軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

384話 高月マコトは、魔王と戦う

赤い流星がこちらへ突っ込んでくる。

魔王が手に構えているのは巨大な真紅の魔法剣。

「ぬん!!」

魔法剣が弧を描き、それを追うように巨大な赤い斬撃が迫る。

(はやいっ!!!)

「よっ!」

俺は風の精霊に力を借りてそれを躱しつつ、反撃の機会を窺う。

「逃げ足は速いようだ。ならば!」

――反転魔法・獄炎天墜

魔王の言葉と共に空が燃えた。

そして、巨大な炎塊がいくつも降り注いでくる。

派手な魔法だ。

というか、この火魔法が地上に落ちると 水の国(ローゼス) が火の海になってしまう。

「 水の大精霊(ディーア) 。地上に炎が落ちるのを防いでくれ」

俺が呼びかけると。

「はい、我が王」

魔王によって放たれた巨大な炎塊をディーアが迎撃していく。

「やるな精霊使い。ならばこれでどうだ」

魔王が手を空に掲げる。

――反転魔法・紅蓮滅界

巨大な炎の渦が魔王を、中心に巻き起こる。

空を覆うような炎の渦だ。

(いちいち派手な魔法使うなぁ……)

もうちょっと大人しい技はないのだろうか。

(魔界の王たちは強さだけじゃなくて、派手さでも自分の威光を示すから)

(魔界は広いからねー。ちまちました技は不人気なの)

ノア様と 水の女神(エイル) 様の念話が聞こえた。

なるほどね。

文化の違いというやつか。

今回の魔王との戦いは勝つ……というより、ルーシーのお父さんに認めてもらうための戦いだ。

となれば魔界流に則って、派手な魔法をお返ししたほうがいいかもしれない。

(とはいえ派手な魔法って苦手なんだよなー)

魔力(マナ) が少なかった人間時代の名残で魔法運用は、ついつい魔力を節約してしまう。

使える魔法で一番効果範囲が広い魔法は、神級魔法『 地獄の世界(コキュートス) 』だが、あんなもんを使ったら水の国が氷漬けになる。

論外だ。

(うーん…………)

俺は魔王の攻撃を受け流しつつ、少し考え。

「なぁ、 水の大精霊(ディーア) 」

「何でしょう、我が王?」

「あれ、できる? リヴァイアサンのときみたいな」

「ふっ……もちろんですよ」

俺が尋ねるとディーアは、笑顔で答えた。

◇ルーシーの視点◇

炎の魔王(わたしのパパ) は、巨大な炎の鳥や炎の巨人を魔法で作り出してマコトを攻撃する。

マコトはさっきから防戦一方だ。

「ねーねー、アヤ! マコトって押されてない!?」

「うーん、変だね。高月くんが本気だしたら、もっとすごいと思うんだけど」

私はアヤの服を掴んで体を揺すった。

「もしかして、私の父親だから遠慮してるのかしら! あー、家族かどうか魔力でわかるなんて言わなきゃ良かったかも!」

「でも、そしたら高月くんがるーちゃんのパパをやっつけちゃってたかもだし。言ったほうが良かったと思うよ。それにしても高月くんが全然、魔法で反撃しないねー」

アヤも心配そうだ。

ちなみに、私とアヤは飛空魔法でマコトと少し離れた位置で戦いの様子を見守っている。

その時、目の前を白いフワフワしたものが横切った。

「あら? 雪?」

それは季節外れの雪だった。

さっきまでマコトの魔法の影響で小雨が降っていた。

それが雪に変わっている。

「るーちゃん……寒い……かも」

アヤが震えだした。

確かに冷たい空気が肌に当たっている。

「火魔法・ 炎の壁(フレイムバリア) 」

私は自分の周囲を薄い炎で囲う。

これで暖かくなるはずだけど……。

「るーちゃん、まだ寒いよー」

「…………変ね、どうしてまだ冷えるのかしら?」

おかしい。

炎の壁(フレイムバリア) で囲えば、真冬の登山でも薄着でいられるはずなのに。

もう少し火力を上げようかしら、と思っていたその時。

――ゾワッ

と身体を悪寒が駆け抜け、私は両手で杖を構えていた。

アヤも飛行魔法の効果が外れないよう、片腕は私と組みつつ、もう一方の手で構えを取っている。

危険を察知したわけではない。

ただの生存本能だった。

脳がこの場から逃げろと言っている。

なぜならこの場所は……………… 囲(・) ま(・) れ(・) て(・) い(・) る(・) 。

――アハハハハハハ

――キャハハハ!

――フフフフ……

――アハハハハハハ

――アーソビマショ~~~~☆

私たちを取り囲むのは数え切れないほどの 水の大精霊(ウンディーネ) たち。

魚の群れのように、周囲を優雅に飛び回る水の大精霊たちだった。

気がつくとすぐ隣にも水の大精霊が寄ってきている。

だから私の 炎の壁(フレイムバリア) が消えそうになっていた。

「 強火(ハイフレイム) !!」

私は火魔法の威力を強化した。

(まったくアヤが凍えちゃうでしょ)

「はぁ~暖かい~」

アヤが抱きついてくるので、私は肩を抱き寄せた。

そして改めて周囲を見回す。

360度。

目に付く場所、全てに水の大精霊がこちらを囲うようにフワフワと浮いている。

そして、ある一点を見つめて微笑んでいる。

(怖っ!!)

