軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

143話 英雄たちなんだぞっと

鷹野美羽は反省した。しょんぼりと顔を俯けて、アイスブルーの瞳を潤ませて、涙目みーちゃんである。

「失敗しちゃった。狂信者を生み出したみたい」

9人の魔法使いが、みーちゃんの前で跪いているのだ。少女の教育に極めて悪いと言えよう。

こんなはずじゃなかった。回復したら、ほとんどの人は家族の下へと帰り、数人が残るのだろうと予想していた。

残った人たちをスカウトして、今から助けるドルイドたちの護衛にしようかなぁと思ってた。

「『ロキ』様、お願いがあります。私に新たなる名前をお授けください!」

「我らに新たなる名前を!」

「ええっ! 私はかっこつけて、もう名乗ってしまいましたよ!」

8人の男女が名をくださいと騒ぎ始めて、ニムエはガーンとショックを受けている。

何ということでしょう。この世界が小説の世界だと、改めて思ってしまうよ。嫌な感じで思ったよ。

このノリはフィクションの世界でしかあり得ないよね。

『い、いえ、当然かと。だって、皆さんは数十年を脳だけで生きてきたんですから……そのぅ……治癒は魂を癒やしたんです』

『そうなんだ………用法用量を守らないと大変なことになるんだね、教えてくれて、ありがとうフレイヤ』

ゲームでは、ただの回復魔法であったのに、現実では強烈な衝撃を与えちゃうらしい。

『えと、私こそ召喚して頂いてありがとうございます』

思念でやり取りしたのは、新たなる女神『フレイヤ』である。

艷やかなプラチナブロンドの髪に、宝石のように綺麗な碧眼。小顔で美しい顔立ちの少女だ。気弱そうな目が少し残念な感じだ。

『ゲルズ』との戦闘で、仲間がもう一人欲しいと思って召喚した女神である。

神話では、死んだ『英雄』たちの魂を集めて、ヴァルハラにてラグナロクに備える女神だった。

そんな彼女のステータスはこんな感じです。

フレイヤ

レベル51

メイン:聖騎士:☆☆☆☆☆☆☆☆☆

セカンド:魔物使いⅣ:☆☆☆☆☆☆☆☆☆

サブ:鑑定士Ⅳ:☆☆☆☆

HP:748

MP:287

力:512

体力:657

素早さ:342

魔力:221

運:279

固有スキル:武技大強化、武器装備時200%アップ、防御大強化、クリティカル率アップ、被クリティカル率ダウン、万能以外の全魔法耐性、魔物強化、魔物使役数アップ、MP自動回復中、魂との対話(魔物使役率アップ)、鑑定

スキル:聖騎士技マスター、鑑定Ⅳ、魔物術マスター、神聖魔法Ⅲ

彼女は複合ジョブ『聖騎士』だ。タンク役にして、アタッカー、そして回復魔法も使えるソロにはピッタリと言えるジョブである。

課金女神である『フレイヤ』は、それに加えて固有スキル『英霊魔法』を使用できる。

『英霊魔法』は『英霊』を使役する、魔物使いの延長とも言えるスキルである。ダウンロードコンテンツで入れるダンジョンの奥にいる『英霊』を仲間にできるスキルだ。

かなり強い魔物を仲間にできるスキルというわけだ。しかも魔物強化が乗るので、かなり強い。『フレイヤ』と『英霊』と共に、新たなる課金をしようと運営は宣伝してた。

いや、新たなる冒険だった。もうその頃には俺のキャラは最強だったけど、コレクター精神で、『英霊』を集めたものである。

とことんプレイヤーから、金を絞りとろうとする運営には感心しかなかったよ。

「我らに名前をお授けください、『ロキ』様!」

君たちはあれかな? 名前を付けてほしいと強請る魔物かなにかかな? 名前を付けたら、パワーアップするの?

「えっと、貴方たちは人間です! なので、親から貰った名前を大事にしてください!」

フンスと胸を張り、お強請りしてくる人たちを一喝する。みーちゃんは良いことを言ったよね?

「我らは新生しました! 神よ、お願いします!」

「えぇ………」

しがみついてこようとする大人を避けつつ、困ってしまう。この人たちの目が怖いんだけど。

『英霊契約って、狂信者にするスキルじゃないよね?』

『英霊契約』をすれば、正体はばれないよとフレイヤが教えてくれたので任せたけれども、本来の使い方とは違う使用方法なので、副作用を疑っちゃう。責任転嫁とも言う。

『んと、本来は英霊という名の魔物と契約するスキルだけど、狂信者にはしないよ。その力は契約者を強制召喚、悪しき行動をした時に、私にわかるようにアラームがくるくらいだよぅ。でも……』

『でも?』

『この人たちには教えてないけど、英霊契約の必須条件は、未来永劫裏切らないことなんだ。英霊は裏切らないんだよ』

『未来永劫……裏切らない。なるほど、ゲームでは英霊は命令をすることができなかったけど、裏切らないから自由意志を与えていたという設定だったんだね』

未来永劫裏切らない。命をかけて忠誠を誓う人でなければ『英霊契約』できないわけだ。本来は命を持たない英霊と契約する魔法だから、最初から忠誠心はマックスだ。現実だと人間にもそれは反映されるのね。

