軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

59話 佐々木アヤは、水の街を案内される

◇佐々木アヤの視点◇

「ここが高月くんの住んでる街かー」

私は、もの珍しくてきょろきょろしてしまう。

綺麗な街!

「水の街マッカレンだよ。とりあえず、冒険者ギルドに行こうか」

「街中を水路が走ってるんだねー。素敵」

「あやー、そんなにはしゃぐと人にぶつかるわよ」

ルーシーさんの忠告通り、通行人とぶつかりそうになり、あっ! と思って、ひょいと避ける。

ぶつかりそうになって、また避ける。避ける。避ける。楽しい!

この世界に来て、初めて普通の人間の街に来たんだ!

人ごみを縫うように、子供のように駆け回ってみた。

「凄い反射神経だなぁ」

「やっぱり大迷宮で育っただけあるわねー」

高月くんとルーシーさんの声が後ろから聞こえてきた。

あら? 呆れられてる?

「マコトくんー! 会いたかったよぉー」

冒険者ギルドに入るなり、金髪の美人なおねーさんが高月くんに抱きついてきた!

「る、ルーシーさん……あれは誰?」

「マリーよ。マコトを狙うギルドの受付嬢よ」

拗ねたように、教えてくれた。

「へぇ、そうなんだ」

ふーん……。

高月くん、 こっち(異世界) だとモテてるんだぁ。

「あら? そちらの子は?」

「佐々木アヤです。はじめまして」

「マッカレン冒険者ギルドの職員のマリーよ。よろしくね。新しく冒険者登録するのかしら?」

高月くんから離れ、仕事モードの顔をする。

きりっとした美人だ。

「マリーさん。さーさんは、冒険者登録は迷宮の町で済ませてるんですよ。俺とルーシーと一緒のパーティーだから、その報告にきました」

「そうなの? じゃあ、パーティー登録するわね。冒険者カードを見せてもらえますか」

「はい、こちらです」

藤原くんに作ってもらった冒険者カードを、マリーさんに渡す。

「佐々木あやさん。まことくんと同じ、異世界の出身者ですか……。冒険者としての実績はなし。ストーンランクですね。あとは、特に問題は…………え?」

マリーさんの目が見開かれれる。

やばっ! もしかして魔物ってばれちゃった?

しかし、そうではなかった。

クールな高月くんが珍しく、にまにましてマリーさんに近づいていった。

「さーさんのステータス、凄いでしょう?」

「……このステータス、ゴールドランクの冒険者を軽く上回ってるわよ。もしフリーなら、勧誘したいパーティーは20組以上いるでしょうね」

高月くんとマリーさんは、顔を近づけてこそこそと話している。

なんか、距離近くない?

「ところで! やっぱり大迷宮から女の子を連れてきたじゃない。まことくんのうそつき!」

「いや、約束はしてないですよ」

「うるさい! 今日は寝かさないからね! 夜はギルドに顔を出しなさいよ」

高月くんは、マリーさんにヘッドロックをかけられていた。

あれは、胸が顔に当たってるんじゃあ……。

「ルーシー! 戻ってたの?」

振り返るとブラウンの髪にゆったりした服をきた、女の子がルーシーさんにかけよっていた。

「エミリー、さっき戻ったところよ。今日は冒険じゃないの?」

「今日は教会の手伝いね。最近、魔物に襲われて怪我する人が多くって。ところで、時間あるなら大迷宮の話聞かせてよ」

「いいわよ。私の活躍を聞かせてあげるわ!」

「どうせ、まことくんに迷惑ばっかりかけてたんでしょ?」

「そんなことないわよ! 私の新魔法『流星群』の話に驚きなさい!」

盛り上がっている。

紹介をしてもらったところ、エミリーさんという僧侶の女の子だそうだ。

高月くんやルーシーさんとは、一緒に冒険をしたことがあるらしい。

ルーシーさんは、エミリーさんと一緒にどこかに行ってしまった。

「じゃあ、さーさん。街を案内するよ」

冒険者ギルドのパーティー登録は終わったらしい。

「う、うん」

高月くんと二人きりだ!