水の大精霊(ウンディーネ) たちの視線の中心にいるのは――勿論、私の父である魔王。

取り囲むのは数千? いや数万はいるであろう水の大精霊たち。

その一人ひとりが下手すると魔王級の 魔力(マナ) を持っている。

これに取り囲まれても平静を保てるなら、私のパパも大したものだと思うのだけど…………

「な、なんだ! これは!!」

狼狽えていた。

(まぁ、そりゃそーよね……)

私だってさっきから寒気が止まらない。

本当に寒いわけじゃなく、この場にいるだけで足がすくみそうになる。

マコトが味方だとわかっている私ですらこうなのだから……。

「くっ! これほどの水の大精霊を呼び出すとは……! しかし、人間には制御できる数ではなかろう! 数が多ければいいというものではないことを教えてくれる!」

と言って炎の魔王が、魔法剣を構え魔力を込めると同時に赤く燃え上がるように輝きはじめ………

――魔法剣を覆う 炎(・) が(・) 消(・) え(・) た(・) 。

「な"っ……………………」

炎の魔王(わたしのパパ) が絶句する。

視線の先には夜空があり…………

「げ?」

「うわ……」

私とアヤも思わず呟いた。

最初は雲が流れているのかと思った。

が、違った。

ゆっくりと形を変える夜空の向こうからやってくる青いヒトガタの大群。

そのすべてが水の大精霊だった。

数千、数万どころではない。

数十万、数百万の水の大精霊たちがこちらへとやってきている。

しかも、全員が無邪気な笑みを浮かべているのがかえって怖い。

何度もいうが、一人ひとりが魔王クラスの魔力を持っているのだ。

「「「「「………………」」」」」

ふと見ると魔王が乗ってきた空に浮かぶ巨大な船にいる魔族たちもこの世の終わりのような顔で空を見上げていた。

「………………」

魔王(パパ) が完全に心を折られている。

(私が止めたほうがいいのかしら……?)

でも、流石にあの数百万の水の大精霊を使って神級の水魔法を使ってたりしないわよね?

私はマコトの顔を見ると……。

(あ……ダメかも)

新しい魔法を試そうとしているワクワクしている時のマコトの顔だ。

「るーちゃん、止めたほうがいいよ」

アヤが私の背中をつつく。

やっぱりそうよね。

「マコ……」

大きな声で呼びかけようとした時。

「何事だ!!! 高月マコト!!!」

突然、マコトと魔王の間に割り込むように巨大な黒竜が出現した。

「な、なに!?」

「るーちゃん、あいつ北の大陸の!」

アヤに言われて気づく。

まさか、魔大陸の古竜の王!

なんで、そんなやつが!

と慌てていたら。

「あれ? アシュタロト、どうしたんだ?」

マコトが世間話をするように話しかけている。

あら?

「高月マコトが水の大精霊を大量召喚している気配を感じたのでな! もしやまた神獣と戦うのか、と思ってやってきたのだが…………」

そこで魔王のほうに視線を向けた。

「ふむ、魔界の炎帝ゼパルか。久しぶりだな」

古竜の王は 魔王(パパ) とも面識があるらしい。

古竜の王の登場でどうなるのかと身構えたけど、たんに野次馬でやってきたみたい。

というか、会話の内容から察するとマコトの味方っぽい感じよね。

……話には聞いてたけど、本当に親しいのね。

「 古竜の王(アシュタロト) ! なにゆえ、貴様は人間と親しげにしている! 地上に長く住むうちに毒されたか!」

魔王(パパ) が大声で怒鳴っている。

うーん、最初は威厳があったんだけど今はちょっとアレだなー。

「うん? 高月マコトは人間ではないぞ? 最近、復活された女神ノア様の眷属であり神族だ。お主も女神ノア様に挨拶をするためにこの星にやってきたのではないのか?」

古竜の王が不思議そうな表情で、 魔王(パパ) を見つめる。

意外に愛嬌があるのね。

「………………な……ん……だと?」

魔王の口と目が大きく見開かれた。

その様子をみてため息を吐いた古竜の王は、マコトのほうを振り向いた。

「高月マコトよ。水の精霊たちを元の場所にもどすのだ。相手が神獣リヴァイアサンやバハムートならともかく、いくらなんでも呼びすぎだ」

「でも、魔界だと魔法が派手な方が好ましいって聞いたけど?」

「限度がある。この状態で魔法を使うと、大陸一つが海に沈むぞ」

古竜の王に注意されていた。

これじゃあ、どっちが魔王かわからないわね。

「せっかく来てもらったんだけどなー………… ✕✕✕✕✕(ごめんねー) 。 ✕✕✕✕✕(またこんど) 」

マコトが数百万人の水の大精霊たちに手を振ると、徐々に彼女たちは空の彼方へと散っていった。

息をするのも苦しいほどの威圧感からやっと解放された。

ちなみに、 炎の魔王(パパ) はまだ呆然としている。

「なんということだ…………あの破壊の女神の眷属に手を出してしまうとは……」

ぶつぶつというつぶやきが聞こえた。

なんか、マコトの信仰してる女神様って随分恐れられてる?

「なんか、ノア様に対して失礼なことを言われた気がする」

マコトの目が細くなる。

「 炎帝(ゼパル) よ。その言葉、天界のノア様に聞かれているぞ。訂正したほうがよい」

古竜の王にまで言われている。

「ま、待て! そもそもどうして我が娘が女神ノアの眷属と……」

魔王がなにか言いかけた時。

「あんたー!! 何してるのーー!!!」

赤い閃光がつっこんできた。

そして、赤い閃光が炎の魔王に突き刺さる。

「ぐぼあっ!」

吹っ飛んでいった。

「パパ!?」

流石に叫ぶ。

その声に返事があった。

「あら、ルーシーじゃない?」

そう言ってこちらに振り向くのは、いつだって神出鬼没な 紅蓮の魔女(ママ) だった。