わる。楽しそうで何よりだよ。まったくもぉー。

何棟もの倉庫を破壊しながら、充分な間合いをとったナーガラージャがこちらへと向き直る。

『光鱗よ』

ナーガラージャの一部分の鱗が光り輝くと、身体から外れて飛んでくる。数百の光り輝く鱗が空を弾丸のように貫いて迫ってくる。

『みーたん、気をつけてください。あの鱗は』

『わかってる。『神鎧』付与付きだろ!』

フレイヤの忠告を最後まで聞かずに、無数の鱗へと武器を構えて迎え撃つ。破壊不能の鱗とは考えたことだよ。

だが、美羽は足を止めるどころか、速度を緩めることもせずに、ニヤリと笑うと二刀を目前に迫る鱗へと振るう。

『月光斬』

優しき白き光が光線のように鱗を通り過ぎると、真っ二つに破壊して地に落とす。

「ていていていっ!」

可愛らしい雛のような声音と違い、その剣撃は鋭く速い。無数の鱗が美羽を切り刻もうとしてくるが、冷静にもっとも脅威度の高い鱗から破壊する。

足元に迫る鱗は軽く飛翔して躱す。身体を捻りずらすと、目の前を鱗が風を巻き起こしながら通り過ぎていく。

腕を狙う鱗は、螺旋の動きで手を回し、受け流し、回避しきれない鱗は武技にて破壊する。

一発でも受ければ、かなりのダメージを受けることは確実だ。

「楽しくなってきた!」

この蛇は強敵だ。それも今までとは違うと感覚が教えてくれる。

「誰も彼も戦闘狂で困るわね」

敢えて美羽を通り過ぎると、旋回して後方から回りこもうとする鱗にはフリッグが銃口を向けて、正確無比に撃ち落としていく。

「ファーストアタックは頂きます」

『 正義剣(ジャッジメントブレード) 』

その場を動かなかったフレイヤが剣に魔法の力を込めて、横薙ぎに振るう。長大な光の剣がナーガラージャを切り裂こうとする。

「さてさて、痛そうだ」

ナーガラージャは、その手に鱗を集めると剣へと形を変えて、フレイヤの剣を受け止める。光の粒子が辺りに舞い散り、衝撃波が波動となって吹き荒れる。

だが、受け止めたことにより、その動きがわずかに鈍る。

『縮地法』

効果の切れた『縮地法』を再び使い、一気に美羽はナーガラージャの懐に入り込む。無理矢理突進したために残る鱗により、切り傷が生まれるがチャンスなのだ。気にすることはない。

「セカンドダメージだ!」

『裂空十字斬り』

二刀をクロスさせるように振るう。刀身から剣の波動が刃となって飛び、ナーガラージャに傷を与えようとする。

「そうはさせぬわ」

『クロスエンゲージ』

6本の腕のうち、真ん中の両手をクロスさせて組むと、蒼きリングをナーガラージャは美羽の前に作り出す。裂空十字斬りの剣撃は、リングに命中すると霧散してしまう。

「はっ!」

下部の腕を振るい、黄金に輝く爪をナーガラージャは向けてくる。高速の世界でもその攻撃は、視認も難しい速さだ。

『空蝉の術』

回避しきれないと悟り、美羽は空蝉を発動させる。小柄な美少女の分身が揺れて現れると、身体に重なる。

と、同時にナーガラージャの爪が美羽を切り裂く。胴体を分断された分身が消えていき、さらに左手の攻撃がくるので、斬られた衝撃を利用して、身体を抱え込み、くるくると回転して、爪の間を潜り抜ける。やっぱりでんぐり返しは最高の武技だね。

「うおっ!」

だが、完全に回避したと思ったら、上部にある片腕が叩きつけをしてきた。

『重圧掌』

『フロントカバー!』

美羽の前に盾を構えたフレイヤが転移してくると、その攻撃を受け止めてくれる。再び衝撃波が突風となり吹き荒れる中で、フレイヤが冷静なる表情でナーガラージャの武技を耐える。