もしかすると、ルーシーさんは気を使ってくれたのかも。

デートだ!

うきうきして、ついていった。

「ここが大通りだよ。マッカレンの街で一番賑わってる」

「あの店は、ご飯が美味しいんだ。あとで行こう」

「ひとつ奥の通りは、飲食街かな。今の時間は静かだけど、夜は酒場で人が多くなる」

「ふじやんの店も後で寄ろうか」

「あっちのほうは……、まあ夜の店とかかな」

高月くんが、慣れた感じで街を案内してくれる。

レンガ造りのお洒落な建物が多い。

雰囲気あるなぁ。

マッカレンの街は、いたるところに水路がありその中を船が行きかっている。

「あの船には乗れないの?」

「料金を払えば乗れるけど、俺が水魔法で移動したほうが速いよ」

そーいえば、高月くんには水上を移動する魔法があったっけ。

「じゃあ、あの大きな建物は?」

私は石造りの建物を指差した。

「ああ、あれは温泉だよ。マッカレンは近くに源泉があるらしくて」

「へぇ! 街は綺麗だし、温泉まであるなんて、いいところね!」

「温泉宿は、街の主要産業らしいよ。俺は行ったこと無いけど」

贅沢できなかったから、と高月くんは苦笑した。

いつもどおり、飄々としている。

いつもどおりに見えるんだけど……。

(ちょっと、元気なさそう)

あれは、そう。

数ヶ月前から予約をして、楽しみにしていた人気RPGの続編が、予算不足でスゴロクゲームみたいになってた……と言って落ち込んでいた中学のときの高月くんだ。

まあ、やってみればそれなりに楽しかったらしいんだけど。

何かあったのかな?

高月くんは、中学からの友人で、最近は恩人だ。

悩んでいるなら、励ましたい。

「ねぇ、せっかくだから温泉行ってみようよ」

勇気を出して誘ってみる。

「さーさんが、行きたいならいいよ」

「混浴もあるって!」

恥ずかしいけど我慢だ。

「………………え?」

豆鉄砲を食らったチワワみたいな顔の高月くんは見ものだった。

- 高月マコト視点 -

おかしい。

なんだ、この状況。

「あー、いいお湯」

ふにゃっと、顔を緩めたさーさんが、隣にいる。

クラスメイトが一糸まとわぬ姿でだ。

違う。それはうそだ。

バスタオルを巻いている。

だけど!

その下は裸なんだ!

……落ち着け。

『明鏡止水』スキルよ。俺に力を貸してくれ!

混浴もあります、と書かれていたが、それは家族風呂というものらしい。

小さめの露天風呂を貸し切ることができる。

当然、お値段は張るが大迷宮のミノタウロスやら、ハーピー女王を倒した賞金で少し懐には余裕がある。

さーさんの頼みは、聞いてあげたい。

「あー、生き返るねぇー」

「ああ、うん……」

さーさんが、うーん、と言いながら伸びをするとタオルがはだけそうで……。

そっちを見ないように、上を向く。

「温泉がある街っていいね」

「さーさん、温泉好きだっけ?」

「大迷宮だとお風呂なんてなかったから、いっつも地底湖で水浴び。いつ魔物に襲われるか気を抜けないんだよ」

それは確かに落ち着かないな。

しばらくは、雑談が続いた。

「そういえばさーさんの姿って、 変化(へんげ) スキルを使ってるんだよね?」

「うん、前は肌の色が青かったけど、今は人間っぽいでしょ?」

と言いながら、二の腕を見せてくる。

いや、そんなに見せてこなくて大丈夫です。

赤面する。

「今度、 変化(へんげ) スキルを教えてよ。俺は、回避スキルとか逃走スキルを教えるからさ」

「いいよー。でも、 変化(へんげ) スキルなんて使うの?」

何言ってるんだ!

自分の姿を変えるなんて、暗殺者ゲームや忍者ゲームの基本じゃないか!

