軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

362話 招待状 その5

「へぇ……、私の騎士が聖女アンナ様と結婚してたとはねー。なんか色々とあったとはノエルから聞いてたけど、まさか結婚とはねー、へぇー」

フリアエさんが俺の腕をつねりながら、じとっと湿度の高い目で見つめてくる。

「ま、まぁその話はまた今度……」

つねられている腕が痛い。

「もしかして私の騎士の隠し子とかもいるんじゃないでしょうね~?」

「いないって!」

とんでもない濡れ衣だ。

「ねぇ、千年前の結婚の話はソフィア王女は知ってるのかしら?」

フリアエさんが氷のような視線で問うてくる。

「じ、自分からは言ったことがない……かな?」

「悪い男ですよねー、マコト様も」

大賢者様(モモ) までもが、フリアエさん側に立っている。

君は、当時も居ただろう!?

「すまんな、精霊使いくん。バラしてしまって」

白竜(メル) さんが申し訳なさそうに言った。

「いいですよ、絶対に隠したいわけじゃないですし」

自分からあえては言わなかったけど。

「なら、よいが」

白竜さんは俺が渡した招待状を、しっかり読んでくれている。

「ふむ、式典の場所は西の大陸の 水の国(ローゼス) の王都ホルン……大迷宮ラビュリントスのある国か。ふっ……懐かしいな」

「白竜師匠は大迷宮の主でしたもんねー」

「アンナさんやモモと一緒に探索したなー」

「我が王、私もその時に名前をつけていただいたんですよ。覚えておられますか?」

気がつくと隣に 水の大精霊(ディーア) も現れた。

「急に現れないでくださいよ! そんな頭おかしい魔力で」

「別に普通でしょう? ちびっこ」

モモの指摘に首をかしげるディーア。

「いや、古竜の里がざわついている。さすがに 水の大精霊(きみ) の魔力を少し抑えてくれると助かる」

「……むぅ」

白竜さんに言われて、しぶしぶすぅ~と、姿を半透明にする 水の大精霊(ディーア) 。

(なつかしいな……、この感じ)

大賢者様がいて。

白竜さんがいて。

水の大精霊(ディーア) がいる。

あとは、アンナさんが居たら……。

その時だった。

空から大きな声が降ってきた。

「高月マコトが来ているのというのは本当か!?」

突風が舞った。

ドシンという音と同時に地面が揺れる。

眼の前が暗くなる。

巨大な古竜が突然現れたからだ。

「ど、ドラゴン!?」

フリアエさんが俺の後ろに隠れる。

モモとメルさんは、まったく慌てていない。

顔見知りだから。

「 古竜の王(アシュタロト) ですか」

「おや、父上」

モモと白竜さんが同時につぶやく。

「お邪魔してるよ、アシュタロト」

「何をいう、マコト! 古竜の里の主は、竜王である貴様だ! ゆっくりとしていってくれ」

がっはっはっ! と豪快に笑う古竜の王。

だから俺は竜王じゃない。

どうやら俺が古竜の里にいるのを知って駆けつけてくれたらしい。

世界最強の魔王のはずだが、共に神獣と戦った仲間だ。

そして、カインの神器は相変わらず借りられっぱなしだ。

「ところで俺が来てるのは誰に聞いたの?」

白竜さんが呼んだわけではなさそうだし。

「私ですよ、我が王」

「え?」

意外にも答えたのは 水の大精霊(ディーア) だった。

「ディーアって、アシュタロトとそんなに仲良かったっけ?」

共に神獣リヴァイアサンと戦ったとはいえ、二人が話しているのを見たことはない。

「我が友、マコトよ。その問には私の新たな仲間を紹介する必要があるようだな!」

古竜の王がディーアの代わりに返事をし、大きな風が巻き起こった。

「わわっ!」

「きゃぁ!」

モモが風に飛ばされそうなのを右手で支え、フリアエさんのドレスのスカートが大きくめくれ上がりそうなのも左手で抑える。

一瞬間に合わず、フリアエさんの紫の下着が見えた。

「…………ありがと」

「こちらこそ」

「何いってんの? 私の騎士」

下着を見たのはバレなかった。

「にしても、急に風魔法を使うなんて……」

俺が古竜の王に文句を言おうと振り返り、そして最後まで言葉を言えなかった。

古竜の王の隣に、緑の髪に薄緑の肌の美しい少女がふわふわと浮いていた。

緑色の少女は、そこはかとなく女神ノア様に似ていた。

「 風の大精霊(シルフ) ……?」

古竜の王の隣には、風の大精霊が現れていた。

「その通りだ! 最近、少しだけ現れてくれるようになった! マコトの使役する水の大精霊と、我が仲間の風の大精霊がやりとりをしてくれたようだ」

「………………」

古竜の王がうれしそうに言った。

風の大精霊(シルフ) は、ぼんやりとした表情でこっちを見下ろしている。

「………………え?」

頭が混乱する。

古竜の王が精霊使いになってる!?