なるほど、簡単には『英霊契約』はできないのか。

『う、うん。そうだよ。だから狂信者じゃないよぅ。名前を付けてあげないと、騒ぎはおさまらないと思う……』

『うぅ……仕方ないね』

ため息を吐いちゃうが、仕方ないね。

「それじゃ、ニムエさん以外に名付けます。男性は右からエウノー、ハバラン、ポリーニ、ガモン、ヤシブで、女性はサクサーラ、シーナ、マツ。それで良いかな?」

男5人、女3人に名付けた。この人たちは、外国人が多いので名前は変じゃない。

「ありがとうございます、我が神よ!」

「あの、私は?」

8人は感涙にむせび泣き、喜びを露わにする。ニムエさんは、親から貰った名前を大事にしてね。他の人たちは、みーちゃんのネーミングセンスの良さを見せてあげた。

フレイヤはなんでみーちゃんを、マジかよこの人みたいな目で見てくるのかな? さっぱりわからないや。

「あ、いつでも前の名前に戻したいという方は言ってくださいね!」

簡単に名前を戻すから大丈夫だよと、笑顔で告げてあげる。ふふふ、策士みーちゃんだ。やっぱり前の名前がいいかなと言う人がいないか見渡すが……。

「力が! お名前を頂いたら力が漲ってくる!」

「私もよ! 物凄い力が!」

なぜか覚醒したよと、声をあげ始めた。

気のせいだから。名前をつけてパワーアップするのは、魔物だけだから。

『んと……精神が高揚して、覚醒したみたい。レベルが1上がったよぅ』

『へー』

羨ましい。覚醒イベントが発生しちゃったらしい。彼らのレベルが57とか、かなり高いんだけど? モブには覚醒イベントはないのに羨ましい。

「『ロキ』様、私にも名前を! 名前をください!」

ニムエが泣きそうな目で、迫ってくるけどダーメ。

「ニムエさんは、名乗ったので駄目です!」

慰めるために、頭をナデナデと撫でてあげる。おお、ひんやりとしている髪の毛だ。触り心地が良いよ。

「神自らの祝福が! 私も力が漲ってきました!」

ニムエが目を輝かせて、元気よくフンスと立ち上がる。なんだか、身体にオーラを纏っているような感じがする。

『レベルが2上がったよぅ』

ふざけんなよ。みーちゃんは、潜在能力を引き出す聖少女かよ。

『あはは………魔法使いは強烈なショックとかでパワーアップするから……』

『素晴らしいご都合主義だよね』

フレイヤの言葉にジト目となって、嘆息してしまう。小説の世界だよな、本当にこの世界は。

ちなみに他の人も祝福をとお願いしてきたので、頭を撫でてあげたが、レベルは上がらなかった。

大の大人たちを撫でるちっこい少女という、シュールな光景が生まれただけであった。

混乱というか、混沌というか、少女を敬う怪しげなカルト宗教が生まれそうな空気を、みーちゃんはパタパタと手を振って打ち消すと、この後のことを話すことにする。

「あの、みなさんが狂信者となったことをはんせーして、これから助ける人たちには私のことを認識させないでほしいのですが、なにかてーあんあるかな?」

車座となって、作戦タイムだ。石化させたドルイドたちを助けるんだけど、狂信者をこれ以上生み出したくない。

「ロキ様のお姿を皆に見せると、大変なことになると……大宗教を作らないのでしょうか?」

「つくらないよ!」

「むぅ……残念ですね」

みーちゃんを敬う宗教団体は、紳士諸君だけで結構です。この9人は少し危険かもしれないね。

「はい! この湖畔の魔女ニムエが秘策を出します!」

「どうぞニムエさん」

ビシリと手をあげるニムエに、指を指す。

「フレイヤ様の陰に隠れれば良いかと!」

「それ、さっきもやったよね?」

「はい。ですが今度は魔道具の力にすれば良いかと。フレイヤ様の隣に樽を置きます。樽が癒やしの魔道具ということで、おっ樽かと」

「はい、次はだれかいませんか?」

フンフンと鼻息荒く、真面目な顔で提案をしてくるニムエをスルーして、周りへと声をかける。オヤジギャグかよ。真面目なぶん質が悪い。

「魔道具という案はよろしいかと存じます。ならば、強力な神話級神器を使って、助けたということにしましょう」

豊満なスタイルのエキゾチックな女性が、艶かしい笑みで手をあげる。

「魔道具?」

「はい。神話級の魔道具ならば可能性大かと思いますわ」

「えと、でも、神話級の魔道具を見せることも危険なんじゃないかなぁ?」

フレイヤの言うとおりだ。神話級の魔道具を見せると奪おうとする者たちが、整理券が必要になるほど群れをなすだろう。

「そこは、このわたくし、サクサーラにお任せを。幻影魔法には少し自信があります。使用したことにより、破壊してしまったことにしませんか?」

その笑みは自信に満ちている。そういえば、それぞれ一つの魔法が特化しているスペシャリストだったか。

「なるほど。それならばちょうど良いものがあるよ!」

ポムと手を打って、笑顔で答える。幸運なことに神器が手元にあるのだ。奪われたことに気づかれて、絡まれるのもウザい。

たぶん『ニーズヘッグ』は執拗に絡んでくることが予想できる。

「土と植物を扱う神器『ミストルティン』。これをつかいましょー!」

この人たちを助ける時に使ったけど、効果は抜群だった。

さて、準備をしておこうかな。

力を使い果たした神器が、役立たずのゴミになることってあるよね。例えば、錆びちゃったりとかね。