「高月くんのゲーム脳が、また暴走してるね」

「失礼な」

否定はしませんが。

「高月くんってレベルいくつだっけ?」

「21だよ。さーさんには、10以上負けてるなー」

「レベルは可能な限り上げておくんじゃなかったけ?」

さーさんは、俺のプレイスタイルまでよく覚えてるな。

「最初の頃は上げてたよ。でも俺は初期ステータスが低すぎるうえに、伸びしろがなくて。レベルが上がっても、あんまりステータスが上がらないんだ」

「それで、元気がないの?」

「え? いや、それはもう気にしてないよ。今は水魔法の熟練度を上げるのが楽しいんだ。あとは精霊魔法を極めるから」

「その『極める』って高月くんの口癖だったよね」

懐かしそうに言われた。

そーだっけ?

「さーさんは、レベル上げろよ。俺と違って初期ステータスが高いし、伸びしろ多い。しかも、『アクションゲームプレイヤー』スキルの3倍効果が上がるからさ」

「私はレベル上げって苦手なんだよねー」

そうだった。

だから、アクションゲームが好きだったんだ、さーさんは。

「ねぇ、高月くん」

「どーしたの、さーさん」

「悩みがあったら言ってね」

「……え?」

「何か、悩んでるみたいに見えるよ」

「……そうかな」

やっぱり、友達の目は欺けないな。

さーさんには、いずれ邪神の使徒のことは伝えないと。

「ありがとう」

「ううん、どーいたしまして」

やっぱり、昔なじみは話しやすいや。

「よーし! マコトとルーシーのマッカレン帰還を祝ってー!」

ルーカスさんが、冒険者のみんなを集めて酒宴を開いている。

「マコト! 大迷宮のことを話してくれよ」

酔っ払ったジャンが、絡んでくる。

「ジャンってば、毎日のようにマコトは大丈夫かな? って言ってたのよ」

エミリーがニヤニヤと言う。

「お、おい。エミリー。何言ってるんだ!」

「別に大した冒険はしてないよ」

「マコト……、さすがにそれは 嘘吐(つ) きだと思うわ」

酔って話すのが面倒になった俺に、ルーシーがつっこむ。

ああ、この感じ。

マッカレンに戻ってきたな。

さーさんは、楽しんでるかなと見てみると、お酒を美味しそうにコクコク飲んでいた。

さーさん、酒強いな。

「マコトとアヤは、今日何をしてたの?」ルーシーが尋ねる。

「えーとね、今日は高月くんに街を案内してもらって。藤原くんのお店に行って。ランチして。あとは、温泉に入ったよ」さーさんが答えた。

「「「「え」」」」

「あ、あや……。そ、その。温泉は別々に入ったってことよね?」

「ううん、家族風呂っていうのに一緒に入ったよ。ねー、高月くん」

「ああ、そうだね」

別にこの世界では、家族風呂って普通なんだろ?

街にいっぱいあったし。

「ま、マコト……」

なぜ、ジャンはそんな畏怖の目で見るのだろう。

「……昼間っから、お盛んねぇ」

エミリーの視線が冷たい。

「……」

ルーシーは固まっている。

なんで?

「そ、そんな……。マコトくんの最初の女は私の予定だったのに」

「マリーさん? 何を言ってるんですか」

「まあ、いいわ。私は2番目ってことで、今度私と行きましょうー」

マリーさんが、腕を絡めてくる。

なんだろう。

何か、俺は勘違いをしているのだろうか。

「おーい、マコトが男になったぞ! みんな祝杯だ!」

ルーカスさん!?

「くそがっ!」「爆発しろ!」「二股やろう!」「ハーレムパーティーはええなぁ」

久しぶりに戻ってきたホームなのに、冒険者のみんなから罵倒される。

なんでや!

――家族風呂。

そこに入る若い男女は、例外なくアレな目的で入るらしい。

男女の盛り場だ。

知らねーよ! そんな異世界の常識!

水の神殿じゃ、教えてくれなかったぞ!