軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27話 高月まことは女神の助言を得る

「すいません、高月様。ご主人様は本日不在でしテ……」

ふじやんは留守だった。

代わりに対応してくれたニナさんが、恐縮そうにしている。

アポなしで行ったこっちが悪いのに。

申し訳ないことしたかな。

「ふじやんは、何時頃に戻りますか?」

「それが、大きな取引とかで2、3日は戻らない予定なんですヨ……」

「そうなんですか」

残念。

愚痴が言える唯一の相手が留守だった。

仕方ない、今日はソロでゴブリン狩りでもしようかな。

そんなことを考えていると。

「ところで、高月様! こちらを見てください」

ニコニコとニナさんが、見せてくる胸元で輝いているのは。

「ゴールドバッジ?」

「はい! 高月様のお知り合いの神様の加護のおかげでゴールドランクに!」

「それは……おめでとうございます」

凄いな。

ゴールドバッジは、ギルドの支店が発行できる最高ランクだ。

プラチナ以上のランク認定は、王都にある本店でしかできない。

つまりニナさんは、マッカレンの冒険者ギルドの最高水準に達したということか。

「いやー、正直ワタシの実力だと、シルバーランクが打ち止めだと思ってたんですが。何が起こるか分らないもんですネー」

「いえいえ、ニナさんの闘技は凄かったですよ」

あの足技あってこそのランクアップだろう。

「ご主人様は、先日手に入れた魔石で大きな商売を始めると意気込んでましたし、それもこれも高月様のおかげですヨ!」

ニナさんは両手を上げて、称えてくれる。

だけど、俺は嬉しさより少々虚しい気持ちになる。

みんな、順調だな。

それにひきかえ、俺は……。

「じゃ、じゃあ、ふじやんにはよろしく言っておいてください」

「はい! またのお越しを!」

笑顔のニナさんに見送られ、ふじやんの店を出た。

今日の予定無くなっちゃったな。

結局、ゴブリン狩りは止めてギルドの近くの広場で修行をして一日を過ごした。

ルーシーもいるかな、と期待したけどいなかった。

修行の最後に、日課の女神様へのお祈りを捧げる。

「ふー」

寝転がりながら、自分の『魂書』を見てみる。

『寿命:11年』若干伸びている。日々の魔物狩りの成果だろう。

『水魔法・熟練度:99』打ち止めだ。1ヶ月前にカンストしてから変化が無い。もしかすると100超えるかも、と思ったがこれが最高値らしい。

あとは、代わり映えのしない低いステータスが並んでいる。

(なんだろうなー)

異世界に来て最初は、ドキドキした。

その後、神殿で自分のステータスの低さを知ってショックを受けた。

1年間修行して、でもそんなに強くなれなくて。

それでも鍛えたスキルを駆使して、なんとか冒険者をやってきた。

最近は、周りの評価も上がってきている。

別に、大きな問題は無い。

だけど。

(こんなもんだったのかな……)

ちょっと、前までは楽しかった。

初めて魔物を倒した日。

初めてかっこ悪い二つ名を、付けられた日。

初めて仲間ができた日。

初めて死にかけた日と女神様の加護がもらえた日。

初めてクラスメイトと一緒に冒険できた日。

刺激的だった。

最近は……退屈だ。

そんなことを考えていたら、急に眠気が襲ってきた。

何も無い場所に立っていた。

いや、何も無いとか失礼だな。

ここは、女神様の空間と呼ぼう。

「これはこれは、女神様。お久しぶりです」

今さら驚くことなく、慣れた動作で両手を組んで礼をする。

しかし、ここ最近ご無沙汰していた。

最後に声を聞いたのが、巨神のおっさんの時だったか。

「……」

「あれ? 女神様?」

返事がないなー、と思って頭を上げるとめちゃくちゃ近くに立っていた。

おおっと。

前髪が触れそうなくらい近い。

あと、目が冷たい。

何か怒らせることしたっけ?