「セカンドダメージとやらは儂だな」

『流星槍』

水蒸気の中を突き破り、オーディーンが姿を現すと、グングニルを流星の如き速さで突き出す。

「さてさて?」

『五爪襲』

ナーガラージャは、指を揃えると魔法の力を爪に宿し、グングニルの先端へと命中させる。

「むっ!」

予想外の対応の速さに、オーディーンが驚く中で、さらなる攻撃をナーガラージャは繰り出してきた。

『ウィップテイル』

トラックよりも太い尻尾が倉庫を突き破り、撓りながら美羽たちを襲う。

回避しようと、翅を展開させてぎりぎりで身体を捻る美羽だが、通り過ぎる尻尾を横目に、衝撃が身体を走り吹き飛ばされた。

尻尾の周囲に不可視の衝撃エネルギーを纏わせていたのだ。

「あたっ」

「むっ」

「おぉ」

美羽たち全員はそれぞれピンポン玉のように弾き飛ばされて、倉庫の壁を突き破り、床にめり込んでしまう。フリッグだけはアリさんが守ってくれたので無事だ。

「ととっ。やるね」

めり込んだ床から、ホイサと飛び出して美羽は感心の吐息をする。かなりのダメージだったよ。血だらけだし、腕がめちゃくちゃだ。動くけどね。

「さてさて、そなたらも今の一撃で平気な顔とはな」

身体をくねらせて、楽しそうに爬虫類の縦の瞳を細めてナーガラージャが言う。

オーディーンも血だらけだし、防御力の高いフレイヤも額から血を流しているが、傷に対して意に介してない。

「そりゃ、こういうのはたくさん経験してきたからな」

『 範囲極大治癒(エリアエクストラヒール) Ⅱ』

パーティーだから、全員が対象となる。皆の身体を純白の光が覆い、その腕を、足を、傷を、魔導鎧を治していった。

「さてさて、久しぶりの神同士の戦闘。長く楽しむのも一興」

「余裕じゃんか。俺も久しぶりに楽しいぜ」

全快した俺たちを見ても、ナーガラージャは余裕を崩さない。いや、余裕ではなく、戦闘を愉しんでいるのだろう。

お互いの視線が交差して、再び身構える。

「第2ラウンドだ!」

「良きかな」

再び駆け出し、ナーガラージャへと接近する。

「今度は我からいこうぞ!」

巨体であるのに、尻尾をバネのように使い、羽のような身軽さでナーガラージャは空中に大きく飛翔すると、鱗を剣へと変えて、全ての手に持ち、落ちてくる。

「受けてみせよ!」

ナーガラージャが6本の腕を大きく振るう。それに合わせて、剣が鞭のように撓りながら伸びて、美羽たちに迫る。

『蛇腹六剣』

「蛇腹剣かよ!」

蛇だけに蛇腹剣かよと、苦笑しつつ皆へと視線を送る。

「迎え撃って反撃だ!」

「良いだろう」

「了解です」

端的にオーディーンとフレイヤが答える。巨大な蛇腹剣はまるで大蛇のようだ。

その動き一つで、倉庫が潰れ更地となる。それが6本。もはや天災である。

すうっと目を細めると、自分よりも大きな蛇腹剣へと立ち向かう。

『受け流し!』

身体を半身にして、ちっこい手に持つクイーンダガーをちょこんと巨大な蛇腹剣にぶつける。蛇腹剣に比べると楊枝のような小さな短剣だが、その魔法の力は正確に発動して、弾き飛ばす。

『エイミング!』

くるりとグングニルを回転させると、オーディーンが滑るように蛇腹剣へと接近して、絡めとるように浮き上げる。

二人とも、ただ弾き返しただけではない。2本の蛇腹剣はまるでのたうつように、吹き飛ばされて、他の4本に巻き付き絡めとる。

正確に蛇腹剣の軌道を読み取り、二人は他の蛇腹剣を絡めとるように弾き飛ばしたのだ。

「ハァァァッ!」

『シールドバッシュ!』

雄叫びをあげて、フレイヤが絡めとった蛇腹剣へと盾を回転させるように叩きつける。蛇腹剣はその衝撃を受けて、巻き取られて、一本の糸のようになってしまう。

「ラストね」

『月光弾』

フリッグが巻き取った蛇腹剣の中心に、万能属性の月光弾を撃ち放つ。ピシリと6本の蛇腹剣全てに小さな穴が空くと、その衝撃がエネルギーとなって蛇腹剣を伝っていく。

「な、なんと!」

落ちゆくナーガラージャが驚きで目を見張る中で、全ての蛇腹剣は破壊されて灰へと変わっていった。

「やっぱりセカンドダメージは俺だったな!」

『石火』

美羽は腕を振るい、アイテムボックスの手裏剣を落ちてくるナーガラージャへと投擲して、その身体に攻撃を与える。

ナーガラージャが、衝撃により吹き飛び、新たなる倉庫へと落ちていき、魔法強化されたコンクリートを砕いて瓦礫に沈むのであった。