「父上は女神ノア様を信仰しているからな。ここ最近は、ずっと精霊魔法の修行ばかりしているようだ」

メルさんが教えてくれた。

「本当に改宗したんだ……」

ノア様を信仰するとは言ってたけど、本気だったとは。

そしてなにより。

「風の大精霊を扱えるとか、早くない?」

俺は寿命を使ったり、千年修行してやっと水の大精霊と仲良くなれたのに。

「もともと風魔法を準神級で扱えるからな、父上は」

「なんでもできますね……」

「 反則(チート) だ……」

白竜さんの言葉に、モモと俺は力なくつっこむ。

「はっはっは! まだ言うことは全然聞いてくれん! あくまで気まぐれに姿を現してくれる程度だ! 我が友マコトには遠く及ばんよ。では、またな『シーア』」

「……………………」

風の大精霊はコクンと頷くと、一言もしゃべらないまま風のように消え去った。

というか風そのものだったわ。

「なぁ、アシュタロト。シーアっていうのは?」

「うむ! マコトを見習って名前を付けてみた。一応、気に入ってくれたようだ」

名付けまでやってる!?

風の精霊使いは、アシュタロトには勝てなさそうだ。

俺は時の精霊と仲良くならないといけないから、他の精霊には手が回らないんだけど。

(それはそうとして、せっかく会えたからには)

「アシュタロト」

しゅたっと、俺は古竜の王の眼の前に移動した。

「どうした? マコトよ」

「ほい、どうぞ」

「……む? これは?」

俺が結婚式の招待状を手渡すと、不思議そうに紙を眺めている。

「今度、水の国で結婚式をするんだ。もし都合があえば参加しない?」

「ほう? 人族の文化だったか? 初めての体験だが、面白そうだな! 謹んで出席させていただきます」

「……本当は知ってるだろ?」

なんで受け答えマナー完璧なんだよ。

「え? マコト様!?」

「ちょっと、私の騎士!?」

慌てているのは、モモとフリアエさんだ。

「なに?」

「なにじゃないですよ!」

「魔王を呼ぶって大丈夫なの!? 大騒ぎになるわよ!」

「そうかな? でも、神獣リヴァイアサンとの戦いで世話になったし……」

古竜の王は最初から声をかけるつもりだった。

白竜さんに招待状を預けるつもりだったけど、直接手渡せてよかったと思っていた。

「なに、心配はいらぬ。変化魔法を使って目立たぬようにしておこう。迷惑はかけぬ。水の国の王女の晴れ舞台だからな」

「ほら、大丈夫だろ?」

古竜の王の言葉に、俺は安心する。

「なんか……」

「魔王のほうが常識があるわね」

モモとフリアエさんが失礼なことを言ってる。

(これで声をかけたかった人にはだいたいかけ終わったかな……)

残るはあと『一人』。

いや、一柱か。

「じゃあ、海底神殿に行こうか。モモ、姫」

俺は二人に声をかけた。

女神ノア様に会いにいかないといけない。

水の女神さまたちには、ソフィア王女が連絡するらしいが自分の仕える女神様は、直接お伝えするのが使徒の役目だ、と思っている。

「もう、行くのか? 精霊使いくん」

「数日くらい里で泊まってもいいだろうに」

白竜さん親子に引き止められ、少し心が揺れた。

が、ソフィア王女を待たせすぎてはよくない。

必要な人に声をかけて、俺は早く水の国に戻って準備をしなければ。

とはいえ、白竜さんや古竜の王ともう少しゆっくり話したかったのも事実。

「一緒に来ます? 海底神殿」

二人に声をかけてみた。

俺と同行すれば、神獣リヴァイアサンは通してくれる。

「私はやめておくよ。そのように気軽にお会いしてよいものではない、女神様は」

「マコトよ、私はいずれ自力で海底神殿へ行こう」

メルさんとアシュタロトに断られた。

にしても、古竜の王。

自力で神獣リヴァイアサンは厳しくないか……?

本人がやりたいなら、止めないけど。

俺は二人にお礼をいい、また結婚式での再会を約束した。

「モモ、姫、手を握って」

「失敗しないでくださいよ、マコト様」

「絶対に手を離さないでよ!」

俺はモモとフリアエさんの手を、ぎゅっと強く握った。

そして、精霊語で語りかける。

「時の精霊さん……………… 空間転移(テレポート) !」

景色がぐにゃりと歪み、光に包まれた。

真っ白い光がなくなり、この世のものとは思えない鮮やかな花畑が眼の前に広がっている。

ここは……どこであるかを俺は知っている。

「いらっしゃい、マコト。よく来たわね」

透き通った雪解け水のような御声。

聞き違えるはずもなく、ノア様だ。

珍しく空間転移で一発で、海底神殿まで来ることができた。

ちなみに、モモとフリアエさんには事前に目を閉じてもらうように言ってある。

女神様を直視しては、発狂してしまうから。

俺はノア様のほうへ身体を向け、跪きつつ言葉を発した。

「ノア様、突然の来訪をお許しください。実はノア様にお話があり……」

と言葉を続けようとした時、横から会話を割り込まれた。

「おや、高月マコトじゃないか。私の選んだ 光の勇者(リョウスケ) は元気かい?」

「それに ボ(・) ク(・) の(・) 巫(・) 女(・) まで一緒だねー」

声の主は、ノア様以外の女神様たちだった。

太陽の光のように輝く金髪と純白の鎧。

夜に輝く星のような銀髪に、浅黒い肌。

どちらも人からかけ離れた美貌を持ち、ノア様と同等の威圧感を発している。

「 太陽の女神(アルテナ) 様と……、 月の女神(ナイア) 様……?」

珍しい組み合わせと遭遇した。