最近は、安全な冒険しかしてないはずだけど。

「あ、あの~」

「ねぇ、まこと」

「はい」

「あなたって、私の信者よね?」

「もちろん、毎日祈りは欠かしてませんよ」

「知ってるわ。届いてるから」

ですよね。

「女神の仕事って知ってる?」

「女神様の仕事ですか? 献金を集める? あ、もしや祈りだけではだめでしたか?」

「ちっがうわよ! なんで、天界のやつらみたいにお金集める必要があるのよ! 要らないわよ、そんなもん!」

「違いましたか」

なんだろう、わからん。

「あほー! 女神は迷える子羊を導くのが仕事なのよ! あんた、うじうじ悩んでるんでしょ! じゃあ、相談しなさいよ! 私を頼りなさいよ!」

頭をぐりぐりされた。

痛くは無い。

ただ、その位置だと顔が胸に。

「あ、あの。当たってますよ」

「わざとよ」

言い切りやがった!

「えーと、失礼しました女神様」

女神様の攻撃? から距離を取る。

この ひと(女神) すぐ、誘惑してくるなぁ。

「毎日、祈りは捧げるのになんで頼らないのよ」

「いやー、それは最後の手段かなって」

あんまり神様に借りを作るのは怖いし。

「いいから、じゃんじゃん頼りなさい。借りなんて気にしないで。一人しかいない信者なんだから」

利子が高そうなんですよね、ノア様。

まあ、でも相談先として女神様が抜けてたのも確かだ。

「てことは、女神様の力で強くしてくれるんですか?」

「ん? 私はもう加護を与えてるでしょ? これ以上は無理よ」

「あれ?」

駄目じゃん!

「でもね、女神はこういう手が使えます」

ぱっと取り出したのは。

「また、俺の魂書ですか」

ほんと、この女神様は手癖が悪い。

「ここを、ちょちょいっと」

何か書いた?

「ほら、見て見て」

頭を掴んで魂書を見せてくる。

だから、距離が近いんですよ。

「いいから、ここ、ここ」

「えーと、えっ!?」

『水魔法・熟練度:101』

「め、女神様? これは」

「まことって、RPGゲームでレベル99まで上げるタイプでしょ? で、最近は熟練度がカンストして、ちょっと燃え尽きてたんでしょ」

見抜かれてた。

当たり前か。

相手は女神様だし。

「ふっふっふっ、さらにお得な情報を教えましょう。水魔法・熟練度:105くらいになると水の精霊が見えるわよ」

「え!」

そんな単純なことでいいの?

なんか、色々悩んで雨の中で修行したり、滝に打たれたり、水の中で一日過ごしたりしてたのに!

「いや~、あの修行は意味無いのによくやるなーって見てたわよ」

「それは、教えてくださいよ!」

「あはははっ」

性格悪っ!

いや、違うか。

「ありがとうございます、女神様」

両手を組んで深く礼をする。

これで、引き続き水魔法の熟練度上げができる!

「あら、素直。うんうん、頑張るのよ」

「今回は、結構行き詰ってたので本当に助かりましたよ」

「いやー、喜んでもらえてなによりよ。あ、ただし気をつけることがあるわよ」

「なんでしょう?」

さっそく、無理難題か?

「ちがうわよ。魂書のステータスって、99が最高値なの。天界のやつらがそう取り決めたからね」

へぇ。

「そうなんですか」

「実際のところは、頑張った分だけ上がるから限界値とかないわよ。数値化してないだけで。さっき私がやったのは魂書を少し改造して100以上も数値化できるようにしたの」

ほうほう、なんか良いこと聞いたな。

頑張った分だけ、成果はあるんだな。

やる気が出てきた。

「ただ、魂書の改造はまことの世界だと違法だからね。教会にばれると異端審問とかにかけられちゃうわよ」

「え? ちょっと!」

「ちなみに、太陽の国か水の国で邪神崇拝がばれると死刑らしいわよね。野蛮よねー」

「なんで、今頃言うんですか!」

「知らなかったの?」

知らなかったよ!

教会はずっと避けてたし。

……今後は、気をつけよう。

「じゃあ、そろそろ時間だから」

女神様の姿が消え始める。

「いつも、慌しいですね」

「お、もっと私と話したいかー?」

「まあ、もう少しゆっくり話したいとは思いますよ」

「ふふふ。だんだん、良い子になってきたわね。その調子で私に惚れていいのよ」

流し目はやめてください。

ドキッとするから。

「そうだ! 最後に伝えることがあるわ!」

「なんでしょう?」

いつものふわっとした指示だろうか。

「大迷宮に向かいなさい。汝に良い出会いがあるでしょう」

そう言いながら、女神様は消えた。

ええ……。

なんか、凄い具体的な指示がきたんですけど。